今回は摩擦力について解説しよう。
摩擦は身近でも感じられる物理現象でしょう。滑り止めのグリップや、寒いときに手をこすり合わせたりな。
特に摩擦力といえば、力学的な力のひとつになる。

今回は、建築の構造力学を専攻するライター、ユッキーと共に解説しよう。

ライター/ユッキー

大学で建築構造力学を専攻している学生。小学校から理科系クラブに所属しており、いずれも力学分野について勉強してきた。

1 摩擦とは

image by iStockphoto

摩擦と言われてイメージされるのは、紙やすり、乾布摩擦などでしょう。「物と物を滑らせるとき、間にあるザラザラした引っかかり」が摩擦です。

しかし、イメージと違うかもしれませんが、摩擦はほとんどの物と物との間に発生しています。例えばツルツルしたスマホの液晶を指で触るときさえも、わずかながらに摩擦は発生しています。

ありとあらゆる物の間にあるからこそ、わざわざ参考書では計算を簡略化するために「摩擦はないものとする」と断った一文が入るのです。

1-1 摩擦のイメージ

1-1 摩擦のイメージ

image by Study-Z編集部

では、摩擦がないとどうなってしまうのでしょうか。

例えば図のように道の上にボールを転がすとしましょう。どうなるか予想はつきますね?ボールは転がり続け、いずれどこかで止まってしまうでしょう。これは摩擦によってボールが止まってしまうからです。

では仮に道とボールの間に摩擦がなければどうなるか?ボールは止まらず転がり続けます。(厳密に言えば違うのですが、大まかなイメージとして掴んでくだされば結構です)

このように「動いている物体を止めてしまう」ことが摩擦の大きな役割と言えます。

より「ぽく」言えば、「物体が持っている運動エネルギーが摩擦エネルギーに変換され、物体の運動が静止した」でしょう。摩擦といえば現象のこと、摩擦力といえばこのエネルギーをさすことが多いです。力学について学べば、最初の物体の速度や重さから、どれだけの距離を運動するかが簡単にですが計算できるようになります。

また、図の床にあたる部分には「/」といった斜線が入っていますが、これは物理において摩擦のある面を表しています。

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2 摩擦といえば摩擦熱

摩擦が発生しているときは殆どの場合、摩擦熱も発生します。

先程、乾布摩擦の例を出しましたが、寒いときに手を擦ると手が暖かくなることはご存知ですね?もちろん暖房かなにかで熱を加えてはいません。

では、どうして擦ると物は熱を持つのでしょうか。

これについて、少し解説していきます。

先ほど運動エネルギーが摩擦エネルギーに変換される、と説明しましたが、実際には全てが変換されるわけではありません。エネルギーのロスが少なからず発生しているのです。そのエネルギーロスが熱となって現れます。これが摩擦熱です。

摩擦熱に限らず、エネルギーロスは熱として放出されます。例えばスマホが熱を持つときもそのひとつです。機械などではこのエネルギーロスが少ないほどエネルギー効率がいいと言われ、性能指標のひとつになります。

3 摩擦力を式を通して見てみよう

3 摩擦力を式を通して見てみよう

image by Study-Z編集部

ある程度物理を勉強した方ならお気づきでしょう。運動方程式F=maの式に似ていますね?

どちらもF=から始まるということは、この摩擦力の式も運動方程式の1つとして等式を立てられます。つまり、計算する対象は力F(N)です。

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それぞれの記号の説明をしましょう。

最初にFについて、先程の通り運動方程式の「力」の1つである摩擦力を表しています。

次のμについて、これは「物体どうしによって変わる係数」です。例えばスマホの液晶と滑り止め用のラバーでは触ったときの滑り具合が違いますね。そのように「物体ごとに異なる滑りやすさ」を表しているのが摩擦係数です。

最後に、垂直抗力は、「床面に垂直な抗力」を表します。より詳しく言うならば、力の釣り合いです。物体がF=mgの力で床を押していますが、それと釣り合うように、床面が物体を押す力としてN=mgの力で押し返しています。これが垂直抗力です。

これらからなる摩擦力が、物体を押す力とは反対向きに発生することで、摩擦を感じることができます。

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3-1 例題を考えてみよう

3-1 例題を考えてみよう

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例えば図のようにF=10Nの力が物体に加わるとします。

重さ50kg、摩擦係数が0.1のとき物体はどうなるでしょうか?

