フレミング左手の法則。「何だ?」

電流と磁界があるところに「電磁力」という力が働くという内容の法則。身近なものだと、モーターはこの法則の原理が使われている。ってなわけで、この記事では、モータに関する例題を通して、フレミング左手の法則を使いこなすことを目的にする。理系ライターのR175と一緒に解説していきます。

フレミング左手の法則を使い慣れていると、センター試験でも2次試験でも「時間短縮」につながるからぜひ一読し日頃の学習に役立ててもらおうことを願う。

ライター/R175

関西のとある理系国立大出身。エンジニアの経験があり、身近な現象と理科の教科書の内容をむずびつけるのが趣味。教科書の内容をかみ砕いて説明していく。

1.フレミング左手の法則とモーター原理

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磁界があるところに電流を流すと、「電磁力」という力が働きます。

この「電磁力」うまいこと回転運動に変換している装置がモータです。

*磁界:磁石の近くの空間をイメージしてください。そこに、鉄など磁石にくっつく物体を置けば、勢いよく磁石に引き寄せられる空間です。磁場もほぼ同じ意味。

2.フレミング左手の法則~電磁力、電流、磁界の関係

ここではまず、フレミングの左手の法則について簡単に解説したいと思います。

磁界と電流があれば、「電磁力」が発生。この「電磁力」の向きは磁界および電流の向きによって決まります。この法則が「フレミング左手の法則」です。

なぜ「左手」という、ネーミングが出てくるのでしょうか?

image by Study-Z編集部

なぜなら、左手の指が「電流」「磁界」「電磁力」の向きを表しているから。

左手をイラストのような状態にしてください。中指が「電流」、人差指が「磁界」、親指が「電磁力」の向きを表します。

電流と磁界の向きが分かれば「電磁力」の向きも分かるもの。「電流」の向きに人差し指を、「磁界」の向きに人差指を合わせましょう。

ちょっと変わった覚え方

フレミング左手の法則、非常に便利ですが、油断していると何指が何の向きか忘れてしまいそう。

そこで、筆者がやっていた忘れにくい方法を紹介したいと思います。

まず、電流、磁界、電磁力は略して「電、磁、力」、「デン、ジ、リョク」とこの順番でテンポよく憶えておきます(多くの人はそうしてると思われます)。

次に、左手をイラストのように「フレミング左手の法則モード」の形にして、「デン、ジ、リョク」とつぶやきます。「デン」とつぶやくときに右手の中指で左手の中指の先を軽くたたきましょう。目立たないようにこの癖をつけておきます。

「デン、ジ、リョク」は覚えていてもそれが「中指、人差指、親指」だったか「親指、人差指、小指」だったか、意外と忘れてしまいまうもの。

そんな時、「デン」のところで中指同士を突き当てる癖がついていれば忘れにくいでしょう。

3.モータの仕組み~電磁力を回転に変換~

磁界と電流から電磁力が生まれるのは分かりました。では、それをどうやって回転に変えるのでしょうか。3項ではモータの仕組みを確認します。

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イラストにモータの構造の1例を示します。導線部分が電磁力の勢いで上向きに動きこれが回転運動に。1番上まで来たら今度は電流の方向が逆向きになり、今度は下向きに力を受けるため、引き続き同じ方向に回転しますね。

導線部分の根元にある「整流子」と呼ばれる部品は真ん中に絶縁(電流を流さない)があり、導線が180°回転するごとに電流の向きを逆向きにする仕組みになっています。

\次のページで「4.フレミング左手の法則を使いこなす」を解説!/

4.フレミング左手の法則を使いこなす

この項では、電流、磁界からモータの回転方向を判断したり、逆にモータの回転方向から電流や磁界の向きを判断する例題を扱っています。目的はフレミング左手の法則を使い慣れることです。

繰り返しますが、フレミング左手の法則に慣れておけば試験での「時短」につながりますので是非取り組んでください。

モータの回転方向を判断する問題(例題1)

モータの回転方向を判断する問題(例題1)

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例題1:イラストのように磁石を置き、電流を流した場合、モータは(ア)右向き、(イ)左向きどちらに回転しますか。

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【解答】
電磁力の問題を解くときは、1にも2にも「左手」を使いましょう。イラストのように電流の向きに中指を、磁界の向きに人差し指を合わせます。すると、電磁力の向きは下向き。

コイルの下向きに力がかかれば、左向きに回転しますね。答えは()の左向きです。

モータの回転方向を判断する問題(例題2)

例題2:例題1で、磁石の向きを反対にすると、(ア)、(イ)どちら向きに回転しますか。

【解答】
磁石の向き=磁界の向きが逆向きなので、中指の向きは変えず人差し指だけ逆向きにしましょう。親指は先ほどと真逆の上向き。()です。

例題2では、敢えてイラストを載せていませんが、イラストを描かなくても即座に回答できるようにしておきたいですね。「磁界の向きだけを逆にしたら、電磁力の向きは逆向き」になります。電流の向きだけを逆にした時も同様に回転の向きは逆向き。さっと答えられるようにしておけばテストで時間短縮できますよ。

モータの回転方向を判断する問題(例題3)

モータの回転方向を判断する問題(例題3)

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例題3:今度はモータの回転の向きが分かっているパターン。イラストの状態では電流は(ア)、(イ)どちら向きに流れていますか?

