今回は針葉樹林についてです。針葉樹林は日本にもある身近な樹林です。針葉樹林が形成されるのにも条件や理由がある。そんな針葉樹林について未来の教員ライターこりんと解説していきます。

ライター/こりん

現役理系大学生。小さいころから理科が好きで、現在は理科教員免許取得のため勉強中。

針葉樹林とは

image by iStockphoto

針葉樹林とは主に針葉樹と呼ばれる樹木で構成されたもりのことです。とはいっても「針葉樹って何?」「ほかにもあるの?」と思う人もいると思いますので、まずはバイオームの観点から針葉樹林のポジションを見ていきたいと思います。

バイオームとは

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Sten Porse - Image:Vegetation.png, CC 表示-継承 3.0, リンクによる

バイオームとは何か知っていますか?バイオームとは生物群系のことを意味します。ある気候条件下で生息する動物や植物の集団のことで、バイオームが変わると生息している動物や植物の種類は変わっていくのです。このバイオームはさまざまな要因によって決定されます。

まずは気候です。その地域が温かいのか寒いのか、つまり平均気温、そして、その地域はよく雨が降るのか降らないのか、つまり降水量からの気候条件によって、その地域で成長することができる植物が決まります。また、その地域の土壌も、成長する植物の種類を決定するのにかかわっているのです。

そしてその気候に適応でき、その植物を餌とする動物などが集まってきます。このようにして、その地域に適応した動物・植物が集まった集団が完成するのです。こうしてできた生物の集団のことをバイオームと言います。

バイオームの種類

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Opqr - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 4.0, リンクによる

バイオームは植物で判断されます。なぜなら植物は動けないので、そこに固定されているものだからです。そしてそのバイオームには種類が3つあります。荒原草原森林です。ここからはそんなバイオームの種類を解説していきますね。

#1 荒原

バイオームの種類は3つあると書きましたが、どれになるのかには降水量が大きくかかわっています。

まず一つ目に荒原です。荒原は雨がほとんど降らない地域に形成されます。その中でも熱い地域に形成されるのが砂漠、寒い地域に形成されるのがツンドラです。

砂漠は降水量が極めて少なく、植物が育つ余地がないような地域のバイオームのことを指します。ツンドラは、砂漠ほど降水量が少なくはないものの、あまりにも気温が低いゆえに、土壌に微生物などが生息することができず、植物が根を張ったりすることが難しい地域です。そのためこういった環境でも育つことができるコケ植物などが生育しています。

\次のページで「草原」を解説!/

#2 草原

次に草原です。草原は木が育つほどの降水量はないが、植物が育つだけの降水量はあるといった地域に分布しています。ステップと呼ばれるものとサバンナと呼ばれるものの2種類があり、ステップは温帯地域に、サバンナは熱帯地域に形成されるので覚えておきましょうね。

#3 森林

そして最後に森林の解説をしていきます。森林はこの3つの中で最も降水量が多い地域に形成されるバイオームです。針葉樹林もこの森林の種類の一つで、そのほかにも熱帯多雨林、亜熱帯多雨林、雨緑樹林、照葉樹林、夏緑樹林、硬葉樹林があります。

森林の種類は?

ついでに熱帯多雨林、亜熱帯多雨林、雨緑樹林、照葉樹林、夏緑樹林、硬葉樹林についても見てみましょう。

1.熱帯多雨林

熱帯多雨林は主に常緑広葉樹からなり、非常に背のたかい木や、つる植物、着生植物などがみられるのが特徴です。

2.亜熱帯多雨林

亜熱帯多雨林は、熱帯多雨林よりは温度が低いですが、非常に降水量の多い地域に形成されます。木生シダ類などがみられるのが特徴です。そして、亜熱帯多雨林にも熱帯多雨林にもみられる特徴として根や茎の一部が海水中にあっても生育可能である常緑広葉樹からなるマングローブがみられます。

3.照葉樹林

次に照葉樹林です。照葉樹林は下記に降水量が多く、冬季は乾燥している温帯地に形成されます。硬くて照りのある葉っぱを持つ常緑広葉樹からなる森林です。

\次のページで「4.夏緑樹林」を解説!/

4.夏緑樹林

夏緑樹林は、夏は温かいが冬季の寒さが厳しい冷温帯で形成されます。冬季には落葉しており葉がみられない落葉広葉樹からなる森林です。

5.硬葉樹林

硬葉樹林は硬い葉を持つ木々で構成されています。この硬い葉には、蒸散を防ぐ効果があり、夏に雨の少ない地域で育つのに適しているのです。

6.針葉樹林

そして、最後に針葉樹林について解説します。針葉樹林は、森林の中でも寒い地域、寒帯、亜寒帯に形成されるバイオームです。シベリアやアラスカ、日本の北海道などには針葉樹林が多く生育しています。

針葉樹林は他の森林のバイオームに比べて、樹種が豊富ではありません。シラビソなどのモミ類、エゾマツなどのトウヒ類が優占種で、常緑針葉樹で構成されています。

バイオームの形成

バイオームの形成

image by Study-Z編集部

さて、針葉樹林というのはバイオームの中でも森林の一つであることは理解していただけましたでしょうか。森林は色々な木々で構成されていますが、いきなり森林ができるわけではありません。何もないところから、荒原になり草原になり最後には森林が完成するのです。

