

唐の時代に生まれた彼女は、皇帝の寵姫となり、その扱われ方は正妻である皇后と肩を並べるほどであったという。あまりの美しさから、国を傾かせ、ついには『安史の乱』の原因になってしまったと現代に伝わっている。本当に美貌のみで戦争の原因になってしまうだろうか?彼女には様々な逸話が残されているが、その最期はどんなものだったのだろうか。そんな「楊貴妃」の一生をわかりやすくまとめておいた。
年間100冊以上を読む読書家で、中国史マニアのライターKanaと一緒に解説していくぞ。

解説/桜木建二
「ドラゴン桜」主人公の桜木建二。物語内では落ちこぼれ高校・龍山高校を進学校に立て直した手腕を持つ。学生から社会人まで幅広く、学びのナビゲート役を務める。
ライター/Kana
年間100冊以上を読破する読書家。現在はコーチ業に就いており、わかりやすい説明が得意。中国史マニアでもあり、今回は「楊貴妃」について、わかりやすくまとめた。
「楊貴妃」の生まれ、幼少期、そして美貌
猫猫的日记本 – 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, リンクによる
世界三大美女、そして中国四大美女の一角を成す「楊貴妃」(ようきひ)は、719年6月に生まれました。生まれた日は、1日という説と、22日という説があります。
『蒲州』(ほしゅう)『永楽県』(えいらくけん)で、蜀州司戸の「楊玄琰」の四女として生まれました。しかし、幼い頃に両親が他界し、そのまま叔父の「楊玄璬」の家で育てられたといいます。
当時の高貴な身分のものは、気軽に名前を出してはいけないという通説通り「楊貴妃」という名も、本名ではありません。「楊」というのは苗字、「貴妃」とは彼女の身分をさしていました。
本名は「楊玉環」といい「玉環」が本名ということになるのです。
幼少期の「楊貴妃」の逸話、3選
「楊貴妃」には、幼い頃より様々な逸話が残されています。まずは3つ、勉強していきましょう。
その1.「楊貴妃」の未来を山に住む仙人が当てた!?
ある日、山に住んでいた仙人「張」が、「楊貴妃」の人相を見ると「この娘は、将来玉の輿に乗るであろう、それは皇后と同等のものである」と予言、また従兄の「楊国忠」(ようこくちゅう)を見ると「この子もまた、朝廷の大権を握るであろう」と告げたそうです。
その2.「楊貴妃」の涙は、紅かった!?
「楊貴妃」の両親が他界したとき、彼女は紅い涙を流しました。その日は、寒い日であったため、彼女の紅い涙は凍ったというのです。美女が流した涙が紅く凍ったとあれば、それは宝石のような美しさでしょうね。
その3.その美しさは香りまで放っていた!?
「楊貴妃」は、実は「楊一族」の養子だという逸話もあり、彼女の生誕の時絡みの逸話もたくさんあります。生まれながらに玉環を持っていたため「玉環」という名がつけられたというものや、本当は庶民の出なのですが、生まれた時に室内に芳香が充満し、そのあまりの美しさから「楊玄琰」に売られたという逸話もあるのです。
殆どは、後世の脚色であるとは思うのですが、それでも幼少期のみでこれだけの逸話に溢れているとは、それほどまでに美しい女性だったのでしょうね。
皇帝「玄宗」の息子、「李瑁」の妻となる
楊貴妃といえば、皇帝の寵姫であったという印象が強いのですが、実際には皇帝の息子に嫁いでいるのです。
735年、皇太子である「李瑁」(りぼう)の妻として迎えられます。李瑁は、母である「武恵妃」(ぶけいひ)の推薦で皇太子となっていたのですが、その2年後、武恵妃が死去してしまったことを発端に皇太子の座を剥奪されてしまうという事件が起きてしまいました。
『皇太子の妻』として玉の輿に乗った楊貴妃でしたが、まさか婚姻を結んでから2年でその座から降りてしまうとは予想だにしなかったでしょう。
李瑁とは離縁、女冠となったのちに「玄宗」の寵姫となる
Alex Kwok – 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, リンクによる
李瑁と婚姻を結んでから数年経った時に、義父であり皇帝であった「玄宗」(げんそう)に見初められます。たとえ息子の妻であったとしても、皇帝の権力は絶大なものであり、楊貴妃は一度『女冠』(出家のこと)となった後に、玄宗の後宮『太真宮』に入ることとなりました。
楊貴妃の容貌を語った書物には、唐代で理想とされた豊満な身体を持っており、髪やつややか、肌はきめ細やかで、たいへんな美人であったようです。さらに性格は利発、これもまた玄宗を魅了したとあります。
また才気にも優れ、特に楽曲・歌舞にその才を発揮したようです。初めての玄宗との謁見の際も、楽曲を演奏したといいます。
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まさか皇帝である「玄宗」が、息子「李瑁」から「楊貴妃」を奪い取っていたとはな。一度女冠にさせたのは、玄宗としても、世間体を気にしたんだな。
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