今回はヒトの体内を流れる血液についてみていきたい。

身体の中を血液が流れている、という事実は誰しもが知っていることですが、その血液は何からできているのか?という問いには、正確に答えられない人もいるでしょう。高校の生物基礎で学習する内容ですが、一般常識としても知識を確認しておきたいな。

生物のからだに詳しい現役講師のオノヅカユウを招いた。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

血液は何からできている?

わたしたちの身体の中を隅々まで巡り、細胞へ酸素や栄養を届けてくれる血液。肉眼で見ただけではただ単なる赤い液体にしか見えませんが、血液中には複数の成分が存在し、それぞれのはたらきをしています。

結論から言えば、血液を構成しているのは、赤血球、白血球、血小板、そして血しょうの4つの成分です。これらの成分は有形成分と無形成分という二つのグループに大別することができます。

image by Study-Z編集部

有形成分は「形のある」という言葉からもわかるとおり、大きさも重さもある固体です。もっと正確に言えばもろもろの「細胞」のことを指します。赤血球、白血球、血小板は有形成分です。無形成分とは、形の定まらない液体成分のこと。前述の4つの成分のうち、血しょうがこれに当たります。

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Electron Microscopy Facility at The National Cancer Institute at Frederick (NCI-Frederick) - [1], パブリック・ドメイン, リンクによる

有形成分:赤血球

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血液中の成分として多くの人が真っ先に思いつくのが赤血球ではないでしょうか?私たちの血液が赤いのは、この赤血球がたくさん存在しているからです。

赤血球の形

赤血球はその1つ1つが個々の細胞です。真ん中をへこませた白玉団子のような形で、その大きさは直径約7~8μmほどとなっています。

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前述の通り、赤血球は1つ1つが細胞ですが、その内部には細胞にあるはずの核がありません。赤血球ができるまでの過程で、はじめは核を持っていますが、生長すると核が失われてしまうのです。この過程のことを脱核とよんでいます。

核がない赤血球はその結果、真ん中がへこんだような形に。細胞内部に核という大きな構造物がなくなるため、その形を変形させやすくなり、狭い毛細血管にも入り込んでいくことができます。

赤血球のはたらき

赤血球の重要なはたらきは酸素の運搬です。肺で取り入れられた酸素と結合し、酸素の少ない場所ではその酸素を手放すことで、酸素を運んでいます。まるで意思を持った運び屋のようですが、どうして赤血球はそんなことができるのでしょうか?

実際に酸素と結合するのは、赤血球の中に含まれるヘモグロビンという成分です。ヘモグロビンには酸素と結合しやすい性質があるだけでなく、酸素の少ないところでは結合が切れやすい=酸素を手放しやすいという性質も持ち合わせています。この性質があるからこそ、酸素の少ないところから多いところへ運ぶ、という仕事ができるのです。

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なお、ヘモグロビンの色は暗い赤色、酸素と結合したヘモグロビン(酸素ヘモグロビン)は鮮やかな赤色をしています。これが赤血球の色、ひいては血液の色を決める要因です。動脈を流れる血液と静脈を流れる血液の色が違うのは、ヘモグロビンが酸素と結合しているか否かによることがわかるでしょう。

有形成分:白血球

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白血球の形

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白血球は基本的に赤血球よりも大きな細胞ですが、サイズは6~30μmとばらつきがあります。白血球とよばれる細胞ははさらにいくつもの種類に分けることができ、その形状はさまざま。赤血球と異なり、白血球には核があるので、核を染めることができる薬剤で染色すればすぐに見分けることができます。

数ある白血球のうち、もっとも多く存在するのは好中球とよばれる細胞です。好中球という名前は、中性の染色液で核が良く染まることからつけられました。同じような名前のものとして、酸性の染色液で染まりやすい好酸球、塩基性の染色液で染まりやすい好塩基球がいます。この3つをまとめて顆粒球ということがあるので、覚えておきましょう。

そのほかにも、マクロファージ樹状細胞T細胞B細胞NK細胞などといった細胞が白血球に含まれています。

白血球のはたらき

白血球は体内環境を外敵から守る免疫反応をつかさどる細胞です。細菌やウイルスが入ってきたとき、それらの外敵を発見する、攻撃する、仲間を呼ぶ…などの仕事をします。前述した、好中球などのそれぞれの細胞に異なった役割があり、すべての白血球がバランスよくはたらくことで病気にもならず、体内の健康を保つことができているんです。

