今回は水との相性ともいえる「親水性」という性質について勉強していこう。

水と親しいと書くように、水と仲が良く、混ざりやすいという性質を意味している。今回は親水性を示す原理や代表物質についての解説です。

次回は親水性と反対の「疎水性」についても解説するから、あわせてチェックしておこう。化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.水に溶けやすいものと溶けないもの

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今回のテーマである「親水性」について解説する前に、少し考えてみましょう。

物質には水に溶けやすいものと溶けにくいものが存在します。水には溶けにくくても、アルコールやアセトンなど、溶媒を変えることによって溶けやすさが変わることを覚えていますか?水に溶けやすい物質を溶質として水に混ぜたとき、その溶液は水溶液ということができましたね。例えば塩、砂糖、スポーツドリンクの素など、調味料には水に溶けやすいものが多いかもしれません。一方で油と水は分離してしまうし、小麦粉はいくら混ぜても沈殿や白濁した水になるだけで、完全に溶けたということはできませんね。

では、コーヒーで考えてみましょう。インスタントコーヒーは水(お湯)に溶けますが、ドリップ式のコーヒーは溶けずに残りますね。しかしどちらもコーヒーの成分は溶け出るからこそあの味と香りを楽しめるということです。溶けるか溶けないかというのは、目に見える物質そのものだけでなく、その成分にもいえることだというのがわかるでしょう。水は溶媒として非常に用途の多いものだと、頭に入れておいてください。

2.濡れるものと水をはじくもの

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それでは、物質に水をかけたときの様子について考えてみましょう。

洋服は当然ながら水を吸収しますが、雨の日に着るカッパは水をはじきますね。傘や長靴もそうです。紙袋は水に濡れてシワシワになりますが、ビニール袋は濡れても丈夫なままカタチを保ちます。このように、物質には濡れるもの(表面に薄く水の膜ができるもの)水をはじくもの(水が水滴になり、物質に付着しないもの)がありますね。

窓ガラスや車など、屋外で雨に当たる可能性の高いものには水をはじくものが多いでしょう。お風呂の中の水はけをよくするためにも用いられる、撥水(はっすい)加工という言葉を聞いたことがありますか?撥水というのは水を撥く(はじく・弾く)ことを意味しています。では、濡れてしまうものと水をはじくもの、その違いはどこにあるのでしょうか。

3.水との相性を示す親水性

水のあれこれを見てみたところで、親水性について考えてみましょう。親水性とはその名の通り「水と親しい性質」を意味します。これはつまり、先述した「水に溶けやすいもの」「水に溶けない場合でも水に濡れるもの(表面に薄く水の膜ができるもの)」という物質の性質です。水との親和性が大きいことという言い方もされますが、具体的にどういった性質なのかを考えてみるとわかりやすいでしょう。

\次のページで「3-1.水素結合に由来する親和性」を解説!/

3-1.水素結合に由来する親和性

電気陰性度が大きい物質は、分子として安定したカタチをとっていても電気的にはマイナスに荷電しています。そして水分子内の水原子はプラスに荷電している状態です。このとき、水分子とその他の物質の間に水素結合が起こる場合、水に溶解しやすかったり、水に溶解しないまでも濡れやすいという性質を示します。

塩化ナトリウムのようにイオン結合によって成り立つ物質、塩化水素のように分子間の極性が大きい物質は親水性のある物質の代表です。アンモニウムイオンのように、水に溶けて電荷をもつ物質もこれに含まれます。

3-2.親水性・疎水性・撥水性

3-2.親水性・疎水性・撥水性

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親水性を考える上で外すことのできないキーワードがあります。それが「疎水性」「撥水性」です。

疎水性は親水性と対で覚えておきたいものですから、次回詳しく解説します。撥水性というのは、きっと一度は聞いたことのあるはずです。ではこれらの違いを図で簡単に比べてみましょう。親水性は水との親和性が高いために水と密着した様子を示します。これがいわゆる濡れている状態といえるでしょう。それに比べ撥水性は水との接着面積が少なく、水は水玉のカタチで存在するために物質は濡れていないも同然の状態になります。これが日常生活にどう活かされているのかを見ていきましょう。

4.日常生活への応用

撥水コートや撥水コーティングという言葉は有名かもしれませんが、実は親水性を活かしたコーティング剤や加工も身近なものに応用されています。撥水性と親水性はそれぞれメリットとデメリットがあるので、どちらの効果を優先したいかによって、あなたなりのチョイスができるようになるといいですね。

4-1.車のコーティング剤

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車は日々のお手入れによって見た目は大きく変わってきます。洗車のあとにワックスをかけたり、ディーラーでコーティングをお願いすることもあるでしょう。

