今回は化学結合の解説のラスト、「金属結合」について勉強していこう。

金属には他の物質にはない展性や延性、熱や電気をよく通すといった性質があったよな。それらを復習しながら考えていこう。

一部高校レベルの内容も含まれるが、必要に応じて理解していってくれよな。さあ、化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.金属結合とは

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金属結合とは金属元素同士が結びつく結合です。化学式にした場合には原子1つで表すことのできる単体ですが、ナトリウム、カリウム、鉄や銅といった金属は全てこの金属結合によって1つの塊として存在しています。つまり、金属は分子をつくらないということは既に解説しましたね。

金属が分子として独立した構造をとれないのにはこの結合方法が大きく関わっています。それのカギとなるのが金属イオンができる際に放出される電子の存在なのです。

1-1.価電子と自由電子

1-1.価電子と自由電子

image by Study-Z編集部

価電子とは、原子の構造を考えたときに最外電子殻の軌道に存在する電子のことをいいます。例えば原子番号11のナトリウムは1つ、原子番号12のマグネシウムは2つ、この価電子を持っているということです。この考え方についてはイオンの成り立ちについての解説で既に扱っている内容ですね。

金属は一般的に陽イオンになりやすい、イオン化エネルギーの小さい元素です。つまり、電子を受け取るよりは価電子を放出することで安定するということになります。こうして放出された電子が自由電子です。

マイナスの電荷を帯びた自由電子はブラスの電荷を帯びた金属イオンの間を自由に飛び回り、クーロン力(静電気力)によって結びつきます。この結合によって金属としての結晶構造が成り立つということですね。ちなみに金属結合は電子を共有する「共有結合」や「配位結合」よりも結合力は弱く、「イオン結合」に次いで最も弱い原子間の結合となります。

2.金属の結晶構造

金属結晶は先述した自由電子によって結合が保たれ、主に3つの結晶構造によって成り立っています。ここからの内容は高校化学で習う内容が含まれているので、中学生のみなさんは参考程度にご覧くださいね。

また、金属は必ずしも金属結晶のかたちをとるわけではないということを追記しておきましょう。ただしこれは難しい内容になってくるので、気になる人は「準結晶」「アルファモス金属」で調べてみてくださいね。

\次のページで「2-1.面心立方格子構造」を解説!/

2-1.面心立方格子構造

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面心立方格子構造は立方体で見たとき、各頂点および各面の中心に原子が位置している構造です。

各面の中心に位置している原子は立方体2つがつながっている状態で原子1つのカタチを成しています。また、立方体の各頂点に位置している原子は立方体8つがつながって1つの原子のカタチを成すのがわかるでしょうか。この立方体を1単位としたとき、単位格子といういいかたがあります。この単位格子が何に関わるかというのは高校化学での内容になりますので、今回は割愛させていただきますね。

この構造を持つ単体金属はアルミニウムや銅、金、銀、鉛などと多く、加工しやすい性質を持っています。

2-2.体心立方格子構造

Lattice body centered cubic.svg
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体心立方格子構造は最もわかりやすい構造ですね。各頂点および立方体の中心に原子が位置している構造です。

面心立方格子構造同様に立方体の各頂点に位置している原子は立方体8つがつながって1つの原子のカタチを成します。そして立方体の中心には原子1つがそのまま入っている構造ですね。

リチウム、ナトリウム、カリウムなどの第1族アルカリ金属に多いのが特徴です。

2-3.六方最密充填構造

Hexagonal A3.svg
By Christophe Dang Ngoc Chan (cdang) - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, Link

最も複雑なのが六方最密充填構造ですね。正六角柱のカタチをしていて、上面および底面の各角とその中心、六角柱の内部で高さが1/2のところに 3 つの原子が存在しています。しかし面心立方格子構造や体心立方格子構造のように単位格子として考える際には、上図の左下のように正六角柱を3等分したカタチで考える必要があるのでややこしさが増してしまうでしょう。

この構造を持つ金属にはマグネシウム、亜鉛などがあります。

\次のページで「3.金属の特性をおさらい」を解説!/

3.金属の特性をおさらい

金属の条件といえば3つ!まずは簡単におさらいをしましょう。

金属光沢がある

熱や電気をよく通す(伝導性のよさ)

叩いたり圧力をかけると伸びる(展性・延性)

これは化学の知識では基本中の基本といっていいでしょう。しっかり覚えておきたいですね。さて、これらの性質はどれも金属結合・金属結晶の成り立ちに由来するものであるということが今回の学習ポイントですよ。

