今回は物質の状態変化のひとつ、昇華(しょうか)について勉強します。

物質の状態は周囲の温度や気圧で変化する。氷が0℃で融けたり100℃で沸騰するように物質はそれぞれ何度でその状態が固体になるか、液体になるか、そして気体になるかが決まっているんです。ところで物質の中には固体からいきなり気体になるものがある。いちばん身近な例はドライアイスが二酸化炭素になることでしょう。これを昇華と呼ぶ。

それでは固体が気体に変わる昇華について高校は化学部に所属、大学では化学を専攻し学会で賞をもらったこともあるという元家庭教師のリケジョ、たかはしふみかが説明していきます。

ライター/たかはし ふみか

高校時代は化学部に所属。教育に興味があり大学は国立大学工学部化学系で研究の傍ら中学生専門の家庭教師をしていた。子供の頃、よくドライアイスで遊んでいたリケジョ。試薬を正しく取り扱えるようになりたいと危険物取扱者の資格を取得しているが、一番の危険物は本人だと言われている。

まずは物質の状態変化をおさらい!

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昇華とは状態変化の一種で、固体から気体に物質の状態が変わることです。昇華について解説する前に物質の状態とその変化についておさらいしましょう。

まず物質には3つの状態があります。それは「固体」、「液体」、「気体」です。水を例に考えると氷、水、水蒸気ですね。この物質の状態は「粒子がどのように運動できるのか」で決まっています。粒子とは物質をつくる原子、分子、イオンなどの事です。

固体:粒子が規則正しく並んだ状態、形と大きさがある
液体:粒子が不規則に集まった状態、形が変化する
気体:粒子が自由に飛び回れる状態、体積が大きい

先ほどの水の例で考えると固体である氷は水分子が規則正しく並んでいるのに対し液体の水の場合、分子は動くことができます。そして気体の水蒸気では分子が自由に飛び回っているのですね。この時、形がある氷が融けて水になることを融解、水が水蒸気になることを蒸発といいます。そして固体から直接気体になる物質もあるのです。この固体から気体になる現象を「昇華」と呼びます。

状態変化は化学の最初の方で習う、基本的な単元なのでしっかりと覚えましょう。それぞれの状態変化の呼び方については他の記事を参考にしてくださいね。

昇華の反対は?気体から固体への変化の呼び方

昇華の反対は?気体から固体への変化の呼び方

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液体から固体は「凝固」、反対に固体から液体となることは「融解」と呼びます。また、気体から液体になることは「凝縮」、液体から気体になることは「蒸発」と呼んでいますね。では気体から固体となる昇華の反対は何と言うでしょうか?正解は「凝華」です。

最近まで高校では、気体と固体の状態が変わる状態変化を「昇華」と教えていました。つまり固体が気体になる時も気体が固体になる時も昇華だったのです。しかし、他の状態変化は対になる用語があるのに昇華だけにはなく混乱する学生も多くいました。そのため、2017年度の教科書から新たに「凝華」と言う用語が加わったのです。ちなみに、中国ではもともと昇華と一緒に凝華という用語を使っていました。

なぜ固体→気体になるの?昇華の仕組みをチェック!

なぜ固体→気体になるの?昇華の仕組みをチェック!

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二酸化炭素の温度と圧力の関係を表す状態図を見てください。1が固体、2が液体、3が気体、4が超臨界状態となる温度と気圧の範囲です。Aは三重点といい、Bは臨界点といいます。ちなみに超臨界状態とは臨界点を越えた時になる気体と液体の間のような状態のことです。そして三重点はその名の通り固体、液体、液体の3つの状態が同時に存在する温度と気圧のポイントとなります。

図を見ると1固体と3気体が接しているところがありますね。通常人が暮らしている場所の気圧は1気圧で、それぐらいの気圧ではドライアイスは固体から気体へと変化するのです。このように物質はある圧力の下で固体から直接気体になることがあります。そのため、条件によっては二酸化炭素も液体になるのです。

そして昇華は特別なことではなく、水も氷(固体)から直接水蒸気(気体)となる場合があります。どんな物質が昇華するか確認していきましょう。

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昇華する物質は実はこんなにもある

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高校の教科書で出てくる昇華の例といえばドライアイス(二酸化炭素)でしょう。しかし、昇華する物質はもちろんこれだけではありません。例えば衣替えで洋服を整理するときに欠かせない防虫剤のナフタレンパラジクロロベンゼン、アルコール液が消毒薬として用いられているヨウ素、コーヒーやお茶に含まれるカフェインなどがあります。

さらに水もある条件下では氷→水蒸気と昇華するのです。例えば冷凍庫に入れっぱなしの肉や魚がきちんと密封されていなくて干からびてしまったのをみたことがある人もいるでしょう。このいわゆる冷凍焼けは凍った水分が昇華して起きてしまうのです。また、北極に近い地域では洗濯物を外で凍らせて昇華によって乾かしています。

この水の昇華を応用した凍結乾燥フリーズドライの技術について説明していきましょう。

化学実験に必須!凍結乾燥

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実験で生成した物質から余分な水分を取り除くために行う操作が凍結乾燥です。凍結乾燥は、真空乾燥器や乾燥させたいものを入れて凍結させたフラスコと真空ポンプ(コンプレッサー)を繋ぎ、減圧します。減圧されると水の蒸発する温度が下がり、やがて固体から直接気体へと昇華するようになるのです。

凍結乾燥は化学実験で日常的に行われる操作のひとつ。凍結乾燥をするときは排出された水蒸気を冷やすのに液体窒素やトラップ管を用意したりする必要があり、さらに時間も一晩かかると意外と大がかりです。そのうえ真空乾燥器は1つの研究室に何台もある機械ではないので、使う時は他の人と事前にきちんと使う順番を決めておかないと準備が無駄になってしまうのでよく考えて行いましょう。

毎日のご飯から非常食、お菓子まで「フリーズドライ」

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お湯をかけるだけでおいしく食べられるフリーズドライ食品。スープやみそ汁、雑炊などがありますね。また、フリーズドライした果物を使ったチョコレート菓子なども人気です。

フリーズドライは食品に対して凍結乾燥を行います。食品中の水分を昇華させ乾燥させるこの方法は栄養素をそのまま残すことができ、お湯をかけるだけで簡単に食べられると非常食におすすめです。

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昇華は特別な現象ではない!食品の加工にも役立つ技術

状態変化の中で一番イメージしづらい固体から気体への変化、昇華。しかしドライアイスやナフタレンだけでなく水も昇華するという事で意外と身近なものに感じられたのではないでしょうか?そしてフリーズドライ食品を製造する際にも行われている、生活に必要な技術なのですね。

昇華に対する凝華という言葉はまだ一般的ではありません。しかし状態変化を理解するためにに大切な知識です。ぜひこれを機に覚えてくださいね。

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化学物質の状態・構成・変化理科

3分で簡単にわかる!固体が気体に変化する「昇華」とは?物質の状態変化も元家庭教師がわかりやすく解説

昇華は特別な現象ではない!食品の加工にも役立つ技術

状態変化の中で一番イメージしづらい固体から気体への変化、昇華。しかしドライアイスやナフタレンだけでなく水も昇華するという事で意外と身近なものに感じられたのではないでしょうか?そしてフリーズドライ食品を製造する際にも行われている、生活に必要な技術なのですね。

昇華に対する凝華という言葉はまだ一般的ではありません。しかし状態変化を理解するためにに大切な知識です。ぜひこれを機に覚えてくださいね。

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