生物学

5分でわかる甲状腺刺激ホルモン!現役講師が簡単解説!

よぉ、桜木建二だ。今回は甲状腺刺激ホルモンについて学んでいくぞ。

数あるホルモンのうちでも何となく印象が薄く、忘れがちなホルモンだが、その存在は必要不可欠だ。甲状腺刺激ホルモンがどんな構造で、どんなはたらきをしているのか、過不足によってどのような症状が現れるのかを確認しよう。

生物のからだに詳しい現役講師のオノヅカユウを招いたぞ。

解説/桜木建二

「ドラゴン桜」主人公の桜木建二。物語内では落ちこぼれ高校・龍山高校を進学校に立て直した手腕を持つ。学生から社会人まで幅広く、学びのナビゲート役を務める。

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ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

甲状腺刺激ホルモンとは?

甲状腺刺激ホルモンは脳下垂体の前葉から分泌されるホルモン。アミノ酸がつながってできたタンパク質に、さらに糖が結合している糖タンパク質によって構成されています。

英語ではThyroid Stimulating Hormoneというため、頭文字をとったTSHという名称が使われることも少なくありません。

脳下垂体とは?

甲状腺刺激ホルモンを産生・分泌する脳下垂体はとても重要な内分泌器官ですので、しっかりと確認しておきましょう。

脳下垂体は脳の中でも中心部に位置している間脳の、視床下部というエリアにぶら下がっている小さな器官です。女性の小指の先ほどの大きさしかありませんが、数々のホルモンの分泌に関係しています。

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By Henry Vandyke CarterHenry Gray (1918年) Anatomy of the Human Body (See “ブック” section below) Bartleby.com: Gray’s Anatomy, Plate 1180, パブリック・ドメイン, Link

脳下垂体は大きく前葉と後葉に分けられ、それぞれが異なるホルモンを分泌しています。甲状腺刺激ホルモンは脳下垂体前葉の細胞でつくられ、血管へ放出されて血流とともに身体をめぐっていくのです。

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受験生であるならば、脳下垂体の前葉と後葉それぞれから分泌されるホルモンをしっかり覚えておく必要がある。脳下垂体前葉からは、ほかにも成長ホルモンや副腎皮質刺激ホルモンなどが分泌されるぞ。

甲状腺刺激ホルモンの構造

甲状腺刺激ホルモンは、αサブユニットとβサブユニットという、2つのパーツ(サブユニット)がくっついてできたような構造をしています。

興味深いことに、甲状腺刺激ホルモンを含めた糖タンパク質系のホルモンはこの2つのサブユニットからできているという構造が共通しており、いずれもαサブユニットとβサブユニットからなっているんです。具体的には、甲状腺刺激ホルモンと同じ脳下垂体前葉から分泌される卵胞刺激ホルモン(FSH)や黄体形成ホルモン(LH)、妊娠時に胎盤から分泌されるヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)がこれにあたります。

しかも、βサブユニットはそれぞれのホルモンで異なりますが、αサブユニットは同じもの。一見関係なさそうな性や妊娠に関わるホルモンに似た構造をしているなんて、なんだかおもしろいですよね。

甲状腺刺激ホルモンのはたらき

image by iStockphoto

それでは、甲状腺刺激ホルモンがどんなはたらきをするのかを確認しましょう。

名前の通り、このホルモンには「甲状腺を刺激」し、「甲状腺からのホルモン分泌を促進する」という作用があります。甲状腺からの分泌が促進されるのは、サイロキシン(チロキシン)やトリヨードサイロニンといったホルモンです。

サイロキシンとトリヨードサイロニン

甲状腺刺激ホルモンによって分泌が増えるサイロキシンとトリヨードサイロニン。これらはいずれもヨウ素(I)を含んでいるホルモンですが、4つのヨウ素を持つサイロキシンからヨウ素が一つとれたものがトリヨードサイロニンですので、その構造やはたらきは非常に近いものです。

image by iStockphoto

サイロキシンやトリヨードサイロニンは、一つ一つの細胞の代謝を調節する役割をもっています。細胞がエネルギーを使ったり、細胞内の物質循環を促進するのです。

よくもち出されるのがカエルの例。オタマジャクシがカエルになるときには手足が生えたり尻尾が短くなったりしますが、このときオタマジャクシの体内ではサイロキシンの産生が盛んになります。つまり、両生類にとっては変態を促進するホルモンなんです。

