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「排日移民法」はどのような歴史から生まれた?元大学教員が解説

よぉ、桜木建二だ。「排日移民法」とは、1920年代にアメリカで施行された法律のひとつ。東ヨーロッパ、南ヨーロッパ、東アジアの移民の入国を制限するものだが、アジア人のなかでも日本人は差別的に排斥された。また、このような人種差別は太平洋戦争中にも激化。当時アメリカ国民として生きていた日系の人々は、強制収容所に入れられたという歴史がある。

それじゃ、アメリカ人はどうして日系人を排斥するに至ったのか、白人種を優越視する考え方や、日本人が「脅威」と見なされた背景など、世界史に詳しいライターひこすけと一緒に解説していくぞ。

解説/桜木建二

「ドラゴン桜」主人公の桜木建二。物語内では落ちこぼれ高校・龍山高校を進学校に立て直した手腕を持つ。学生から社会人まで幅広く、学びのナビゲート役を務める。

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ライター/ひこすけ

文化系の授業を担当していた元大学教員。専門はアメリカ史・文化史。日米の関係を歴史的に見ていくとき「排日移民法」を避けて通ることはできない。「排日移民法」が成立した背景には、アメリカの国民感情を刺激するいろいろな原因があった。そこで「排日移民法」が施行された背景と、その後に起こった関連する出来事をまとめてみた。

日露戦争における日本勝利により「黄禍論」がうずまく

image by PIXTA / 2046456

アメリカ人にとって日本人が「脅威」と感じられたのは、大国であるロシアに勝利した日露戦争がきっかけであると言われています。文明化されていない小国であると思っていた日本の軍事力に世界中がおどろきました。

19世紀の日本のイメージは「ジャポニズム」

もともとアメリカにおける日本のイメージは「蝶々夫人(マダム・バタフライ)」。ジョン・ルーサー・ロングの短編小説を劇作家であるベラスコが戯曲にしました。さらにプッチーニがオペラ化したことにより、蝶々夫人=日本人の典型として定着します。

蝶々夫人は、アメリカに帰国した男性をけなげに待ち続け、結ばれないことが分かると自ら命を絶つという悲劇。男性そしてアメリカ人に対する日本人女性の従順さをあらわした内容です。欧米により作られた日本のイメージは「ジャポニズム」と呼ばれ、脅威よりもむしろ空想的な存在でした。

「黄禍論」は中国をはじめとする黄色人種脅威論

「ジャポニズム」と入れ替わるようにして生まれたのが「黄禍論」。日露戦争の日本勝利をきっかけに「欧米の脅威を与えるアジア人」という考え方がアメリカ・ヨーロッパ諸国に広まりました。

アメリカの場合、イタリア系やアイルランド系に代わり、中国人や日本人が移民向けの仕事を占めるようになります。彼らは、ヨーロッパ系移民よりも低賃金でよく働くため重宝されました。結果としてアジア系の人々は白人を淘汰する「脅威」であると、警戒されるようになります。

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「黄禍論」を支えるのが「人種」と言う考え方。黄色人種の脅威により白色人種は滅亡するのでは?と考えられた。これは生物学者ダーウィンの「自然淘汰説」を人種差別的にアレンジした発想。この点についてはあとで解説するぞ。

カリフォルニアの「ゴールドラッシュ」で日本人のアメリカ行きが活発化

'Japanese Laborers on Spreckelsville Plantation', oil on canvas painting by Joseph Dwight Strong, 1885, private collection.jpg
By Joseph Dwight Strong (1853-1899) – private collection (Taito Co., Ltd., Tokyo), パブリック・ドメイン, Link

アメリカにおける「黄禍論」の流行は、日本人移民の増加と切り離して考えることはできません。19世紀末のアメリカ・カリフォルニアで金鉱が発見。一獲千金を狙ってたくさんの人がカリフォルニアに向かう「ゴールドラッシュ」が発生します。日本人移民も、この「ゴールドラッシュ」をきっかけに増えました。

ハワイへの移民は日本政府が推進

アメリカ本土の場合、急増するアジア系移民に脅威を感じ、早々に移住が制限されます。一方、アメリカ州になる以前のハワイは、日本人の最初の移住先でもあり、移民に対して寛容でした。そこで、ハワイ王国と移民受け入れに関する協力関係を構築。政府レベルでハワイ移住を推進します。

日本人がハワイで従事したのがサトウキビの栽培や砂糖づくり。1898年にアメリカ合衆国がハワイ共和国を併合。ハワイ準州となってからも、排日の機運が激化する1920年代までは、移住の制限はほとんどありませんでした。

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