今回は前回解説した「親水性」の反義語である「疎水性」という性質について勉強していこう。

水と親和性の高い親水性の反対の意味と考えればどういった性質かは想像がつくんじゃないか?

しかし注意したいのは、この2つの性質は反義語ではありますが「相反する性質ではない」ということです。化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.疎水性とは

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疎水性とは、水との親和性が低いために水と混ざりにくい物質の性質のことです。いわゆる濡れにくい物質や素材、コーティングのことをいう場合もあります。

親水性をもつ物質の特徴を覚えていますか?水は電気陰性度が大きくマイナスに荷電する酸素原子と、プラスに荷電する水素イオンからなる極性分子でした。水同様に極性の大きい分子構造である塩化水素、イオンとして電荷を有する化合物である塩化ナトリウム(水中でイオン分解)は水に溶けやすい物質として知られていますよね。

疎水性はこの反対の性質をもっています。つまり、極性がない分子構造であることが条件の1つです。メチル基やアルキル基といった炭素に水素が結合した構造をもつ物質が疎水性をもつ物質の代表といえます。

1-1.対で覚えたい親水性と疎水性

親水性と疎水性は、一見すると全く反対の性質、現象であるように思うかもしれません。確かに説明上は水に溶けやすいものと溶けにくいもの、濡れるものと濡れないものといいますからね。しかしこれらは色のグラデーションと同じように、親水性と疎水性の中間という状態が存在します。前回の記事でも解説したように、水のはじき具合(ガラスや車のボディの表面にできる水滴)には、疎水性よりもさらに水はけのいい状態に撥水というものがありましたね。このように確かに意味合いでは反義語といえるものではありますが、実際には相反するものではないということを覚えておきましょう。

2.類似ワードを解説

それではここで、疎水性と同じ意味で使われることの多いワードを解説しましょう。それぞれの違いを理解しておきたいですね。

\次のページで「2-1.撥水性」を解説!/

2-1.撥水性

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既に何度も使っている撥水性というのは、水をはじく性質をいう言葉です。疎水性は水と混ざりにくい性質、濡れにくい性質を表す言葉ですから、意図するところはほほ同じといっていいでしょう。疎水性の高いものの分類として、撥水性、超撥水性のように用いられます。同様に親水性も親水性、超親水性といった分類がされますよ。

2-2.親油性

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親水性に対し、親油性という言葉があります。漢字の通り、水ではなく油に対しての親和性が高い物質の性質を示す言葉です。親水性と疎水性、親水性と親油性という関係から、疎水性と親油性を混同して使う場合も多々あります。疎水性と親油性を兼ね揃えた物質は多いものの、必ずしもそうだとは言い切れません。厳密にいえばイコールではないので気をつけたいですね。

3.日常生活への応用

車のコーティングや洗車後のワックスに使用されているものとしては、疎水剤が一般的でしょう。メリットとしては水が玉になって流れていくことで運転中の視界は保たれ、洗車後の水はけがいいことでしょう。しかし水玉状に跡が残りやすいというデメリットがあります。さらに、疎水性物質は親油性物質である場合が多く、ほこりやオイル汚れなどは付きやすくなるでしょう。それぞれの効果を見比べながら最適なものを選びたいですね。

4.水と油の関係とは?

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それでは最後に、水と油の関係について考えてみましょう。水と油と聞いて、どんな様子をイメージしますか?

\次のページで「4-1.混ざらない」を解説!/

4-1.混ざらない

仲が悪い2人のことを「水と油(水に油)の関係」といいますね。これは水と油が混ざり合わないことからできた慣用句です。反発し合うこと、質が違うこと、しっくりこないことを指すときに使ったりしますね。

実際にドレッシングやオイル入りの化粧品など「使用前に振ってください」と記載されている場合、分離しやすい物質を混ぜ合わせて作られているでしょう。それらを混ぜ合わせることでより美味しくなったり効果が出たりするものですが、製造の段階でそうしないのには理由があります。実は混ぜ合わせる方法がないわけではないのです。しかし品質を守るために余分なものを入れず、あえて混ぜないという選択をする場合もあるんですよ。

4-2.油が上層、水が下層になる

混ざらないといっても層になって分かれるのか、沈殿が生じるのか、それとも水泡のようにどちらかが一方を取り囲むように分離している場合など、さまざまなパターンが考えられますよね。水と一般的な食用油の場合、必ず油が上、水が下の層として分離します。これがなぜだか考えてみたことがありますか?

