「化学反応」って何のことか説明できるか?

化学反応は酸化とか中和とか合成とかの事?とわかっても、化学反応式を書くことが苦手だという人も結構多いよな。

今回は「化学反応」と化学反応式の書き方まで、化学実験を生業にしてきたライターwingと一緒に解説していきます。

ライター/wing

元製薬会社研究員。小さい頃から化学が好きで、実験を仕事にしたいと大学で化学を専攻した。卒業後は化学分析・研究開発を生業にしてきた。化学のおもしろさを沢山の人に伝えたい!

1.化学反応とは何か

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化学反応とは化学変化が起こる反応のことをいいます。

ある物質が違う物質に変わることと考えてもらってもいいでしょう。

原子同士の結合が切れて他の原子と結びついたり、結合が切れた状態で電子を取り込んで単体化したりします。

原子の数や種類が反応の前後で変化することはありません

1-1.身の回りの化学反応

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化学反応は身の回りで常に起こっています。

例えば物が燃えること、金属がさびること、ケーキが膨らむことも化学反応です。フィルムカメラで写真を撮ることも、マンガン電池から電気を得ることも、実は化学反応なんですよ。

濡れた洗濯物が(水が蒸発することにより)乾いたり、水が氷になったりすることは状態変化といって物質自体が変化したわけではないため、化学反応ではありません。

1-2.化学反応を左右する外的要因

化学反応は温度や圧力によって反応速度が変化します。

反応速度を速めるために触媒と言われるものを使うことがあることを、覚えておきましょう。

2.化学反応式

化学反応を化学式をつかって表したものを化学反応式といいます。

化学反応の前後で原子の種類と数は変化しません。化学反応式を書くときは、原子の種類と数が左辺と右辺で等しくなるように一番簡単な整数比で表します。

言葉で言っていてもわかりにくいので、実際に化学反応式を書いてみましょう。

\次のページで「2-1.化学反応式の書き方(1)」を解説!/

2-1.化学反応式の書き方(1)

2-1.化学反応式の書き方(1)

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最初はわかりやすい中和反応から、化学反応式を書いてみましょう。

塩酸(HCl)と水酸化ナトリウム(NaOH)が反応すると食塩(NaCl)と水(H2O)が生成します。このことを化学反応式で表しましょう。

まず左辺に反応する前の物質の化学式、右辺に反応した後の物質(生成物)の化学式を書き矢印でつなぎましょう。

HCl + NaOH → NaCl + H2O

この時左辺に H は 2 個、Cl は 1 個、Na は 1 個、O は 1 個あります。一方右辺は H は 2 個、Cl は 1 個、Na は 1 個、O は 1 個ありますね。

原子の種類と数が左辺と右辺で等しくなっています。このことがとても重要なのです。

ちなみに化学反応式では係数(化学式の頭につける数)の 1 は省略します。

次は一つ一つ係数を考えてつけなければいけない化学反応式を書きましょう。

窒素(N2)と水素(H2)が反応するとアンモニア(NH3)が生成します。このことを化学反応式で表しましょう。

まず左辺に反応する前の物質の化学式、右辺に反応した後の物質の化学式を書き矢印でつなぎましょう。

N2 + H2NH3

これでは左辺と右辺の原子の数が合いません。まず右辺の NH3 の係数を 2 にして N の数から合わせてみましょう。

N2 + H2 → 2NH3

これで N の数は等しくなりました。次に H の数を合わせてみましょう。

右辺の NH3 の中に H は 3 つあります。今 NH3 が2つあるので、2 × 3 でHは 6 個あることになりますね。

左辺の H2 の中には H は 2 個あります。今左辺の H も 6 個にしたいので、6 ÷ 2 で H2 の係数を 3 にしましょう。

N2 + 3H2 → 2NH3

これで化学反応式が書けました。

2-2.化学反応式の書き方(2)

係数の合わせ方はわかりましたか?次に少し難しい化学反応式にチャレンジしましょう。

エタン(C2H6)と酸素(O2)が反応すると二酸化炭素(CO2)と水(H2O)が生成します。このことを化学反応式で表しましょう。

まず左辺に反応する前の物質の化学式、右辺に反応した後の物質の化学式を書き矢印でつなぎます。

C2H6 + O2CO2 + H2O

次に含まれる原子の種類が一番多い物質の係数を 1 と仮定して、両辺の原子の数を合わせてみましょう。本当は係数の 1 は省略しますが、一時的にわかりやすくするために表して解説します。

1C2H6 + O2 → CO2 + H2O

左辺の C は 2 つなので右辺の CO2 の係数を 2 にしてみましょう。

1C2H6 + O2 → 2CO2 + H2O

C の数は両辺そろいました。次に H は左辺に 6 個あるので H2O の係数を 3 にしてみます。

1C2H6 + O2 → 2CO2 + 3H2O

最後に O の数を揃えたいのですが、右辺には 2 × 2 + 3 で 7 個の O がありますね。O は分子で存在するので 2 個セットなのは崩せません。すると O2 の係数が 7/2 になってしまいます。

