「コロイド」という言葉を知っているか?コロイド粒子とはとんでもなく小さな粒子の事で、意外と身近にあるんです。

コロイド粒子が均一に散らばった、分散した状態の溶液を「コロイド溶液」という。このコロイドは様々な現象を学ぶのにとても役立つ。今回はこのコロイド溶液について高校は化学部、大学は国立大学の工学部化学系の院出身というたかはしふみかが説明していきます。

ライター/たかはし ふみか

高校時代、セッケンの研究をしながらコロイド溶液やコロイドに関わる「チンダル現象」「ブラウン運動」「塩析」といった現象を学ぶ。懐中電灯で夜道を照らすたびにチンダル現象を思い出すリケジョ。

コロイドとはなんだ?

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まず、コロイド粒子について確認しましょう。コロイド粒子とは「直径が109107mの粒子」のことで、コロイド粒子が均一に散らばった溶液の事を「コロイド溶液」と呼びます。ちなみに109m1nmと表すことができ、コロイドは1nm~100nmの大きさの粒子となるのです。髪の毛の太さが約0.08㎜、80,000nmということからいかにコロイド粒子が小さいかわかりますね。

このコロイド粒子はとても小さくろ紙を通り抜けてしまうため、ろ過で取り除くことはできません。しかしコロイド粒子はセロハンなどの半透膜を通るのには大きすぎるのです。一方、コロイド粒子よりさらに小さいイオンや分子だとろ紙はもちろん半透膜でも通過してしまいます。そのためコロイド粒子より大きい物はろ過で取り除き、コロイド溶液に含まれる分子やイオンは半透膜を使って取り除くのです。

コロイド粒子が分散している溶液をコロイド溶液というのに対し、塩化ナトリウム水溶液のように分子やイオンが溶けた溶液を「真の溶液」と呼びます。

コロイドの分類

コロイドの分類

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コロイド粒子として分散しているものを分散質、分散質が分散している物質を分散媒と呼びます。分散質と分散媒の状態(固体・液体・気体)によってコロイドは細かく分類されているのです。特定の分散質と分散媒の組み合わせに呼び方があるものもあるので、物質の例と一緒に覚えてくださいね。

分散質・液体×分散媒・液体:エマルジョン(乳濁液) マヨネーズ、牛乳など
分散質・固体×分散媒・液体:サスペンション(懸濁液) 墨汁、泥水など

さらにコロイドはその性質からより細かく分類されることができるのです。

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疎水コロイドと親水コロイド

疎水コロイドと親水コロイド

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コロイドは水との親和性によって「疎水コロイド」と「親水コロイド」に分けることができます。コロイド粒子は正か負に帯電しているため、同じ種類のコロイド粒子同士は反発しあう事で安定するのです。さらに親水性コロイドはコロイド粒子同士の反発に加えて水になじみやすく、水和(水の分子が溶質を取り囲むこと)することでも安定しています。

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疎水コロイドは凝析、親水性コロイドは塩析によって沈殿させることができます。凝析と塩析の違い必要な電解質の量です。少量の電解質でコロイドを沈殿させることを凝析、多量の電解質を加えて沈殿させることを塩析と呼びます。疎水コロイドはコロイドの持つ電荷だけを取り除けばいいですが、親水コロイドの場合はコロイド粒子にくっついた水和水も取り除かなければなりなせん。

親水コロイドよりも沈殿しやすい疎水コロイド。そんな疎水コロイドを凝析しづらくさせるのが保護コロイドです。保護コロイドとは疎水コロイドに加える親水コロイドの事で、この親水コロイドが疎水コロイドを取り囲むと凝析されづらくなります。例えば墨汁では疎水コロイドの炭素粉末と共に、保護コロイドの役割を果たすにかわが加えられているのです。

ゾルとゲルってなんだ?流動性で分けられるコロイド

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ゾルとゲルを簡単に説明すると「流動性があるコロイドがゾル流動性がないのがゲル」のことです。コロイド水溶液のうち、流動性のあるせっけん水やデンプン水溶液はゾルになります。また雲や霧のように小さな水滴がコロイド粒子として分散している状態をエーロゾルと呼ぶのです。

多くの人が小学生の時に作ったことがあるスライムと甘い和菓子の羊羹は流動性がなく形を保つことができ、同じゲルに分類されています。水分を含んだ半固体の状態をゲルと呼び、乾燥させて水を失った状態をキセロゲルと言うのです。このキセロゲルは水を吸うと膨れ、この現象を膨潤と呼びます。

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ここで本題!コロイド溶液はこんなものがある

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ここで今回のタイトルにあるコロイド溶液のご紹介です。以下のような溶液がコロイド溶液として知られています。

・にごった河川水
・せっけん水
・牛乳、豆乳
・墨汁

どれも身近にある物ばかりですね。濁った水の処理には凝析、豆腐作りでは豆乳ににがりを加えて塩析が行われます。このようにコロイド、そして凝析や塩析も身近な現象なのです。コロイドに関する現象は他にもまだまだあります。受験勉強にはもちろん、大学での実験や研究にも役立つのでぜひ確認してくださいね。

こんなにもある!コロイド溶液が関わる現象

ここからはコロイド溶液が関わる現象についてご紹介します。

光の通り道がくっきり!チンダル現象

光の通り道がくっきり!チンダル現象

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デンプン溶液などコロイドが分散したコロイド溶液を透明な容器に入れ、レーザーポイントの光をまっすぐに当ててみてください。すると光の通り道がくっきりと表れます。これはコロイド粒子にあたった光が散乱するからです。この現象を「チンダル現象」と呼びます。

