今回は、力学で学習する「浮力」と「摩擦力」について解説していきます。

「浮力」と「摩擦力」はどちらも、身近なところで作用している力で、力学の基礎を勉強する上で避けて通ることができない部分です。しかしながら、物理学的な言葉で説明しようとすると、戸惑ってしまうことも少なくない。ぜひとも、この記事を読んで、「浮力」と「摩擦力」の考え方を完璧に理解してくれ。

塾講師として物理を高校生に教えていた経験もある通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻しており、物理学も幅広く勉強している。塾講師として物理を高校生に教えていた経験から、物理の学習において、つまずきやすい点や勘違いしやすい点も熟知している。

浮力について学ぼう

浮力とは

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この記事の前半では、浮力について学んでいきましょう。浮力とは、流体の中に存在する物体にかかる力のことを指します。流体は、一般的に液体および気体のことです。つまり、水、油、空気などはすべて流体だということですね。

実は、浮力というのは身近に感じられる力の一つでもあります。浮き輪が水に浮かぶという現象、気球が空に浮かんでいる現象などは浮力が密接に関係しているのです。

しかし、浮力は身近に感じられる力である一方、いざそれを数式で記述しようとすると少し戸惑ってしまいます。それゆえ、浮力を本質的に理解するためには、実際に練習問題などを解いてみるということが非常に大切です。

浮力の向き

浮力の向き

image by Study-Z編集部

まず、浮力の向きについて考えてみましょう。浮力の向きは、私たちの経験から直感的に理解することができます。空気の入った浮き輪を、プールの底に沈めて、手を放すとどのようになるでしょうか?水面に向かって、まっすぐ浮かんでいきますよね。このことから、浮力が鉛直上向きの力であることがわかります。

なぜ、浮力が鉛直上向きの力になるのかを、もう少し詳しく考えてみましょう。浮力が生じる原因は流体の圧力です。水の場合で考えると、水圧は深くなればなるほど、大きくなります。つまり、水中に存在する物体の上面がうける水圧は、下面が浮ける水圧よりも小さいのです。このとき、物体は見かけ上、鉛直上向きの力がかかっていることになりますよね。

また、浮力の作用点になる位置を浮力中心といいます。作用点とは、ベクトル(力の矢印)の始点のことです。浮力中心は、物体の流体に浸かっている部分の重心と同じ位置になることが知られていますよ。

\次のページで「浮力の大きさ」を解説!/

浮力の大きさ

浮力の大きさ

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浮力の大きさの公式は、どの教科書にも載っている有名な公式ですよね。しかしながら、この公式の原理を丁寧に説明している教科書は少ない印象です。そのため、「ローブイジー(ρVg)、ローブイジー(ρVg)」と呪文のように唱えて覚えたという方も少なくないと思います。

ここでは、浮力の公式を丸暗記せずに覚える方法を紹介しますね。まず「浮力の大きさは、物体が押しのけた流体にかかる重力の大きさに等しい」ということを頭に入れておいてください。

ではまず、物体が押しのけた流体の質量を考えてみましょう。ここでは、流体の密度をρとしています。物体が押しのけた流体の質量は、物体の流体に浸かっている部分の体積をVとすると、ρVと表わせますね。さらに、重力の大きさは質量と重力加速度の積で表せるので、物体が押しのけた流体にかかる重力はρVgとなります。このように考えることで、公式の意味がわかりやすくなりますよ!

摩擦力について学ぼう

摩擦力とは

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続いて、後半で学ぶのは摩擦力です。摩擦力とは、物体同士が接しているとき、それらが互いに動こうとするのを妨げる力のことを指します。摩擦力も、浮力と同様に身近なところで作用しています。例えば、ブレーキによって自転車が止まるのは、摩擦力が存在するからです。

以下では、粗い面上に置かれた物体について考えてみながら、2種類の摩擦力について解説していきます!また、摩擦力の学習においても、演習や復習は大切です。

\次のページで「静止摩擦力」を解説!/

静止摩擦力

静止摩擦力

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物体が静止いているときに受ける摩擦力を静止摩擦力といいます。静止しているとは、速度が0であるということです。

それでは、図のように床に置いてある段ボール箱を横から押しているが、動かないという状況を例にとって考えてみましょう。このとき、人は段ボール箱に力をかけていますが、段ボール箱は少しも動いていません。これは、力がはたいているとき、物体は加速するというニュートンの法則に反しています。このことから、人が段ボール箱を押す力を、打ち消す力がはたらいているということがわかりますね。実は、その打ち消す力が静止摩擦力なのです。したがって、(静止摩擦力の大きさ)=(人が段ボール箱を押す力の大きさ)となります。また、静止摩擦力は人が段ボール箱を押す向きとは逆方向です。

