お前らホルモンのことを知っているか?器官や組織の活動に関与して、体内環境を調節してくれるシグナルです。

ホルモンは内分泌腺で作られて、血液によって全身に運ばれる。そして特定の器官の細胞にのみ働く。甲状腺からはチロキシンと呼ばれるホルモンが分泌され、体内環境を調節してくれる。
今回のテーマについて、生物に詳しいライターKAEDEと一緒に解説してくぞ。

ライター/KAEDE

現役塾講師。大学時代は微生物学を専攻し、酵素についての研究をしていた。今は科学の面白さを高校生に毎日伝えている。

そもそもホルモンとは何?

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体内では常に環境が安定した状態を維持できるように、様々な機構が働いています。そこに大きく関与しているのが、神経系と内分泌系。この両者がしっかりと働いていてくれるからこそ、今生きていられるのです。

その中でもホルモンは、内分泌系の内分泌腺と呼ばれるところから分泌される化学物質のこと。この化学物質ホルモンが、血液などの循環系によって全身に運ばれることで、情報が伝達されていくのです。

ホルモン=内分泌系の伝達物質

内分泌腺から分泌され、循環系の力を借りて全身に運ばれる。
ホルモンと神経系によって体内の環境は安定を保つことができる。

ホルモンの特徴6選!

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甲状腺から分泌されるホルモンについて解説する前に、もう少しホルモンというものについて知識を蓄えておきましょう。

ここで解説するのは、ホルモンの特徴についてです。知っておくべきホルモンの特徴を6つまとめましたので、頭の中で入れておいてください。

#1 内分泌腺で作られる

内分泌腺とは物質を体内に分泌するための腺のことです。ホルモンは基本的にこの内分泌腺から分泌されます。

ちなみに同じ腺でも、汗を出す汗腺は体の外部に汗を分泌しているので外分泌腺。

代表的なヒトの内分泌腺は
・脳下垂体
・甲状腺
・副甲状腺
・副腎
・すい臓
・卵巣
・精巣

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#2 血液によって全身に運ばれる

神経はシナプスという器官を介して電気信号として全身に伝わっていきますが、ホルモンは違います。

ホルモンの場合、電気信号ではなく血液の循環によって全身へと伝達されて行きます。内分泌腺から分泌されたホルモンは血液の中に混ざり、そして全身に運ばれるという流れです。

ホルモンが血液の流れに乗って、作用するべき標的細胞まで近づくと、血管から染み出して作用します。

#3 情報伝達の速さは神経よりも遅い

2つ目の特徴でも述べましたが、ホルモンは神経と違って、血液を介して標的細胞まで運ばれます。

電気信号と血液の流れはどちらの方が速度が速いと思いますか?
正解は電気信号です。電気信号が伝わる速さは本当に一瞬の出来事になります。つまり、ホルモンは神経よりも伝達速度が遅いということなのです

#4 微量でも効果がある

ホルモンの利点は微量であったとしても効果があるということです。

たとえ微量だとしても、確実に標的細胞にホルモンが運ばれていくので効果に即効性があります

#5 効果は持続的である

神経系に比べたらホルモンの伝達スピードは全くかないません。しかし、ホルモンには効果の持続性という大きな強みがあります。

#6 特定の器官の細胞にのみ働く

ホルモンは血流に乗って、特定の器官の特定の細胞に作用することができます。逆に言えば、働かなくてもよい細胞には全く働かないということです。

それによって、効率よく目的の細胞だけに作用することができるということですね。

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甲状腺から分泌されるホルモンとは?

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甲状腺とは、ヒトの喉元にある内分泌腺です。甲状腺ガンなど一度は耳にしたことはありますよね。

さてその甲状腺から分泌されているホルモンは何かというと...
「チロキシン」と呼ばれるホルモンです。

このチロキシンはタンパク質系のホルモンで、体全体に作用するという特徴を持っています。

チロキシンの3つの働き

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体全体に作用するチロキシンですが、具体的にはどんな作用を持っているのでしょうか?

ここではそんなチロキシンの代表的な3つの作用を解説します。

1. 代謝の促進

まず、代表的な作用の一つは「代謝の促進」です。

チロキシンが分泌されると、体内での異化反応(物質を分解する反応)が促進され、代謝が上がります。

2. 変態・換羽の促進

チロキシン第2の作用は「変態・換羽の促進」です。ちなみに「変態」とは生物学用語で「発育」というような意味を持つ言葉なので、変なことは想像しないようにしてくださいね。

第1の作用が「代謝の促進」でしたが、第2の作用はこの「代謝の促進」に関連します。代謝を促進することで、爬虫類は成長が早まったり、鳥類は羽の生え代わりが早くなったりするのです。チロキシンにはそのような爬虫類の変態や鳥類に換羽の促進を助ける作用があります

