今回は「葉緑体」についてです。

葉緑体は、動物は持っていない植物特有の細胞小器官で非常に重要な役割を果たしている。光合成をしているということは、何となく知っているかもしれませんね。

そんな「葉緑体」について、未来の理科教員ライターこりんと一緒に解説していきます。

ライター/こりん

現役理系大学生。小学生のころから理科が好きで、中学理科教員免許取得のため勉強中。

葉緑体とは

Plagiomnium affine laminazellen.jpeg
Kristian Peters -- Fabelfroh - 自ら撮影, CC 表示-継承 3.0, リンクによる

植物の葉の色と言えば何色を思い浮かべますか?そう、緑色ですよね。そんな植物の緑色は植物細胞に含まれる葉緑体という細胞小器官に由来します。私たち動物が持つ動物細胞と植物細胞にはいくつか違う点があるのです。植物細胞には細胞壁がありますが、動物細胞にはありません、ほかにも植物細胞には液胞がありますが、動物細胞にはありません。そしてこの葉緑体もまた、私たち動物の細胞にはなく、植物細胞だけが持ち合わせている細胞小器官の一つなのです。葉緑体は膜構造体で二重膜構造をしています。

葉緑体の構造

葉緑体の構造

image by Study-Z編集部

上記にもあるように、葉緑体は二重膜構造の細胞小器官です。そして、葉緑体の中にはチラコイドと呼ばれる扁平な膜構造が多数存在します。それがいくつか縦に積み重なったものをグラナといい、このグラナという構造がいくつも入っているのです。そしてこのチラコイドの隙間を埋めるように葉緑体内に存在する房水をストロマと言います。チラコイド、グラナ、ストロマの三つをしっかり区別して覚えておきましょうね。

葉緑体の働き

image by PIXTA / 44035828

葉緑体は植物細胞にだけあって、動物細胞にはない細胞小器官だと言いました。植物にはあって動物にはない器官があるということは同じく植物細胞特有の機能があるということです。それは光合成と言われる働きになります。光合成とは二酸化炭素を吸収して、酸素を放出するものです。酸素を吸収して二酸化炭素を放出する呼吸とは反対の働きですね。そしてこの光合成の働きを担っているのが葉緑体なのです。続いてはそんな葉緑体の働き、「光合成」について解説していきます。

光合成

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Jon Sullivan - PdPhoto, パブリック・ドメイン, リンクによる

光合成とは炭酸同化の一種です。

光合成では、光エネルギー吸収し化学エネルギーとしてATP中に蓄えられます。そのエネルギーを利用して有機物が合成されるのです。この時ある酵素が働いているのですが、これについては後程出てきますので、そこで解説していきますね。そしてこの光合成の反応は大きく二段階に分けることができます。光合成電子伝達反応(明反応)と炭素固定反応(暗反応)です。

明反応

Thylakoid membrane(ja).png
Akane700 - en:Image:Thylakoid membrane.png, translated & VOET, D.; VOETOVÁ, J. Biochemie. 1., české vyd. Praha: Victoria Publishing, 1995. ISBN 80-85605-44-9. S. 673.

まずは光合成電子伝達反応、通称明反応と呼ばれる反応です。光が関わって反応が進行するため、明るい反応、明反応と呼ばれています。明反応にある3つのステップを押さえておきましょう。まず一つ目のステップが光化学反応です。チラコイド膜は2つの電子伝達系があります。まず、光合成色素に吸収された光エネルギーがチラコイド膜内のクロロフィルに集められ、このエネルギーによって活性化されたクロロフィルから電子が放出されるのです。これは光合成の中でも光によって直接引き起こされるため光化学反応と呼ばれています。

続いて2つ目のステップが電子伝達です。先ほどの光化学反応によって連鎖して引き起こされる反応がここでの反応になります。電子がより還元されやすいストロマ側から内側にプロトンが輸送され、プロトンの濃度勾配を形成するのです。反応中心であるクロロフィルは、電子を放出し酸化された状態になります。これを還元するため光エネルギーを利用し水分子から電を引き抜き、電子が引き抜かれた水分子から酸素が生るのです。これが光合成の結果で生じる酸素にあたります。引き抜かれた電子は伝達され酸化型酵素のNADP+に渡さ、電子と酸化型酵素が結びつくことで還元型のNADPHとなり、また電子伝達と結びついたATP合成で、吸収された光エネルギーはATPの化学エネルギーへと変換されるのです。