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甲状腺からはこれらのほかにも、カルシウムの代謝に関係するカルシトニンというホルモンが分泌される。しかしながら、一般的に甲状腺ホルモンという場合は、サイロキシンとトリヨードサイロニンを指すことがほとんどだ。

甲状腺刺激ホルモンの分泌調節

ホルモンを学ぶ際に外せないのが、その分泌量を調節するシステムについて知ること。「微量でよく効くホルモンをどのようにして調節しているのか」はとても重要な学習事項です。

甲状腺からのホルモン分泌を促進している甲状腺刺激ホルモンですが、実はそれ自身もまた別のホルモンによって分泌がコントロールされています。その名も甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(Thyrotropin-releasing Hormone,:TRH)。脳下垂体のすぐ上にある間脳視床下部から分泌されるホルモンです。

甲状腺刺激ホルモン放出ホルモンが分泌されると、脳下垂体前葉の甲状腺刺激ホルモンを生み出す細胞が刺激されます。これにより、甲状腺刺激ホルモンの分泌が増加。さらに、甲状腺刺激ホルモンが甲状腺を刺激することで甲状腺ホルモンが増加され、血液中の濃度が一定に保たれるのです。

image by Study-Z編集部

では、甲状腺ホルモンの量が多すぎる場合はどのように調節されるのでしょうか?

甲状腺が刺激され続け、甲状腺ホルモンの濃度が上がりすぎると、甲状腺ホルモン自体が間脳視床下部や脳下垂体にはたらき、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモンおよび甲状腺刺激ホルモンの分泌を抑制します。その結果、甲状腺ホルモンの量が低下し、甲状腺ホルモンが血液中に増えすぎることはありません。

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甲状腺ホルモンの分泌抑制には、別のホルモンがはたらくわけではなく、甲状腺ホルモン自体が作用する。この機構はフィードバックとよばれる、重要な内分泌調節システムのひとつだ。見事なしくみだな。

甲状腺刺激ホルモンに関係する疾患

では、甲状腺刺激ホルモンが多すぎたり、少なすぎたりすることで身体に起きる影響をご紹介しましょう。

甲状腺刺激ホルモンが過剰になると…?

脳下垂体に腫瘍ができてしまうことなどが原因で、甲状腺刺激ホルモンが過剰に分泌されると、その刺激によって甲状腺ホルモンの分泌量が増えてしまうことがあります。先ほどご紹介した、「甲状腺ホルモンの増加→甲状腺刺激ホルモンの抑制」というシステムもうまく機能しなくなるようです。

甲状腺ホルモンが増加することによって細胞の代謝が促進される状態が続きます。そのため、疲れやすくなったり、動悸や息切れが続いたりといった症状が現れることが多いです。

image by iStockphoto

よく似た症状を呈する病気にバセドウ病があります。こちらも甲状腺ホルモンの過剰分泌によって体にさまざまな影響が出る病気ですが、バセドウ病は甲状腺が自分自身の免疫細胞によって攻撃される自己免疫疾患の一種。甲状腺刺激ホルモンの過剰分泌とは原因が異なるので、混同しないようにしましょう。

甲状腺刺激ホルモンが不足すると…?

反対に、甲状腺刺激ホルモンの分泌が低下すると、甲状腺ホルモンの分泌量も少なくなります。それに伴い、細胞の活動量が低下。寒さを感じやすくなったり、身体がむくみやすくなったり、やる気が出なくなるなどの症状が現れます。

実際のところ、甲状腺ホルモンの分泌量低下は、甲状腺炎など甲状腺の異常で生じることが多いです。しかしながら、甲状腺刺激ホルモンや甲状腺刺激ホルモン放出ホルモンの減少によって引き起こされることもあります。

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甲状腺ホルモンに関係する体の不調があるときは、採血して検査を行い、血中の甲状腺ホルモン・甲状腺刺激ホルモン・甲状腺刺激ホルモン放出ホルモンの濃度を測る。それぞれの量を比較することで、甲状腺・脳下垂体・間脳のどこに異変が生じているのかを診断するんだ。

甲状腺刺激ホルモンは”中間管理職”?

甲状腺刺激ホルモンは、甲状腺ホルモンと甲状腺刺激ホルモン放出ホルモンの間にたつ、中間管理職的な存在といえるでしょう。分泌量の正確な調節のために、なくてはならない存在です。フィードバックといった調節システムや、それぞれのホルモンの機能をしっかりと復習しておきましょう。

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