今回は、熱力学で学習する「ポアソンの法則」について解説していきます。

「ポアソンの法則」は、状態方程式や熱力学第一法則と並ぶ、熱力学の重要公式です。特に、熱機関の理論熱効率を求める際には、「ポアソンの法則」が頻繁に登場します。理論熱効率の計算は、エネルギー問題を考えるときにも重要になってくる。ぜひ、この機会に「ポアソンの法則」を理解してくれ。

エネルギー工学、環境工学を専攻している理系学生ライターの通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。エネルギー工学、環境工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。エネルギー問題を考える上で重要になる熱力学にも詳しい。

ポアソンの法則とは?

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ポアソンの法則は、熱力学の重要公式の1つで、理想気体を断熱した状態で変化させたときの圧力と体積の関係を表した式です。ポアソンの法則の式は、カルノーサイクル、オットーサイクル、ディーゼルサイクルといった熱機関の理論熱効率を求める際に用いられます

実は、車のエンジン、火力発電所のタービン、飛行機のジェットエンジンなどの開発研究で、この理論熱効率の計算が必要になるのです。そして、理論熱効率を向上させることは、省エネにつながります。つまり、ポアソンの法則は、エネルギー問題を考える際も重要になるのです。

この記事では、ポアソンの法則の導き方を中心に、お話していきます。大学の試験などは、ポアソンの法則の式を暗記すれば、答えられる問題がほとんどです。ですが、熱力学を深く理解するためには、ポアソンの法則の導き方まで理解しておきましょう。

ポアソンの法則の式をみてみよう!

ポアソンの法則の式をみてみよう!

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まず、今から導出するポアソンの法則の式を、最初にみておきましょう。断熱過程において、気体の圧力をp、体積をVとすると、pVκの値は一定となります。Vの指数部分であるκは、気体の定積モル比熱CV、気体の定圧モル比熱をCpを用いて、Cp/CVと表わしていますね。

断熱過程とは気体とその外部の世界の間で熱エネルギーのやり取りがないような変化のこといいます。また、ポアソンの法則は理想気体についてのみ成り立つということに注意しましょう。

ポアソンの法則を導出しよう!

\次のページで「熱力学第一法則を考える」を解説!/

#1 熱力学第一法則を考える

熱力学第一法則を考える

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一番初めに、熱力学第一法則について考えます。熱力学第一法則は、上の図に示したように、空気(より一般的表現すると系)のエネルギー収支を表した式です。外部から加えられた熱が、内部エネルギーの増加と外部への仕事に使われると考えるとわかりやすいですよ。この熱力学第一法則を、微分形式で表すと、δQ=dU+pdVとなります。微分形式では、仕事を表す項をpdVとすることに注意しましょう。

ここで、ポアソンの法則は断熱過程における関係式であるということを思い出します。つまり、外部から加えられる熱を表すδQは0になるということです。このようにして、上の図の一番下の式0=dU+pdVが求まります。

#2 熱力学第一法則を変形する

熱力学第一法則を変形する

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定積モル比熱CVは、1molあたりの内部エネルギーを絶対温度で微分したものとして定義しています。式で表すと、CV=(1/n)・(dU/dT)となりますね。さらに、この式を変形するとdU=nCVdTとなります。

続いて、状態方程式pV=nRTを考えましょう。ポアソンの法則は理想気体を仮定していますから、状態方程式を用いて式変形を行っても構いません。この式をpについて解くと、p=(nRT)/Vとなります。

ここで得られた2つの式(dU=nCVdTとp=(nRT)/V)を0=dU+pdVに代入し、両辺をnTで割ると、上の図のような式0=(CV/T)dt+(R/V)dVが求まりますね。

#3 必要のない文字を消去する

必要のない文字を消去する

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ポアソンの法則の式には、Tは含まれていないので、式中からTを消去することを考えます。状態方程式をTについて解いたT=(pV)/(nR)を、pとVの2変数関数だと捉え全微分をしましょう。さらに、全微分した式の両辺をTで割り、整理するとdT/T=dp/p+dV/Vとなります。そして、dT/T=dp/p+dV/Vを、先ほど求めた0=(CV/T)dt+(R/V)dVに代入しましょう。

また、全微分の公式をおさらいします。z=f(x,y)という2変数関数の場合、z=(∂z/∂x)dx+(∂z/∂y)dyです。∂は偏微分を表しています。

\次のページで「マイヤーの関係式を考える」を解説!/

#4 マイヤーの関係式を考える

マイヤーの関係式を考える

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理想気体の定積モル比熱CVと気体の定圧モル比熱Cpを結びつけるCp=CV+Rいう式が存在します。これも熱力学の重要公式の1つであり、マイヤーの関係式と呼ぶのものです。先ほど求めた式を、マイヤーの関係式を利用して、上の図のように変形します。ここまで計算することができたら、ゴールはすぐそこですよ!

#5 両辺を積分する

両辺を積分する

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最後に、-dp/p=(Cp/CV)・(dV/V)の両辺を積分します。ここでは、不定積分として考えるので、任意定数(積分定数)のCがあらわれますね。このとき利用した積分公式は∫[dx/x]=lnx+C(lnは自然対数、Cは任意定数)です。Cp/CVをκに置き換えて、式変形するとポアソンの法則の式であるpVκ=(一定)を導くことができます。以上がポアソンの法則の導出方法です。

「ポアソンの法則」の重要性

「ポアソンの法則」は、熱力学の重要公式の1つで、様々な熱機関の理論熱効率計算で頻繁に登場します。そして、熱機関の研究開発は、私たちの生活にも直接的に影響を与えているのです。車のエンジン、エアコンのヒートポンプ、冷蔵庫に内蔵されている冷凍サイクルなどはすべて熱機関に分類されます。

つまり、「ポアソンの法則」を理解すれば、私たちにとって身近である機器の仕組みを考えることができるのです。「ポアソンの法則」の学習をする際は、ぜひとも様々な熱機関の仕組みについても学んでみてください!

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熱力学物理理科

熱力学の重要事項!「ポアソンの法則」を理系学生ライターがわかりやすく解説!

今回は、熱力学で学習する「ポアソンの法則」について解説していきます。

「ポアソンの法則」は、状態方程式や熱力学第一法則と並ぶ、熱力学の重要公式です。特に、熱機関の理論熱効率を求める際には、「ポアソンの法則」が頻繁に登場します。理論熱効率の計算は、エネルギー問題を考えるときにも重要になってくる。ぜひ、この機会に「ポアソンの法則」を理解してくれ。

エネルギー工学、環境工学を専攻している理系学生ライターの通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。エネルギー工学、環境工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。エネルギー問題を考える上で重要になる熱力学にも詳しい。

ポアソンの法則とは?

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ポアソンの法則は、熱力学の重要公式の1つで、理想気体を断熱した状態で変化させたときの圧力と体積の関係を表した式です。ポアソンの法則の式は、カルノーサイクル、オットーサイクル、ディーゼルサイクルといった熱機関の理論熱効率を求める際に用いられます

実は、車のエンジン、火力発電所のタービン、飛行機のジェットエンジンなどの開発研究で、この理論熱効率の計算が必要になるのです。そして、理論熱効率を向上させることは、省エネにつながります。つまり、ポアソンの法則は、エネルギー問題を考える際も重要になるのです。

この記事では、ポアソンの法則の導き方を中心に、お話していきます。大学の試験などは、ポアソンの法則の式を暗記すれば、答えられる問題がほとんどです。ですが、熱力学を深く理解するためには、ポアソンの法則の導き方まで理解しておきましょう。

ポアソンの法則の式をみてみよう!

ポアソンの法則の式をみてみよう!

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まず、今から導出するポアソンの法則の式を、最初にみておきましょう。断熱過程において、気体の圧力をp、体積をVとすると、pVκの値は一定となります。Vの指数部分であるκは、気体の定積モル比熱CV、気体の定圧モル比熱をCpを用いて、Cp/CVと表わしていますね。

断熱過程とは気体とその外部の世界の間で熱エネルギーのやり取りがないような変化のこといいます。また、ポアソンの法則は理想気体についてのみ成り立つということに注意しましょう。

ポアソンの法則を導出しよう!

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