
3分で簡単にわかる「酸性」と「アルカリ性」!定義やpH・指示薬も元家庭教師がわかりやすく解説
酸性と言えばレモンや酢を思い浮かべる人が多いでしょう。一方、アルカリ性と言えばアンモニアや水酸化ナトリウムが有名です。この酸性とアルカリ性の違いは水溶液中にある水素イオンH+の濃度とpH(ペーハー、ピーエイチ)にある。
今回は高校時代、酸性とアルカリ性について研究していたという化学ライター、たかはしふみかと一緒にその性質を解説します。

ライター/たかはし ふみか
高校では化学部、大学では化学を専攻、就職は化学メーカーというリケジョ。高校時代に指示薬の研究をしていた。高1の頃、㏗の概念を全く理解しておらず先輩に教えてもらったのもいい思い出。
酸性とアルカリ性の定義
中学校の理科でおなじみの酸性とアルカリ性。まずは酸性とアルカリ性の定義から確認していきましょう。
酸性とアルカリ性にはいくつかの定義の仕方があります。特に大事なのがアレニウスの定義とブレンステッド・ローリーの定義です。酸と塩基の最も古い定義とされているのがアレニウスの定義。しかしアレニウスでは水溶液にしか使えないため、それを発展させたのがブレンステッド・ローリーの定義です。
この定義には水素イオンH+と水酸化物イオンOH–が出てくるので覚えてくださいね。
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酸味の秘密、酸性

味覚の1つである酸味。酸性を示す食べ物は多く、柑橘類や酢によって酸味を楽しむことができますね。柑橘類にはクエン酸が含まれていて、また酢には4~18%の酢酸が含まれています。
また亜鉛や鉄、鉛などの金属、さらには鉄のさびを溶かすことも酸性の特徴です。イオン化傾向と言う単元では、酸に溶けやすい金属・溶けにくい金属も学びます。酸の種類と金属によって溶けやすさが異なるのです。酸性は次のように定義されています。
・アレニウスの定義:水中で水素イオンH+を生じるもの
・ブレンステッド・ローリーの定理:水素イオンH+を他の物質に与えるもの
酸とは水素イオンを持っていて他の物質に与えることができる物質の事なのですね。ところで、二酸化炭素が水に溶けると酸性となります。これが皆さんもよく飲んでいる炭酸水なのです。
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この世の味とは思えない?アルカリと塩基

一方、アルカリは食べ物として口に入れるものはあまりありません。ケーキ作りに欠かせないベーキングパウダー(炭酸水素ナトリウム:NaHCO3)はアルカリ性ですが、それだけを食べることはありませんね。アルカリ性のものは苦いと表現されることが多いです。
アルカリ性の物は触るとぬるっとしています。セッケンもアルカリ性で、ぬるっとしていますね。アルカリ性の定義は以下のように定義されています。
・アレニウスの定義:水中で水酸化物イオンOH-を生じるもの
・ブレンステッド・ローリーの定義:水素イオンH+を他から受け取るもの
ところで中学時代からなじみのあるアルカリ性という言葉ですが、高校化学では塩基と表現します。塩基の中でも水に溶けやすい物をアルカリと呼ぶのです。
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酸性とアルカリ性の間
酸とアルカリの間、その状態をなんと呼ぶでしょうか?答えは中性です。水道水や雨は中性と思われがちですが、空気中の二酸化炭素などが溶けるため厳密には弱酸性となっています。そして酸とアルカリを混ぜることで中性にすることを中和というのですね。
例えば塩酸と水酸化ナトリウムを混合すると水と塩化ナトリウムになります。酸である塩酸が水素イオンH+を放出し、塩基でありOHーを持つ水酸化ナトリウムがH+を受け取ってH2Oを作っているのが分かりますね。
HCl+NaOH→NaCl+H2O
電離度による分類
酸も塩基も水に溶けて電離する電解質で、水に溶けると自由に動けるイオンとなります。電解質が水溶液中で電離する割合を電離度と言い、電離度が大きいほど強い酸とアルカリになるのです。逆に電離度が小さいほど弱い酸、アルカリとなります。
強酸としては硝酸、塩酸、硫酸が有名です。一方、強アルカリとしては水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化バリウムが知られていますね。そして弱酸は酢酸、炭酸、硫化水素、弱アルカリはアンモニアを覚えておきましょう。
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酸性とアルカリ性の指標、pHと指示薬

