今回は天王星と海王星について解説していきます。

天王星と海王星は太陽系7番目と8番目の惑星であり最後の惑星です。昔はこの外側に冥王星があったが、現在では準惑星に分類されている。ここまで遠い天体になると肉眼ではほぼ見えず、観測も大変で比較的近くで観測できたのはボイジャー2号のただ1回しかない。そのため謎も多いが、現時点でわかっていることを見てみよう。

今回は物理学科出身のライター・トオルさんと解説していきます。

ライター/トオル

物理学科出身のライター。広く科学一般に興味を持つ。初学者でも理解できる記事を目指している。

天王星について

image by iStockphoto

天王星は太陽系第7の惑星で巨大氷惑星です。1781年に天文学者のウィリアム・ハーシェルによって発見されました。基本的に肉眼では見えませんが、地球最接近時には肉眼でも観察できることがあるそうです。画像ではのっぺりとした青色をしているのですが、これは赤色が大気中のメタンによって吸収されるためと考えられています。木星、土星、天王星、海王星の中では一番大気の状態が安定しているようです。とはいえ、近年の研究ではやはり天王星でもそれなりの大気の活動があると考えられています。さっそくこの天王星について見てみましょう。

天王星の基本データ

Uranus2.jpg
NASA/JPL-Caltech - https://web.archive.org/web/20090119235457/http://planetquest.jpl.nasa.gov/milestones_show/slide1.html (image link) http://photojournal.jpl.nasa.gov/catalog/PIA18182 (image link), パブリック・ドメイン, リンクによる

天王星は巨大氷惑星に分類され、直径が約5万1000キロメートルと地球の約4倍になります。木星、土星についで太陽系第3位の大きさの惑星です。太陽からの距離が約29億キロメートルで、地球の約19倍も遠いところを周期84年をかけて公転しています。天王星の大きな特徴は、その自転軸が約98度も傾いていて、ほぼ横倒しの状態で自転していることです。そのため公転軌道の位置によって太陽の当たり方が極端に変化します。南極や北極では昼夜の長さはなんと42年です。自転周期は17時間になります。なぜ横倒しで自転しているのかまだわかっていません。薄い環を持ち、27個の衛星が発見されています。

天王星の構造につてい

Uranus-intern-en.png
Uranus-intern-de.png: FrancescoA derivative work: WolfmanSF (talk) - Uranus-intern-de.png, パブリック・ドメイン, リンクによる

天王星は巨大氷惑星に分類され、岩石と氷からなる核に、水、メタン、アンモニアからなるマントルが取り巻いていて、その外側を主に水素とヘリウムからなるガスが取り巻いている構造だと考えられています。水素やヘリウムのほかに酸素、炭素、窒素を多く含むことが木星や土星とは異なる点です。昔は天王星と海王星も木星型の巨大ガス惑星に分類されていたのですが、巨大ガス惑星の核から液体金属の層を取り除いたような構造であると考えられるため、現在は天王星型惑星、もしくは巨大氷惑星として独自に分類されています。

天王星の大気について

Uranus Dark spot.jpg
オリジナルのアップロード者は英語版ウィキペディアRuslik0さん - en.wikipedia からコモンズに ShizhaoCommonsHelper を用いて移動されました。, パブリック・ドメイン, リンクによる

天王星の大気は木星や土星と同様ほとんどが水素とヘリウムで構成されていますが、常に超嵐のような木星などと違い比較的穏やかであると考えられています。天王星の大気は太陽系の中で一番冷たく-200度以下になるようです。天王星はメタンの雲で覆われていてのっぺりとしており、木星のような帯状の構造はなさそうに見えますが、もっと近くで観測できるなら帯状の構造があると考えられています。事実、近年では白い雲のようなものが観測されているようです。上記の画像は2006年のハッブル宇宙望遠鏡による画像で、帯状の白い雲や周囲より暗い領域である暗斑が見えます。