つまり早く成長したければチロキシンの分泌量を増やせばよいというわけですね。しかし実際はうまくはできていません。

3. 甲状腺刺激ホルモン分泌の抑制

チロキシンの最後の作用は「甲状腺刺激ホルモン分泌の抑制」です。

全てのホルモンにはフィードバック調節と呼ばれる機構があります。これはホルモンがたくさん分泌されすぎたらそのホルモンの分泌量を減らし、分泌量が減ってきたら増やすといった機構です。つまり、このフィードバック調節がなければ体内の安定性は保てません。

チロキシンの分泌に必要なことは、甲状腺に甲状腺刺激ホルモンが作用することです。つまり、甲状腺刺激ホルモンが分泌され続ければ、チロキシンは永遠に分泌されてしまいます。すると体内はチロキシンの濃度が上がりすぎ、危険な状態になってしまうので、それを防ぐためにもチロキシンが一定量分泌されたら、甲状腺刺激ホルモンの分泌を抑制しなければなりません。

もしも、ホルモンにこのフィードバック調節の働きがなければ、チロキシンが永遠に分泌されるので、鳥類はずっと羽が生え替わることになってしまいますからね。

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チロキシン分泌の調節の仕組み

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ホルモンの分泌量を調節する機構のことを「フィードバック調節」といいます。ホルモン分泌において非常に重要なポイントとなるのが、このフィードバック調節。

では、チロキシンのフィードバック調節はどのような機構でなされているのでしょうか?ここでは、チロキシンのフィードバック調節について解説していきます。

分泌の司令塔は間脳視床下部

多くのホルモンにおいて、分泌の際の司令塔となるのは間脳にある視床下部と呼ばれる部位です。

この視床下部が脳下垂体前葉へとホルモンを放出し、そして、脳下垂体前葉が甲状腺刺激ホルモンを甲状腺めがけて放出することで、初めて甲状腺からチロキシンが放出されます。

チロキシン放出までの流れ

間脳視床下部→脳下垂体前葉→甲状腺→チロキシン

脳下垂体前葉から甲状腺に向かって甲状腺刺激ホルモンが放出される。

フィードバックは視床下部と脳下垂体前葉へ

チロキシンの分泌量が増えすぎたらどうするかというと、視床下部と脳下垂体前葉に「分泌量が多くなりすぎですよ」というフィードバックをします

すると、それぞれの部位が放出ホルモンの分泌量を抑制し始めるので、結果的にチロキシンの分泌量が減少するのです。ちなみに、詳しいフィードバック調節の仕組みとしては、チロキシンが視床下部と脳下垂体前葉甲状腺刺激ホルモンは視床下部へと情報を伝達します。

チロキシンは代謝に関与するホルモン

チロキシンは主に生物の代謝に関与するホルモンです。チロキシンが正常に作用しなくなってしまっては、代謝もうまくできません。

そんなチロキシンですから、その働きとフィードバック調節がどのような機構で行われているのかということについてしっかりとおさえておきましょう。

ちなみにチロキシンが分泌されすぎるとパセドー症、分泌量が少なすぎると、クレチン症という病気になってしまうので気をつけてくださいね。

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タンパク質と生物体の機能理科生物

3分で簡単甲状腺から分泌されるホルモン(チロキシン)!現役理系塾講師がわかりやすく解説

#2 血液によって全身に運ばれる

神経はシナプスという器官を介して電気信号として全身に伝わっていきますが、ホルモンは違います。

ホルモンの場合、電気信号ではなく血液の循環によって全身へと伝達されて行きます。内分泌腺から分泌されたホルモンは血液の中に混ざり、そして全身に運ばれるという流れです。

ホルモンが血液の流れに乗って、作用するべき標的細胞まで近づくと、血管から染み出して作用します。

#3 情報伝達の速さは神経よりも遅い

2つ目の特徴でも述べましたが、ホルモンは神経と違って、血液を介して標的細胞まで運ばれます。

電気信号と血液の流れはどちらの方が速度が速いと思いますか?
正解は電気信号です。電気信号が伝わる速さは本当に一瞬の出来事になります。つまり、ホルモンは神経よりも伝達速度が遅いということなのです

#4 微量でも効果がある

ホルモンの利点は微量であったとしても効果があるということです。

たとえ微量だとしても、確実に標的細胞にホルモンが運ばれていくので効果に即効性があります

#5 効果は持続的である

神経系に比べたらホルモンの伝達スピードは全くかないません。しかし、ホルモンには効果の持続性という大きな強みがあります。

#6 特定の器官の細胞にのみ働く

ホルモンは血流に乗って、特定の器官の特定の細胞に作用することができます。逆に言えば、働かなくてもよい細胞には全く働かないということです。

それによって、効率よく目的の細胞だけに作用することができるということですね。

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