今回は水星と金星について解説していきます。

水星と金星は太陽系の1番目と2番目の惑星です。どちらも地球と同じ岩石型惑星に分類されている。ただ表面の状況は2つの惑星とも大きく違う。それを覚えておこう。

今回は物理学科出身のライター・トオルさんと解説していきます。

ライター/トオル

物理学科出身のライター。広く科学一般に興味を持つ。初学者でも理解できる記事を目指している。

水星について

image by iStockphoto

水星は太陽系第1惑星であり、惑星ランキングの中で多くの1番を持っている天体です。大気がほとんど存在しないせいもあり、画像を見ると衛星のような見た目をしています。核が大きすぎたり、高温になるのに氷が存在していたりといった点が特徴です。現在、日欧の共同プロジェクトであるベピ・コロンボ探査機が水星に向かっている途上ですので、正常に観測が開始されればより多くのことがわかるでしょう。今回は現時点で水星についてわかっていることを紹介します。

水星の基本データ

メッセンジャーが2008年(平成20年)に撮影した水星
NASA/Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory/Carnegie Institution of Washington. Edited version of Image:Mercury in color - Prockter07.jpg by Papa Lima Whiskey. - NASA/JPL, パブリック・ドメイン, リンクによる

水星は地球と同じく岩石型惑星に分類されます。太陽系第1惑星であり、直径は約4900キロメートルと地球の0.38倍ほどしかありません。これは衛星であるガニメデやタイタンよりも小さく、太陽系の惑星の中では最小です。もちろん太陽からの距離も約5800キロメートルと地球の0.39倍程度で最小になります。太陽に1番近いので公転周期は約88日と最小、公転速度は約秒速47キロメートルと最大です。水星の自転周期は58.6と公転周期のちょうど3分の2になっており、昼の長さと夜の長さが88日、つまり太陽が昇ってから次の太陽が昇ってくまで約176日もかかります。大気はほとんど存在しません。

水星の構造について

Mercury inside Lmb.png
スペイン語版ウィキペディアLmbさん - es.wikipedia からコモンズに移動されました。, パブリック・ドメイン, リンクによる

水星の特徴の一つは密度が1立方センチメートルあたり5.44グラムとやけに大きいことです。これは倍以上に大きな地球とほとんど変らない密度になります。惑星は大きくなるほど重力による圧力で密度が高くなるはずですので、小さい水星が地球と変わらないというのはおかしなことです。そのため水星には半径の4分の3におよぶ核が存在すると考えられています。ちなみに地球の核は、内核と外核あわせて半径の半分程度です。核の周りをマントルが、マントルの周りを地殻がとりまいているのは地球の構造と同じですが、核が大きいためマントル部分が小さくなります。なぜ核がこのように大きいのかについては、水星の形成初期に巨大隕石が衝突したことが原因だという説がありますが、まだはっきりとはわかっていません。

水星の温度と氷について

Merc fig2sm.jpg
Quote from [5]: "NASA photo by..." - [3] from [4] on SCIENCE@NASA, パブリック・ドメイン, リンクによる

表面の平均温度は約179度ですが、先ほど述べたように昼と夜が長いため、最高温度は400度以上になり最低温度は-100度以下になります。太陽があたると非常に高温になる水星ですが、北極や南極の一部のクレーターには決して太陽の光があたらない永久影領域が存在しているようです。この部分に氷が存在する可能性がかねてより指摘されていましたが、探査機メッセンジャーの画像によってほぼ確実になりました。現在、日本とヨーロッパが共同で打ち上げたベピ・コロンボ探査機が水星に向かっていますので、無事観測が成功すれば水星の氷についてさらに詳しくわかるはずです。上記は地球から観測された極地クレーターの画像になります。

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金星について

image by iStockphoto

金星は古代より明けの明星、宵の明星として親しまれてきた天体です。太陽と月についで夜空で3番目に明るい天体であり、英語名ではビーナスと美の女神の名前を冠する天体でもあります。地球から見るとすばらしく美しい天体ですが、惑星としては気温が400度以上あり、硫酸の雲に覆われた人類にとっては地獄のような環境の惑星です。現在、金星は日本の探査機あかつきが観測をしています。あかつきは多数のトラブルにあいましたが、現在もなんとか金星の観測を続けているようです。では、極限環境である金星について見てみましょう。

金星の基本データ

探査機「ガリレオ」による撮影(1990年2月)
NASA/JPL - http://photojournal.jpl.nasa.gov/catalog/PIA00223, パブリック・ドメイン, リンクによる

金星も地球や水星と同じく岩石型の惑星です。直径は約1万2000キロメートルと地球とほぼ同じになります。質量は4.9×10の24乗キログラムと地球の82パーセント程度です。このように大きさ質量とも地球に近く、地球の双子とも言われています。太陽から約1億キロメートルのところを公転していて、これは地球と太陽の距離の約0.72倍のところです。地球と大きく違うのは自転で、なんと地球とは逆方向に自転しています。しかも、自転周期は243日と極めて低速です。逆方向に自転しているのは、惑星の中では金星だけになります。なぜ逆方向に自転しているのか、なぜ自転速度がこれほど遅いのかについて色々な説がだされてはいますが、はっきりしたことはわかっていません。内部構造については地球とほぼ同じではないかと考えられています。

金星の大気について

Venuspioneeruv.jpg
NASA - NSSDC Photo Gallery Venus direct link to the big TIFF Version:ftp://nssdcftp.gsfc.nasa.gov/photo_gallery/hi-res/planetary/venus/pvo_uv_790226.tiff, パブリック・ドメイン, リンクによる