\次のページで「海王星について」を解説!/

海王星について

image by iStockphoto

海王星は太陽系第8惑星で最後の惑星です。1846年に天王星の運行の様子から、理論的計算によって発見されました。天王星と同じく巨大氷惑星に分類されています。天王星より太陽からはるかに遠いにもかかわらず、どうやら大気の活動は天王星より活発なようです。公転軌道が非常に長いため、1846年の発見から2011年になってようやく太陽のまわりを1周したばかりになります。この太陽系最後の惑星である天王星について見てみましょう。

海王星の基本データ

ボイジャー2号が撮影した海王星の画像。中央に大暗斑とそれに付随した明るい模様が見え、西側の周縁には「スクーター」と呼ばれる、移動速度が速い明るい模様と小さな暗点が見られる。
Justin Cowart - https://www.flickr.com/photos/132160802@N06/29347980845/, CC 表示 2.0, リンクによる

太陽系最後の惑星である海王星は、太陽からの距離が約45億キロメートルのところを約165年もかけて回っています。この距離は太陽と地球の距離のおよそ30倍です。直径は約5万キロメートルで、太陽系の惑星の中で4番目の大きさになります。あまりに遠すぎるため自転周期すらよくわかっていなかったのですが、最近ではおよそ16時間と推定されているようです。質量は約1.0×10の26乗キログラムで、地球の17倍、木星の19分の1の大きさになります。非常にかすかな環を持っていて、現時点で確認されている衛星は14個です。

海王星の構造について

Neptune diagram.svg
NASA; Pbroks13 (redraw) - http://solarsystem.nasa.gov/multimedia/gallery/Neptune_Int-browse.jpg, which is in the public domain, CC 表示-継承 3.0, リンクによる

海王星は天王星と同じく巨大氷惑星に分類され、天王星と似たような内部構造を持つと考えられています。中心には岩石からなる核、その周りを水、アンモニア、メタンを含むマントル、その周りをほとんど水素やヘリウムからなるガスが覆っているという構造です。上記の画像の一番外側は雲ができる上層大気になります。太陽から海王星の距離は、太陽から天王星までの距離の50パーセント以上離れていて、日射量が天王星の半分しかないにもかかわらず、表面の温度がほぼ同じです。そのため内部になんらかの熱を発生させるシステムが存在しているはずですが、いまのところそのシステムについてはまったくわかっていません。

海王星の大気について

Neptune's Great Dark Spot.jpg
NASA / Jet Propulsion Lab - http://photojournal.jpl.nasa.gov/catalog/PIA00052, パブリック・ドメイン, リンクによる

海王星の大気は天王星と同じくメタンの雲に覆われてると考えられていますが、はっきりとした雲でわかるように天王星よりも活発なようです。海王星の大気の風速は秒速600キロメートル、時速2200キロメートルになります。1989年のボイジャー2号の観測時に縦6600キロメートル、横幅1万3000キロメートルにもなる大暗斑が発見されました。木星の大赤斑に似ていますが、5年後には消えてしまったようです。大暗斑の下に見える白い雲の塊も嵐のようでスクーターと呼ばれています。上記の画像はボイジャー2号が撮影した大暗斑の拡大画像です。

トリトンについて

ボイジャー2号が撮影したトリトンの海王星に面する半球の集成写真[注 1]
NASA / Jet Propulsion Lab / U.S. Geological Survey - http://photojournal.jpl.nasa.gov/catalog/PIA00317, パブリック・ドメイン, リンクによる

海王星の奇妙な衛星であるトリトンについて簡単に触れておきます。トリトンは直径約2700キロメートルで海王星最大の衛星です。トリトンは海王星の自転方向と逆に公転しています。海王星から35万キロメートルと比較的近く、しかも巨大なトリトンが逆方向に回転しているのはまったく奇妙なことで、太陽系の中でこのような衛星はトリトンだけです。おまけに赤道面から23度も傾いています。さらに、太陽からこれほど離れているにかかわらず、地質学的および気象学的活動が確認されているという点でも極めて特殊な衛星です。

