今回のテーマは、「ボイルの法則」。気体の体積と圧力に関する法則です。

気体の圧力?、体積?サッカーボールやバスケットボールなど、ボールの中には空気が入っているな。気体の体積はボール内の空気の体積、圧力はボールの張り具合(硬さ)をイメージしよう。

気体の体積と圧力に関する法則(ボイルの法則)をボール内の空気と絡めながら、理系ライターのR175と解説していきます。

ライター/R175

関西のとある理系国立大出身。エンジニアの経験があり、身近な現象と理科の教科書の内容をむずびつけるのが趣味。教科書の内容をかみ砕いて説明していく。

1.ボールに空気を入れると

image by iStockphoto

ボールに空気を補充するとどうなりますか。

膨らむ。
張りが強くなる(硬くなる)。

こんなところでしょうか。

さて、ボールに同じだけ空気を入れた時、ふんわり柔らかいボールは膨らみますが、サッカーボールのように硬いボールは膨らまずに硬くなりますね。

状態方程式があれば用なし?

状態方程式があれば用なし?

image by Study-Z編集部

この記事で紹介する「ボイルの法則」。実は、「気体の状態方程式」を理解していれば覚える必要はありません。「ボイルの法則」だけでなく、同じく気体に関連する「シャルルの法則」までもカバーできていしまいます。

「じゃあ、なんで解説するの?」

それは、気体の計算をする上で「臨場感」を増すためです。

気体の状態方程式でPV=nRTから、体積や圧力を計算するという求め方もあり、これさえ覚えておけばテストで気体の計算問題を解くのにことが足りてしまいます。

P:圧力、V:体積、n:気体の物質量、T:絶対温度で、R:モル気体定数。

しかし、それだとあまり実感がわきません。単なる式変形のような感覚になってしまい、漫然と解くことにつながり、応用問題に対応しにくい。そんなデメリットも考えられます。

この記事ではボイルの法則をボールへの空気入れに例え、実感しやすく工夫していますから、是非おもしろおかしく「ボイルの法則」をマスターしてください。

image by Study-Z編集部

ふんわりボール
ふんわり柔らかいボールの場合、空気を入れてもあまり硬くならず、膨らんでいきます。硬さ(空気の圧力)は変わらず、その代わり体積が増加しますね

カチカチボール
カチカチボールはそもそも表面が硬いので膨らみますね(体積は一定)。代わに、ボールの張り(空気の圧力)が高くなります

2.ボイルの法則とは

柔らかいボールは、体積大きく、圧力小さい。逆に硬いボール体積小さく、圧力が大きくなりますね。

つまり、圧力と体積はどちらかが大きいともう一方は小さく、トレードオフの関係にあります。

これを式に表したのがボイルの法則。温度が一定だと、圧力と体積の掛け算PV=一定の値になるというもの。

PV=C(Cは定数)なので、例えば圧力Pが2倍になると体積Vは半分に、体積が2倍になると圧力が半分になります。

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PV=(Cは定数)から、PとVの関係をグラフにプロットした曲線をみてみましょう。PとVは反比例の関係。

圧力が低く、体積が大きい状態は柔らかいボール、圧力が高く体積が小さいのは硬いボールの状態を想像してください。

\次のページで「3.PVの正体からボイルの法則を考察」を解説!/

3.PVの正体からボイルの法則を考察

圧力Pと体積Vの掛け算PVの意味

PV=一定のPV

実はこのPVは気体の持つエネルギー。これを理解していると、単にPV=一定と暗記するより、知識が定着しやすいでしょう。

絶対温度が同じ気体は?

絶対温度が同じ気体は?

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気体の粒子は絶対零度(セ氏-273℃)でなければ何らかの運動をしています(熱運動)。

そもそも、絶対温度は、実はこの熱運動を元に定義されているもの。

熱運動が0なら、絶対温度が0K(ケルビン)。熱運動が2倍にの時、絶対温度も2倍。そのような定義。

つまり、温度が同じ気体は同じだけ熱運動をしている=おなじだけ熱エネルギーを持っています。

セ氏温度と絶対温度の基準

セ氏0℃=273.13K。なんでこんな中途半端?0℃と0Kの基準が違うから。

氷から水になる温度を0℃、水が気体になる温度を100℃という基準をもとに決めたのがセルシウス温度、熱運動が0の時の温度を0K(ケルビン)としたのが絶対温度。基準が違うため、セ氏温度と絶対温度を比較したらとても中途半端な値に。

