今回は化学反応に伴う質量の変化を考える「質量保存の法則」について勉強しよう。

化学実験には反応前と反応後というものがあるのは理解できるよな。今回勉強するこの法則は、化学反応の前後で物体の質量は変化しないというものなんです。なんだか難しそうに聞こえるが、実際はそんなに難しい話しじゃないから安心しろよ。

この法則を考える上では、化学反応のパターンを考えることが大事なんです。それを化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.「質量保存の法則」とは

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質量保存の法則はフランスの科学者であるラボアジエが1774年に発見した化学の法則です。

正確な定量実験を行い、化学実験の前後では質量の変化が起こらないことを証明しました。

この事実を読み解くときに考えたいのが、物質を構成する最小の粒である原子の存在です。化学反応によって物質が変化しても、反応に関わる原子の種類と数が変わらないからというのが質量保存の法則が成り立つ理由だと思えておきましょう。

2.身近な例で考えよう

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食事直前のあなたの体重が50kgだったとします。では500gの大盛り牛丼を食べた直後、あなたの体重はどうなっているでしょう。

普通に考えれば50.5kgになっていると思いませんか?

もしそれが変わらない50kgだったら、逆に51kgに増えていたら驚きますよね。これが質量保存の基本の考え方です。

3.見かけの質量変化は3パターン

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例として挙げたのは、足し算がぴったり成り立つ場合ですよね。しかし、化学実験はいつでもそうぴったり成り立つときばかりではありません。

それには見かけの質量変化というのがキーワードになります。その3パターンについて考えてみましょう。

\次のページで「3-1.反応前と反応後の質量が変わらない反応」を解説!/

3-1.反応前と反応後の質量が変わらない反応

先ほど紹介した体重の例のように成り立つのが沈殿ができる反応の場合にあたります。

硫酸 H2SO4 と水酸化バリウム Ba(OH)2 の中和反応がその代表格です。

H2SO4 + Ba(OH)2 → BaSO4 + 2H2O

硫酸バリウムは水に溶けないために水が白く濁り、沈殿となって現れます。

同様に塩酸 HCl と水酸化ナトリウム NaOH の中和反応を例にしてみると

HCl + NaOH → NaCl + H₂O

塩化ナトリウム NaCl が生じますが、これは水に溶けるために目には見えないだけなのです。

3-2.反応前より反応後の質量が減ってしまう反応

水溶液の性質を判断するために使うマグネシウムリボンの反応では、反応前より反応後の質量が減ってしまうという現象が見られます。マグネシウムリボンを液体に浸けて、気体が出るものが酸性の証拠でしたよね。

では、マグネシウム Mg と酸性である塩酸 HCl で考えてみましょう。

Mg + 2HCl → MgCl₂ + H₂

出ていく気体、つまりは水素が空気中に出て行ってしまう分、質量が減ってしまったように見えるはずです。

同様に炭酸水素ナトリウム NaHCO3 と塩酸 HCl を反応させた場合は、

NaHCO+ HCl → NaCl + H2O + CO2

二酸化炭素が逃げてしまえば、その分の質量が減ってしまったように見えるでしょう。 

3-3.反応前より反応後の質量が増えてしまう反応

反応後の質量が増える例ではスチールウールの実験がよく用いられますね。

スチールウールの主成分である鉄は加熱することで酸素と化合(酸化)し、酸化鉄に変わります。

鉄 + 酸素 → 酸化鉄  ※中学の化学で化学式は不要

または銅 Cu を酸化させて酸化銅を作る実験では、

2Cu + O2 → 2CuO

解放された空間では空気中に含まれる反応に必要に酸素が測定できないので、ただ質量が増えたように感じてしまうのです。

4.化学式を見れば法則の秘密がわかる

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解説した3つのパターンのうち2パターンは、化学反応式に気体が含まれているものでしたね。この場合、密閉した環境でなければ正式な質量を出すことができません。実験で質量保存の法則を証明する場合、密閉空間であることが大切な条件ということですね。

さらに、質量保存の法則が成り立つ理由である「反応に関わる原子の種類と数が変わらないから」ということを証明してみましょう。

NaHCO+ HCl → NaCl + H2O + CO2

先ほど紹介した中でも少し難しい化学式をバラバラに分解してみると

反応前:Na H C O O O H Cl 反応後:Na Cl H H O C O O

確かに反応前後で物質は変わっても原子の種類と数が同じなのがわかりますよね。

\次のページで「5.質量保存の法則を使った問題の解き方」を解説!/

5.質量保存の法則を使った問題の解き方

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テストで難しいとされるのがグラフを使った応用問題ですよね。

出題パターンは決まっているので、繰り返し解くことでコツが掴めてくるでしょう。今回は金属の酸化による例題を学んでまとめとします。

5-1.基本のグラフを読み解く

5-1.基本のグラフを読み解く

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銅の質量と加熱後の物質(酸化物)の質量の関係をグラフに表すと上図のようになります。

まずは「この実験に関する基礎知識」と「比例のグラフからわかること」をまとめてみましょう。

・2Cu + O2 → 2CuO

・1.2gの銅が反応し、酸化銅が1.5gできた

・反応前後の質量は変わらない(質量保存の法則!)

