今回は木星について解説していきます。

木星は太陽系最大の惑星です。木星は古代よりその存在をしられていて信仰対象になっている。英語名のジュピターはローマ神話の主神であることからもそれが見て取れる。では、木星について見てみよう。

今回は物理学科出身のライター・トオルさんと解説していきます。

ライター/トオル

物理学科出身のライター。広く科学一般に興味を持つ。初学者でも理解できる記事を目指している。

木星について

image by iStockphoto

木星は太陽系最大の惑星で巨大ガス惑星です。木星と土星は巨大ガス惑星といわれ、巨大ガス惑星は水星から火星までの岩石型惑星とは構造がかなり違います。これは太陽系の誕生時に太陽から遠かったため、氷やメタンといった揮発性物質が溶けなかったことが原因のようです。また木星は黄道上にある黄道12宮という星座をほぼ1年で1周します。古代中国でも同じような考えがあり、木星の位置により現在がいつごろか分かるため、歳を表す星という意味で歳星といわれたりもしたようです。今回はこの木星について紹介します。

木星の基礎データ

SolarSystem OrdersOfMagnitude Sun-Jupiter-Earth-Moon.jpg
Tdadamemd - File:The Sun by the Atmospheric Imaging Assembly of NASA's Solar Dynamics Observatory - 20100819.jpg File:Jupiter by Cassini-Huygens.jpg - Note: this image of Jupiter was altered by removing the shadow of Europa. File:The Earth seen from Apollo 17.jpg File:FullMoon2010.jpg, CC 表示-継承 3.0, リンクによる

木星は直径約14万キロメートルで地球の約11倍の大きさです。太陽から約7億8000万キロメートルの距離、地球の約5倍の距離のところを周期約12年で公転しています。質量は約1.9×10の27乗キログラムで太陽の約1000分の1、地球の約318倍で、もちろん惑星の中で最大の重さです。木星は自転周期は約10時間という高速で回転しているため、遠心力によって赤道部分が膨らんでいます。質量は最大ですが、大部分がガスであるため、密度は1立方センチメートルあたり1.3グラムと地球の5分の1以下です。主成分は水素とヘリウムであり、これは太陽の成分と似ていています。事実、木星の質量が現在の80倍以上であれば中心部で核融合がはじまり、太陽系第2の恒星になっていたでしょう。このような意味で木星は太陽になりそこねた天体とも言えます。

木星の構造

Jupiter diagram.svg
Kelvinsong - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, リンクによる

先ほど述べたように、木星は巨大ガス惑星といわれガスを主体としているため、地球型の固い地面がある惑星と構造が違っています。中心部の構造はまだよくわかっていませが、中心部には岩石を含む核があり、その回りを液体状態の水素が取り巻き、その回りを水素を主成分とするガスが取り巻いているというのが現在の理論的予想です。木星の表面温度はマイナス140度程度であり、これは太陽光だけで計算する温度よりも高くなっています。この熱の一部はケルビン・ヘルツホルム機構といわれる星が収縮することによる発熱によって得られると考えれているようです。したがって、木星の誕生時には現在の2倍程度の大きさがあったことになります。

木星の大気

Jupiter Belt System.svg
Jupiter_Belt_System.JPG: Original uploader was Awolf002 at en.wikipedia derivative work: Borrow-188 (talk) - Jupiter_Belt_System.JPG, Original source, パブリック・ドメイン, リンクによる

木星の大気はほとんどが水素とヘリウムで構成され、ガス惑星であるため大気と惑星との明快な境界はありません。1気圧のところを地表と仮定した場合は大気は約5000キロメートルになり、これも太陽系最大の大気の厚さになります。木星の大気は下から、対流圏、成層圏、熱圏、外気圏です。外気圏と宇宙空間との明確な境界線がないの地球と同じですが、対流圏と惑星の境界も存在しないのがガス惑星の特徴になります。つまり、木星や土星には地球のような地面がありません。対流圏には複雑な雲のシステムが存在し、望遠鏡の画像で見える特徴的な帯の模様が雲です。明るい色の帯がゾーン、暗い色の帯がベルトと呼ばれています。ゾーンが冷たい上昇気流で、ベルトが暖かい下降気流です。ゾーンとベルトが交互に平行に並んでいるのが画像からよくわかります。上記のように帯にはすべて名前がつけられているそうです。

大赤斑

Great Red Spot From Voyager 1.jpg
NASA - http://photojournal.jpl.nasa.gov/catalog/PIA00014, パブリック・ドメイン, リンクによる

