地球にいたら当たり前のように存在する「空気」。とても軽そうに思えるが、空気の重さはどれくらいなのでしょうか?

だいたいの物体は空中から地面に落ちてくる。ボールでも息で膨らませた風船でも空中に投げると落ちてくるよな。つまり空気より重い(密度が高い)。一方、不思議と空中に浮いている物体もある。ヘリウムガスで膨らませた風船や気球など。これらは空気より軽い(密度が低い)。

今回、理系ライターのR175と一緒に空気の重さ(密度)について解説していこう。実はこの記事のキーワードは”状態方程式”です。

ライター/R175

関西のとある理系国立大出身。エンジニアの経験があり、身近な現象と理科の教科書の内容をむずびつけるのが趣味。教科書の内容をかみ砕いて説明していく。

1.空気の重さ

1.空気の重さ

image by Study-Z編集部

地球上に当たり前に存在する「空気」。一体どれくらいの重さ(密度)なのでしょうか?

空気は目に見えないけれど、実は無数の「粒子」から成り立っています。空気の約80%は窒素、約20%が酸素で残りは二酸化炭素等その他の気体が微量に混じっているもの。何も無いのではなく砂や水と同様、粒子のような性質で存在しています。

空気の密度を求めるには?

空気の密度は下記の計算式で求められます。

\次のページで「2.気体粒子の重さ(物質量)を求める」を解説!/

密度=気体粒子の重さ/空気の体積

体積は自由に設定できるので、とりあえず1Lとしましょう。問題は、空気を構成する気体粒子の重さですね。気体粒子の正体は、窒素や酸素など。窒素や酸素原子の物質量1mol当たりの重さは分かっていますから、これらの気体の物質量が分かれば重さが分かりますね。ではどうやって物質量を求めるのでしょうか。

2.気体粒子の重さ(物質量)を求める

2.気体粒子の重さ(物質量)を求める

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気体粒子の重さ(物質量)は何が関わっているか考えてみましょう。どんな状態の時に気体粒子は多い(or少ない)のでしょうか。

上記のイラストに示すように、シリンダの中に気体を入れて、ピストンで封止。ピストンは自由に動かせるものとします。注射器の針の方を蓋したような状態を想定してください。気体の粒子の数が何に関係しているか確認する目的です。

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ピストンは押さえずに、シリンダ内の気体を2倍に増やしてみましょう(気体の粒の数も2倍)。どうなるでしょうか。言うまでもなく、気体の体積も2倍。気体の粒子の重さ(物質量)は体積に比例しますね。

次に、ピストンを固定して気体の量を2倍にしてみましょう。どうなるでしょうか?気体の圧力でピストンが押し返されますね。シリンダ内から押してくるモノが2倍に増えるわけですから、押し返してくる圧力も2倍。気体の粒子の重さ(物質量)と圧力は比例しますね。

温度を変えるとどうなるか?

温度を変えるとどうなるか?

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さて、シリンダを温めてみましょう。すると、気体の量は変わらないのに体積が増えてしまいますね。もしくはピストンを押さえておけば、気体の量は変わらないのに圧力が高くなります。

気体1Lを加熱して、絶対温度Tが2倍の2Tになったとしましょう。このとき熱運動のエネルギーが2倍になりますから、気体が押し寄せてくる力は2倍。圧力または体積が2倍になったのと同じです。

あたかも、冷たいままの空気が2倍あるかのような状態。つまり、温度T、2L=温度2T、1L。温度が高ければ高いほど、「気体の量が少ない→絶対温度は気体の量に反比例する」ということが分かります。

\次のページで「3.気体の状態方程式」を解説!/

3.気体の状態方程式

3.気体の状態方程式

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2項の内容を公式にまとめたのが、理想気体の状態方程式。左辺のnRは気体の量を表す指標で、それが圧力Pと体積Vに比例し、絶対温度Tに反比例することを表しています。

nRの内訳は、nは気体の物質量、気体の粒子数(重さ)を表す指標です。n=1のときの気体の粒子数は6x10^23。気体粒子が6x10^23個集まった時が1molという定義。

