今回は相対性理論について解説していきます。相対性理論は現代の物理学で基本となる理論の一つです。今、広く知れ渡っている宇宙の姿は、この理論なしには生まれなかったと言える。

そんな相対性理論を理系ライターのひいらぎさんと一緒に解説していきます。

ライター/ひいらぎさん

10 年以上にわたり素粒子の世界に携わり続けている理系ライター。中でもニュートリノに強い興味を持っており、その不思議な性質を日夜追いかけている。今回は現代物理学の基本的な理論である相対性理論についてまとめた。

相対性理論とは?

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よく「相対性理論」や「相対論」といった言葉を耳にしますが、これは特殊相対性理論・一般相対性理論の二つの理論をひとまとめにして表現したものです。

どちらの理論も物理学者のアルベルト・アインシュタインによって提唱されました。アインシュタインはこれ以外にも多くの理論を作り、物理学の広い分野に多大な貢献をした人物ですが、特に今回解説する相対性理論が有名ですね。

では、この相対性理論はどのような内容なのか、特殊と一般という名前がついているのはどうしてなのか、など詳しく見ていきましょう。

今までの時間と空間の概念を変えた、特殊相対性理論

特殊相対性理論が登場するまでは、イギリスの物理学者アイザック・ニュートンの作り出したニュートン力学によって様々な現象を説明できると考えられていました。ニュートンは、リンゴが木から落ちる様子を見て、万有引力の法則や運動方程式、慣性の法則、作用・反作用の法則といった運動の三法則の着想を得たと言われています。

ところが、アインシュタインの活躍した時代に入ると、このニュートン力学だけでは上手く説明できないものが出てきました。そこでアインシュタインは次に挙げる二つの基本原理を使って特殊相対性理論を提唱し、ニュートン力学をより大きな枠組みで作り変えたのです。

光速度不変の原理: 真空中の光の速度は互いに一定の速度で運動する観測者(慣性系と呼びます)に対して不変であること。
相対性原理: どの慣性系でも物理の基本法則の形は変わらないこと。

なお特殊相対性理論では、より単純な慣性系から理論を始めるため、重力の効果は含まれていません。

物体や時間が縮む!?特殊相対性理論で描かれる時空間

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ニュートン力学では、空間と時間は絶対的なもので、どのような状況であっても時間の進み方や空間の大きさが変化することはないと考えられていました。ですが、光の速度が常に一定であること、どの空間・時間であっても基本法則の形が変化しないことを同時に要請する特殊相対性理論では、その概念が崩れるのです。

光に近い速度で運動しているロケットを止まって観測する人がいるとしましょう。すると観測する人に映るロケットは、進んでいる方向に対して縮んでいるように見えます。これはローレンツ収縮と呼ばれる現象です。

またロケットの中に時計が置いてあるとすると、観測する人からは自分のしている時計よりもゆっくりと針が動いているように見えます。これも特殊相対性理論から導かれる現象で、これまで絶対的だと思われていた時間も、観測する立場が異なると変化する相対的なものとなりました。

質量とエネルギーは等価なもの

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時間と空間の変換にともない、運動方程式の形も変化させないといけません。これは特殊相対性理論の基本原理から、どこの慣性系でも物理法則の形が変わらないようにするためです。すると、ここから物体の質量がエネルギーと等価である、という事実が導き出されます。これが有名な質量とエネルギーの関係を表す数式  E = mc^2 です。

日常に潜む特殊相対性理論

ローレンツ収縮や時間の遅れる現象は、当然、私たちの日常では見かけません。例えば新幹線に乗っていたとしても、光の速度は秒速約30万キロメートルであるのに対して、新幹線の速度は時速約360キロメートル、すなわち秒速0.1キロメートルとなり、はるかに遅くなってしまいます。すると特殊相対性理論はニュートン力学と同じものになってしまうのです。

特殊相対性理論の効果は素粒子の世界で顕著に現れます。身近な例では、空から降り注いでいる多種多様な宇宙線。この宇宙線の中には非常に短い時間で崩壊し、別の粒子になるものがあります。ですが、一部は短寿命にも関わらず崩壊することなく地表まで届くのです。これは宇宙線が光速に近いスピードで運動しており、時間の進み方が遅くなるためと考えられます。

質量とエネルギーの関係式から得られるエネルギーは、今日、原子力として広く知られており、発電などの形で活かされていますね。

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重力の正体を解き明かした、一般相対性理論

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一般相対性理論は、特殊相対性理論から10年後に、同じくアインシュタインによって発表されました。

なぜ「一般」という名称が付いているのかというと、特殊相対性理論では重力のない一定の速度で動く慣性系についてのみ考えていたのに対して、一般相対性理論ではこの慣性系を、加速度運動や重力を含んだより一般的な状況について拡張したためです。これにより、一般相対性理論は重力の姿を明らかにしていきます。

重力の正体

ニュートン力学での重力は、質量を持った二つの物体の間で働く、目に見えない力と表現されています。

ところが、一般相対性理論によると、重力は質量を持った物体が周りの時空間を歪めることで生じるものなのです。

ここに一枚の風呂敷があると想像してみましょう。この風呂敷は時空間を表しており、その上にビー玉を一つ乗せると、ビー玉を中心に風呂敷にくぼみが出来ます。そこに一回り小さい別のビー玉を置くと、何が起きるでしょうか。当然、周囲の歪みに吸い込まれるようにして大きなビー玉の方へ転がっていきます。これはまさしくニュートン力学でいうところの万有引力の法則であり、くぼみの周りに出来た歪みが重力の姿だとわかるのです。