プロトンの輸送によってチラコイドの内腔にため込まれたプロトンは、濃度勾配に従ってストロマ側に流れだそうとします。このプロトンの流れをエネルギーにして、ADPをリン酸化しATPを合成するのです。このATP合成は、元をたどれば光エネルギーに由来するので、この合成でのリン酸化を特に光リン酸化と言います。

\次のページで「暗反応」を解説!/

暗反応

Calvin-cycle3.png
CC 表示-継承 2.5, リンク

さて、光合成は炭酸同化の一種だと言いました。暗反応はその炭酸同化の反応で、ストロマの酵素によって進行し、この反応には光が関わっていないため暗反応と呼ばれています。明反応で作られたATPのエネルギーとNADPHの還元力によって、二酸化炭素を固定する炭酸同化が起こるのです。二酸化炭素を取り込む反応の過程について説明していきましょう。

まずリブロース-15-ビスリン酸カルボキシラーゼ/オキシケーゼという酵素が働くことによって5つの炭素を持っているC5化合物と二酸化炭素からホスホグリセリン酸が2分子生成されます。ホスホグリセリン酸はまたいくつかの反応を経て最初のC5化合物がもう一度生成されるのです。このようにこの炭酸同化の反応は巡回しておりカルビン・ベンソン回路と呼ばれる反応回路で二酸化炭素が糖に取り込まれます。

光の吸収

ここでチラコイドで起こる明反応についてもう少し掘り下げていきますね。チラコイド膜にはクロロフィルカロテノイドなどの色素が豊富に含まれています。チラコイドでの反応ではまずこの色素が光を吸収することから始まるということは明反応のところでお話ししましたね。

この色素が吸収する光の波長はそれぞれ異なっています。カロテノイドは青色の光を強く吸収し、クロロフィルは赤色青色の光の波長を強く吸収することを覚えておきましょう。このような光の波長と光の吸収の度合いをグラフ化して示したもののことを吸収曲線というのでそれも覚えておきましょうね。またこのような波長が光合成にどれほど作用されているかを示したものは作用曲線と言います。

共生説

次に共生説についてお話していきますね。ここまで解説してきた葉緑体と、動物細胞にも植物細胞にも存在するミトコンドリアの二つの細胞小器官には共生説という説が存在します。これはもともと別の生き物だったものが細胞内で共生したという説です。

ミトコンドリアとは

image by iStockphoto

共生説を説明する前にまずミトコンドリアについて解説します。ミトコンドリアは動物細胞にも植物細胞にも存在する細胞小器官でその役割は呼吸です。葉緑体と同じく二十膜構造をしています。外膜と内膜があり、内膜はひだ状になっておりクリステとそしてそのクリステの内側の基質の部分のことをマトリックスというので覚えておきましょう。細胞質基で行われる解糖系の反応に加え、マトリックスで進行する反応クエン酸回路、クリステで進行する電子伝達系によってATPを合成しています。

\次のページで「ミトコンドリアと葉緑体の共生説」を解説!/

ミトコンドリアと葉緑体の共生説

植物細胞や動物細胞などの細胞は複雑な構造をしており真核細胞と言います。この真核細胞は、もっと昔から存在する原核細胞を発達させてできたものだと考えられていました。しかし、現在はミトコンドリアと葉緑体はそれぞれ好気性細菌とシアノバクテリアに由来し、それらが細胞内で共生したのだという説が有力です。

葉緑体はまだまだ不思議だらけの細胞小器官

葉緑体について少しでも少しでもわかっていただけましたか?葉緑体は私たちにはない機能を持っており、覚えたりロ会するのことを難しく思うかもしれませんが、一つ一つ丁寧に覚えていきましょう。

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理科生物生物の分類・進化

「葉緑体の構造と働き」について現役理系学生が徹底わかりやすく解説!

