今回はファラデーの電磁誘導の法則について考えていきます。

マイケル・ファラデーは「ロウソクの科学」で有名な天才的な実験物理学者・化学者です。リチウムイオン電池の開発でノーベル賞を受賞した吉野彰氏も学生時代にファラデーの書いた「ロウソクの科学」を読んで大きな影響を受けた、というのは有名な話です。

ファラデーの時代にノーベル賞はまですかったんですが、もしあったら「ファラデーの電磁誘導の法則」も間違いなく受賞していたと言えるほどの大発見なんです。そんな「「ファラデーの電磁誘導の法則」について理系ライターのタッケさんと一緒に解説してゆくぞ!

ライター/タッケ

物理学全般に興味をもつ理系ライター。理学の博士号を持つ。専門は物性物理関係。高校で物理を教えていたという一面も持つ。ファラデーは偉大な科学者で現在ならノーベル賞の2つくらいは取れていたかもしれない。それほど重要な発見。

ファラデーとは?

有名なマイケル・ファラデー(1791-1867)はイギリスの科学者です。
かれは、満足に学校を出ていませんが、本屋で丁稚奉公をしながら独学を続けたといわれています。

仕事のかたわら、余った時間に本を読み漁ったのです。
とりわけ彼の興味を引いたのは科学関係の書籍でした。

これにより科学の面白さに目覚め、科学への憧れやまぬファラデーは、時の有名な化学者のサー・ハンフリー・デービー(1778-1829)に助手として雇ってもらえるよう手紙を書きます。
そして晴れて希望がかなったファラデーはデービーのもとで才能を開花させたのです。

ファラデーは、実験物理・化学の天才でした。
彼の師であるデービーの功績はアルカリ金属の発見など多大なものですが、第1の功績はファラデーを発見し、世に出したこととされるほどです。

電磁誘導とは?

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さて、そんなファラデーの電磁誘導の大発見。
当時はまだノーベル賞は創設されていませんでしたが、彼の発見はノーベル賞に間違いなく匹敵します。

さて、その電磁誘導とはどのような現象でしょうか?

それは磁石とコイルから電圧(ボルトのことだと思えば良い)や電流を発生させることができるというものです。
このように、コイルと磁石から電圧が生じることを電磁誘導と呼びます。
そして、そのときに流れる電流が誘導電流で生じる電圧が誘導起電力です。

しかし、コイルと磁石をただ近づけて置いておくだけで電流が流れるのではありません。
誘導起電力を発生させ、電流を流すためには磁石やコイルを互いに近づけたり遠ざけたりする必要があります。

ファラデー電磁誘導の法則

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誘導起電力や誘導電流はどのようにすれば大きくなるでしょうか?
それは磁石の磁力が強いほど、また磁石を動かす速さが速いほど大きくなることがわかっています。

ファラデーは実験を繰り返し、このような場合の誘導起電力と磁石の強さ・動かす速さの間に成り立つ関係を見出したのです。

ファラデー電磁誘導の法則

コイルに生じる誘導起電力の大きさ V は、コイルを貫く磁束 Φ の単位時間あたりの変化分に比例する。Vの大きさは、コイルの巻数がN巻のときは一巻きのときのN倍になる。

image by Study-Z編集部

注意:マイナスが付いているのは次で説明するレンツの規則を示しています。

ちょっと難しい表現です。
では簡単にご説明いたします。

まず、磁束 Φ とは何でしょうか。
磁石により磁場(磁気)が周囲の空間に発生しています。
そのとき、磁石からは磁場や磁力のもとである線が出ていると考えてください。
ちょっと大雑把に言うと、磁石のもつ磁力を線で示したものが磁束です。

この線はN極からでてS極に向かいます。図の赤い矢印で示したものです。

\次のページで「レンツの規則」を解説!/

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この磁束は磁石の近くでは密に、遠くではまばらになります。

ファラデーの電磁誘導の法則とは
この磁石の周囲で発生している磁束をコイル内で増減するときに、その増減スピードに応じて誘導起電力が発生すると言っているのです。

コイルを磁石の近くにおいてみましょう。
磁石から出ている磁束は近くに置いたコイルの中も通ります。

ここで磁石を動かしてみましょう。
そうするとコイルを通る磁束の数は変化することがわかります。
つまり、磁石を動かすことによりコイルを通る磁束の本数は増加あるいは減少することになりますね(あるいはコイルを動かしても同じことです)。