まず金属光沢というのは、簡単に言うと光が自由電子に跳ね返されるためです。金属によって反射する光の波長範囲は異なり、金や銀、銅をはじめとした様々な光沢となって目に見えるようになります。自由電子は結合を助けるだけでなく、金属の色にも関係があったということですね。

続いては伝導性に関してですが、これにも自由電子の存在が影響しています。自由電子は原子の元を離れて自由に動き回るものでしたね。これにより、外部に電極を取り付けた場合には容易に電荷を受け渡すことができるようになります。さらに、熱伝導は振動エネルギーとして伝わるものです。そのために金属は原子だけでなく電子でも振動を伝えることができるようになり、熱伝導効率が高くなるという特徴がありますよ。

最後に展性・延性についてです。金属は自由電子によって結晶構造を保ちながら、自在にカタチを変えられるという性質があります。ただし、金属によっては圧力をかけたときに強いか(展性)、引っ張られたときに強いか(延性)が異なるのを覚えていますか?これは金属の結晶構造が理由の1つになっているものと覚えておきたいですね。

金属結合は自由電子の存在が重要!

金属結合は金属同士だからこそ成り立つ結合ですね。金属は陽電子になりやすいイオン化エネルギーの小さい元素です。つまり、容易に電子を放出することで陽イオンになります。放出された電子はマイナスの電荷を帯びていますから、プラスの電荷を帯びた陽イオンである金属イオンとはお互いに引き合う関係ですね。そこで電子は金属イオンの間を自由に移動できる自由電子となり、結合を支えていると考えられます。

さらに、金属同士が金属結合することで成り立つ結晶が金属結晶です。この結晶には3つの構造が存在し、それぞれ「体心立方格子構造」「面心立方格子構造」「六方最密充填構造」という名称がついています。漢字ばかりで難しく感じられるかもしれませんが、構造と関連付けて覚えてみましょう。

自由電子の存在や金属結晶の構造により、金属ならではの特性は生まれます。それを理解することで、金属に対してより深く知ることができそうですね。

" /> 金属ならではの結合「金属結合」と金属の性質を元塾講師がわかりやすく解説 – Study-Z
化学無機物質物質の状態・構成・変化理科

金属ならではの結合「金属結合」と金属の性質を元塾講師がわかりやすく解説

今回は化学結合の解説のラスト、「金属結合」について勉強していこう。

金属には他の物質にはない展性や延性、熱や電気をよく通すといった性質があったよな。それらを復習しながら考えていこう。

一部高校レベルの内容も含まれるが、必要に応じて理解していってくれよな。さあ、化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.金属結合とは

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金属結合とは金属元素同士が結びつく結合です。化学式にした場合には原子1つで表すことのできる単体ですが、ナトリウム、カリウム、鉄や銅といった金属は全てこの金属結合によって1つの塊として存在しています。つまり、金属は分子をつくらないということは既に解説しましたね。

金属が分子として独立した構造をとれないのにはこの結合方法が大きく関わっています。それのカギとなるのが金属イオンができる際に放出される電子の存在なのです。

1-1.価電子と自由電子

1-1.価電子と自由電子

image by Study-Z編集部

価電子とは、原子の構造を考えたときに最外電子殻の軌道に存在する電子のことをいいます。例えば原子番号11のナトリウムは1つ、原子番号12のマグネシウムは2つ、この価電子を持っているということです。この考え方についてはイオンの成り立ちについての解説で既に扱っている内容ですね。

金属は一般的に陽イオンになりやすい、イオン化エネルギーの小さい元素です。つまり、電子を受け取るよりは価電子を放出することで安定するということになります。こうして放出された電子が自由電子です。

マイナスの電荷を帯びた自由電子はブラスの電荷を帯びた金属イオンの間を自由に飛び回り、クーロン力(静電気力)によって結びつきます。この結合によって金属としての結晶構造が成り立つということですね。ちなみに金属結合は電子を共有する「共有結合」や「配位結合」よりも結合力は弱く、「イオン結合」に次いで最も弱い原子間の結合となります。

2.金属の結晶構造

金属結晶は先述した自由電子によって結合が保たれ、主に3つの結晶構造によって成り立っています。ここからの内容は高校化学で習う内容が含まれているので、中学生のみなさんは参考程度にご覧くださいね。

また、金属は必ずしも金属結晶のかたちをとるわけではないということを追記しておきましょう。ただしこれは難しい内容になってくるので、気になる人は「準結晶」「アルファモス金属」で調べてみてくださいね。

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