木星の望遠鏡画像で一番目立つものとえばやはり大赤斑でしょう。木星の南半球の中緯度にあり、東西約2万6000キロメートル、南北約1万4000キロメートル、周期6日ほどで回転している巨大な渦です。地表の望遠鏡からも観測可能で、すでに1665年にカッシーニによって発見されまています。地球2、3個分の大きさで周りより少し温度が高く、ゾーンの部分と同様にやや盛り上がった上昇流の領域です。渦自体は安定しているのですが、1665年以来、赤い色が濃くなったり薄くなったりしています。実は、最近大赤斑がずっと縮小傾向にあり、2050年ごろには消滅するのではないか考える研究者が多いようです。ただ大赤斑の構造自体よくわかっていないため、この先どうなるのかは確実にはわかりません。

\次のページで「木星の衛星」を解説!/

木星の衛星

The Galilean satellites (the four largest moons of Jupiter).tif
NASA/JPL/DLR - http://photojournal.jpl.nasa.gov/catalog/PIA01299 (direct link), パブリック・ドメイン, リンクによる

木星には60個以上の衛星があるといわれていますが、中でも17世紀初めにガリレオによって発見された4大衛星である、イオ、エウロパ、ガニメデ、カリストは有名です。これらはガリレオにちなんでガリレオ衛星とも呼ばれます。ガリレオはこれらの衛星の動きを観察することによって、地動説を確信したそうです。今回はその中からイオとエウロパについて見てみましょう。上の図は左から、イオ、エウロパ、ガニメデ、カリストです。

イオについて

イオ(ガリレオ撮影)
NASA / JPL / University of Arizona - この画像もしくは映像物は、アメリカ航空宇宙局 (NASA) のジェット推進研究所により、ID: PIA02308 で公開されています。, パブリック・ドメイン, リンクによる

イオは木星の第1衛星になります。直径は約3600キロメートルで太陽系の衛星の中では4番目の大きさです。イオには400個を超える火山があり、太陽系の中で最も地質学的に活発な天体と考えられています。この地質活動の原因は木星と他の衛星による潮汐力です。つまり、木星などの重力が原因で衛星の形が周期的に歪められ、内部が摩擦熱で高温になっています。これが岩石を溶かし溶岩となって噴き出す火山活動のエネルギー源です。イオの表面の大部分は硫黄と二酸化炭素の霧で覆われた広い平原からなっているため、望遠鏡画像はけっこうグロテスクに見えます。

エウロパについて

エウロパ(ガリレオ探査機撮影)
NASA/JPL/DLR - http://photojournal.jpl.nasa.gov/catalog/PIA00502 (TIFF image link), パブリック・ドメイン, リンクによる

エウロパは木星の第2衛星で直径は約3200キロメートル、ガリレオ衛星の中では最小です。エウロパは水の氷の地殻をもっているのが特徴で、氷の表面に数多くの筋が縦横無尽に走っています。表面の氷の厚さは数十キロメートルあり、ひび割れの原因はイオと同じく、潮汐力による内部の熱のための膨張のようです。エウロパの表面の下には液体の水が存在し、熱により液体の状態にたもたれていると考えられています。この海には生命が存在していると考える科学者もいるようです。

太陽系第1の巨大惑星

太陽系第1の巨大惑星

image by Study-Z編集部

今回は太陽系最大の惑星である木星について簡単に紹介しました。さすがに最大の惑星はスケールが大きく、もし木星の近くで観察できたとしたらその圧倒的な現象の数々に度肝を抜かれるに違いありません。今回は触れられませんでしたが、その巨大な重力によって太陽系の構造自体にも大きな影響を与えているようです。木星ことを学ぶときはその圧倒的スケールを常に意識しながら学んでみてください。

" /> 「木星」とその衛星につてい理系ライターが丁寧にわかりやすく解説 – Study-Z
地学宇宙理科

「木星」とその衛星につてい理系ライターが丁寧にわかりやすく解説

今回は木星について解説していきます。

木星は太陽系最大の惑星です。木星は古代よりその存在をしられていて信仰対象になっている。英語名のジュピターはローマ神話の主神であることからもそれが見て取れる。では、木星について見てみよう。