さらに、段ボール箱を強く押した場合は、どのようになるでしょうか?押す力の大きさが一定の値を超えると、段ボール箱は動き出すことでしょう。ちょうど、段ボール箱が動き出す瞬間の静止摩擦力を、最大静止摩擦力と呼びます。また、最大静止摩擦力は、段ボール箱が床から受ける垂直抗力Nに比例するのです。ゆえに、(最大静止摩擦力)=μ×Nと表わせますね。このときの比例定数μを静止摩擦係数と呼んでいます。

動摩擦力

動摩擦力

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次に、物体が動いているときに受ける摩擦力について考えましょう。このような摩擦力を動摩擦力といいます。

今回も、段ボール箱の運動を例にしましょう。段ボール箱を勢いよく押し出して、床の上を滑らせるという状態を考えます。このとき、段ボール箱は徐々に速さが小さくなって、やがて静止しますよね。ところが、これは力がはたらいていない物体は、等速直線運動するというニュートンの法則に反するのです。このことから、段ボール箱を減速させるような力がはたらいていることがわかります。そして、その力が動摩擦力なのです。また、動摩擦力の大きさは段ボール箱がどのような速度で運動している場合も、同じ値をとります動摩擦力の向きは段ボール箱の進行方向と逆向きです。

先ほど同様に、動摩擦力の大きさを数式で表してみましょう。段ボール箱が床から受ける垂直抗力をNとすると、(動摩擦力)=μ'×Nと表わせます.。つまり、動摩擦力の大きさは、垂直抗力の大きさに比例しているのですね。そして、比例定数μ'を動摩擦係数といいます。

「浮力」と「摩擦力」の本質を理解しよう

「浮力」と「摩擦力」は、力学の基礎を勉強をする上で、理解しなければならない内容の1つです。学校の定期テストや入試でも頻出分野になっています。ところが、教科書や参考書などには公式は大きな字で載っているが、詳細については説明が少ないということが少なくないのです。そのような理由から、丸暗記で済ませてしまう方もいらっしゃるかもしれません。

この記事は、教科書や参考書ではわかりくい部分や説明が不十分であるところを、できるだけコンパクトにまとめることを意識して作成しました。ぜひとも、この記事を読んでいただき、「浮力」と「摩擦力」の本質的な部分を学んでみてください。

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物理物理学・力学理科

「浮力」と「摩擦力」の本質を理系学生ライターが5分でわかりやすく解説!

今回は、力学で学習する「浮力」と「摩擦力」について解説していきます。

「浮力」と「摩擦力」はどちらも、身近なところで作用している力で、力学の基礎を勉強する上で避けて通ることができない部分です。しかしながら、物理学的な言葉で説明しようとすると、戸惑ってしまうことも少なくない。ぜひとも、この記事を読んで、「浮力」と「摩擦力」の考え方を完璧に理解してくれ。

塾講師として物理を高校生に教えていた経験もある通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻しており、物理学も幅広く勉強している。塾講師として物理を高校生に教えていた経験から、物理の学習において、つまずきやすい点や勘違いしやすい点も熟知している。

浮力について学ぼう

浮力とは

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この記事の前半では、浮力について学んでいきましょう。浮力とは、流体の中に存在する物体にかかる力のことを指します。流体は、一般的に液体および気体のことです。つまり、水、油、空気などはすべて流体だということですね。

実は、浮力というのは身近に感じられる力の一つでもあります。浮き輪が水に浮かぶという現象、気球が空に浮かんでいる現象などは浮力が密接に関係しているのです。

しかし、浮力は身近に感じられる力である一方、いざそれを数式で記述しようとすると少し戸惑ってしまいます。それゆえ、浮力を本質的に理解するためには、実際に練習問題などを解いてみるということが非常に大切です。

浮力の向き

浮力の向き

image by Study-Z編集部

まず、浮力の向きについて考えてみましょう。浮力の向きは、私たちの経験から直感的に理解することができます。空気の入った浮き輪を、プールの底に沈めて、手を放すとどのようになるでしょうか?水面に向かって、まっすぐ浮かんでいきますよね。このことから、浮力が鉛直上向きの力であることがわかります。

なぜ、浮力が鉛直上向きの力になるのかを、もう少し詳しく考えてみましょう。浮力が生じる原因は流体の圧力です。水の場合で考えると、水圧は深くなればなるほど、大きくなります。つまり、水中に存在する物体の上面がうける水圧は、下面が浮ける水圧よりも小さいのです。このとき、物体は見かけ上、鉛直上向きの力がかかっていることになりますよね。

また、浮力の作用点になる位置を浮力中心といいます。作用点とは、ベクトル(力の矢印)の始点のことです。浮力中心は、物体の流体に浸かっている部分の重心と同じ位置になることが知られていますよ。

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