万有引力の法則は二つの物体の間に働く重力の大きさや向きを表す物理法則です。どんな物体にも働く力ですが、その実態がどのようになっているのか。
具体的な例を挙げながら、万有引力の法則について、理系ライターのひいらぎさんと一緒に解説していきます。
ライター/ひいらぎさん
10 年以上にわたり素粒子の世界に携わり続けている理系ライター。中でもニュートリノに強い興味を持っており、その不思議な性質を日夜追いかけている。今回は素粒子のような小さな物体にも働く万有引力の法則についてまとめた。
惑星の運動から導き出された万有引力の法則
万有引力の法則は、1665年にイギリスの物理学アイザック・ニュートンによって発見されました。これは惑星の運動に関するケプラーの法則と呼ばれるものに運動方程式を用いることで導き出されます。力学的・数学的に惑星の運動を解明したことは、近代物理学の扉を開ける偉大な成果でした。では、そのケプラーの法則から万有引力の法則が導かれるまでの流れを見ていきましょう。
ケプラーの法則
ケプラーの法則は、17世紀の前半にドイツの天文学者であるヨハネス・ケプラーによって発見された、惑星の運動に関する法則です。次の三つの法則から構成されています。
・第一法則(楕円軌道の法則):惑星は、太陽を一つの焦点とした楕円軌道を描く。
・第二法則(面積速度一定の法則):惑星と太陽を結ぶ線分(動径)が単位時間に掃く面積は一定である。
・第三法則(調和の法則):惑星の公転周期の二乗は楕円軌道の半長軸の三乗に比例する。
第二法則の面積速度一定の法則は、他の第一、第三法則に比べると直感的には分かりづらいかもしれません。惑星と太陽を結ぶ線をまず考えてみます。ある時間だけ惑星が動くと、その直線が軌道に沿って扇型の面を作ることが想像できるでしょう。これが「惑星と太陽を結ぶ線分が掃く面積」となります。第二法則では、この面積が常に一定であることを示しており、その結果、惑星は太陽から遠いところでは遅く、近いところでは速く動くことが分かるのです。
運動方程式の適用
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では、ケプラーの法則に運動方程式を使っていきましょう。
まず問題を単純化するために、惑星と太陽の軌道は円運動である、と近似します。すると、ケプラーの第二法則から面積速度が一定となっているので、惑星は太陽の周りを一定の速度で円運動している、となりますね。円運動の際には向心力Fが惑星に働くので、惑星に運動方程式を適用すると次のような式が成り立ちます(mは惑星の質量、rは惑星の描く軌道の半径、ωは角運動量)。
F = mrω^2
惑星の角運動量ωは、円運動の周期(=公転周期)Tを使ってω=2π/Tと表すことが出来ます。これを上の式に代入してωを消すと力を表す式は
F=mr(4π^2)/T^2
となりました。ここで登場するのがケプラーの第三法則です。半長軸というのはこの場合、円運動の軌道の半径に等しいので、ケプラーの第三法則は数式で表現すると(kは比例定数)、
T^2 = kr^3
これをさらに力の式に用いることで、次のような式を得ることができます。
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