Rはnを上記のように定義した時につじつまが合うように設定された定数。Rはモル気体定数と呼ばれる決まった数字です(R=8.3[J/mol/K])

4.状態方程式を使って空気の密度を計算しよう

さて、いきなりですが以下の条件から空気の密度を求めましょう。

・空気1Lの重さから密度を計算すること。
・空気は80%が窒素、20%が酸素、窒素は1molで28g、酸素は1molで32gとする。

問1 空気1Lのうち、窒素と酸素の体積はそれぞれ何[m^2]でしょうか。

問2  空気の圧力を大気圧(1x10^5[Pa])、温度を300K(気温27℃に相当)、気体定数R=8.3とする。気体の状態方程式から窒素と酸素の物質量はそれぞれ何molでしょうか。

問3 問2の結果から酸素と窒素はそれぞれ何gでしょうか。また、空気1Lの重さの合計はいくらでしょうか。

問4 空気の密度は何[g/cm^3]ですか?

解答はこちらからチェック!

それでは解答を見ていきましょう。

問1 解答
合計1Lの空気のうち80%を酸素、20%を窒素なので、窒素の体積VN=0.8L=0.0008[m^3]、酸素の体積VO=0.2L=0.0002[m^2]

問2 解答
窒素の物質量をnN、酸素の物質量をnOとする。気体の状態方程式からnN=(P・VN)/(R・T)、nO=(P・VO)/(R・T)。

値を代入して、窒素の物質量nN=(10^5x0.0008)/(8.3x300)=0.032mol酸素の物質量nO=(10^5x0.0002)/(8.3x300)=0.008mol

問3 解答
窒素の重量=28x0.032=0.896g、酸素の重量=32x0.008=0.256gで合計1.15g。

問4 解答
問3から、空気の密度は1.15g/m^3でこれを単位換算すると、
1.15g/L=0.00115g/cm^3

なんと、水の密度の900分の1程度。やはり軽いですね。

おまけ例題と解答

下記の例題にもチャレンジしてみましょう。

空気を400K(127℃)に加熱したら密度はいくらになりますか。
(1からの計算は避けて、問4の答えを大いにヒントに利用しましょう。)

まず、300K→400Kになると、物質量は何倍になるでしょうか。状態方程式から、n=PV/RTから絶対温度が4/3倍になると、物質慮は3/4倍。物質量が3/4倍→重さも3/4倍。1Lあたりの重さが3/4倍になりますから、1.15gx4/3=0.86g。なんと水の1000分の1以下の密度です。

状態方程式がカギだった

密度→重さ・体積が必要、重さ→物質量が必要と考えていくプロセスはテストで出てきそうな展開。今回、身近過ぎる存在である「空気」を題材に上記のようなプロセスで考えるための材料にしていただけたら幸いです。

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化学

簡単にわかる空気の密度の求め方!気体の状態方程式も理系ライターがわかりやすく解説

地球にいたら当たり前のように存在する「空気」。とても軽そうに思えるが、空気の重さはどれくらいなのでしょうか?

だいたいの物体は空中から地面に落ちてくる。ボールでも息で膨らませた風船でも空中に投げると落ちてくるよな。つまり空気より重い(密度が高い)。一方、不思議と空中に浮いている物体もある。ヘリウムガスで膨らませた風船や気球など。これらは空気より軽い(密度が低い)。

今回、理系ライターのR175と一緒に空気の重さ(密度)について解説していこう。実はこの記事のキーワードは”状態方程式”です。

ライター/R175

関西のとある理系国立大出身。エンジニアの経験があり、身近な現象と理科の教科書の内容をむずびつけるのが趣味。教科書の内容をかみ砕いて説明していく。

1.空気の重さ

1.空気の重さ

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地球上に当たり前に存在する「空気」。一体どれくらいの重さ(密度)なのでしょうか?

空気は目に見えないけれど、実は無数の「粒子」から成り立っています。空気の約80%は窒素、約20%が酸素で残りは二酸化炭素等その他の気体が微量に混じっているもの。何も無いのではなく砂や水と同様、粒子のような性質で存在しています。

空気の密度を求めるには?

空気の密度は下記の計算式で求められます。

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