ただ、1ケルビンと1℃の幅は同じに設定されています。

PVの単位

さてここで、圧力P[Pa]と体積V[m^3]の掛け算PVの単位を見ていきましょう。

圧力の単位Pa→N/m^2から、PVの単位はNm=kg・m/s^2・m=kg・m^2/s^2

実はこれ、エネルギー[J]と同じ単位

例えば位置エネルギーは質量x重力加速度x高さ=m[kg]・g[m/s^2]・h[m]から、単位はkg・m^2/s^2

運動エネルギーは1/2x質量x速度の2乗=1/2・m[kg]・v^2[m^2/s^2]から単位はkg・m^2/s^2。同じですね。

よって、圧力Pと体積Vの掛け算PVの正体はエネルギーであることを確認できます。

正確には気体の持っている熱運動によるエネルギー。

同じ温度の気体は熱運動のエネルギーは一定なのでPVも一定という訳です。

\次のページで「4.ボイルの法則を使った練習問題」を解説!/

4.ボイルの法則を使った練習問題

問1

空気を補充しても、内圧が変化しない「ふわふわボール」に空気0.1Lを補充したところ、体積が1.1倍に膨張した。

同じ大きさで、空気を入れても全く体積が変化しない「カチカチボール」に空気0.1Lを補充すると、「カチカチボール」内の空気の圧力は何Paになりますか。

ただし、大気圧は1.013x10^5とし、「ふんわりボール」、「カチカチボール」とも27℃で空気を充てんしたものとし、元々入っていた空気の量はどちらのボールも同じとします。

問1 解答

まさしく、ボイルの法則PV=一定を使いましょう。

「ふんわりボール」も「カチカチボール」も温度は同じ27℃なので、PVの値は同じ。値を代入すると、

ふんわりボールのPV値=1.013^5[Pa]x1.1V(Vは空気補充前のボールの体積)

カチカチボールのPV値=P・V

よって、1.013x10^5x1.1V=PVからP=1.11x10^5[Pa]

空気を入れると膨張するか硬くなるか

ボイルの法則

圧力が高くなると、体積が小さく、体積が大きくなると圧力は小さくなる。圧力と体積は反比例するという法則。

ボールに空気を入れた時の状態と同じ。

圧力が変小さいと体積が増える(柔らかいボールのパターン)、体積が小さいとだと圧力が高くなる(硬いボールのパターン)。

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化学

「ボイルの法則」についてボールの空気入れに関連させて理系ライターがわかりやすく解説

今回のテーマは、「ボイルの法則」。気体の体積と圧力に関する法則です。

気体の圧力?、体積?サッカーボールやバスケットボールなど、ボールの中には空気が入っているな。気体の体積はボール内の空気の体積、圧力はボールの張り具合(硬さ)をイメージしよう。

気体の体積と圧力に関する法則(ボイルの法則)をボール内の空気と絡めながら、理系ライターのR175と解説していきます。

ライター/R175

関西のとある理系国立大出身。エンジニアの経験があり、身近な現象と理科の教科書の内容をむずびつけるのが趣味。教科書の内容をかみ砕いて説明していく。

1.ボールに空気を入れると

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ボールに空気を補充するとどうなりますか。

膨らむ。
張りが強くなる(硬くなる)。

こんなところでしょうか。

さて、ボールに同じだけ空気を入れた時、ふんわり柔らかいボールは膨らみますが、サッカーボールのように硬いボールは膨らまずに硬くなりますね。

状態方程式があれば用なし?

状態方程式があれば用なし?

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この記事で紹介する「ボイルの法則」。実は、「気体の状態方程式」を理解していれば覚える必要はありません。「ボイルの法則」だけでなく、同じく気体に関連する「シャルルの法則」までもカバーできていしまいます。

「じゃあ、なんで解説するの?」

それは、気体の計算をする上で「臨場感」を増すためです。

気体の状態方程式でPV=nRTから、体積や圧力を計算するという求め方もあり、これさえ覚えておけばテストで気体の計算問題を解くのにことが足りてしまいます。

P:圧力、V:体積、n:気体の物質量、T:絶対温度で、R:モル気体定数。

しかし、それだとあまり実感がわきません。単なる式変形のような感覚になってしまい、漫然と解くことにつながり、応用問題に対応しにくい。そんなデメリットも考えられます。

この記事ではボイルの法則をボールへの空気入れに例え、実感しやすく工夫していますから、是非おもしろおかしく「ボイルの法則」をマスターしてください。

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ふんわりボール
ふんわり柔らかいボールの場合、空気を入れてもあまり硬くならず、膨らんでいきます。硬さ(空気の圧力)は変わらず、その代わり体積が増加しますね

カチカチボール
カチカチボールはそもそも表面が硬いので膨らみますね(体積は一定)。代わに、ボールの張り(空気の圧力)が高くなります

2.ボイルの法則とは

柔らかいボールは、体積大きく、圧力小さい。逆に硬いボール体積小さく、圧力が大きくなりますね。

つまり、圧力と体積はどちらかが大きいともう一方は小さく、トレードオフの関係にあります。

これを式に表したのがボイルの法則。温度が一定だと、圧力と体積の掛け算PV=一定の値になるというもの。

PV=C(Cは定数)なので、例えば圧力Pが2倍になると体積Vは半分に、体積が2倍になると圧力が半分になります。

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PV=(Cは定数)から、PとVの関係をグラフにプロットした曲線をみてみましょう。PとVは反比例の関係。

圧力が低く、体積が大きい状態は柔らかいボール、圧力が高く体積が小さいのは硬いボールの状態を想像してください。

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