すべての化学物質は「化学結合(けつごう)」という特別な結合でできているよな?

その中には大きく分けて「共有結合」「イオン結合」「金属結合」の3つの種類があるんです。これら3つの結合は、それぞれ違った性質を持っているんですが、いったい何が違うんでしょう?

今日はその中でも「イオン結合」について、実験大好きな未来の科学者ライター、Haruと一緒に解説していきます。

ライター/Haru

化学グランプリに挑戦した経験もある、実験が大好きな学生ライター。
子どもの頃、元素周期表をポケモンと一緒に覚えてから、物質を見ると化学式が一緒に見えてくる生活を送っている。アインシュタインとニュートンを尊敬しており、彼らの偉業や化学の面白さを分かりやすく伝えていきたい。将来は研究員になって実験を生業とするのが夢。

イオン結合とは

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By Benjah-bmm27 (トーク · 投稿記録) - 投稿者自身による作品, パブリック・ドメイン, Link

イオン結合とは化学結合の一種で、陽イオンと陰イオンが連続的に静電気的引力によって結合することによって、イオン結晶を作る結合のことです。
例えば、塩化ナトリウムは図のような構造をしています。互い違いに陽イオンである「ナトリウムイオン」と陰イオンである「塩化物イオン」が規則正しく並んでいるのが分かるでしょう。

イオン結合の性質と構造については、後から説明します。

共有結合

共有結合とは、複数の原子が互いに不対電子を出し合って共有し、安定した電子配置をとって結びついた結合のことです。これを作る物質としては、水や二酸化炭素が挙げられます。

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By Benjah-bmm27 - 投稿者自身による作品, パブリック・ドメイン, Link

共有結合の物質を表す化学式

共有結合を作る物質を表す化学式は3種類あります。
1つは分子式で、これは1つの分子に含まれる原子の種類とその数を示した式です。
次は電子式という式で、これは、それぞれの原子が持っている電子対を点で表した式のこと。
最後は構造式という式で、これは、それぞれの物質の結合状態を価標という線によって表現することのできる式です。

「分子結晶」とは

「分子結晶」とは、分子を形成する物質の結晶のことで、特徴はまず沸点が低いことです。例えば、水の沸点は100度と、物質の中では比較的低い沸点になっていますが、これが分子結晶の性質になります。
また、この分子結晶を作る物質の中には、昇華性物質と言って状態変化の時に固体から気体にいきなり変化する昇華と言う現象を起こす物質が多く存在するのです。例えば、ドライアイスやナフタレンなどがそれに当たります。

\次のページで「金属結合とは」を解説!/

金属結合とは

主に金属元素同士の間で生まれる結合となります。これは金属同士の電子殻の一部が重なり合い、その間を価電子が自由に移動することによって生まれる結合です。この自由に移動することができる電子を、自由電子と呼びます。

金属の特徴

金属結合を作る物質にはいくつかの特徴があります。
1つ目は金属光沢があることです。金属表面を動いている自由電子は光を反射することができるので、金属には光沢が生まれます。ほとんどの金属は可視光線を全て反射するため銀色に見えますが、金や銅は可視光線の一部を吸収しているため黄色や赤色というように色のついたように光って見えるのです。

2つ目は、「延性」「展性」といった性質があることです。これは、薄く広げたり長く伸ばすことができる性質です。金属は、力を加えてある程度原子の位置がずれても自由電子は変わらず自由に動くことができるので、結合を保ったまま広がったり伸びたり変形することができます。

金属の結晶構造

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By Matthias Svete - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, Link

金属も、イオン結晶等と同様に結晶構造を持っています。
構造は大きく分けて「体心立方格子構造」「面心立方格子構造」「六方最密充填構造」の3つに分かれています。

体心立方格子構造:単位格子の中心と各頂点に原子を置く構造
(例)ナトリウム、バリウム、クロム、鉄などの金属

面心立方格子構造:格子の各頂点と各面の中心に原子が存在する構造
(例)アルミニウム、銅、銀、金などの金属

六方最密充填構造:少し複雑な形(上図参照)
(例)ベリリウム、マグネシウム、亜鉛、カドミウムなどの金属

そもそもイオンとは

image by iStockphoto

イオンとは、正または負の電荷を持った原子あるいは原子団のことを指します。2つ例をあげましょう。
ナトリウムイオンはナトリウム原子から1つ電子が抜けて正の電荷を帯びた構造をしています。電子自体が負の電荷を帯びているので、電子を失うと正の電荷を失うのです。
一方、塩化物イオンは、塩素原子が1つ電子を得ることによって負の電荷を帯びた構造をしています。
このように電子を放出する、あるいは、得ることによって正か負の電荷を帯びている原子または原子団を「イオン」と呼ぶのです。

次にこのイオン結合の性質について説明していきましょう。

\次のページで「特徴1:イオン結晶は固くもろい」を解説!/

特徴1:イオン結晶は固くもろい

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イオン結合をつくる物質の結晶を「イオン結晶」といいます。このイオン結晶は、固くもろい性質を持っており、比較的に沸点が高いものが多いのです(固い)。
これは、イオン同士に強い静電気的引力が働いているためで、強い結合で結びついているイオン結晶は固いということができます。
しかし、イオン結晶は、同時にもろくもあるのです。これはどういうことでしょうか。

イオン結晶は、前述の通り陽イオンと陰イオンが互い違いに並んだ構造を取っており、ここに強い衝撃が加わると、陽イオンの隣は陰イオンだったところが陽イオン同士、陰イオン同士が隣になってしまいます。こうなると、さっきまでは引力が働いていたところが、逆に反発力が働いてしまうのです。そして結果的に、一定の面に沿って割れるという現象が起こります。(この現象を劈開『へきかい』という)
このように、イオン結晶は固い一方、衝撃には弱い性質を持っているのです。

特徴2:水溶液は電気を通す

image by iStockphoto

イオン結合の物質は水に溶かすと電気を通すものが多くあります。それは、イオン結合を作る物質は水に溶けると陽イオンと陰イオンに電離するため、イオンが水溶液中を自由に移動できるようになるためです。

イオン結合のその他の性質

イオン結合について、理解が深まってきましたか?それでは、他のアプローチからも、攻めてみましょう!