ファラデーはこの磁束の本数が1秒間にどれだけ変化するかが誘導起電力に関係するということを発見しました。

ここでポイントはどんなに磁石が強くても磁石を動かすなどして磁束を変化させなければ、誘導起電力は生じないことです。

すなわち、磁石を動かすという動作による仕事が電気エネルギーに変換されるということになるのですね。つまり、エネルギー保存則はここでもちゃんと成立していることになります。

また、その時の誘導起電力の生じる向きを規定しているのがレンツの規則と言われるものです。

レンツの規則

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ちょっと砕けた表現ですが、レンツの規則とはだいたい以下のような意味になります。

磁石を動かすことによってコイルに誘導電流が流れる。
そのとき、コイルに磁場(磁界)が生じてコイル自身が磁石となる。
そのときのコイルによる磁石が、動かしていた棒磁石の動きを妨げるように誘導電流が流れる。

この時の誘導電流の向きに誤解が多く、間違いやすいので注意が必要です。

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イメージしづらいですが、とにかく棒磁石の動きを邪魔するように電流が流れると考えていただいて間違いではありません。

このとこは先程述べたように、エネルギー保存則を考えると当然のことです。
磁石の動きを邪魔するから手が仕事をする必要があります。
その仕事が電気エネルギーに変換されるのですね。

もしそうでないなら、無からエネルギーを生じることになり熱力学第1法則に反します。

\次のページで「現在の文明社会に欠かせない法則」を解説!/

現在の文明社会に欠かせない法則

今日、発電所で発電しているのは、すべてこの電磁誘導の原理を用いているのです。
つまり、水力発電所では水が落ちる勢いでタービンを回し、電磁石を動かして発電しています。

同様に、火力発電所でもお湯を沸かして、その蒸気の勢いで電磁石動かしているのです。

では、原子力発電所では?
これも、お湯を沸かしてその蒸気の勢いを利用しているのは同じ。

もっと身近に桜木先生のおっしゃるようにスマホの充電や電車のICカード、電磁調理器(IH)などもこの法則を利用しています。

いずれにしても、ファラデーの発見した「ファラデー電磁誘導の法則」がいかに私達の生活に役立ち、かつ必要不可欠であるかがわかりますね。

面白いことに、ファラデーがこの電磁誘導の法則を発表したときに「それは何の役に立つのか?」「何の役にもたたない」などという批判があったそうです。

ファラデーは
「生まれたばかりの赤ちゃんが何に約立つのかと聞いているのと同じ」
として反論したと言われています。

役に立たないどころか「ファラデーの法則」の発見なくしては今日の私達の生活はもはや成り立ちませんね。

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物理理科電磁気学・光学・天文学

世紀の大発見「ファラデーの電磁誘導の法則」を理系ライターがわかりやすく解説

現在の文明社会に欠かせない法則

今日、発電所で発電しているのは、すべてこの電磁誘導の原理を用いているのです。
つまり、水力発電所では水が落ちる勢いでタービンを回し、電磁石を動かして発電しています。

同様に、火力発電所でもお湯を沸かして、その蒸気の勢いで電磁石動かしているのです。

では、原子力発電所では?
これも、お湯を沸かしてその蒸気の勢いを利用しているのは同じ。

もっと身近に桜木先生のおっしゃるようにスマホの充電や電車のICカード、電磁調理器(IH)などもこの法則を利用しています。

いずれにしても、ファラデーの発見した「ファラデー電磁誘導の法則」がいかに私達の生活に役立ち、かつ必要不可欠であるかがわかりますね。

面白いことに、ファラデーがこの電磁誘導の法則を発表したときに「それは何の役に立つのか?」「何の役にもたたない」などという批判があったそうです。

ファラデーは
「生まれたばかりの赤ちゃんが何に約立つのかと聞いているのと同じ」
として反論したと言われています。

役に立たないどころか「ファラデーの法則」の発見なくしては今日の私達の生活はもはや成り立ちませんね。

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