ここで考えたいのが密度・比重の関係です。比重は水との密度を比較した指標ですから、比重が1で水と同じ、1より大きければ水に沈み、1より小さければ水に浮くということを示します。水と油では油の方が密度が低く軽い液体であり、比重は0.9ほどです。つまり、油は水に浮くのは比重の関係によるものということが分かりますね。

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それではここで問題です。

(1)水と油を入れたグラスの中にを入れてみたらどうなるでしょうか。

(2)水と油を混ぜるためにはどうすればよいでしょうか。

次のヒントを参考に考えてみてくださいね。

(1)水は氷になると体積はどうなりますか?つまりその結果から、密度・比重はどうなると考えられますか?

(2)水と油は性質が異なるため、混ざり合いません。水と油の橋渡し役的存在になれる物質を考えてみましょう。

 

次回これらについて解説しますので、あなたなりによく考えてみてくださいね。(1)は実験をしてみるとすぐ答えがわかるでしょう。(2)はもしかしたら料理や洗濯をよく手伝うという人には簡単かもしれませんね。

疎水性は電気的に中性な非極性物質がもつ性質

親水性は極性の大きい分子構造であったり、イオンとして電荷を有する化合物のもつ性質でしたね。それに対し疎水性は、電気的に中性な非極性物質がもつ性質であることを覚えておきましょう。

親水性と対(反義語)になる言葉として疎水性、または親油性が用いられます。疎水性と親油性と言い替える場合もありますが、疎水性をもつ物質が親油性をもつとは必ずしも言えないので注意が必要です。また、撥水性と疎水性を同義として用いる場合もあるでしょう。ただし、親水性と疎水性にはグラデーションのように連続的な変化の段階がありますから、相反する性質とは言えません。これを頭の隅に入れておいてくださいね。

今回は疎水性の物質として油を例にとって解説しました。それでは次回「混ざらないはずの水と油を混ぜるための方法」について解説します。

 

イラスト使用元:いらすとや

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化学

親水性と対で覚えよう!「疎水性」について元塾講師がわかりやすく解説

今回は前回解説した「親水性」の反義語である「疎水性」という性質について勉強していこう。

水と親和性の高い親水性の反対の意味と考えればどういった性質かは想像がつくんじゃないか?

しかし注意したいのは、この2つの性質は反義語ではありますが「相反する性質ではない」ということです。化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.疎水性とは

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疎水性とは、水との親和性が低いために水と混ざりにくい物質の性質のことです。いわゆる濡れにくい物質や素材、コーティングのことをいう場合もあります。

親水性をもつ物質の特徴を覚えていますか?水は電気陰性度が大きくマイナスに荷電する酸素原子と、プラスに荷電する水素イオンからなる極性分子でした。水同様に極性の大きい分子構造である塩化水素、イオンとして電荷を有する化合物である塩化ナトリウム(水中でイオン分解)は水に溶けやすい物質として知られていますよね。

疎水性はこの反対の性質をもっています。つまり、極性がない分子構造であることが条件の1つです。メチル基やアルキル基といった炭素に水素が結合した構造をもつ物質が疎水性をもつ物質の代表といえます。

1-1.対で覚えたい親水性と疎水性

親水性と疎水性は、一見すると全く反対の性質、現象であるように思うかもしれません。確かに説明上は水に溶けやすいものと溶けにくいもの、濡れるものと濡れないものといいますからね。しかしこれらは色のグラデーションと同じように、親水性と疎水性の中間という状態が存在します。前回の記事でも解説したように、水のはじき具合(ガラスや車のボディの表面にできる水滴)には、疎水性よりもさらに水はけのいい状態に撥水というものがありましたね。このように確かに意味合いでは反義語といえるものではありますが、実際には相反するものではないということを覚えておきましょう。

2.類似ワードを解説

それではここで、疎水性と同じ意味で使われることの多いワードを解説しましょう。それぞれの違いを理解しておきたいですね。

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