今回は「共有結合」と「配位結合」について勉強していこう。

化学結合の中ではもっとも強い結合であるこの2つは、イオンの考え方がベースにあってこそわかる内容です。

イオン結合との違いも見ていこう。さあ、化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.共有結合とは

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共有結合は、非金属同士をつなぐ結合として主に気体分子の中の結合に関わっています。電子を共有し合うことで強い結合力をもち、化学結合の中では最も強い結合です。まずは具体例として水素で考えてみましょう。

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水素は原子番号1、電子を1つもつ元素です。また、電子を1つ放出するか、1つを受け取ることで安定した状態で存在することができます。

そこで水素原子2つがある場合、お互いの原子を1つずつ共有するかたちをとるのです。上の図で電子の様子を確認してみましょう。左側の水素原子も右側の水素原子も、どちらも軌道上に電子が2つの状態になっていますよね。これによって安定した分子として存在することができるのです。また、あくまでも2つの水素原子に対して2つの原子があるだけですから、プラスにもマイナスにもならないのがわかりますね。

この時点で「電子?何この図」と苦手を残してしまっている人は、こちらの記事をチェックしてくださいね。

1-1.単結合

1-1.単結合

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それでは共有する電子の数に着目し、見ていきましょう。続いては水を例にとって考えてみます。

水は水素原子2つと酸素原子2つから成り立つ物質ですね。水素は電子を1つ放出するか、1つを受け取ることで安定する一方、酸素は電子を2つ受け取ることで安定する元素です。そこで、酸素は両手を伸ばすようなかたちで酸素と電子を共有しようとします。それが上図です。

酸素原子の中でもともと安定している状態の電子対は、原子間の結合には関与しない非共有電子対ともよばれます。それに対して不対電子は安定した構造になろうと、他の原子と1対1で電子を共有するかたちで共有電子対をつくるのです。

この共有電子対が1つできる結合を単結合といいます。つまり、水分子の中には単結合が2つできるということです。どちらの原子由来の電子だったかを区別して表記するとわかりやすいですね。

単結合の物質は水、水素の他に塩化水素、塩素、アンモニアなどがあります。

\次のページで「1-2.ニ重結合」を解説!/

1-2.ニ重結合

1-2.ニ重結合

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続いては二酸化炭素について考えていきましょう。こちらもそれぞれの原子が原子を共有しようと近づきます。

ペアになってない電子である不対電子を1本の腕と考えてみましょう。酸素はその腕が2本、炭素は4本空きがある状態です。このとき、酸素は2本の腕を同時に炭素とつなぐことができます。そうすることで炭素は左右で4本の腕が埋まりますね。それが右下の=の状態になるのがわかるでしょうか。

このような2重の結合関係をもつものをニ重結合といいます。ニ重結合の物質は二酸化炭素の他、酸素を覚えておくといいですね。

1-3.三重結合

1-3.三重結合

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単結合、ニ重結合ときたら三重結合も一緒に覚えておきましょう。3本の腕をもつ窒素は、その3本の腕を同時に伸ばすことで窒素分子として成り立ちます。

ちなみに、単結合からなるアンモニアはこの3本の腕を水素1つとそれぞれつなげたものです。それぞれの原子がもつ腕の数を考えると、理解がスムーズになりますよ。

2.配位結合とは

配位結合は共有結合と同じく非金属同士の結合です。結合の仕組みが似ていることから一括りにされることの多い結合ですが、電子の共有方法に違いがあります。まずはこちらを見てみましょう。

\次のページで「3.分子式・電子式・構造式の違い」を解説!/

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配位結合の例としてはこのアンモニウムイオンがよく挙げられます。すでに単結合で安定しているアンモニアに、電子を持っていない水素イオンが結合してできたのがアンモニウムイオンです。

窒素の電子を水素イオンが共有することで窒素自体は自らの電子を奪われたかたちとなり、全体で電子が1つ不足する陽イオンとなります。一度配位結合が起こるとどこが配位結合で、どこがもともとあった共有結合かの見分けがつきません。そのためにこのような表記で表されるのです。

配位結合は電子を2対0で共有します。代表例としてはアンモニウムイオンとオキソニウムイオンH3O+ を覚えておきましょう。

3.分子式・電子式・構造式の違い

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さて、ここまでの解説で様々な原子やイオン、分子などの表記を使ってきました。実はこれらには正式な名称がついているので、最後に解説していきます。それでは水素を例にして考えてみましょう。