自転以外で地球と大きく違うのが大気です。金星にはほぼ二酸化炭素で構成された非常に分厚い大気が存在し、地表付近での気圧は約90気圧と地球の深海900キロメートルでの圧力に相当します。この分厚い大気による巨大な温室効果のため、地表面での温度は約470度と高温です。上記は金星の紫外線画像で、全体が白っぽい靄で覆われていますが、これは硫酸の雲になります。金星では硫酸の雲が硫酸の雨を降らしているのですが、この雨は地表には決して届きません。なぜなら地表面の温度が高すぎるのと、濃い大気で落下速度が遅くなるため途中で蒸発してしまうからです。地表面の大気はほとんど動いていませんが、上空ではスーパーローテーションといわれる秒速100メートルにもなる、金星を4日で一周する高速の風が吹いています。この風の原因についてはまったくわかっていません。

金星の地形について

アルテミス谷とアルテミス・コロナ
NASA - http://photojournal.jpl.nasa.gov/catalog/PIA00101, パブリック・ドメイン, リンクによる

分厚い雲に覆われて地表が見えない金星ですが、マゼラン探査機によるレーザー探査によって詳しい地図が作られています。それによると火山活動によると思われる地形などが存在しているようです。高さ8000メートルにも達するマート山呼ばれる火山は、地球の楯状火山に似ていて溶岩流が流れたと思われる痕跡が回りに存在します。コロナと呼ばれる謎の地形も見つかっていて、それは直径が数百から数千キロメートルにも及ぶ外堀の環状地形です。これはマグマのような上昇してくる熱い液体塊が、地表面を押し上げてできたものだろうと考えられています。金星の火山活動が現在も続いているかについてはずっと議論されてきましたが、2010年に過去250万年以内に噴火があった証拠が発表されました。上記の画像はアルテミス谷とよばれるコロナの画像です。

地球型惑星である水星と金星

地球型惑星である水星と金星

image by Study-Z編集部

水星と金星は地球型惑星に分類され、岩石惑星と呼ばれます。しかし、同じ岩石惑星でも水星と金星、そして地球はまったく違う環境です。水星も金星も人類にとっては随分住みにくい環境でしょう。少なくとも大型の生命は存在しないようです。水星も金星も観測には日本が貢献しています。これから観測と研究が進むにつれ、日本のチームもきっと新しい発見をもたらしてくれるでしょう。

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地学宇宙理科

「水星」と「金星」について理系ライターが丁寧にわかりやすく解説

今回は水星と金星について解説していきます。

水星と金星は太陽系の1番目と2番目の惑星です。どちらも地球と同じ岩石型惑星に分類されている。ただ表面の状況は2つの惑星とも大きく違う。それを覚えておこう。

今回は物理学科出身のライター・トオルさんと解説していきます。

ライター/トオル

物理学科出身のライター。広く科学一般に興味を持つ。初学者でも理解できる記事を目指している。

水星について

image by iStockphoto

水星は太陽系第1惑星であり、惑星ランキングの中で多くの1番を持っている天体です。大気がほとんど存在しないせいもあり、画像を見ると衛星のような見た目をしています。核が大きすぎたり、高温になるのに氷が存在していたりといった点が特徴です。現在、日欧の共同プロジェクトであるベピ・コロンボ探査機が水星に向かっている途上ですので、正常に観測が開始されればより多くのことがわかるでしょう。今回は現時点で水星についてわかっていることを紹介します。

水星の基本データ

水星は地球と同じく岩石型惑星に分類されます。太陽系第1惑星であり、直径は約4900キロメートルと地球の0.38倍ほどしかありません。これは衛星であるガニメデやタイタンよりも小さく、太陽系の惑星の中では最小です。もちろん太陽からの距離も約5800キロメートルと地球の0.39倍程度で最小になります。太陽に1番近いので公転周期は約88日と最小、公転速度は約秒速47キロメートルと最大です。水星の自転周期は58.6と公転周期のちょうど3分の2になっており、昼の長さと夜の長さが88日、つまり太陽が昇ってから次の太陽が昇ってくまで約176日もかかります。大気はほとんど存在しません。

水星の構造について

Mercury inside Lmb.png
スペイン語版ウィキペディアLmbさん – es.wikipedia からコモンズに移動されました。, パブリック・ドメイン, リンクによる

水星の特徴の一つは密度が1立方センチメートルあたり5.44グラムとやけに大きいことです。これは倍以上に大きな地球とほとんど変らない密度になります。惑星は大きくなるほど重力による圧力で密度が高くなるはずですので、小さい水星が地球と変わらないというのはおかしなことです。そのため水星には半径の4分の3におよぶ核が存在すると考えられています。ちなみに地球の核は、内核と外核あわせて半径の半分程度です。核の周りをマントルが、マントルの周りを地殻がとりまいているのは地球の構造と同じですが、核が大きいためマントル部分が小さくなります。なぜ核がこのように大きいのかについては、水星の形成初期に巨大隕石が衝突したことが原因だという説がありますが、まだはっきりとはわかっていません。

水星の温度と氷について

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Quote from [5]: “NASA photo by…” – [3] from [4] on SCIENCE@NASA, パブリック・ドメイン, リンクによる

表面の平均温度は約179度ですが、先ほど述べたように昼と夜が長いため、最高温度は400度以上になり最低温度は-100度以下になります。太陽があたると非常に高温になる水星ですが、北極や南極の一部のクレーターには決して太陽の光があたらない永久影領域が存在しているようです。この部分に氷が存在する可能性がかねてより指摘されていましたが、探査機メッセンジャーの画像によってほぼ確実になりました。現在、日本とヨーロッパが共同で打ち上げたベピ・コロンボ探査機が水星に向かっていますので、無事観測が成功すれば水星の氷についてさらに詳しくわかるはずです。上記は地球から観測された極地クレーターの画像になります。

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