そこで一番最初の約束だった、一番簡単な整数比で表すということ思い出し、両辺に 2 をかけましょう

2C2H6 + 7O2 → 4CO2 + 6H2O

少し複雑でしたが、正しい化学反応式を書くことができました。

3.化学反応式を使った計算

3.化学反応式を使った計算

image by Study-Z編集部

化学反応式を正しく書くことによって、どのくらいの比率で化学反応が起こるかがわかります。

上のエタンの反応式からわかるのは、2 個のエタンが 7 個の酸素と反応すると、4 個の二酸化炭素と 6 個の水ができるということです。

さらに、個数はモルで言い換えることができるので、2 mol のエタンが 7 mol の酸素と反応すると、4mol の二酸化炭素と 6mol の水ができるといえます。

そして、標準状態の気体 1mol の体積は 22.4L なので、2 × 22.4 L のエタンが 7 × 22.4 L の酸素と反応すると、4 × 22.4 L の二酸化炭素と 6 × 22.4 L の水ができると言い換えることができるでしょう。

化学反応式を書くと、どのくらいの割合で反応するかがわかることから、次のような問題を解くことができます。

3-1.化学反応式を使った計算問題

問題 エタンを完全に燃焼させると二酸化炭素と水が生成しました。次の各問に答えましょう。ただし、標準状態における気体 1mol の体積は 22.4 L とします。原子量 H=1.0  C=12  O=16

エタンの燃焼の化学反応式は 2-2. より以下のようになります。

2C2H6 + 7O2 → 4CO2 + 6H2O

(1)エタン 4mol を完全に燃焼させた時に生成する、二酸化炭素の体積は標準状態で何 L でしょうか。

化学反応式から、エタン 2mol が完全に燃焼した時に二酸化炭素は 4mol 生成するという比率がわかり、エタン 4mol が完全に燃焼した時に生成する二酸化炭素の物質量は 8mol 。

1mol = 22.4 L なので 8 × 22.4 = 179.2 L

答えは 179.2 L となります。

(2)エタン 3g を完全に燃焼させた時に生成する、水の質量は何 g でしょうか。

エタンは C2H6 なので 1mol で 12 × 2 + 1.0 × 6 = 30 g

これよりエタン 3g の物質量は 3 ÷ 30 = 0.1 mol となります。

一方、化学反応式からエタン 2mol を完全に燃焼させたときに生成する水の物質量は 6mol です。

この比率からエタン 1mol では水は 3mol 生成することがわかり、エタン 0.1mol では水は 0.3mol 生成することがわかります。では、水 0.3mol は何グラムなのでしょうか?

H2O は 1mol で 1.0 × 2 + 16 = 18 g

水 0.3mol では 0.3 × 18 = 5.4 g

答えは 5.4 g です。

「化学反応」とはある物質が違う物質に変化すること

化学反応とは物質が違う物質に変化することで、身の回りでも起こっている反応です。

化学反応は化学式をつかって表すことができ、その式のことを化学反応式といいます。

化学反応式を正しく書くには、反応の前後(左辺と右辺)で原子の種類と数が変わらないように、一番簡単な整数比で係数をつける事が重要です。

化学反応式は物質がどのような比率で反応するかがわかり、反応した後に生成する物質の物質量や体積原子量が問題文にあれば質量も求めることができます。

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化学物質の状態・構成・変化理科

「化学反応」とは何か?反応式が書けるように元研究員がわかりやすく解説

「化学反応」って何のことか説明できるか?

化学反応は酸化とか中和とか合成とかの事?とわかっても、化学反応式を書くことが苦手だという人も結構多いよな。

今回は「化学反応」と化学反応式の書き方まで、化学実験を生業にしてきたライターwingと一緒に解説していきます。

ライター/wing

元製薬会社研究員。小さい頃から化学が好きで、実験を仕事にしたいと大学で化学を専攻した。卒業後は化学分析・研究開発を生業にしてきた。化学のおもしろさを沢山の人に伝えたい!

1.化学反応とは何か

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化学反応とは化学変化が起こる反応のことをいいます。

ある物質が違う物質に変わることと考えてもらってもいいでしょう。

原子同士の結合が切れて他の原子と結びついたり、結合が切れた状態で電子を取り込んで単体化したりします。

原子の数や種類が反応の前後で変化することはありません

1-1.身の回りの化学反応

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化学反応は身の回りで常に起こっています。

例えば物が燃えること、金属がさびること、ケーキが膨らむことも化学反応です。フィルムカメラで写真を撮ることも、マンガン電池から電気を得ることも、実は化学反応なんですよ。

濡れた洗濯物が(水が蒸発することにより)乾いたり、水が氷になったりすることは状態変化といって物質自体が変化したわけではないため、化学反応ではありません。

1-2.化学反応を左右する外的要因

化学反応は温度や圧力によって反応速度が変化します。

反応速度を速めるために触媒と言われるものを使うことがあることを、覚えておきましょう。

2.化学反応式

化学反応を化学式をつかって表したものを化学反応式といいます。

化学反応の前後で原子の種類と数は変化しません。化学反応式を書くときは、原子の種類と数が左辺と右辺で等しくなるように一番簡単な整数比で表します。

言葉で言っていてもわかりにくいので、実際に化学反応式を書いてみましょう。

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