

摩擦は身近でも感じられる物理現象だろう。滑り止めのグリップや、寒いときに手をこすり合わせたりな。
特に摩擦力といえば、力学的な力のひとつになる。
今回は、建築の構造力学を専攻するライター、ユッキーと共に解説しよう。

解説/桜木建二
「ドラゴン桜」主人公の桜木建二。物語内では落ちこぼれ高校・龍山高校を進学校に立て直した手腕を持つ。学生から社会人まで幅広く、学びのナビゲート役を務める。

ライター/ユッキー
大学で建築構造力学を専攻している学生。小学校から理科系クラブに所属しており、いずれも力学分野について勉強してきた。
1 摩擦とは

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摩擦と言われてイメージされるのは、紙やすり、乾布摩擦などでしょう。「物と物を滑らせるとき、間にあるザラザラした引っかかり」が摩擦です。
しかし、イメージと違うかもしれませんが、摩擦はほとんどの物と物との間に発生しています。例えばツルツルしたスマホの液晶を指で触るときさえも、わずかながらに摩擦は発生しています。
ありとあらゆる物の間にあるからこそ、わざわざ参考書では計算を簡略化するために「摩擦はないものとする」と断った一文が入るのです。

摩擦はほとんどの物と物の間に発生している。ザラザラしたものからツルツルしたものまで、大きさが違うだけでそれぞれ摩擦であることには変わりがないな。
1-1 摩擦のイメージ

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では、摩擦がないとどうなってしまうのでしょうか。
例えば図のように道の上にボールを転がすとしましょう。どうなるか予想はつきますね?ボールは転がり続け、いずれどこかで止まってしまうでしょう。これは摩擦によってボールが止まってしまうからです。
では仮に道とボールの間に摩擦がなければどうなるか?ボールは止まらず転がり続けます。(厳密に言えば違うのですが、大まかなイメージとして掴んでくだされば結構です)
このように「動いている物体を止めてしまう」ことが摩擦の大きな役割と言えます。
より「ぽく」言えば、「物体が持っている運動エネルギーが摩擦エネルギーに変換され、物体の運動が静止した」でしょう。摩擦といえば現象のこと、摩擦力といえばこのエネルギーをさすことが多いです。力学について学べば、最初の物体の速度や重さから、どれだけの距離を運動するかが簡単にですが計算できるようになります。
また、図の床にあたる部分には「/」といった斜線が入っていますが、これは物理において摩擦のある面を表しています。

摩擦は物の運動を止めてしまう側面がある。滑りをよくするために自転車に油をさしたり、反対に滑らないように椅子の足がゴムだったりするのは、この摩擦が物によって変わることを利用して調整しているわけだ。
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