普段私たちが用いている H2 という表記は分子式です。これは元素記号と各原子の個数を右下に書いて表す方法ですよね。これが学校で習う最も一般的なものでしょう。

続いて電子式とは、イオンについて考える際に何度も使ってきた電子を・で表す表記法です。水素の場合、1つずつの電子を共有する共有結合(単結合)によって結びつくので H:H と表すことができますね。

さらに構造式とは、電子式を簡易的にして原子間の結合を表す方法で、水素の表記は HーH です。1組の共有電子対を1本の線、価標で表します。つまり単結合なら原子と原子の間を-、ニ重結合なら=、三重結合なら ≡ と表すことができるのです。非共有電子対は省略し、共有電子対の数に応じて価標の数も変える必要があるということですね。

これらをまとめてみましょう。

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違いをしっかり理解しておきましょう。電子式を考える上で用いた右上の図化学反応式を考える際に用いることのある右下の図も、物質の表記としてはよく使われるものです。しかし、テストでは分子式・電子式・構造式とそれぞれ分けて質問される場合もあるので、混同しないようにしたいですね。

「共有結合」は1対1、「配位結合」は2対0で共有電子対をつくる

イオン結合はプラスとマイナスという電荷の差によって結合が起こるものでしたね。いわば丸い粘土のボールをつなげるようなものです。しかし共有結合・配位結合は電子を共有することで成り立ちます。これは丸い粘土のボールの接触面をこねて混ぜて境目をなくすようなものでしょう。どちらがより強い結合になるかは明白ですね。

また、共有結合と配位結合は結合の基本的な考え方は同じですが、電子の共有方法が異なります。互いに持っている電子を1対1で出し合う共有結合と片方の電子を分けてもらう2対0のかたちをとる配位結合。非金属同士をつなぐ結合である共有結合・配位結合ですが、共有結合は水や気体、配位結合はアンモニウムイオンとオキソニウムイオンを覚えておきましょう。

それでは次回、化学結合の残り1つ、金属結合について解説しますね。

" /> 共有結合の要!「共有結合」と「配位結合」を元塾講師がわかりやすく解説! – Study-Z
化学物質の状態・構成・変化理科

共有結合の要!「共有結合」と「配位結合」を元塾講師がわかりやすく解説!

今回は「共有結合」と「配位結合」について勉強していこう。

化学結合の中ではもっとも強い結合であるこの2つは、イオンの考え方がベースにあってこそわかる内容です。

イオン結合との違いも見ていこう。さあ、化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.共有結合とは

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共有結合は、非金属同士をつなぐ結合として主に気体分子の中の結合に関わっています。電子を共有し合うことで強い結合力をもち、化学結合の中では最も強い結合です。まずは具体例として水素で考えてみましょう。

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水素は原子番号1、電子を1つもつ元素です。また、電子を1つ放出するか、1つを受け取ることで安定した状態で存在することができます。

そこで水素原子2つがある場合、お互いの原子を1つずつ共有するかたちをとるのです。上の図で電子の様子を確認してみましょう。左側の水素原子も右側の水素原子も、どちらも軌道上に電子が2つの状態になっていますよね。これによって安定した分子として存在することができるのです。また、あくまでも2つの水素原子に対して2つの原子があるだけですから、プラスにもマイナスにもならないのがわかりますね。

この時点で「電子?何この図」と苦手を残してしまっている人は、こちらの記事をチェックしてくださいね。

1-1.単結合

1-1.単結合

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それでは共有する電子の数に着目し、見ていきましょう。続いては水を例にとって考えてみます。

水は水素原子2つと酸素原子2つから成り立つ物質ですね。水素は電子を1つ放出するか、1つを受け取ることで安定する一方、酸素は電子を2つ受け取ることで安定する元素です。そこで、酸素は両手を伸ばすようなかたちで酸素と電子を共有しようとします。それが上図です。

酸素原子の中でもともと安定している状態の電子対は、原子間の結合には関与しない非共有電子対ともよばれます。それに対して不対電子は安定した構造になろうと、他の原子と1対1で電子を共有するかたちで共有電子対をつくるのです。

この共有電子対が1つできる結合を単結合といいます。つまり、水分子の中には単結合が2つできるということです。どちらの原子由来の電子だったかを区別して表記するとわかりやすいですね。

単結合の物質は水、水素の他に塩化水素、塩素、アンモニアなどがあります。

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