今回は「葉緑体」についてです。

葉緑体は、動物は持っていない植物特有の細胞小器官で非常に重要な役割を果たしている。光合成をしているということは、何となく知っているかもしれませんね。

そんな「葉緑体」について、未来の理科教員ライターこりんと一緒に解説していきます。

ライター/こりん

現役理系大学生。小学生のころから理科が好きで、中学理科教員免許取得のため勉強中。

葉緑体とは

Plagiomnium affine laminazellen.jpeg
Kristian Peters — Fabelfroh自ら撮影, CC 表示-継承 3.0, リンクによる

植物の葉の色と言えば何色を思い浮かべますか?そう、緑色ですよね。そんな植物の緑色は植物細胞に含まれる葉緑体という細胞小器官に由来します。私たち動物が持つ動物細胞と植物細胞にはいくつか違う点があるのです。植物細胞には細胞壁がありますが、動物細胞にはありません、ほかにも植物細胞には液胞がありますが、動物細胞にはありません。そしてこの葉緑体もまた、私たち動物の細胞にはなく、植物細胞だけが持ち合わせている細胞小器官の一つなのです。葉緑体は膜構造体で二重膜構造をしています。

葉緑体の構造

葉緑体の構造

image by Study-Z編集部

上記にもあるように、葉緑体は二重膜構造の細胞小器官です。そして、葉緑体の中にはチラコイドと呼ばれる扁平な膜構造が多数存在します。それがいくつか縦に積み重なったものをグラナといい、このグラナという構造がいくつも入っているのです。そしてこのチラコイドの隙間を埋めるように葉緑体内に存在する房水をストロマと言います。チラコイド、グラナ、ストロマの三つをしっかり区別して覚えておきましょうね。

葉緑体の働き

image by PIXTA / 44035828

葉緑体は植物細胞にだけあって、動物細胞にはない細胞小器官だと言いました。植物にはあって動物にはない器官があるということは同じく植物細胞特有の機能があるということです。それは光合成と言われる働きになります。光合成とは二酸化炭素を吸収して、酸素を放出するものです。酸素を吸収して二酸化炭素を放出する呼吸とは反対の働きですね。そしてこの光合成の働きを担っているのが葉緑体なのです。続いてはそんな葉緑体の働き、「光合成」について解説していきます。

光合成

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Jon Sullivan – PdPhoto, パブリック・ドメイン, リンクによる

光合成とは炭酸同化の一種です。

光合成では、光エネルギー吸収し化学エネルギーとしてATP中に蓄えられます。そのエネルギーを利用して有機物が合成されるのです。この時ある酵素が働いているのですが、これについては後程出てきますので、そこで解説していきますね。そしてこの光合成の反応は大きく二段階に分けることができます。光合成電子伝達反応(明反応)と炭素固定反応(暗反応)です。

明反応

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Akane700 – en:Image:Thylakoid membrane.png, translated & VOET, D.; VOETOVÁ, J. Biochemie. 1., české vyd. Praha: Victoria Publishing, 1995. ISBN 80-85605-44-9. S. 673.

まずは光合成電子伝達反応、通称明反応と呼ばれる反応です。光が関わって反応が進行するため、明るい反応、明反応と呼ばれています。明反応にある3つのステップを押さえておきましょう。まず一つ目のステップが光化学反応です。チラコイド膜は2つの電子伝達系があります。まず、光合成色素に吸収された光エネルギーがチラコイド膜内のクロロフィルに集められ、このエネルギーによって活性化されたクロロフィルから電子が放出されるのです。これは光合成の中でも光によって直接引き起こされるため光化学反応と呼ばれています。

続いて2つ目のステップが電子伝達です。先ほどの光化学反応によって連鎖して引き起こされる反応がここでの反応になります。電子がより還元されやすいストロマ側から内側にプロトンが輸送され、プロトンの濃度勾配を形成するのです。反応中心であるクロロフィルは、電子を放出し酸化された状態になります。これを還元するため光エネルギーを利用し水分子から電を引き抜き、電子が引き抜かれた水分子から酸素が生るのです。これが光合成の結果で生じる酸素にあたります。引き抜かれた電子は伝達され酸化型酵素のNADP+に渡さ、電子と酸化型酵素が結びつくことで還元型のNADPHとなり、また電子伝達と結びついたATP合成で、吸収された光エネルギーはATPの化学エネルギーへと変換されるのです。

プロトンの輸送によってチラコイドの内腔にため込まれたプロトンは、濃度勾配に従ってストロマ側に流れだそうとします。このプロトンの流れをエネルギーにして、ADPをリン酸化しATPを合成するのです。このATP合成は、元をたどれば光エネルギーに由来するので、この合成でのリン酸化を特に光リン酸化と言います。

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