森林の一つである針葉樹林が形成されるまでにも様々なステップがあります。続いてはそんなバイオームの形成について解説していきましょう。

バイオームの遷移

Forest01s2048.jpg
663highland - 投稿者自身による作品, CC 表示 2.5, リンクによる

上記にもあるようにバイオームはさまざまなステップを経て形成されていくのです。このような植生が時間をかけて移行する様子を遷移と言い、遷移が進行しきってもうこれ以上変化しないといった限界の状態のことを極相と言います。そしてこの遷移は大きく分けて2種類あり、それぞれ一次遷移二次遷移というのです。

一次遷移

一次遷移が始まる始まる場所としては主に次の5つが挙げられます。

\次のページで「二次遷移」を解説!/

・火山の噴火によって溶岩が流れ、それが冷え固まった土地
・土砂や岩が堆積した土地
・廃土が堆積した土地
・海洋上に突如出現した島などの土地
・新しく湖となった土地

はじめに挙げた4つのように陸上の裸地から始まる遷移を乾燥遷移湖などから始まる遷移を湿性遷移と言います。

まず、一次遷移のスタートは裸地です。この状態の時は土壌はほぼ形成されておらず、保水力も栄養もありません。しかし、このような状況でもコケ植物などは生育することができます。コケ植物などが増え次第に荒原となるのです。植物が増えていくと次第に薄い土壌が形成され草原となります。草原が進行していくにつれて、その草原の草木によって土壌が発達し、低木林ができるのです。この段階ではまだ木はあまりないので、光をいっぱいに浴びることで成長する陽樹が増えていきます。

そうして陽樹林が形成されるのです。陽樹林の密度が増えていくと、だんだん陰樹という光をあまり浴びなくても生育できる木が増えていきます。そうして、陽樹と陰樹が混ざってできるのが混交林です。しかし、木の密度が増えるにつれ、一本の木が受け取ることのできる太陽の光の量が減り、上層が覆われ日の光が入ってこなくなっても成長できる陰樹の割合が多くなっていきます。そうしてできた陰樹林が最も安定した状態の極相林となるのです。

二次遷移

続いて二次遷移です。二次遷移はもともとは植物があったものの、その元からあった植生が破壊された土地から始まる遷移を指します。一次遷移との違いは、もともと別の植生があったため、土壌がすでに形成されているところです。森林伐採や災害が原因でこの二次遷移は起こります。

針葉樹林が形成されるのには意味がある

様々な森林や草原が、あらゆる条件の中や遷移の中で形成されていったことは理解していただけましたでしょうか?そこに針葉樹林があるのにも環境に適応した意味があります。それぞれの意味と結びつけて覚えていってくださいね。

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理科生物生物の分類・進化

簡単でわかりやすい!「針葉樹林」とは?バイオームも現役理系学生が詳しく解説

今回は針葉樹林についてです。針葉樹林は日本にもある身近な樹林です。針葉樹林が形成されるのにも条件や理由がある。そんな針葉樹林について未来の教員ライターこりんと解説していきます。

ライター/こりん

現役理系大学生。小さいころから理科が好きで、現在は理科教員免許取得のため勉強中。

針葉樹林とは

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針葉樹林とは主に針葉樹と呼ばれる樹木で構成されたもりのことです。とはいっても「針葉樹って何?」「ほかにもあるの?」と思う人もいると思いますので、まずはバイオームの観点から針葉樹林のポジションを見ていきたいと思います。

バイオームとは

バイオームとは何か知っていますか?バイオームとは生物群系のことを意味します。ある気候条件下で生息する動物や植物の集団のことで、バイオームが変わると生息している動物や植物の種類は変わっていくのです。このバイオームはさまざまな要因によって決定されます。

まずは気候です。その地域が温かいのか寒いのか、つまり平均気温、そして、その地域はよく雨が降るのか降らないのか、つまり降水量からの気候条件によって、その地域で成長することができる植物が決まります。また、その地域の土壌も、成長する植物の種類を決定するのにかかわっているのです。

そしてその気候に適応でき、その植物を餌とする動物などが集まってきます。このようにして、その地域に適応した動物・植物が集まった集団が完成するのです。こうしてできた生物の集団のことをバイオームと言います。

バイオームの種類

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Opqr投稿者自身による作品, CC 表示-継承 4.0, リンクによる

バイオームは植物で判断されます。なぜなら植物は動けないので、そこに固定されているものだからです。そしてそのバイオームには種類が3つあります。荒原草原森林です。ここからはそんなバイオームの種類を解説していきますね。

#1 荒原

バイオームの種類は3つあると書きましたが、どれになるのかには降水量が大きくかかわっています。

まず一つ目に荒原です。荒原は雨がほとんど降らない地域に形成されます。その中でも熱い地域に形成されるのが砂漠、寒い地域に形成されるのがツンドラです。

砂漠は降水量が極めて少なく、植物が育つ余地がないような地域のバイオームのことを指します。ツンドラは、砂漠ほど降水量が少なくはないものの、あまりにも気温が低いゆえに、土壌に微生物などが生息することができず、植物が根を張ったりすることが難しい地域です。そのためこういった環境でも育つことができるコケ植物などが生育しています。

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