
それじゃ、日本史に詳しいライターひこすけと一緒に「清少納言」が伝える平安貴族男子のエピソードを解説していきます。
- 「枕草子」の登場人物は時期と共に変化する
- 前半の主人公たちは華やかで教養あふれる上流貴族たち
- 後半になると中下流貴族のささやかな日常にフォーカスをあてる
- 無骨だけど人はいい!橘則光
- 清少納言と結婚するものの離婚
- 離婚後も清少納言と良好な関係を継続
- 藤原伊周は父親ゆずりの美男子
- 清少納言は藤原伊周の漢詩を詠む姿にうっとり?
- 左遷されるときの伊周について清少納言は触れず
- やんちゃで快活な平安貴族が藤原隆家
- 清少納言とかわしたクラゲの話
- 法王邸の荒法師たちといがみあい
- 出世欲が強い野心家!藤原斉信
- 清少納言と斉信は手紙を交換して仲直り
- 中宮定子の喪中の時期に最多登場
- 長徳の変は清少納言のターニングポイント!そのとき支えたのが源経房
- 源経房は中宮定子サロンの状況を報告する気遣いの人
- 没落の悲劇に見舞われたこともある源経房
- 藤原行成は有能な官僚貴族のひとり
- 藤原行成とのやり取りから有名な歌が生まれた
- ニーズをうまく見極め後一条天皇に気に入られる
- 「枕草子」でもっとも笑われた男が源方弘
- 貴族社会で言葉遣いは笑いのネタになっていた
- 努力を通じて立身出世を成し遂げた男
- 清少納言は平安貴族男子のリアルな実態を描き出した
この記事の目次

ライター/ひこすけ
文化系の授業を担当していた元大学教員。「枕草子」が好きなことから平安時代にも興味を持ち、いろいろ調べるように。作者の清少納言は、平安時代の男性貴族の話題を生き生きと描写。そこで、平安時代の歴史的背景とあわせて清少納言が記した平安貴族男子エピソードの記事をまとめた。
前半の主人公たちは華やかで教養あふれる上流貴族たち
中宮定子が貴族社会の中心にいたとき、周囲にいる男性は上流貴族。登場する男性貴族の多くは、漢学や和歌の教養に優れていました。和歌の返し方や立ち振る舞いを、清少納言が賞賛する場面がたびたび見られます。
清少納言は、優れた貴族との交流を書き記すことで、中宮定子のステータスを高めることに貢献。社会的な評価が高い男性貴族との交流を発信することで、中宮定子の宮中における位置がよりよい印象となりました。
後半になると中下流貴族のささやかな日常にフォーカスをあてる
しかし、中宮定子が後ろ盾を失って宮中の中心から離れると、賞賛される登場人物は一気に激減します。漢学・和歌の教養がない中流・下流の貴族にシフト。教養のなさをおもしろおかしく記述するようになります。
そのため「枕草子」の後半は、平安貴族のユニークなやりとりや、教養はないがどこか憎めない男性がたびたび登場。みんなで笑いあう場面を入れることで、失脚後の中宮定子の姿を明るいものにしようとしました。
清少納言と結婚するものの離婚
清少納言の夫として有名な則光ですが、残念ながら離婚するに至ります。則光の人物像を伝えるのが「今昔物語集」。それによると、3人の盗賊に襲われときに逆に取り押さえた、いわゆる体育会系の男性でした。
和歌を詠むなど教養を愛する清少納言。しかし橘則光は、和歌に対して上手く返答するなどの気転はなし。趣向の違いから徐々に溝が深まり、離婚することになったと言われています。
離婚後も清少納言と良好な関係を継続
とはいえ、清少納言と橘則光は離婚後も良好な関係を維持しました。宮中のなかで顔を合わせる機会が多かった2人。兄(せうと)、妹(いもうと)と互いを呼びあう仲で、宮中でも公認だったようです。
しかしながら、則光の上司にあたる藤原斉信が清少納言を藤原道長の派閥に入れようとしたことで、2人の関係は微妙に。仲たがいをしたわけではないのですが自然消滅となってしまいました。
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