組成式(化学式のひとつ)

組成式(化学式のひとつ)

image by Study-Z編集部

イオン結晶の構成元素

主にイオン結合は金属元素と非金属元素の間で作られることが多いです。塩化ナトリウムも、金属元素であるナトリウムと、非金属元素である塩素で出来ていますが、例外もあります。例えば塩化アンモニウムはイオン結合の物質ですが、これを構成するアンモニウムイオンと塩化物イオンともに、金属元素を含んでいません。このような例外もありますが、イオン結合の物質の多くは金属元素と非金属元素で出来ていると考えて大丈夫です。

ちなみに、例外には酸と塩基の中和で生成される塩が多く、塩化アンモニウムも塩酸とアンモニアとの中和によって生成されます。

\次のページで「イオン結晶の構造とは」を解説!/

イオン結晶の構造とは

イオン結晶にはいくつかの種類がありますが、大きく分けると、


塩化ナトリウム(NaCl)型
塩化セシウム(CsCl)型
硫化亜鉛(ZnS)型

の3つになります。

構造1:塩化ナトリウム型

塩化ナトリウム型では、陽イオンと陰イオンが縦、横、上下に規則正しく並んでいます。
この構造をもつ物質として挙げられるのは、酸化マグネシウム、硫化カルシウム、ヨウ化カリウムなどです。

構造2:塩化セシウム型

塩化セシウム型は、単位格子の中心に陽イオン(または陰イオン)、単位格子の各頂点に陰イオン(または陽イオン)が存在する構造をとっています。
この構造を持つ物質として挙げられるのは、塩化アンモニウム、ヨウ化セシウム、臭化セシウムなどです。

構造3:硫化亜鉛型

硫化亜鉛型は、単位格子の各頂点と各面の中心に陽イオン(または陰イオン)が存在し、陰イオン(または陽イオン)が作る正四面体の構造がその隙間に内包されているような構造をとっています。
この構造の例として挙げられるのは、塩化銅、ヨウ化銅、硫化カドミウムなどの物質です。

物質の性質は結合様式によって大きく変わる

それぞれの化学結合は、それぞれ特有の性質があり、結合によって物質の強さや常温での状態、電気伝導性などが異なっています。
物質の性質の違いもその大きなところは、物質の結合様式からきているのですが、イオン結合についても同じなのです。

" /> 「イオン結合」について、他の結合との比較とともに未来の科学者ライターが徹底紹介! – Study-Z
化学物質の状態・構成・変化理科

「イオン結合」について、他の結合との比較とともに未来の科学者ライターが徹底紹介!

すべての化学物質は「化学結合(けつごう)」という特別な結合でできているよな?

その中には大きく分けて「共有結合」「イオン結合」「金属結合」の3つの種類があるんです。これら3つの結合は、それぞれ違った性質を持っているんですが、いったい何が違うんでしょう?

今日はその中でも「イオン結合」について、実験大好きな未来の科学者ライター、Haruと一緒に解説していきます。

ライター/Haru

化学グランプリに挑戦した経験もある、実験が大好きな学生ライター。
子どもの頃、元素周期表をポケモンと一緒に覚えてから、物質を見ると化学式が一緒に見えてくる生活を送っている。アインシュタインとニュートンを尊敬しており、彼らの偉業や化学の面白さを分かりやすく伝えていきたい。将来は研究員になって実験を生業とするのが夢。

イオン結合とは

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By Benjah-bmm27 (トーク · 投稿記録) – 投稿者自身による作品, パブリック・ドメイン, Link

イオン結合とは化学結合の一種で、陽イオンと陰イオンが連続的に静電気的引力によって結合することによって、イオン結晶を作る結合のことです。
例えば、塩化ナトリウムは図のような構造をしています。互い違いに陽イオンである「ナトリウムイオン」と陰イオンである「塩化物イオン」が規則正しく並んでいるのが分かるでしょう。

イオン結合の性質と構造については、後から説明します。

共有結合

共有結合とは、複数の原子が互いに不対電子を出し合って共有し、安定した電子配置をとって結びついた結合のことです。これを作る物質としては、水や二酸化炭素が挙げられます。

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共有結合の物質を表す化学式

共有結合を作る物質を表す化学式は3種類あります。
1つは分子式で、これは1つの分子に含まれる原子の種類とその数を示した式です。
次は電子式という式で、これは、それぞれの原子が持っている電子対を点で表した式のこと。
最後は構造式という式で、これは、それぞれの物質の結合状態を価標という線によって表現することのできる式です。

「分子結晶」とは

「分子結晶」とは、分子を形成する物質の結晶のことで、特徴はまず沸点が低いことです。例えば、水の沸点は100度と、物質の中では比較的低い沸点になっていますが、これが分子結晶の性質になります。
また、この分子結晶を作る物質の中には、昇華性物質と言って状態変化の時に固体から気体にいきなり変化する昇華と言う現象を起こす物質が多く存在するのです。例えば、ドライアイスやナフタレンなどがそれに当たります。

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