今回は物理学科出身のライター・トオルさんと解説していきます。

ライター/トオル

物理学科出身のライター。広く科学一般に興味を持つ。初学者でも理解できる記事を目指している。

木星について

image by iStockphoto

木星は太陽系最大の惑星で巨大ガス惑星です。木星と土星は巨大ガス惑星といわれ、巨大ガス惑星は水星から火星までの岩石型惑星とは構造がかなり違います。これは太陽系の誕生時に太陽から遠かったため、氷やメタンといった揮発性物質が溶けなかったことが原因のようです。また木星は黄道上にある黄道12宮という星座をほぼ1年で1周します。古代中国でも同じような考えがあり、木星の位置により現在がいつごろか分かるため、歳を表す星という意味で歳星といわれたりもしたようです。今回はこの木星について紹介します。

木星の基礎データ

木星は直径約14万キロメートルで地球の約11倍の大きさです。太陽から約7億8000万キロメートルの距離、地球の約5倍の距離のところを周期約12年で公転しています。質量は約1.9×10の27乗キログラムで太陽の約1000分の1、地球の約318倍で、もちろん惑星の中で最大の重さです。木星は自転周期は約10時間という高速で回転しているため、遠心力によって赤道部分が膨らんでいます。質量は最大ですが、大部分がガスであるため、密度は1立方センチメートルあたり1.3グラムと地球の5分の1以下です。主成分は水素とヘリウムであり、これは太陽の成分と似ていています。事実、木星の質量が現在の80倍以上であれば中心部で核融合がはじまり、太陽系第2の恒星になっていたでしょう。このような意味で木星は太陽になりそこねた天体とも言えます。

木星の構造

Jupiter diagram.svg
Kelvinsong投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, リンクによる

先ほど述べたように、木星は巨大ガス惑星といわれガスを主体としているため、地球型の固い地面がある惑星と構造が違っています。中心部の構造はまだよくわかっていませが、中心部には岩石を含む核があり、その回りを液体状態の水素が取り巻き、その回りを水素を主成分とするガスが取り巻いているというのが現在の理論的予想です。木星の表面温度はマイナス140度程度であり、これは太陽光だけで計算する温度よりも高くなっています。この熱の一部はケルビン・ヘルツホルム機構といわれる星が収縮することによる発熱によって得られると考えれているようです。したがって、木星の誕生時には現在の2倍程度の大きさがあったことになります。

木星の大気

Jupiter Belt System.svg
Jupiter_Belt_System.JPG: Original uploader was Awolf002 at en.wikipedia derivative work: Borrow-188 (talk) – Jupiter_Belt_System.JPG, Original source, パブリック・ドメイン, リンクによる

木星の大気はほとんどが水素とヘリウムで構成され、ガス惑星であるため大気と惑星との明快な境界はありません。1気圧のところを地表と仮定した場合は大気は約5000キロメートルになり、これも太陽系最大の大気の厚さになります。木星の大気は下から、対流圏、成層圏、熱圏、外気圏です。外気圏と宇宙空間との明確な境界線がないの地球と同じですが、対流圏と惑星の境界も存在しないのがガス惑星の特徴になります。つまり、木星や土星には地球のような地面がありません。対流圏には複雑な雲のシステムが存在し、望遠鏡の画像で見える特徴的な帯の模様が雲です。明るい色の帯がゾーン、暗い色の帯がベルトと呼ばれています。ゾーンが冷たい上昇気流で、ベルトが暖かい下降気流です。ゾーンとベルトが交互に平行に並んでいるのが画像からよくわかります。上記のように帯にはすべて名前がつけられているそうです。

大赤斑

Great Red Spot From Voyager 1.jpg
NASA – http://photojournal.jpl.nasa.gov/catalog/PIA00014, パブリック・ドメイン, リンクによる

木星の望遠鏡画像で一番目立つものとえばやはり大赤斑でしょう。木星の南半球の中緯度にあり、東西約2万6000キロメートル、南北約1万4000キロメートル、周期6日ほどで回転している巨大な渦です。地表の望遠鏡からも観測可能で、すでに1665年にカッシーニによって発見されまています。地球2、3個分の大きさで周りより少し温度が高く、ゾーンの部分と同様にやや盛り上がった上昇流の領域です。渦自体は安定しているのですが、1665年以来、赤い色が濃くなったり薄くなったりしています。実は、最近大赤斑がずっと縮小傾向にあり、2050年ごろには消滅するのではないか考える研究者が多いようです。ただ大赤斑の構造自体よくわかっていないため、この先どうなるのかは確実にはわかりません。

\次のページで「木星の衛星」を解説!/

次のページを読む
1 2
Share: