元素周期表は縦の列、族によって特性があることを知っているか?

例えば18族の希ガスは安定していて反応しづらく、17族のハロゲンは1価の陰イオンになりやすい。また1族は気体の水素を除いてアルカリ金属と呼ばれていて、水と反応して強アルカリ性の水酸化物ができる。そして2族はベリリウムとマグネシウムを除いてアルカリ土類金属と呼ばれている。

アルカリ土類金属にどんな特性があり、どんな元素が含まれているかについて元素周期表好きの化学ライター、たかはしふみかと説明していきます。

ライター/たかはし ふみか

高校では化学部に所属し、国立大学の工学部化学科大学院を修了。学生時代は研究の傍ら家庭教師のバイトをしていた。愛用しているのは元素周期表のマグカップと元素周期表のペン立て、部屋では元素周期表柄のTシャツを着ている元素周期法マニア。

アルカリ土類金属とは?

アルカリ土類金属とは?

image by Study-Z編集部

まずはアルカリ土類金属について確認しましょう。アルカリ土類金属とは周期表の左から2列目、2族に属する元素の呼び名です。ただし、2族であっても第2周期のベリリウムBe、第3周期のマグネシウムMgはアルカリ土類金属ではありません。

カルシウムCa、ストロンチウムSr、バリウムBa、ラジウムRaの4つの元素は、1族のアルカリ金属と土の中から得ることのできるアルミニウム化合物の中間的性質をしています。このことから「アルカリ土類金属」と言う名前が付けられました。

アルカリ土類金属共通の性質

アルカリ土類金属はその名の通り金属元素で、常温では固体の状態となっています。融点は高いものの金属としてはとても柔らかく、密度も小さめです。天然では単体としては存在せず、鉱物や海水中にイオンとして存在しています。

アルカリ金属と性質がよく似ているアルカリ土類金属。アルカリ金属と同様にイオン化傾向が高く、周期表で下に行くほどより反応しやすく2価の陽イオンとなります。そして空気中で酸化しやすく常温で水と反応し、できた水酸化物は水に溶けて塩基性を示すのです。

バラエティー豊かなアルカリ土類金属

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アルカリ土類金属がどんな性質かわかったところで、それぞれの元素について解説していきます。

1.体を丈夫にしてくれるカルシウムCa

1.体を丈夫にしてくれるカルシウムCa

image by Study-Z編集部

牛乳に含まれていて骨を丈夫にしてくれるカルシウム。アルカリ土類金属の中で最もなじみ深い元素ですね。

カルシウムには酸化カルシウム(生石灰)CaO、水酸化カルシウムCa(OH)2などたくさんの化合物があります。この水酸化カルシウムを飽和するまで溶解させた水溶液が石灰水です。二酸化炭素を吹き込むと白く濁る、と中学校の時に学んだ人も多いでしょう。

炭酸カルシウムCaCO3は石灰石、大理石、貝殻などに含まれている物質です。炭酸カルシウムは水には溶けません。石灰水に二酸化炭素を吹き込んで白くなるのは、水酸化カルシウム二酸化炭素が反応してできた炭酸カルシウムのせいなのです。しかし、炭酸カルシウムはさらに二酸化炭素と反応すると炭酸水素カルシウムとなり、また水に溶けるようになります。

Ca(OH)2+CO2→CaCO3+H2O
CaCO3+H2O+CO2→Ca(HCO3)

\次のページで「2.花火に欠かせない、ストロンチウムSr」を解説!/

2.花火に欠かせない、ストロンチウムSr

2.花火に欠かせない、ストロンチウムSr

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アルカリ土類金属の中でちょっと影が薄いストロンチウム。柔らかく、銀白色をしていますが空気と触れると表面が黄色くなります。ストロンチウムと言う名前はストロンチウムを含む鉱石、ストロンチアン石の産地であるスコットランドのストロンチアンに由来しているそうです。

放射性のストロンチウム90はカルシウムと性質が似ているため、体内に入ると骨に集められてしまいます。その結果、白血病などの重い病の原因となってしまうのです。一方、その同位体であるストロンチウム89はがんによる痛みを和らげるとして治療薬となっています。

また、ストロンチウムには燃えるときにきれいな深赤色を示す性質があるのです。そのため、花火や発煙筒に含まれています。この炎色反応についてはのちほど説明しますね。

3.X線を通さないバリウムBa

3.X線を通さないバリウムBa

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金属としては軽めのアルカリ土類金属。しかし、アルカリ土類金属の中では重いと言うことでバリウムはギリシャ語で「重い」と言う意味するbarysが語源となっています。バリウムはカルシウムやストロンチウムよりも反応性が高く、水和物を形成。単体では銀白色の金属ですが、空気中では徐々に酸化されて白っぽくなってしまいます。

健康診断でおなじみのバリウム。X線を通さないことから硫酸バリウムBaSO4は消化器系のX線写真で造影剤として使われています。ゲップが出る、飲むのがつらいと言った話をよく聞きますね。しかし実はバリウム塩には毒性があり神経系に影響を与えます。そのためバリウム塩は劇物に指定されているのです。

4.ノーベル賞つながったにラジウムRa

4.ノーベル賞つながったにラジウムRa

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キュリー夫妻が発見したラジウムは放射性元素です。そのため、もともとは放射線治療によく用いられていました。名前の由来はラテン語で光を放つものを意味する「radius」です。なお、ラジウムの発見と研究が夫妻のノーベル物理学、そして夫人のノーベル化学賞受賞へとつながりました。

ラジウムには自然発光性という性質があり、時計の夜光塗料として使われていたことがあります。しかし放射能を持つラジウムは体に悪影響を与え、時計を作っていた工場ではラジウムが原因と思われる病気が蔓延しました。

その一方、実はラジウムは温泉に含まれているます。ラドン温泉といわれる温泉に含まれており、ホルミシス効果(微量であれば有害な放射線も良い作用を起こすという効果)があると言われているのです。

炎色反応で確認するアルカリ土類金属

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夏の夜を彩る花火。花火がいろんな色をしているのはストロンチウムの説明に出てきた炎色反応のおかげなのです。炎色反応とは一部の金属で見られる炎の中で特有の色を示すことで、金属元素の定性分析(どんな成分が含まれているか確認する分析)にも使われています。アルカリ土類金属が炎色反応で示すのは以下の色です。

\次のページで「アルカリ土類金属とはこんな元素」を解説!/

・カルシウム:橙赤色
・ストロンチウム:深赤色
・バリウム:黄緑色
・ラジウム:洋紅色

またアルカリ土類金属以外でもナトリウムNaの黄色、カリウムの淡紫色などがあります。花火を見るとき、注目してみてくださいね。

アルカリ土類金属とはこんな元素

Ca、Sr、Ba、Raの4つの元素を指すアルカリ土類金属。4つとも2族に属する元素ですが、同じ2族でもBe、Mgはアルカリ土類金属ではありません。金属でありながら柔らかく、水と反応しやすいことが特徴です。アルカリ金属と共通する性質が多いので、きちんと区別して覚えてくださいね。

2価の陽イオンになりやすいアルカリ土類金属には、化合物がたくさんあります。特にカルシウムは生石灰や水酸化カルシウムなど重要な化合物があるのでしっかりと確認しましょう。

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化学

3分で簡単にわかる「アルカリ土類金属」!元素の特性や炎色反応も元家庭教師がわかりやすく解説

元素周期表は縦の列、族によって特性があることを知っているか?

例えば18族の希ガスは安定していて反応しづらく、17族のハロゲンは1価の陰イオンになりやすい。また1族は気体の水素を除いてアルカリ金属と呼ばれていて、水と反応して強アルカリ性の水酸化物ができる。そして2族はベリリウムとマグネシウムを除いてアルカリ土類金属と呼ばれている。

アルカリ土類金属にどんな特性があり、どんな元素が含まれているかについて元素周期表好きの化学ライター、たかはしふみかと説明していきます。

ライター/たかはし ふみか

高校では化学部に所属し、国立大学の工学部化学科大学院を修了。学生時代は研究の傍ら家庭教師のバイトをしていた。愛用しているのは元素周期表のマグカップと元素周期表のペン立て、部屋では元素周期表柄のTシャツを着ている元素周期法マニア。

アルカリ土類金属とは?

アルカリ土類金属とは?

image by Study-Z編集部

まずはアルカリ土類金属について確認しましょう。アルカリ土類金属とは周期表の左から2列目、2族に属する元素の呼び名です。ただし、2族であっても第2周期のベリリウムBe、第3周期のマグネシウムMgはアルカリ土類金属ではありません。

カルシウムCa、ストロンチウムSr、バリウムBa、ラジウムRaの4つの元素は、1族のアルカリ金属と土の中から得ることのできるアルミニウム化合物の中間的性質をしています。このことから「アルカリ土類金属」と言う名前が付けられました。

アルカリ土類金属共通の性質

アルカリ土類金属はその名の通り金属元素で、常温では固体の状態となっています。融点は高いものの金属としてはとても柔らかく、密度も小さめです。天然では単体としては存在せず、鉱物や海水中にイオンとして存在しています。

アルカリ金属と性質がよく似ているアルカリ土類金属。アルカリ金属と同様にイオン化傾向が高く、周期表で下に行くほどより反応しやすく2価の陽イオンとなります。そして空気中で酸化しやすく常温で水と反応し、できた水酸化物は水に溶けて塩基性を示すのです。

バラエティー豊かなアルカリ土類金属

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アルカリ土類金属がどんな性質かわかったところで、それぞれの元素について解説していきます。

1.体を丈夫にしてくれるカルシウムCa

1.体を丈夫にしてくれるカルシウムCa

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牛乳に含まれていて骨を丈夫にしてくれるカルシウム。アルカリ土類金属の中で最もなじみ深い元素ですね。

カルシウムには酸化カルシウム(生石灰)CaO、水酸化カルシウムCa(OH)2などたくさんの化合物があります。この水酸化カルシウムを飽和するまで溶解させた水溶液が石灰水です。二酸化炭素を吹き込むと白く濁る、と中学校の時に学んだ人も多いでしょう。

炭酸カルシウムCaCO3は石灰石、大理石、貝殻などに含まれている物質です。炭酸カルシウムは水には溶けません。石灰水に二酸化炭素を吹き込んで白くなるのは、水酸化カルシウム二酸化炭素が反応してできた炭酸カルシウムのせいなのです。しかし、炭酸カルシウムはさらに二酸化炭素と反応すると炭酸水素カルシウムとなり、また水に溶けるようになります。

Ca(OH)2+CO2→CaCO3+H2O
CaCO3+H2O+CO2→Ca(HCO3)

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