誰しも一度は転んで血を出したことはあるはずです。そのあと血が出続けることはなく、かさぶたができるな。
どんな仕組みでかさぶたができるか知ってるか?

今日は血液凝固の仕組みについて生物学に詳しいライターKAEDEと一緒に解説していきます。

ライター/KAEDE

現役塾講師。大学時代は微生物学を専攻し、酵素についての研究をしていた。今は科学の面白さを高校生に毎日伝えている。

まずは血液の種類を知ろう!

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血液凝固に大きく関わる要素は「血液」です。それは当然のことですよね。この記事を通して血液凝固について学んでいくためには、血液の基礎知識がなければ理解できません。

そこで最初に血液に含まれる成分について簡単に理解をしておきましょう!

酸素を全身に運搬する「赤血球」

血液はなぜ赤い色をしているのでしょう?それは血液には「赤血球」と呼ばれる真っ赤な有形成分を含んでいるので赤く見えているのです。

血液の液体成分の色は実は薄黄色。有形成分の赤血球があるから鮮やかな赤い色を呈しているのですね。

この赤血球の仕事は血流の流れに乗って全身に酸素を運ぶことです。赤血球にはヘモグロビンと呼ばれる要素が含まれており、このヘモグロビンが肺で酸素を結合して、全身を随所に酸素を届けます。

つまり、この赤血球がなければいくら呼吸をしても体の中に酸素が回っていかないということです。

異物を退治してくれる「白血球」

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白血球とは、体内にウイルスなどの異物が侵入した時に活躍する血液中の有形成分です。そのような白血球のはたらきのことを「食作用」と呼びます。もしも血液中に白血球が存在しなければ、ヒトは生きていけません。なぜなら、白血球以外の血液成分は体に侵入したウイルスや菌を退治できないからです。

主に免疫に大きく関わる白血球ですが、赤血球とは違い、様々な種類があります。その種類によって、同じ白血球でもはたらくが少しずつ違うということも特徴の一つです。

<白血球の種類>

・果粒球
・リンパ球
・樹状細胞
・マクロファージ

それぞれの種類によって同じ免疫でも少しずつはたらきが異なります。

血栓を形成してくれる「血小板」

血小板と呼ばれる成分こそが、血液凝固に大きく関わっている成分です。

血液の有形成分の中では最も大きさが小さく、最も存在数が多いことが血小板の特徴になります。生命にとって血液の流出が一番危険ですから、血小板の存在数が一番多くなるということですね。

\次のページで「液体だけどマルチな才能「血漿」」を解説!/

液体だけどマルチな才能「血漿」

血液成分の中で唯一の液体成分が血漿(けっしょう)。

この血漿が血液の約55%を占めています。液体成分なので、そのはたらきは血球などの有形成分を血管内で運搬することです。つまりこの血漿がなければ、血液とは言えません。

血漿の成分としては、その9割を水が占め、残りはタンパク質、無機塩類、その他有機物になります。この成分の中でも重要ものがタンパク質です。このタンパク質の中に含まれているものこそ、血液凝固に関わる物質「フィブリノーゲン」。

唯一の液体成分である血漿も血液凝固に関与するのですね。

<血液成分のまとめ>

・有形成分
 赤血球→酸素運搬に関わる
 白血球→免疫に関わる
 血小板→血液凝固に関わる

・液体成分
 血漿→物質運搬に関わる

血液凝固の過程

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ここからはこの記事の本題、血液凝固の仕組みに迫ります。たくさんの物質名が出てきますが、初めに血液凝固に関与する因子について紹介するのでついてきてくださいね。

血液凝固に関与する因子

血液凝固の具体的な仕組みに入る前に、血液凝固に関与する血液成分以外の因子を紹介します。ここでは血液凝固の全体像をつかみやすくするために、紹介する因子は高校生物レベルです。

必ず覚えておいてもらいたい血液凝固因子は、
フィブリノーゲン
フィブリン
カルシウムイオン
プロトロンビン
トロンビン

実際にはこれ以外にもいくつか血液凝固に関与する物質は存在します。しかしそれらは医療に携わることがない限り、覚えておく必要はありません。

つまり、今回はここで紹介した血液凝固因子を頭の中に入れて、血液凝固の仕組みを学んでいきましょう!

