今回は「水の体積と密度」について勉強していこう。

今回からは水をテーマに扱っていきます。生活に欠かせない存在である水ですが、体積や密度に関しては特別な物質でもあるんです。その理由を探っていこう。

さあ、化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.生活に欠かせない水

地球は水の惑星と呼ばれるほど、水に富んだ星であることをきっとご存知でしょう。地球上では約7割が海であり、陸地にも川や湖など、たくさんの水が存在していますね。それだけではなく、空気中には水蒸気という気体の状態でも水は多く含まれており、雪や氷として存在している水もあります。これらの水が私たちに与える影響というものは計り知れないものがありますよね。

そんな身近な水ですが、透明で無味無臭、0℃で凍って100℃で沸騰するというのが一般的に知られている性質です。それでは、それぞれの状態についてもっと掘り下げて考えてみましょう。

1-1.液体の水

image by iStockphoto

最もありふれた水は液体として存在しているものでしょう。水は水分子が自由にエネルギーを持って動き回っている状態です。これは物質の三態で解説をしましたね。1気圧という条件下では、0.00℃から99.974℃のときに液体として存在します。

「あれ、100℃じゃないの?」と思った人はいませんか?そうです。より正確な計測の結果、水の沸点は100℃から99.974℃に見直されました。これは知らなかったという人もいるかもしれませんね。

また、水 1ml は 1g と覚えた人も多いでしょう。これは誤りではありませんが、厳密にいえば異なります。これについては後ほど詳しく説明するとしましょう。

1-2.固体の水:氷

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続いては固体の水である氷について考えてみましょう。1気圧という条件下で0.00℃以下になると水分子の運動は極端に減ってしまいます。それによって水分子の1つ1つがつながり、氷という個体の状態になるのです。

ここで思い出してみてください。水10gを凍らせたとき、水と氷の体積ではどちらが大きくなるでしょうか。

\次のページで「1-3.気体の水:水蒸気」を解説!/

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By Dan Craggs - 投稿者自身による作品 This vector image includes elements that have been taken or adapted from this:  Water-2D-labelled.png., パブリック・ドメイン, Link

わかりましたか?水よりも氷の方が体積は増えるが正解です。

これには水分子のカタチが関係しています。水分子は H-O-H という結合によってつながっていますが、このときの結合は直線的なものではありません。約104.45°と曲がった形をしているのです。この角度がついていることによって、水分子はすきまを伴う結合しかできません。これは原子間・分子間の極性によるものです。このすきまができてしまう分、全体の体積は増えてしまいます。当然、水10gを凍らせてできる氷の重さは10gですよね。変わるのは体積です。そして体積が変わるということは、それに伴って密度も変わるということがわかるでしょう。どのように変わるのか、考えてみてください。

1-3.気体の水:水蒸気

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そして三態の最後は水蒸気です。やかんでお湯を沸かしたときのアレですね。

ところでみなさん、そのアレですが、この写真のどの部分が水蒸気かわかりますか?

実はやかんの口元の部分の見えないところにあるのが水蒸気(気体)であって、白い湯気は水蒸気が冷やされて水滴になってあらわれた液体です。勘違いしていた人も多いのではないでしょうか。

水は1気圧で99.974℃に達すると沸騰し、分子は大きなエネルギーを持って飛び回るようになります。そのために水蒸気の体積は水や氷とは比較できないほど大きくなるのです。これは、1つの角砂糖(氷)がほぐれ(水)、テーブルの上に散らばった(水蒸気)状態をイメージするといいでしょう。

ここで水の体積変化についてまとめましょう。

質量が 固体=液体=気体 のとき、体積は 固体<液体<<気体 である。

ただし、においては分子のカタチから、体積は 液体<固体<<気体 となる。

\次のページで「2.水の密度」を解説!/

2.水の密度

まず基礎知識として、1ml は 1cm3 です。つまり、みなさんが知っている水 1ml は 1g というのは水 1cm3 は 1g と言い替えることができますね。また、密度というのは単位体積あたりの質量ですから質量÷体積で求められ、g/mlg/cm3 という単位で表すことができます。

同一質量において、水の体積は 液体<固体<<気体  でしたね。また、体積を同一にして考えてみると、質量は 液体>固体>>気体 となるのがわかるでしょうか。

つまりこうです。

水における密度 気体<<固体<液体 である。

しかし一般的に固体よりも液体の方が体積が大きくなる傾向にあるため

気体<<液体<個体 である物質が多い。

水と油を1つの容器に入れたとき、これらが混ざり合うことはありません。これは表面張力という性質の違いによる「混ざらない」という現象といえるのですが、なぜ油が上で、水が下の層になるのかわかりますか?