力Fがかかっていることから力の釣り合いを考えましょう。Fと同じ式を立てるならば先程の摩擦力の式なので、それを考えます。

まず垂直抗力を考えると、重さが50kgであることから、通例通り重量加速度を9.8とすると、垂直抗力は50×9.8=49Nです。

さらに、摩擦係数が0.1なので、摩擦力は0.1×49=4.9Nとなります。

これと力Fを比較すると、摩擦よりも力Fの方が大きいので、物体は運動することが結論です。

4 摩擦にも種類がある

さて、今まで摩擦と一括りにしてきましたが、摩擦には動摩擦静止摩擦の2つがあります。

重い物を押して動かそうとしたとき、動き始めるまでは力いっぱい押しますが、動き始めてからはそこまでの力がなくても物は動き始る経験は皆さんありますでしょうか。

つまり、動く前と動き始めてからでは摩擦力の大きさは違っているのです。

もちろん物体の重さは変わっていないため、ここで変わっているのは摩擦係数ですね。先程の例のように、動摩擦係数よりも、静止摩擦係数の値の方が大きいのです。物体を動かす前と後の摩擦力の大きさの違いを表すために、静止摩擦係数と動摩擦係数が定められています。

また、静止摩擦力は加わる力によって値が変わるのです。このときの最も大きな値を特に最大静止摩擦力と言い分けることもあります。

摩擦力は力のひとつ

摩擦力は数ある力のひとつで、最も身近に感じられるもののひとつです。

摩擦にも動摩擦、(最大)静止摩擦と種類があります。

数式と実体験からの想像を組み合わせることで、物理の理解は深まるでしょう。

この摩擦力の記事をきっかけに物理への理解を深めてくれればと思います。

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物理物理学・力学理科

3分で簡単「摩擦力」!構造専攻学生が例題を通してわかりやすく解説!

今回は摩擦力について解説しよう。
摩擦は身近でも感じられる物理現象でしょう。滑り止めのグリップや、寒いときに手をこすり合わせたりな。
特に摩擦力といえば、力学的な力のひとつになる。

今回は、建築の構造力学を専攻するライター、ユッキーと共に解説しよう。

ライター/ユッキー

大学で建築構造力学を専攻している学生。小学校から理科系クラブに所属しており、いずれも力学分野について勉強してきた。

1 摩擦とは

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摩擦と言われてイメージされるのは、紙やすり、乾布摩擦などでしょう。「物と物を滑らせるとき、間にあるザラザラした引っかかり」が摩擦です。

しかし、イメージと違うかもしれませんが、摩擦はほとんどの物と物との間に発生しています。例えばツルツルしたスマホの液晶を指で触るときさえも、わずかながらに摩擦は発生しています。

ありとあらゆる物の間にあるからこそ、わざわざ参考書では計算を簡略化するために「摩擦はないものとする」と断った一文が入るのです。

1-1 摩擦のイメージ

1-1 摩擦のイメージ

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では、摩擦がないとどうなってしまうのでしょうか。

例えば図のように道の上にボールを転がすとしましょう。どうなるか予想はつきますね?ボールは転がり続け、いずれどこかで止まってしまうでしょう。これは摩擦によってボールが止まってしまうからです。

では仮に道とボールの間に摩擦がなければどうなるか?ボールは止まらず転がり続けます。(厳密に言えば違うのですが、大まかなイメージとして掴んでくだされば結構です)

このように「動いている物体を止めてしまう」ことが摩擦の大きな役割と言えます。

より「ぽく」言えば、「物体が持っている運動エネルギーが摩擦エネルギーに変換され、物体の運動が静止した」でしょう。摩擦といえば現象のこと、摩擦力といえばこのエネルギーをさすことが多いです。力学について学べば、最初の物体の速度や重さから、どれだけの距離を運動するかが簡単にですが計算できるようになります。

また、図の床にあたる部分には「/」といった斜線が入っていますが、これは物理において摩擦のある面を表しています。

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