 

反応1 プロトロンビンがトロンビンに進化

血液凝固はプロトロンビンがトロンビンに変化することが土台になります。

プロトロンビンとは、血漿に含まれる血液凝固因子の一つです。このプロトロンビンにカルシウムイオン、血小板、組織に含まれるトロンボブラスチン、その他血液凝固因子が作用して、トロンビンに変化します。

\次のページで「反応2 フィブリノーゲンがフィブリンに進化」を解説!/

反応2 フィブリノーゲンがフィブリンに進化

反応1と同時並行で起きているのが反応2です。

血漿に含まれるフィブリノーゲンという物質が反応1で作られたトロンビンの作用によってフィブリンという物質に変化します。

このフィブリンは網目状の構造をしているので、かさぶたを作るのに非常に重要な役目を担っているのです。

反応3 フィブリンが血餅を形成しかさぶた完成!

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血液凝固の最後のステップがこの反応3です。最後は反応2で作られたフィブリンが血液中の白血球と赤血球と結合し血餅を作ります。そして、この血餅こそがみなさんも目にしたことがある「かさぶた」の正体です。

フィブリンは網目状の構造をしているので、その網目状構造の隙間に白血球や赤血球が絡みつき、かさぶたになります。

ちなみに血液凝固が終わりかさぶたができると、その部分の血管には赤血球がたくさん集まっているということなので、ごく稀にそこに血栓が形成されてしまうということもあるみたいです。気をつけてくださいね。

血液凝固を意図的に阻止することもある

血液凝固について今回の記事で理解してもらえたかと思います。

実は医療の現場では、あえて血液凝固の反応を阻止することもあるのはご存知でしたか?
例えば血液検査。みなさんも一度は経験したことがあると思います。血液検査の時にもしも採血した血液が固まってしまったら検査のしようがありません。

そこで血液の入った試験管に加えるのが、クエン酸ナトリウムです。これを加えることでカルシウムイオンが沈殿してしまうので、プロトロンビンがトロンビンに変化することができません。

このように、血液凝固についてだけ学ぶよりも、その周辺知識も一緒に勉強するとより学ぶことが楽しくなりますよね。

" /> 3分で簡単「血液凝固」の仕組み!現役理系塾講師がわかりやすく解説 – Study-Z
タンパク質と生物体の機能理科生物

3分で簡単「血液凝固」の仕組み!現役理系塾講師がわかりやすく解説

誰しも一度は転んで血を出したことはあるはずです。そのあと血が出続けることはなく、かさぶたができるな。
どんな仕組みでかさぶたができるか知ってるか?

今日は血液凝固の仕組みについて生物学に詳しいライターKAEDEと一緒に解説していきます。

ライター/KAEDE

現役塾講師。大学時代は微生物学を専攻し、酵素についての研究をしていた。今は科学の面白さを高校生に毎日伝えている。

まずは血液の種類を知ろう!

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血液凝固に大きく関わる要素は「血液」です。それは当然のことですよね。この記事を通して血液凝固について学んでいくためには、血液の基礎知識がなければ理解できません。

そこで最初に血液に含まれる成分について簡単に理解をしておきましょう!

酸素を全身に運搬する「赤血球」

血液はなぜ赤い色をしているのでしょう?それは血液には「赤血球」と呼ばれる真っ赤な有形成分を含んでいるので赤く見えているのです。

血液の液体成分の色は実は薄黄色。有形成分の赤血球があるから鮮やかな赤い色を呈しているのですね。

この赤血球の仕事は血流の流れに乗って全身に酸素を運ぶことです。赤血球にはヘモグロビンと呼ばれる要素が含まれており、このヘモグロビンが肺で酸素を結合して、全身を随所に酸素を届けます。

つまり、この赤血球がなければいくら呼吸をしても体の中に酸素が回っていかないということです。

異物を退治してくれる「白血球」

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白血球とは、体内にウイルスなどの異物が侵入した時に活躍する血液中の有形成分です。そのような白血球のはたらきのことを「食作用」と呼びます。もしも血液中に白血球が存在しなければ、ヒトは生きていけません。なぜなら、白血球以外の血液成分は体に侵入したウイルスや菌を退治できないからです。

主に免疫に大きく関わる白血球ですが、赤血球とは違い、様々な種類があります。その種類によって、同じ白血球でもはたらくが少しずつ違うということも特徴の一つです。

<白血球の種類>

・果粒球
・リンパ球
・樹状細胞
・マクロファージ

それぞれの種類によって同じ免疫でも少しずつはたらきが異なります。

血栓を形成してくれる「血小板」

血小板と呼ばれる成分こそが、血液凝固に大きく関わっている成分です。

血液の有形成分の中では最も大きさが小さく、最も存在数が多いことが血小板の特徴になります。生命にとって血液の流出が一番危険ですから、血小板の存在数が一番多くなるということですね。

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