このチンダル現象は大きめの粒子であるコロイドにあたった光が乱反射して起こるため、イオンや分子が溶けた真の溶液では起こりません。しかしこのチンダル現象はコロイド溶液だけでなく、空気中でも起こるのです。空気中には小さい埃があるため暗いところで懐中電灯をつけると同じように光の道筋がくっきりと分かります。

コロイド粒子の運動、ブラウン運動

特殊な顕微鏡を使ってコロイド溶液を見ると、コロイド粒子は不規則な運動をしています。この現象は分散媒がコロイド粒子にぶつかることで起きるのです。そのため粒子は温度が高いほど激しく運動し、この運動の事を「ブラウン運動」と呼びます。

ブラウン運動と言う名前は発見者であるイギリスの生物学者ブラウンに由来したものです。ブラウンは花粉に含まれている微粒子が不規則に運動することを顕微鏡で観察しました。

体内でも行われている透析

ろ過で大きな粒子と液体を分離するように、半透膜を使って通過できないコロイド粒子と通過できる分子やイオンを分けることを「透析」といいます。コロイドだけでなく、高分子化合物にも適した精製方法です。

コロイド溶液を精製するときは、半透膜に精製したいコロイド溶液を入れて水に浸けます。すると半透膜を通り抜けられるイオンや分子のみが水の方へ出ていき除去することができるのです。腎不全などで老廃物の処理ができなくときには、人工透析によって不要物を取り除きます。

DNAの分析にも使われる電気泳動

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DNAの分析で用いられるのが「電気泳動」の手法です。ゲルである寒天の端に試料を入れ、電気をかけると負に帯電したDNAは陽極の方へ移動します。この時、大きいDNAはなかなか進むことができませんが、小さいDNAはどんどん進んでいってしまうのです。そうやってDNAを分離し、同じDNAを特定することができます。

この電気泳動は分子生物学や生化学で必要なものであり、学生実験などでも行われている実験です。

親水基と疎水基の合わせ技、ミセルとは

親水基と疎水基の合わせ技、ミセルとは

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せっけんは水となじみやすい親水性のCOONaの部分と、油となじみやすく水とはなじみづらい疎水性の炭素鎖(R)から成り立っています。せっけんのように親水基を外側に分子がいくつも集まってコロイドの粒子を作ることを会合といい、できたコロイド粒子をミセルと呼ぶのです。せっけん分子自体はコロイドでないことに注意してくださいね。

ちなみに、分子が集まってできるコロイドをミセルというのに対し、分子1個でコロイドとなるものを分子コロイドと呼びます。

コロイドはこんなにも身近!

学んでみると意外と奥の深いコロイド。凝析や塩析の技術は浄水場の沈殿だったり豆腐を作ったりと身近なものなのですね。

また、コロイドに関する現象もたくさん出てきましたね。体内にもコロイドが存在し、医療技術として透析が行われているのです。空に浮かぶ雲からゼリー、墨汁、そして血液もコロイドの仲間。ぜひ他にもコロイドがないか調べてみてくださいね。

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化学

3分で簡単にわかる!「コロイド溶液」とは?身近な例も元家庭教師がわかりやすく説明

「コロイド」という言葉を知っているか?コロイド粒子とはとんでもなく小さな粒子の事で、意外と身近にあるんです。

コロイド粒子が均一に散らばった、分散した状態の溶液を「コロイド溶液」という。このコロイドは様々な現象を学ぶのにとても役立つ。今回はこのコロイド溶液について高校は化学部、大学は国立大学の工学部化学系の院出身というたかはしふみかが説明していきます。

ライター/たかはし ふみか

高校時代、セッケンの研究をしながらコロイド溶液やコロイドに関わる「チンダル現象」「ブラウン運動」「塩析」といった現象を学ぶ。懐中電灯で夜道を照らすたびにチンダル現象を思い出すリケジョ。

コロイドとはなんだ?

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まず、コロイド粒子について確認しましょう。コロイド粒子とは「直径が109107mの粒子」のことで、コロイド粒子が均一に散らばった溶液の事を「コロイド溶液」と呼びます。ちなみに109m1nmと表すことができ、コロイドは1nm~100nmの大きさの粒子となるのです。髪の毛の太さが約0.08㎜、80,000nmということからいかにコロイド粒子が小さいかわかりますね。

このコロイド粒子はとても小さくろ紙を通り抜けてしまうため、ろ過で取り除くことはできません。しかしコロイド粒子はセロハンなどの半透膜を通るのには大きすぎるのです。一方、コロイド粒子よりさらに小さいイオンや分子だとろ紙はもちろん半透膜でも通過してしまいます。そのためコロイド粒子より大きい物はろ過で取り除き、コロイド溶液に含まれる分子やイオンは半透膜を使って取り除くのです。

コロイド粒子が分散している溶液をコロイド溶液というのに対し、塩化ナトリウム水溶液のように分子やイオンが溶けた溶液を「真の溶液」と呼びます。

コロイドの分類

コロイドの分類

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コロイド粒子として分散しているものを分散質、分散質が分散している物質を分散媒と呼びます。分散質と分散媒の状態(固体・液体・気体)によってコロイドは細かく分類されているのです。特定の分散質と分散媒の組み合わせに呼び方があるものもあるので、物質の例と一緒に覚えてくださいね。

分散質・液体×分散媒・液体:エマルジョン(乳濁液) マヨネーズ、牛乳など
分散質・固体×分散媒・液体:サスペンション(懸濁液) 墨汁、泥水など

さらにコロイドはその性質からより細かく分類されることができるのです。

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