太陽系に住んでいる人間で、太陽を知らない人はまずいないでしょう。太陽系の主人公であり、我々は皆太陽の周りを回っているのです。夏の日差しを浴びたことがある人は、太陽のエネルギーというものがいかに強大なものか感じたことがあるはずです。我々に多大な影響を与えている太陽について基本的な事柄を見ていこう。ただし、太陽の観測は絶対に肉眼でしてはいけない。望遠鏡を直接覗くなど論外です。これだけは徹底してほしい。
今回は物理学科出身のライター・トオルさんと解説していきます。
ライター/トオル
物理学科出身のライター。広く科学一般に興味を持つ。初学者でも理解できる記事を目指している。
太陽について
image by iStockphoto
太陽は太陽系の唯一の恒星です。恒星とは簡単にいえば自分で光っている天体のことであり、太陽系で自分で光っているのは太陽だけになります。他の天体はすべて太陽の光を反射しているだけです。これだけでも、太陽がいかに巨大なエネルギーの塊りかがわかると思います。太陽は地球の生命にとっても根本的エネルギー源であり、我々人間にエネルギーを供給してくれているのも元をたどれば太陽です。つまり、我々は皆太陽によって生かされているといっても過言ではありません。古代の人々が太陽を神と見立てたことも、あながち間違いではなかったわけです。このように重要な天体である太陽について、基本的な事柄を見てみましょう。
太陽の基礎データ
By NASA/SDO (AIA) – http://sdo.gsfc.nasa.gov/assets/img/browse/2010/08/19/20100819_003221_4096_0304.jpg, パブリック・ドメイン, Link
太陽までの距離は約1億5000万キロメートルであり、これは時速100キロメートルで休まず移動しても、約6万2500日かかる距離です。この距離は光の速度でも約8分かかるため、我々が見ている太陽はいつも8分前の姿を見ていることになります。直径は約140万キロメートルであり、地球の直径が約1万3000キロメートルですので地球の約110倍です。太陽の回りをぐるっと地球で囲おうとすると、地球が約340個も必要になります。質量は約2.0×10の30乗キログラムで地球の約33万倍もあり、これは太陽系の全質量の約99.9パーセントです。つまり太陽系とはほぼ太陽なのであり、我々惑星はちょっとしたおまけのようなものとも言えるでしょう。
太陽は電磁波の形でエネルギーを放出しています。電磁波とは光のことであり、我々が肉眼で見える範囲の電磁波が可視光です。簡単に言えば、肉眼では見えない光もたくさんあるということになります。太陽が宇宙空間に放出している全電磁エネルギー量は1秒間に約3.9×10の26乗ジュールです。0度の氷を3000トン溶かすのに1.0×10の12乗ジュール必要ですので、3000×3000×4000トンの氷を溶かすエネルギーを毎秒放出していることになります。太陽を構成する主な元素は水素とヘリウムです。
太陽の構造について
By Pbroks13 – 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, Link
太陽の内部は直接観測ができないため、現在の標準的な太陽モデルでの解説です。一番中心(図の1)が核と呼ばれる部分であり、ここでの核融合反応が太陽のエネルギー源となります。温度は1500万ケルビン、圧力は2500億気圧にも達し、中心から約20万キロメートルほどは核です。二番目の部分(図の2)は放射層と呼ばれる部分であり、核で生成されたエネルギーが電磁波の形で伝わっていきます。この層を通過するのに電磁波は約17万年もかかると考えられているようです。三番目の部分(図の3)は対流層と呼ばれる部分であり、この部分では主に対流によってエネルギーが運ばれていきます。暑さは約20万キロメートルです。対流とはよくある物理現象であり、水を温める時にも発生します。鍋の底と表面を水がグルグル循環する運動を思い出してください。
光球について
パブリック・ドメイン, Link
四番目(図の4)は光球と呼ばれる層であり、我々が直接観測できる部分です。いままでの太陽の内部は理論的に推測するしかありませんが、ここからは直接観測ができます。温度は約6000ケルビンで厚さは300キロほどです。上の図は粒状斑(もとの図では8)といわれる構造であり、太陽の表面のほとんどがこうなっています。これは対流にはよく見られる現象で、鍋で液体を沸かすときにもしばしばあらわれる構造のことです。この光球には他の部分より暗い黒点(図では7)と、他の部分より明るい白斑とよばれる部分が存在します。どちらも磁場が関係しているようです。
\次のページで「太陽の大気について」を解説!/