実際にこの時空間の歪みは、遠くにある星の光が曲がって地球に届くという重力レンズ効果という形で観測され、実証されています。

一般相対性理論から生み出された宇宙の姿

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重力が時空間の歪みだと分かると、一般相対性理論はニュートン力学では想像もしていなかった宇宙の姿を次々に描き出していきました。中でも次に挙げる三つの現象は一般相対性理論なしには語れないものです。

膨張宇宙
ブラックホール
重力波

膨張する宇宙

ニュートン力学での宇宙は、絶対的な時空間として存在していました。しかし、一般相対性理論が登場すると、宇宙は膨張しながら今もなお広がり続けるもの、と考えられるようになります。

1929年、アメリカの天文学者であるエドウィン・ハッブルは、自身の観測していた銀河が地球から遠ざかる方向に運動していることを発見しました。さらに地球から遠い銀河ほどその速度が速いことも見つけ、宇宙が実際に膨張していることを実証したのです。

また膨張して広がり続けていることから、宇宙は一つの点から始まったというビッグバン理論も誕生しました。

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光さえも吸い込んでしまうブラックホール

ブラックホールは非常に大きな質量を持った高密度な天体です。再び一枚の風呂敷に登場してもらい、ビー玉ではなく鉄球を置いてみましょう。するとビー玉の時に比べて、くぼみは深くなると思います。さらにこの鉄球の重さを二倍、三倍……と増やしていくと、風呂敷のくぼみがさらに深くなっていく様子をイメージ出来るでしょう。

これがブラックホールの姿で、あまりにもくぼみが深いために、光でさえも吸い込まれると出てこられなくなるのです。

ブラックホールは光も吸い込んでしまうため、直接肉眼で見ることはできません。ですが1970年代になって、光ではなくX線や電波といったもので天体を観測する技術が向上すると、ブラックホールの候補と呼ばれる天体が次々と発見されました。

そして2019年には地球上にある8つの電波望遠鏡で同時に一つのブラックホールを観測して、肉眼では見えないはずの姿を捉えることに成功したのです。これはイベント・ホライズン・テレスコープという世界規模のプロジェクトで、多くの天文学者たちの夢が実現した瞬間でした。

時空のさざ波、重力波

時空間は風呂敷の例でも分かるように、伸び縮みします。では、ブラックホールのような大きな質量を持った天体同士が衝突すると、時空間はどうなるのでしょうか。一般相対性理論によると、衝突によって生まれるエネルギーが時空間を激しく伸び縮みさせ、重力波と呼ばれる時空間のさざ波を発生させると予言しています。

この重力波は非常に小さく、一般相対性理論が登場してから約100年もの間、観測出来ていませんでした。しかし2016年、アメリカで行われている LIGO(ライゴ)という実験グループがついにこの重力波を捉えることに成功しました。検出した重力波は二つのブラックホールが衝突したことで生じたものだと言われています。

物理学の新しい扉を開いた相対性理論

特殊相対性理論は時空間の概念を変え、質量とエネルギーを結びつけました。今日でもロケットの軌道を予測する際や素粒子を扱う際など、様々な分野で活用されています。一般相対性理論からはビッグバン理論やブラックホールといったニュートン力学では想像もしなかった新しい現象が生まれました。そして現在も二つの相対性理論を起点として、宇宙の真の姿を探る研究が行われています。

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物理理科統計力学・相対性理論

簡単でわかりやすい!「相対性理論」とは?特殊相対性理論・一般相対性理論を元理系大学教員が詳しく解説!

重力の正体を解き明かした、一般相対性理論

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一般相対性理論は、特殊相対性理論から10年後に、同じくアインシュタインによって発表されました。

なぜ「一般」という名称が付いているのかというと、特殊相対性理論では重力のない一定の速度で動く慣性系についてのみ考えていたのに対して、一般相対性理論ではこの慣性系を、加速度運動や重力を含んだより一般的な状況について拡張したためです。これにより、一般相対性理論は重力の姿を明らかにしていきます。

重力の正体

ニュートン力学での重力は、質量を持った二つの物体の間で働く、目に見えない力と表現されています。

ところが、一般相対性理論によると、重力は質量を持った物体が周りの時空間を歪めることで生じるものなのです。

ここに一枚の風呂敷があると想像してみましょう。この風呂敷は時空間を表しており、その上にビー玉を一つ乗せると、ビー玉を中心に風呂敷にくぼみが出来ます。そこに一回り小さい別のビー玉を置くと、何が起きるでしょうか。当然、周囲の歪みに吸い込まれるようにして大きなビー玉の方へ転がっていきます。これはまさしくニュートン力学でいうところの万有引力の法則であり、くぼみの周りに出来た歪みが重力の姿だとわかるのです。

実際にこの時空間の歪みは、遠くにある星の光が曲がって地球に届くという重力レンズ効果という形で観測され、実証されています。

一般相対性理論から生み出された宇宙の姿

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重力が時空間の歪みだと分かると、一般相対性理論はニュートン力学では想像もしていなかった宇宙の姿を次々に描き出していきました。中でも次に挙げる三つの現象は一般相対性理論なしには語れないものです。

膨張宇宙
ブラックホール
重力波

膨張する宇宙

ニュートン力学での宇宙は、絶対的な時空間として存在していました。しかし、一般相対性理論が登場すると、宇宙は膨張しながら今もなお広がり続けるもの、と考えられるようになります。

1929年、アメリカの天文学者であるエドウィン・ハッブルは、自身の観測していた銀河が地球から遠ざかる方向に運動していることを発見しました。さらに地球から遠い銀河ほどその速度が速いことも見つけ、宇宙が実際に膨張していることを実証したのです。

また膨張して広がり続けていることから、宇宙は一つの点から始まったというビッグバン理論も誕生しました。

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