
注意!過冷却と混同しやすい「凝固点降下」について元塾講師がわかりやすく解説

その名の通り、凝固点が下がることで0℃を下回っても凍らない水というものがある。「0℃を下回っても凍らない水」これだけを見ると過冷却と何が違うのかと思うやつも多いだろう。
原理を理解することで凝固点降下について正しく理解しよう。さあ、化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していくぞ。

解説/桜木建二
「ドラゴン桜」主人公の桜木建二。物語内では落ちこぼれ高校・龍山高校を進学校に立て直した手腕を持つ。学生から社会人まで幅広く、学びのナビゲート役を務める。

ライター/Ayumi
理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。
1.水は何℃で凍る?

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水は何℃で凍る?という質問をされたら何と答えますか?
「0℃」というのが一般的な回答でしょう。これはもちろん正解です。水が液体から固体になるとき、つまり凝固するときの温度(凝固点)は0℃でしたね。
しかし、前回「過冷却」についても解説をしましたね。水は0℃を下回っても液体の状態を維持する現象があるという話でした。ということは0℃では凍らないと思うでしょう。しかし、過冷却は容器に衝撃を与えることで結晶化が進みましたね。このときの温度変化のグラフを思えていますか?実は、一度マイナスの温度に下がった液体の水は、衝撃によって再度0℃で水と氷の混ざった状態を経て凍っていくのです。つまり、やはり0℃で凍るということに変わりありません。
では、水が凍るのは「0℃」という答え1つでいいのでしょうか?
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さて、ここで別の質問だ。ジュースでアイスを作ろうとした経験はあるか?もしあるならそのときのことを思い出してみよう。

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みなさんアイスは好きですか?普通に市販されているアイスはもちろん美味しいですが、普段飲むジュースを凍らせてアイスにしてみようと思ったことはありませんか?やってみた経験がある人にはわかるでしょう。冷凍庫で氷を作るのと同じように容器に入れては見たものの、固まるまでにはかなりの時間がかかったはずです。もしくは少しシャーベット状にはなったものの、途中で諦めて飲んでしまったという人もいるかもしれませんね。
ジュースを凍らせる場合、冷凍庫でマイナスの温度まで液体を冷やしてもなかなか凍りません。ジュースの主成分は当然水ですよね?ということは、水が凍る温度は「0℃よりも低い」というのも答えになる気がしませんか?
2.凝固点降下とは

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さて、ここではただの水、純粋なを純水、ジュースのように水と何かが混ざっているものを水溶液としましょう。水溶液については溶質・溶媒、そして濃度についても既に解説しましたね。
グラフを見ていきましょう。純水については前回解説した過冷却と同じグラフになっています。過冷却状態の純水に衝撃を与えることで、一気に結晶化が進むというものでしたね。さて、ここで復習です。純水にとって0℃という温度は水から氷になる凝固点でもあり、氷から水になる(融解)ときの温度の融点でもあります。水分子が凍ろうとするのと溶けようとするのを繰り返すことで、水と氷が混じった状態ができるというのがポイントです。
水溶液については、この凝固点が水よりも下がっているのがわかるでしょうか。これが「凝固点降下」という現象です。水に溶質が溶け込むことによって、水分子が凍ろうとするのを邪魔します。そうすることで水溶液全体として凍ろうとする速度よりも溶けようとする速度が上回るために、大きく温度を下げるまで凍らないという現象が起こるのです。

ジュースでも過冷却の実験はできるが難しい。その原因の1つに凝固点降下があるんだ。結晶化しやすく凍る温度が低くなるのだから、過冷却実験が上手くいかないことの説明になるよな。
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