前回は「酸化」について解説したよな。今回はそれとセットになるともいえる「還元」について勉強していこう。

ここで少しおさらいです。酸化反応は物質と酸素が化合する反応だったよな。還元とはその反対で、物質から酸素を奪う反応の事をいう。

還元の実験は酸化を理解していないと難しい。だからこそテストにも出やすのです。さあ、化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.「還元」ってどんな反応?

image by iStockphoto

日常生活において「還元」とは元に戻ることの意味で使われることが多々あります。ネットショッピングなどでポイント還元といえば、買った商品の値段の何%をポイントでお返しします、という意味です。消費者に利益を戻すという意味で使われることが多いでしょう。

化学で学ぶ還元には、酸化された物質が元に戻ること、つまり酸化物から酸素を奪う反応のことをいいます。

じゃあどうやって?と気になるところですよね。まずは身近な例で考えてみましょう。

2.身近なもので実験ができる!

image by iStockphoto

日々の生活により身近な酸化に比べ、還元反応は意図的に起こすものが多いかもしれません。しかしどちらも身近なものでその現象を体験できるのが化学の面白さなのです。

還元実験を説明する前に、少しだけ酸化のおさらいをしましょう。

2-1.酸化をおさらい

酸化には激しく反応が進む燃焼おだやかに反応するさびの2種類がありましたね。さびは燃焼に比べ、光や熱を出さないことがほとんどですが、全くそれがないというわけではありません。それを証明してくれるのがカイロです。

カイロには鉄の粉が入っており、それを酸化させることで身体を温めてくれるだけの熱を発します。カイロが密閉された袋に入っているのは酸素との反応を防ぐためです。さらに、温めるときはカイロを振ったり揉んだりするのは、酸素と触れさせることで効率よく酸化反応を進めるためといえます。

ということは、カイロをより長持ちさせるためにはどうしたらいいでしょうか?

\次のページで「2-2.還元実験はさびた十円玉で証明」を解説!/

2-2.還元実験はさびた十円玉で証明

ご存知の通り、十円玉は銅でできています。長年使われていくうちに表面が黒くなり、自販機に入れても反応してくれなかった経験を持つ人もいるのではないでしょうか。この表面の汚れはただの汚れではなく、酸化銅というさびなのです。

そんなさびを落とすための方法としてお酢や水に溶かしたクエン酸に浸けるというものがあります。瓶に入れて振り、15分ほど放置してから水で洗ってみましょう。最初よりもきれいな銅の色が見えているはずですよ。

3.還元の定番実験を解説

image by iStockphoto

酸化銅に関する実験を2つ見ていきましょう。まずは1つめで基本を押さえ、2つめでより理解を深めていきたいですね。

実験にうつる前に、銅が酸化銅になる化学反応式をおさらいしておきましょう。

2Cu + O2 → 2CuO

3-1.水素を使った還元実験

1つめは、酸化物に水素を送りながら加熱するという方法です。手順も化学反応式もわかりやすく、簡単な還元反応といえるでしょう。

CuO + H2 → Cu + H2O

酸化銅から酸素が離れる(還元する)ことで銅ができます。それと同時に、酸化銅から離れた酸素は水素と化合する(酸化する)ことで水が生成されるのです。銅は金属の性質、水は塩化コバルト紙で確認することができますね。

先ほど紹介した十円玉の実験は、この反応の原理を応用しています。お酢やクエン酸といった酸性の液体に含まれる水素イオン H+ がこの水素同様のはたらきをしてくれるのです。

3-2.炭素を使った還元実験

2つめは水素の代わりに炭素を使った実験です。グラフを用いた問題に使われやすい実験なので、問題集で確認しておくといいですね。

2CuO + C → 2Cu + CO2

酸化銅から酸素が離れる(還元する)ことで銅ができます。それと同時に、酸化銅から離れた酸素は炭素と化合する(酸化する)ことで二酸化炭素が生成されていますね。銅は金属の性質、二酸化炭素は石灰水の白濁で確認することができます。

 

\次のページで「4.還元についての理解を深めよう」を解説!/

4.還元についての理解を深めよう

image by iStockphoto

さあ、ここで重要なポイントを覚えておきましょう。

どちらの実験も水素や炭素という酸素と反応する物質があり、水や二酸化炭素になるという酸化反応を起こしているということがいえますね。

酸化は酸化のみの反応で成り立つのに対し、還元は酸化と同時に成り立つことが今回のポイントです。これを意識することで、理解度は格段に上がりますよ。

・還元の反応では酸素を受け取ってくれる物質が必要である。

・還元反応が起こっているとき、同時に酸化反応も起こっている。

4-1.還元反応と誤解しやすい「分解」

ここで1つ、酸化銀の分解について補足しましょう。まず、分解とは1種類の物質が2種類以上の別の物質に変化することです。酸化銀は単体で加熱することで、銀と酸素に分解されます。その化学反応式を見てみましょう。

2AgO → 2Ag + O2

これだけを見ると酸化銀から酸素がとれた還元反応だと思いませんか?しかし還元は酸化と同時に起こります。つまり、酸化銀から酸素を奪う相手のいないこの反応は還元とはいえず、加熱による分解(熱分解)とよぶのです。

5.グラフからの読み取りに挑戦!

5.グラフからの読み取りに挑戦!

image by Study-Z編集部

この実験は、左図のように酸化銅と炭素の粉末混ぜ合わせたものを試験管に入れて加熱し、気体がでなくなるまで反応を続けました。右グラフは酸化銅4.0gに対して混ぜる炭素の質量を変えたとき、反応後の試験管に残った物質の質量をグラフにしたものです。

このとき、下記の問題に挑戦してみましょう。

(1)このときの反応を化学反応式で示し、発生する気体の名称を答えよ

(2)酸化銅4.0gとぴったり反応する炭素は何g

(3)グラフが途中から右上がりになるのはなぜか

(4)(2)のとき、試験管に残る物質の名称とその質量を答えよ

(5)(2)のとき、発生した気体の質量を答えよ

(6)4.8gの銅をつくるためには何gの酸化銅と炭素が必要か

\次のページで「還元には酸化の理解が必要不可欠!」を解説!/

(1)このときの反応を化学反応式で示し、発生する気体の名称を答えよ
答え.2CuO C → 2Cu CO2 , 二酸化炭素

 (2)酸化銅4.0gとぴったり反応する炭素は何g
答え.0.3g

解説.グラフが右下がりになっているのは、酸化銅に含まれる銅が二酸化炭素として出ていっていく分の質量が減るから。 

(3)グラフが途中から右上がりになるのはなぜか
答え.酸化銅が全て還元され、反応せずに残った炭素の分の質量が増えるから。

(4)(2)のとき、試験管に残る物質の名称とその質量を答えよ
答え.銅 , 3.2g

解説.酸化銅が還元されて銅のみが試験管に残っているので、グラフより3.2gとわかる。

(5)(2)のとき、発生した気体の質量を答えよ
答え.1.1g

解説.反応前の質量が酸化銅4.0gと炭素0.3gであったのに対し、反応後には3.2gの銅のみが試験管に残った。質量保存の法則が成り立つので、その差の1.1gが二酸化炭素として出ていってしまったことがわかる。

 (6)4.8gの銅をつくるためには何gの酸化銅と炭素が必要か
答え.酸化銅6.0g , 炭素0.45g

解説.上記の問題より、酸化銅:炭素:=4.00.33.2という関係が見えてくる。したがって、酸化銅:=5:4となり、5:4=X:4.8を解いて6.0gとなる。炭素:銅でも同様に考えると0.45gとなる。

還元には酸化の理解が必要不可欠!

今回は実験を通して還元の仕組みを説明しました。酸化と還元がセットで勉強しなければならない理由がわかりましたか?

酸化反応は空気中の酸素と物質が化合する反応を例にとって解説しましたね。しかし、還元反応は既に酸素と化合している物質から酸素を奪う反応です。それと同時に、奪われた酸素も別の物質と化合する酸化反応を起こしています。

これが酸化と還元が密接な関係にあるのがわかりますよね。還元が苦手な人は、一度酸化から振りかえって理解していくことが大切です。

" /> 酸化とセットで覚えよう!苦手意識の出やすい「還元」反応の仕組みを元塾講師がわかりやすく解説 – ページ 2 – Study-Z
化学物質の状態・構成・変化理科

酸化とセットで覚えよう!苦手意識の出やすい「還元」反応の仕組みを元塾講師がわかりやすく解説

2-2.還元実験はさびた十円玉で証明

ご存知の通り、十円玉は銅でできています。長年使われていくうちに表面が黒くなり、自販機に入れても反応してくれなかった経験を持つ人もいるのではないでしょうか。この表面の汚れはただの汚れではなく、酸化銅というさびなのです。

そんなさびを落とすための方法としてお酢や水に溶かしたクエン酸に浸けるというものがあります。瓶に入れて振り、15分ほど放置してから水で洗ってみましょう。最初よりもきれいな銅の色が見えているはずですよ。

3.還元の定番実験を解説

image by iStockphoto

酸化銅に関する実験を2つ見ていきましょう。まずは1つめで基本を押さえ、2つめでより理解を深めていきたいですね。

実験にうつる前に、銅が酸化銅になる化学反応式をおさらいしておきましょう。

2Cu + O2 → 2CuO

3-1.水素を使った還元実験

1つめは、酸化物に水素を送りながら加熱するという方法です。手順も化学反応式もわかりやすく、簡単な還元反応といえるでしょう。

CuO + H2 → Cu + H2O

酸化銅から酸素が離れる(還元する)ことで銅ができます。それと同時に、酸化銅から離れた酸素は水素と化合する(酸化する)ことで水が生成されるのです。銅は金属の性質、水は塩化コバルト紙で確認することができますね。

先ほど紹介した十円玉の実験は、この反応の原理を応用しています。お酢やクエン酸といった酸性の液体に含まれる水素イオン H+ がこの水素同様のはたらきをしてくれるのです。

3-2.炭素を使った還元実験

2つめは水素の代わりに炭素を使った実験です。グラフを用いた問題に使われやすい実験なので、問題集で確認しておくといいですね。

2CuO + C → 2Cu + CO2

酸化銅から酸素が離れる(還元する)ことで銅ができます。それと同時に、酸化銅から離れた酸素は炭素と化合する(酸化する)ことで二酸化炭素が生成されていますね。銅は金属の性質、二酸化炭素は石灰水の白濁で確認することができます。

 

\次のページで「4.還元についての理解を深めよう」を解説!/

次のページを読む
1 2 3 4
Share: