今回は水に関する不思議、「過冷却」という現象について勉強していこう。

水は0℃になると凍るというのは知っていますね。でも0℃になっても凍らず、刺激を加えることで一気に凍りはじめるという現象があるんです。自宅でも試せる実験方法も紹介しよう。さあ、化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.水の融点・凝固点

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物質の三態についての復習です。固体が液体になること、液体が固体になることをそれぞれ何と表すか覚えていますか?そしてそれらの状態変化が起こる温度を何といったでしょうか。

固体が液体になることを融解といい、その温度を融点といいます。また、液体が固体になることを凝固といい、このときの温度を凝固点といいましたね。水の場合、0℃で氷は溶け始め、0℃で水は凍りはじめます。つまり、理論上、融点と凝固点は同じというわけです。

今回解説する過冷却は、この融点であり凝固点でもある0℃という温度が非常に重要になってきます。それでは過冷却について見ていきましょう。

2.過冷却とは

2.過冷却とは

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過冷却は状態変化が起こるべき温度以下でもその変化が起こらない現象を指します。これを水で例えてみましょう。液体の水から固体の氷に状態変化する0℃を下回ってもなおその変化が起こらない様子がこれに当たります。

水の場合、液体のときは水分子がエネルギーを持って運動している状態です。それが時間経過とともに冷やされ、0℃で凍りはじめます。固体になった氷は分子が運動をやめ、安定した結晶構造となりますね。

上のグラフは時間経過にともなう水の状態変化についてしめしたものです。通常は水のみの状態から0℃で氷と水が混ざって存在する過程を経て、全て氷になります。しかし過冷却というのは、ゆっくり冷やされることで、結晶化が起こらないままの状態が維持されている状態です。ところが振動などの刺激を加えることで一気に結晶化が進み、通常の水と同じ状態変化を辿るというわけですね。

\次のページで「結晶化が進む仕組み」を解説!/

結晶化が進む仕組み

まず水が氷になるためには、分子が自由に動き回っている状態から安定した結晶構造にならなければなりませんね。そのためには、氷の種になるようなごく小さな氷の粒が必要になります。また、この粒ができるためにはある程度のエネルギーが必要になるのです。ゆっくり冷やすことで凍らないというのは、このエネルギーが生まれないために凍ることができない状況といえるでしょう。

また、刺激によって一気に結晶化が進むのは、刺激によって結晶化を進めるための粒ができるためです。1つの粒を起点にして、連鎖的に変化していくので急激な結晶化となるわけですね。この刺激というのは容器への衝撃のほか、小さな氷の欠片を落とし入れてみたり、過冷却状態にある冷却水を受け皿に注ぐ方法でもいいでしょう。

3.身近なもので過冷却を知ろう

それでは、実際にどんな状況でこの過冷却が起こるのかを見ていきましょう。最近原子やイオン、結合といった難しい解説が続いていましたので、少し身近なことで解説しようと思います。

3-1.雨氷

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雨氷(うひょう)というものは、その名の通り雨が氷になったものです。

雨が氷に、と聞くと雪を想像するかもしれませんが、雪は雨が降ってくる途中で水が氷に変わったものでしたね。一方で雨氷は過冷却状態の雨(着氷性の雨)が地面や木などに当たる衝撃で結晶化し、透明な氷になるというものです。写真を見ると、木の枝を覆うように凍っているのがわかりますね。

雨氷に似たものとして、着氷性の雨によって凍結付着した氷層のうち、白色で脆いものを樹氷(じゅひょう)、半透明のものを粗氷(そひょう)があります。

3-2.自宅でチャレンジ

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それでは、自宅で簡単にできる過冷却の実験をしてみましょう。用意するものは、空のペットボトル、薬局などで販売されている蒸留水、冷凍庫です。

空のペットボトルをよく洗ってから蒸留水を3分の2から4分の3程度入れ、冷凍庫で静かに冷やしましょう。水道水やジュースでも出来ないわけではありませんが、結晶化のもとになる粒がもともと入っている方が出来やすいので、過冷却には向かない場合があります。ペットボトルいっぱいに水をいれないのは、氷になると体積が増えるからですね。

上手くいけば3~4時間ほどで過冷却水が出来上がるでしょう。コップやお皿に注いでみて、フローズンドリンクのようになったら成功ですよ。温度計がある人は、過冷却水の温度を測ってみてもいいですね。

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もし冷凍庫が冷蔵庫と一緒になっていていつも途中で失敗してしまうという人は、別の方法を試してみましょう。

まずはペットボトルがしっかり氷水につかるように、クーラーボックスいっぱいに氷と水を入れます。そこに塩を加え、もう一度混ぜましょう。この中にペットボトルを入れて待ちます。クーラーボックスから取り除くときの振動に注意してくださいね。空き缶で試す場合は中身を減らしてから、中に水が入らないように気を付けて実験を行いましょう。

過冷却は状態変化が起こるべき温度以下でもその変化が起こらない現象

水は100℃に達すると沸騰しはじめ、0℃になると凍りはじめます。物質には沸点や融点・凝固点というような物質の状態が変化し始める温度というものがありますね。過冷却を水で説明すると、0℃を下回っても凍らず、水のまま存在し続けるという現象です。つまり、過剰に冷却された状態でありつつも、状態変化が起こっていない状態のことですね。

ペットボトル飲料や過冷却の実験で説明したように、過冷却状態にある水は刺激を加えることで急激に結晶化が進みます。これが過冷却の面白さでもあり、不思議さでもあるでしょう。上手く実験で過冷却状態を作れるか、ぜひ試してみてくださいね。

" /> 簡単にわかる「過冷却」!0℃でも水が凍らないのはなぜ?元塾講師がわかりやすく解説 – Study-Z
化学

簡単にわかる「過冷却」!0℃でも水が凍らないのはなぜ?元塾講師がわかりやすく解説

今回は水に関する不思議、「過冷却」という現象について勉強していこう。

水は0℃になると凍るというのは知っていますね。でも0℃になっても凍らず、刺激を加えることで一気に凍りはじめるという現象があるんです。自宅でも試せる実験方法も紹介しよう。さあ、化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.水の融点・凝固点

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物質の三態についての復習です。固体が液体になること、液体が固体になることをそれぞれ何と表すか覚えていますか?そしてそれらの状態変化が起こる温度を何といったでしょうか。

固体が液体になることを融解といい、その温度を融点といいます。また、液体が固体になることを凝固といい、このときの温度を凝固点といいましたね。水の場合、0℃で氷は溶け始め、0℃で水は凍りはじめます。つまり、理論上、融点と凝固点は同じというわけです。

今回解説する過冷却は、この融点であり凝固点でもある0℃という温度が非常に重要になってきます。それでは過冷却について見ていきましょう。

2.過冷却とは

2.過冷却とは

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過冷却は状態変化が起こるべき温度以下でもその変化が起こらない現象を指します。これを水で例えてみましょう。液体の水から固体の氷に状態変化する0℃を下回ってもなおその変化が起こらない様子がこれに当たります。

水の場合、液体のときは水分子がエネルギーを持って運動している状態です。それが時間経過とともに冷やされ、0℃で凍りはじめます。固体になった氷は分子が運動をやめ、安定した結晶構造となりますね。

上のグラフは時間経過にともなう水の状態変化についてしめしたものです。通常は水のみの状態から0℃で氷と水が混ざって存在する過程を経て、全て氷になります。しかし過冷却というのは、ゆっくり冷やされることで、結晶化が起こらないままの状態が維持されている状態です。ところが振動などの刺激を加えることで一気に結晶化が進み、通常の水と同じ状態変化を辿るというわけですね。

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