1.2gの銅と0.3gの酸素が反応して1.5gの酸化物、つまりは酸化銅 ができたということがわかりますね。

さらにここからわかるのは銅:酸素:酸化銅=4:1:5で反応が進むということです。

5-2.グラフを元に計算問題にチャレンジ

さあ、では実際に問題を解いてみましょう。次のような問題を解く手掛かりとなります。

\次のページで「「質量保存の法則」は化学式が証明している」を解説!/

(1)銅と酸化物の質量はどのような関係にあるか
(2)この酸化物の名称を答えよ
(3)この反応を化学式で表せ
(4)酸化物が25.5gできたとき、何gの酸素が銅と反応したか
(5)銅10gと酸素3gが反応したとき、どちらが何g残り、何gの酸化物ができるか

(5)は少し応用の内容になります。まずはできるところまで考えを進めてみましょう。

(1)銅と酸化物の質量はどのような関係にあるか
答え.比例

(2)この酸化物の名称を答えよ
答え.酸化銅

(3)この反応を化学式で表せ
答え.2Cu + O2 → 2CuO

(4)酸化物が25.5gできたとき、何gの酸素が銅と反応したか
答え.5.1g

解説.酸素:酸化銅の関係を用いて、1:5=X:25.5を解く。

(5)銅10gと酸素3gが反応したとき、どちらが何g残り、何gの酸化物ができるか
答え.酸素が0.5g余り、酸化銅が12.5gできる。

解説.(4)同様に考えた場合、銅10gと反応するのは酸素2.5gとわかる。したがって余る酸素は0.5g、酸化銅は12.5gとなる。質量保存の法則が成り立つので、反応前の銅と酸素の質量は合計13gであり、反応後の余った酸素と酸化銅の質量を合わせても13gとなることで確認がとれる。

(5)は少し難しかったでしょうか。しかしこの解き方をベースに使えば、どんな問題にも対応できるようになるはずですよ。

「質量保存の法則」は化学式が証明している

化学反応前で物質の質量は変わりません。それは原子の結びつきが変わっても、原子の種類と数に変化が起こらないからです。言葉だけ見ると難しく聞こえますが、本質を見ればその意味がわかりますよね。

正しい化学式を書く上でも必要な考え方になりますので、1つずつ苦手をクリアしていきましょう。

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化学

化学反応に伴う質量変化!「質量保存の法則」の3パターンを元塾講師がわかりやすく解説

今回は化学反応に伴う質量の変化を考える「質量保存の法則」について勉強しよう。

化学実験には反応前と反応後というものがあるのは理解できるよな。今回勉強するこの法則は、化学反応の前後で物体の質量は変化しないというものなんです。なんだか難しそうに聞こえるが、実際はそんなに難しい話しじゃないから安心しろよ。

この法則を考える上では、化学反応のパターンを考えることが大事なんです。それを化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.「質量保存の法則」とは

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質量保存の法則はフランスの科学者であるラボアジエが1774年に発見した化学の法則です。

正確な定量実験を行い、化学実験の前後では質量の変化が起こらないことを証明しました。

この事実を読み解くときに考えたいのが、物質を構成する最小の粒である原子の存在です。化学反応によって物質が変化しても、反応に関わる原子の種類と数が変わらないからというのが質量保存の法則が成り立つ理由だと思えておきましょう。

2.身近な例で考えよう

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食事直前のあなたの体重が50kgだったとします。では500gの大盛り牛丼を食べた直後、あなたの体重はどうなっているでしょう。

普通に考えれば50.5kgになっていると思いませんか?

もしそれが変わらない50kgだったら、逆に51kgに増えていたら驚きますよね。これが質量保存の基本の考え方です。

3.見かけの質量変化は3パターン

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例として挙げたのは、足し算がぴったり成り立つ場合ですよね。しかし、化学実験はいつでもそうぴったり成り立つときばかりではありません。

それには見かけの質量変化というのがキーワードになります。その3パターンについて考えてみましょう。

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