例えば、白血球のひとつである好中球は、傷口から侵入した細菌やウイルスが体に蔓延しないようにはたらきます。傷口付近までたどり着き、細菌やウイルスを食べてしまうのです。このように、白血球が自身の細胞に異物を取り込み除去するはたらきを食作用といいます。

有形成分:血小板

血小板の形

血小板は赤血球や白血球よりもずっと小さく、1つ1つが2μmほどしかありません。骨髄でつくられるのですが、巨大核細胞という細胞がプチプチとちぎれるようにしてできるため、赤血球同様に核がない細胞です。

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血小板のはたらき

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生物にとって「血液を失うこと」は、酸素を細胞に送ったり、外敵から身を守り手段を失うことであり、それはすなわち死を意味します。けがをして出血が起きてしまった時、傷口をふさいで血液の流出を防ぐのが血小板の役割です。

血管が破れ、出血してしまうほどの傷を負うと、血小板はその周辺に集まり血液凝固因子という物質を放出します。血液凝固因子はカルシウムイオンなどとともに、血液中のプロトロンビンという物質がトロンビンになるように作用。さらに、このトロンビンがフィブリノーゲンという物質にはたらきかけ、フィブリンという繊維状のたんぱく質を作りだすのです。このフィブリンが赤血球や白血球を絡めとり、血ぺい(血餅)、いわゆるかさぶたになり、止血されます。

無形成分:血しょう

前述の通り、血液中の無形成分は血しょう(血漿)といいます。ここまでご紹介してきた有形成分は、血液のうちの約45%ほど。のこりの約55%は、無形成分である血しょうが占めています。

血液から血しょうのみを取り出すのは簡単です。集めた血液を試験管などに入れて静置しておくだけ。自然と有形成分が集まって沈み、血しょうだけが上澄みになります。時間がない時には遠心分離器にかけ、有形成分の沈殿を早めても良いでしょう。

実際にやってみるとわかりますが、血しょうは無色透明ではなく、うっすらと黄色がかった液体です。純粋な水ではなく、さまざまな物質が溶けていることによります。

血しょうは、その約90%が水ですが、残りの約10%は各種のイオンや糖、ホルモンなどのたんぱく質。細胞にとって必要な成分や栄養が溶け込んでいるのです。

血液の4つの成分、もう言えますか?

ここまで読んでくださった方は、もう血液の4つの成分をすらすらと述べることができるでしょう。自分の全身をめぐっている血液についての知識はしっかりもっておきたいですよね。

それぞれの成分について簡単にみていきましたが、それぞれのはたらきはもっと奥が深く、この記事で詳細なところまで語ることができません。概略をとらえたならば、こんどは各成分について、さらに具体的に学んでいってみましょう。

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タンパク質と生物体の機能理科生物

血液の成分の働きを総まとめ!赤血球・白血球・血小板・血しょうのそれぞれの役割を現役講師がわかりやすく解説!

今回はヒトの体内を流れる血液についてみていきたい。

身体の中を血液が流れている、という事実は誰しもが知っていることですが、その血液は何からできているのか?という問いには、正確に答えられない人もいるでしょう。高校の生物基礎で学習する内容ですが、一般常識としても知識を確認しておきたいな。

生物のからだに詳しい現役講師のオノヅカユウを招いた。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

血液は何からできている?

わたしたちの身体の中を隅々まで巡り、細胞へ酸素や栄養を届けてくれる血液。肉眼で見ただけではただ単なる赤い液体にしか見えませんが、血液中には複数の成分が存在し、それぞれのはたらきをしています。

結論から言えば、血液を構成しているのは、赤血球、白血球、血小板、そして血しょうの4つの成分です。これらの成分は有形成分と無形成分という二つのグループに大別することができます。

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有形成分は「形のある」という言葉からもわかるとおり、大きさも重さもある固体です。もっと正確に言えばもろもろの「細胞」のことを指します。赤血球、白血球、血小板は有形成分です。無形成分とは、形の定まらない液体成分のこと。前述の4つの成分のうち、血しょうがこれに当たります。

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有形成分:赤血球

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血液中の成分として多くの人が真っ先に思いつくのが赤血球ではないでしょうか?私たちの血液が赤いのは、この赤血球がたくさん存在しているからです。

赤血球の形

赤血球はその1つ1つが個々の細胞です。真ん中をへこませた白玉団子のような形で、その大きさは直径約7~8μmほどとなっています。

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