水に浮くか沈むかは、密度の違いが関係しています。水と油では油の方が密度が小さい、つまり軽いために上の層になるのです。

では同様に考えてみましょう。水に氷を入れると、氷は沈まずに浮きますよね。そうです、これも氷は水よりも密度が小さいために氷が水に浮くということがいえるのです。

2-1.密度と比重

2-1.密度と比重

image by Study-Z編集部

ではここで、密度と間違えやすいワード「比重」についても考えてみましょう。

比重とは、ある物質の密度と4℃の水の密度の比を表したものです。「なぜ4℃?」と思いますよね。実は、水は4℃のときに最も密度が大きくなります。これが「水 1ml は 1g というのは誤りではないが厳密には異なる」と前述した理由です。水は4℃で 0.999973g/cm3 ですから、1g/cm3 といってもいいでしょう。これを基準にしたときの密度の比を用いるというわけです。温度によって体積が変わることからもわかるように、体積が変われば密度も変わってくるということを覚えておきたいですね。

さて、具体例を挙げて比重の計算をしてみましょう。鉄の密度は 7874 kg/m3 、水の密度は 1000 kg/m3 です。(単位の換算については数学や物理でも必要な考えなので、復習しておいてくださいね。)この場合の比重は水の密度を基準として考えるため、7874÷1000 で 鉄の比重は 7.8 となり、単位はありません。この比重が1より上であれば水に沈み、1よりも下であれば水に浮くということです。

ここで1つ物理の記事をご紹介しますね。塩分濃度が高いために人の体が浮いてしまうという「死海」を知っていますか?少し難しい話しになりますが、これも比重が関係しています。ぜひこちらの記事もチェックしてみてくださいね。

\次のページで「最も身近でありながらも特別な水」を解説!/

死海の水の重さは塩分の量が水1Lあたり約300gなので、1000g(水1L)+ 300g(塩分)となり、死海の密度(=水に対する比重)は1300g/1000g = 1.3となります。一方、人の体の比重は一般的に0.93 ~ 1.1程度と言われているので、明らかに死海の比重の方が大きいことがわかりますね。

引用:死海では人の体は沈まない?その仕組みを元理系大学教員がわかりやすく解説

最も身近でありながらも特別な水

質量が一定のとき、水の体積は 液体<固体<<気体となり、体積が一定のとき、水の密度は 気体<<固体<液体 となります。一般的に体積は 固体<液体<<気体 であり、密度は 気体<<液体<固体 です。このことから、水は身近な存在でありながらも特殊な物質であることがわかるでしょう。体積と密度の関係に加え、比重という考え方についても覚えておきたいですね。

次回も水についての解説をしていきますよ。

" /> 一番身近で大切な「水」!その「体積」と「密度」の不思議を元塾講師がわかりやすく解説 – Study-Z
化学

一番身近で大切な「水」!その「体積」と「密度」の不思議を元塾講師がわかりやすく解説

今回は「水の体積と密度」について勉強していこう。

今回からは水をテーマに扱っていきます。生活に欠かせない存在である水ですが、体積や密度に関しては特別な物質でもあるんです。その理由を探っていこう。

さあ、化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.生活に欠かせない水

地球は水の惑星と呼ばれるほど、水に富んだ星であることをきっとご存知でしょう。地球上では約7割が海であり、陸地にも川や湖など、たくさんの水が存在していますね。それだけではなく、空気中には水蒸気という気体の状態でも水は多く含まれており、雪や氷として存在している水もあります。これらの水が私たちに与える影響というものは計り知れないものがありますよね。

そんな身近な水ですが、透明で無味無臭、0℃で凍って100℃で沸騰するというのが一般的に知られている性質です。それでは、それぞれの状態についてもっと掘り下げて考えてみましょう。

1-1.液体の水

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最もありふれた水は液体として存在しているものでしょう。水は水分子が自由にエネルギーを持って動き回っている状態です。これは物質の三態で解説をしましたね。1気圧という条件下では、0.00℃から99.974℃のときに液体として存在します。

「あれ、100℃じゃないの?」と思った人はいませんか?そうです。より正確な計測の結果、水の沸点は100℃から99.974℃に見直されました。これは知らなかったという人もいるかもしれませんね。

また、水 1ml は 1g と覚えた人も多いでしょう。これは誤りではありませんが、厳密にいえば異なります。これについては後ほど詳しく説明するとしましょう。

1-2.固体の水:氷

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続いては固体の水である氷について考えてみましょう。1気圧という条件下で0.00℃以下になると水分子の運動は極端に減ってしまいます。それによって水分子の1つ1つがつながり、氷という個体の状態になるのです。

ここで思い出してみてください。水10gを凍らせたとき、水と氷の体積ではどちらが大きくなるでしょうか。

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