化学無機物質理科

「アルミニウム 」の特徴と製法について元研究員がわかりやすく解説

3.ホール・エルー法で酸化アルミニウムからアルミニウムを作る

バイヤー法でボーキサイトから不純物を除きアルミナを精製しました。次に酸素を除き単体のアルミニウムにしたいので、アメリカのホールさんとフランスのエルーさんが同時期に別々に開発した、ホール・エルー法を使いましょう。

通常金属を含む鉱物から電気分解で金属単体を得ようするときは、水に溶かしてイオンにし電気分解で金属単体を得ますが、アルミニウムはイオン化傾向が大きくイオンの状態が安定しています。水素よりイオン化傾向が大きいため、アルミニウムの水溶液を電気分解してもアルミニウムは得られず、代わりに水素が発生してしまうのです。

それなので、以下の特別な方法で単体のアルミニウムを精製しましょう。

3-1.氷晶石を用いる理由

氷晶石
Didier Descouens投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, リンクによる

アルミナを水に溶かして電気分解してもアルミニウムが得られないので、固体を直接溶かして電気分解する必要があります。しかし、アルミナの融点は2050℃とものすごく高く、簡単には溶かすことができません。

そこで、氷晶石というあまり聞きなじみがないものを使います。氷晶石(Na3AlF6)の融点は1020℃とアルミナより1000℃ほど低いです。1000℃も2000℃も日常生活からは考えられないほど高い温度ですが、1000℃を2000℃に上げるには莫大な電力を必要とすることは想像できますよね。

ドロドロに溶かした氷晶石の温度は、融点付近の約1000℃です。アルミナの融点には届いていません。しかし氷晶石に含まれているフッ素(F)が、酸化アルミニウムの三次元網目構造に入り込むことで構造が壊れやすくなり、約1000℃でもゆっくりと溶けることを発見したのです。

さらに氷晶石は、酸化アルミニウムと同時に溶かして電気分解しても、アルミニウムの析出(固体となって現れること)を邪魔する陽イオンを含まないことも重要な要素といえます。

溶かした氷晶石に酸化アルミニウムを溶かすことで約1000℃で電気分解し、単体のアルミニウムを得ることができるのです。

3-2.工程

3-2.工程

image by Study-Z編集部

1020℃で溶かした氷晶石に、酸化アルミニウムを少しずつ溶かします。ドロドロに溶けた混合物に炭素電極を入れ電気分解するのです。

溶けた氷晶石(Na3AlF6)と酸化アルミニウム(Al2O3)の混合物のなかには、以下のイオンがあります。

Al3+、O2-、Na+、F

ということは陽極に近づいてくるのは陰イオンのO2-Fなので、O2-が電極である炭素とくっつき、一酸化炭素(CO)や二酸化炭素(CO2)を発生するのです。

陽極にしている炭素は酸素とくっついて気体になってしまい、だんだんとなくなってしまうので、頻繁な交換が必要になります。

対して陰極に近づいてくるのは、陽イオンのAl3+Na+です。ナトリウムとアルミニウムではアルミニウムの方がイオン化傾向が小さい(イオンの状態でいられない)ので、アルミニウムが陰極で析出します。

このように固体をドロドロに溶かして電気分解することを「融解塩電解」というので、覚えておきましょう。

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アルミニウムのイオン化傾向が大きいので、水溶液を電気分解してもアルミニウムの単体は得られないんだな。氷晶石を用いると、融点に届かない温度でも酸化アルミニウムが溶けるというのはすごい発見だな。

アルミニウムはさまざまな特徴を持った金属元素で、特徴を活かして精製されている

アルミニウムの単体は展性延性に富み熱伝導率と電気伝導率が高いです。

また、金属の中では軽くて丈夫で、原料がたくさん採れるため安価で手に入れられます。

さらにイオン化傾向が大きく酸とも塩基とも反応する両性元素です。

アルミニウムの酸化物アルミナは、非常に硬く透明で表面を覆うバリアーとなり、内側が酸化するのを防いでくれます。

ボーキサイトから不純物を除き酸化アルミニウムを得る「バイヤー法」と、単体アルミニウムを析出させる「ホール・エール法」はアルミニウムの特徴を活かしたもので、今日でもこの方法が使われている大変優れた製法です。

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