酸性とアルカリ性の基準となるのがpH。pHは水素イオン指数の事で、0から14までに分けられているのです。pHが低いほど水素イオンの濃度が高く酸性、高いほど強い塩基となります。そして、中性はpH7となっているのです。
見た目だけではどちらかわからない酸性とアルカリ性。それを目でわかりやすく示してくれるのが指示薬です。指示薬といえば次のものが知られていますね。
・フェノールフタレイン溶液:透明な液がアルカリ性で赤く変化
・リトマス試験紙:酸性で赤、アルカリで青に変化
・BTB溶液:酸性では黄色、中性では緑、アルカリ性では青
・メチルオレンジ:㏗2~6で赤や黄色になる
・万能試験紙:酸性なら赤、中性なら緑、アルカリなら青
フェノールフタレインはアルカリ性にのみ反応して赤く染まる溶液。また、リトマス試験紙には赤と青があり赤くなったら酸性、青くなったらアルカリ性とわかります。しかしこれでは酸性かアルカリ性かということしかわかりません。
一方、BTB溶液は酸性、中性、アルカリ性それぞれで黄色、緑、青と色が変化するのが特徴です。またpHごとで色が変わるpH試験紙を使うと広範囲でpHを確認することができます。正確にpHを知りたいときにはpHメーターがおすすめです。
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家でも作れる、自家製指示薬

化学実験の試薬は専門の業者でしか扱っておらず、そこらのお店でかうことはできません。しかし、スーパーで売っているもので簡単に指示薬を作ることができます。
用意するのは紫キャベツやアントシアニンが含まれた紅茶。アントシアニンはpHによって色が変わる性質を持った色素なのです。紫キャベツを煮た液や普通に入れた紅茶にレモンや酢、重曹を入れるだけで色が変わります。酸性では赤く、アルカリ性では青色と変化するのです。
手軽にできて楽しい、自由研究にもおすすめな実験。しかし、酸素系と塩素系の洗剤など混ぜることで危険な気体が発生することもあります。安全に楽しむためにも、混ぜたら危険なものはないかきちんと確認してくださいね。
なお、アジサイの色が土壌によって変化するのもこのアントシアニンが含まれているからなのです。
中和滴定

image by Study-Z編集部
酸と塩基の授業でよくやる実験が中和滴定。塩基の水溶液に酸を滴下する、または酸に塩基を滴下することで中性にしていきます。中和滴定で中性にあるのは一瞬です。そのため、中和滴定を行うと上のような滴定曲線を得ることができます。
強酸と強アルカリの中和の時、中和点の付近で大きくpHが大きく変化。そのため変色域が酸よりにあるメチルオレンジ、変色域がアルカリにあるフェノールフタレインのどちらでも行うことができるのです。
一方、強酸と弱アルカリまたは弱酸と強アルカリの中和の時には適した指示薬が限られてきます。これは酸と塩基が過不足なく打ち消しあう中和点が強い方に動いてしまうから。例えば弱酸と強塩基を中和すると図のように中和点はアルカリ寄りになり、メチルオレンジでは中和点を確認できません。
そのため弱酸と強アルカリの中和滴定にはフェノールフタレインを、強酸と弱アルカリの中和滴定にはメチルオレンジを用います。
酸性とアルカリ性
化学の単元の中でも特にとっつきやすく実験もしやすい酸とアルカリ。ですが強酸、強アルカリが体にかかったり口に含んでしまったりすると火傷をしてしまいます。酸やアルカリを扱うときは注意を怠らず、万一に備えて事前にかかったときの対処方法を確認しておきましょう。