撥水コーティング水をはじくために常にクリアな視界を保つことができるのがメリットです。洗車時のふき取りも簡単ですよね。しかし水玉のせいで、そこだけ跡になりやすいのがデメリットです。一方親水コーティングボディーを水が流れていくので汚れがつきにくく、水跡も残りにくくなります。しかしふき取りは手間でしょう。疎水コーティングは良くも悪くも2つの中間といったところでしょうか。それぞれの特徴をよく理解することが大切ですね。

\次のページで「4-2.トイレのコーティング剤」を解説!/

4-2.トイレのコーティング剤

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トイレはいかに清潔さを保つのかが大切になる場所です。細菌の繁殖を防ぎ、汚れや水垢を防がなくてはなりません。そしてそれらの原因になる便器の傷も防ぐ必要があります。そのためにはコーティングがなによりも重要だといっても過言ではありません。

撥水性コーティングは水そのものを付着させないという原理を利用したものですが、親水性コーティングは陶器の表面を水で覆うことにより、汚れを付着させないという考え方で作られたものです。どちらも目的・目標は同じですが、そこに至るまでのアプローチが異なるというのが面白いところですね。

水と馴染みやすい「親水性」

親水性とは、水と親和性の高い物質の性質を示す言葉です。これを具体的にいうと、水に溶けやすい、水と結びつきやすいという性質といえるでしょう。また、物質の表面が濡れやすいこと、つまり水を弾きにくいことも親水性の条件の1つとされています。

水分子は共有結合によって結びついていて、酸素原子と水素原子は一見すると電荷をもっていないように見えるでしょう。しかし電気陰性度には差があるため、水素原子はプラスに、酸素原子はマイナスの電荷に偏ります。これによって水分子同士だけでなく、水分子と他の分子が水素結合によって結びつきやすくなるということは化学結合の内容で解説しましたね。この水素結合が親水性という性質の由来です。

親水性をより深く理解するうえで忘れてはならないのが「疎水性」でしょう。親水性物質はコーティング剤でよく用いられる物質ですが、この疎水性物質も同様です。しかしその原理は真逆なのが面白いところでしょう。それでは、次回は疎水性について解説していきますね。

" /> 水と相性がいい物質とは?「親水性」について元塾講師がわかりやすく解説 – Study-Z
化学

水と相性がいい物質とは?「親水性」について元塾講師がわかりやすく解説

今回は水との相性ともいえる「親水性」という性質について勉強していこう。

水と親しいと書くように、水と仲が良く、混ざりやすいという性質を意味している。今回は親水性を示す原理や代表物質についての解説です。

次回は親水性と反対の「疎水性」についても解説するから、あわせてチェックしておこう。化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.水に溶けやすいものと溶けないもの

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今回のテーマである「親水性」について解説する前に、少し考えてみましょう。

物質には水に溶けやすいものと溶けにくいものが存在します。水には溶けにくくても、アルコールやアセトンなど、溶媒を変えることによって溶けやすさが変わることを覚えていますか?水に溶けやすい物質を溶質として水に混ぜたとき、その溶液は水溶液ということができましたね。例えば塩、砂糖、スポーツドリンクの素など、調味料には水に溶けやすいものが多いかもしれません。一方で油と水は分離してしまうし、小麦粉はいくら混ぜても沈殿や白濁した水になるだけで、完全に溶けたということはできませんね。

では、コーヒーで考えてみましょう。インスタントコーヒーは水(お湯)に溶けますが、ドリップ式のコーヒーは溶けずに残りますね。しかしどちらもコーヒーの成分は溶け出るからこそあの味と香りを楽しめるということです。溶けるか溶けないかというのは、目に見える物質そのものだけでなく、その成分にもいえることだというのがわかるでしょう。水は溶媒として非常に用途の多いものだと、頭に入れておいてください。

2.濡れるものと水をはじくもの

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それでは、物質に水をかけたときの様子について考えてみましょう。

洋服は当然ながら水を吸収しますが、雨の日に着るカッパは水をはじきますね。傘や長靴もそうです。紙袋は水に濡れてシワシワになりますが、ビニール袋は濡れても丈夫なままカタチを保ちます。このように、物質には濡れるもの(表面に薄く水の膜ができるもの)水をはじくもの(水が水滴になり、物質に付着しないもの)がありますね。

窓ガラスや車など、屋外で雨に当たる可能性の高いものには水をはじくものが多いでしょう。お風呂の中の水はけをよくするためにも用いられる、撥水(はっすい)加工という言葉を聞いたことがありますか?撥水というのは水を撥く(はじく・弾く)ことを意味しています。では、濡れてしまうものと水をはじくもの、その違いはどこにあるのでしょうか。

3.水との相性を示す親水性

水のあれこれを見てみたところで、親水性について考えてみましょう。親水性とはその名の通り「水と親しい性質」を意味します。これはつまり、先述した「水に溶けやすいもの」「水に溶けない場合でも水に濡れるもの(表面に薄く水の膜ができるもの)」という物質の性質です。水との親和性が大きいことという言い方もされますが、具体的にどういった性質なのかを考えてみるとわかりやすいでしょう。

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