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遠い天王星と海王星

遠い天王星と海王星

image by Study-Z編集部

天王星と海王星は巨大氷惑星であり、巨大ガス惑星と岩石型惑星の中間のような存在と言えます。その衛星を含め興味深い天体なのですが、遠すぎるため観測しにくいのが難点です。それぞれに専用の探査機などを送り込めれば多数の発見があるはずですが、遠いためにどうしても優先順位が低くなります。資金的にも直接の探査は難しいかもれないので、研究者にはなんとか地球からの探査をがんばってもらうしかありません。

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地学宇宙理科

「天王星」と「海王星」について理系ライターが丁寧にわかりやすく解説

今回は天王星と海王星について解説していきます。

天王星と海王星は太陽系7番目と8番目の惑星であり最後の惑星です。昔はこの外側に冥王星があったが、現在では準惑星に分類されている。ここまで遠い天体になると肉眼ではほぼ見えず、観測も大変で比較的近くで観測できたのはボイジャー2号のただ1回しかない。そのため謎も多いが、現時点でわかっていることを見てみよう。

今回は物理学科出身のライター・トオルさんと解説していきます。

ライター/トオル

物理学科出身のライター。広く科学一般に興味を持つ。初学者でも理解できる記事を目指している。

天王星について

image by iStockphoto

天王星は太陽系第7の惑星で巨大氷惑星です。1781年に天文学者のウィリアム・ハーシェルによって発見されました。基本的に肉眼では見えませんが、地球最接近時には肉眼でも観察できることがあるそうです。画像ではのっぺりとした青色をしているのですが、これは赤色が大気中のメタンによって吸収されるためと考えられています。木星、土星、天王星、海王星の中では一番大気の状態が安定しているようです。とはいえ、近年の研究ではやはり天王星でもそれなりの大気の活動があると考えられています。さっそくこの天王星について見てみましょう。

天王星の基本データ

天王星は巨大氷惑星に分類され、直径が約5万1000キロメートルと地球の約4倍になります。木星、土星についで太陽系第3位の大きさの惑星です。太陽からの距離が約29億キロメートルで、地球の約19倍も遠いところを周期84年をかけて公転しています。天王星の大きな特徴は、その自転軸が約98度も傾いていて、ほぼ横倒しの状態で自転していることです。そのため公転軌道の位置によって太陽の当たり方が極端に変化します。南極や北極では昼夜の長さはなんと42年です。自転周期は17時間になります。なぜ横倒しで自転しているのかまだわかっていません。薄い環を持ち、27個の衛星が発見されています。

天王星の構造につてい

Uranus-intern-en.png
Uranus-intern-de.png: FrancescoA derivative work: WolfmanSF (talk) – Uranus-intern-de.png, パブリック・ドメイン, リンクによる

天王星は巨大氷惑星に分類され、岩石と氷からなる核に、水、メタン、アンモニアからなるマントルが取り巻いていて、その外側を主に水素とヘリウムからなるガスが取り巻いている構造だと考えられています。水素やヘリウムのほかに酸素、炭素、窒素を多く含むことが木星や土星とは異なる点です。昔は天王星と海王星も木星型の巨大ガス惑星に分類されていたのですが、巨大ガス惑星の核から液体金属の層を取り除いたような構造であると考えられるため、現在は天王星型惑星、もしくは巨大氷惑星として独自に分類されています。

天王星の大気について

Uranus Dark spot.jpg
オリジナルのアップロード者は英語版ウィキペディアRuslik0さん – en.wikipedia からコモンズに ShizhaoCommonsHelper を用いて移動されました。, パブリック・ドメイン, リンクによる

天王星の大気は木星や土星と同様ほとんどが水素とヘリウムで構成されていますが、常に超嵐のような木星などと違い比較的穏やかであると考えられています。天王星の大気は太陽系の中で一番冷たく-200度以下になるようです。天王星はメタンの雲で覆われていてのっぺりとしており、木星のような帯状の構造はなさそうに見えますが、もっと近くで観測できるなら帯状の構造があると考えられています。事実、近年では白い雲のようなものが観測されているようです。上記の画像は2006年のハッブル宇宙望遠鏡による画像で、帯状の白い雲や周囲より暗い領域である暗斑が見えます。

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