\次のページで「 モータの回転方向を判断する問題(例題4)」を解説!/

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【解答】
例によってフレミング左手の法則を使います。
イラストのようにモータが回転する時の「電磁力」の向きに親指を合わせましょう。次に磁界の向きと人差し指の向きを合わせます。

この時、中指はどちらを向いていますか?

正解は()の向き。

モータの回転方向を判断する問題(例題4)

 モータの回転方向を判断する問題(例題4)

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例題4:整流子なしで回転させるには?

イラストのように、整流子がなくコイルのA部分とB部分が別々に輪っかに接続している状態を想定。電流の向きを変えながらモータを回転させる場合を考えます。次の問に答えましょう。

モータを回転させるためには、コイルが(問1  ア.360°、イ.180°、ウ.90°)回転するごとに電流の向きを逆向きに変化させる必要があります。

問2  モータがイラストの方向に回転するときの電流の挙動として正しいのはA~Dのどのグラフですか。ただし、コイルの角度はイラストの状態が0°とし反時計回りに角度を取るものとし、電流の向きはイラスト内で示した(正)の向きをプラスの向きとします。

【解答】例題4解説

モーターが回転し続けるためには、コイルが左半分にある時と右半分にある時とで電流の向きを切り替える必要があります。つまり角度で言うと180°ごとに切り替えるので、問1は(イ)180°が正解。

問2はフレミング左手の法則を使って考えましょう。コイルA部分が左半分にある時は電磁力の向きは下向き、磁界の向きは右向きなので電流の向きはイラストの正の向き。

逆にコイルA部分が右半分にある時は、電磁力の向きは上向き、磁界の向きは右向きなので電流の向きはイラストの負の向き。

さて問題は電流の向きを切り替えるタイミング。

イラストで、コイルAが真上or真下にに来る時に切り替え。イラストの状態が0°、コイルA部分が真下に来た時が90°、右に来た時が180°、真上に来たら270°、1周して左に戻って来たら360°。

まとめると、

コイルAが左半分の時:角度は0〜90°と270〜360°で電流の向きは

コイルAが右半分の時:角度は90〜270°で電流の向きは

正解は()です。

覚えるより慣れよう

フレミング左手の法則は使えることが大事です。

使い慣れることが、何より近道。めんどくさがらず「電磁力」なり「電流」なりの向きを考える習慣をつけましょう。

極端な話、最初はフレミング左手の法則を暗記せず、教科書でどの指が何の向きか確認しながら考えてもよいでしょう。大切なのは公式を覚えることより、左手を使って向きを判断する習慣です。

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物理理科電磁気学・光学・天文学

モーターから学ぶ「フレミングの左手の法則」を理系ライターがわかりやすく解説

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【解答】
例によってフレミング左手の法則を使います。
イラストのようにモータが回転する時の「電磁力」の向きに親指を合わせましょう。次に磁界の向きと人差し指の向きを合わせます。

この時、中指はどちらを向いていますか?

正解は()の向き。

モータの回転方向を判断する問題(例題4)

 モータの回転方向を判断する問題(例題4)

image by Study-Z編集部

例題4:整流子なしで回転させるには?

イラストのように、整流子がなくコイルのA部分とB部分が別々に輪っかに接続している状態を想定。電流の向きを変えながらモータを回転させる場合を考えます。次の問に答えましょう。

モータを回転させるためには、コイルが(問1  ア.360°、イ.180°、ウ.90°)回転するごとに電流の向きを逆向きに変化させる必要があります。

問2  モータがイラストの方向に回転するときの電流の挙動として正しいのはA~Dのどのグラフですか。ただし、コイルの角度はイラストの状態が0°とし反時計回りに角度を取るものとし、電流の向きはイラスト内で示した(正)の向きをプラスの向きとします。

【解答】例題4解説

モーターが回転し続けるためには、コイルが左半分にある時と右半分にある時とで電流の向きを切り替える必要があります。つまり角度で言うと180°ごとに切り替えるので、問1は(イ)180°が正解。

問2はフレミング左手の法則を使って考えましょう。コイルA部分が左半分にある時は電磁力の向きは下向き、磁界の向きは右向きなので電流の向きはイラストの正の向き。

逆にコイルA部分が右半分にある時は、電磁力の向きは上向き、磁界の向きは右向きなので電流の向きはイラストの負の向き。

さて問題は電流の向きを切り替えるタイミング。

イラストで、コイルAが真上or真下にに来る時に切り替え。イラストの状態が0°、コイルA部分が真下に来た時が90°、右に来た時が180°、真上に来たら270°、1周して左に戻って来たら360°。

まとめると、

コイルAが左半分の時:角度は0〜90°と270〜360°で電流の向きは

コイルAが右半分の時:角度は90〜270°で電流の向きは

正解は()です。

覚えるより慣れよう

フレミング左手の法則は使えることが大事です。

使い慣れることが、何より近道。めんどくさがらず「電磁力」なり「電流」なりの向きを考える習慣をつけましょう。

極端な話、最初はフレミング左手の法則を暗記せず、教科書でどの指が何の向きか確認しながら考えてもよいでしょう。大切なのは公式を覚えることより、左手を使って向きを判断する習慣です。

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