今回は「イオン結合」について勉強していこう。

「化学結合」の中では既に酸とアルカリと始めとした単元である程度理解できているやつもいるでしょう。今回はそんなイオン結合に注目してみよう。

価数の異なるイオンについても理解を深めよう。化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.イオン結合とは

image by iStockphoto

原子はそれぞれ特定の数の電子を保有していて、電子を放出または受け取ることによって安定した構造をとろうとします。これがイオン化です。原子のイオン化については、こちらで確認してみてくださいね。

一般的に、金属原子は電子を放出することで安定する陽イオンです。一方で非金属電子は電子を受け取って陰イオン化します。このイオンの状態ではそれぞれがプラスやマイナスの電荷を帯びているため、引き合おうとするのは想像がつくでしょう。この引力がクーロン力(静電気力)です。

イオン結合の成り立ちを具体的に見ていく前に、どのようなイオンがあるかを見ていきましょう。

2.イオンの頻出一覧

image by iStockphoto

それでは、実際にテストなどでもよく出るイオンについて覚えていきましょう。さらに、それらのイオンをどう組み合わせて化学式をつくるのかも解説していきます。

2-1.金属の陽イオン+アンモニアイオン

金属といえば陽イオン、陽イオンといえば金属とアンモニウムイオンと覚えましょう。原子番号19のカリウム以降は暗記して覚えてしまうのが早いでしょう。1価、2価の陽イオンについては周期表の縦のライン(1族と2族)で覚えるのもいいですね。周期表は暗記のための語呂合わせが多いので、ぜひ調べてみてください。

(1価の陽イオン)

Na+ ナトリウムイオン

K+ カリウムイオン

Ag+ 銀イオン

NH4+ アンモニウムイオン

(2価の陽イオン)

Mg2+ マグネシウムイオン

Ca2+ カルシウムイオン

Fe2+ 鉄(Ⅱ)イオン

Cu2+ 銅イオン

Zn2+ 亜鉛イオン

Ba2+ バリウムイオン

(2価の陽イオン)

Al3+ アルミニウムイオン

Fe3+ 鉄(Ⅲ)イオン

\次のページで「2-2.非金属の陰イオン」を解説!/

2-2.非金属の陰イオン

非金属の陰イオンは、金属の陽イオンのように原子1つのイオンばかりではありません。アンモニウムイオンのような多原子イオンの方が多いので、覚えるのに苦労するかもしれませんね。繰り返し見て書いていくことで確実に覚えていきましょう。

(1価の陰イオン)

F フッ化物イオン

Cl 塩化物イオン

OH 水酸化物イオン

NO3 硝酸イオン

(2価の陰イオン)

O2 酸化物イオン

S2 硫化物イオン

CO32 炭酸イオン

SO42 硫酸イオン

2-3.イオン結合による物質

それでは陽イオンと陰イオンから成る化合物を考えてみましょう。それぞれの価数を合わせることを意識するのがポイントです。できるだけたくさんの例をあげられるといいですね。

Na+ ナトリウムイオン + NO3 硝酸イオン → NaNO3 硝酸ナトリウム

K+ カリウムイオン + S2 硫化物イオン → K2S 硫化カリウム

NH4+ アンモニウムイオン +F フッ化物イオン → NH4F フッ化アンモニウム

Mg2+ マグネシウムイオン + 2×Cl 塩化物イオン → MgCl2 塩化マグネシウム

Ca2+ カルシウムイオン + CO32 炭酸イオン → CaCO3 炭酸カルシウム

Al3+ アルミニウムイオン + 3×SO42 硫酸イオン → Al2(SO4)3 硫酸アルミニウム

 

※ポイント

陽イオンと陰イオン、それぞれの価数に注目し、プラスとマイナスの数を合わせる。

\次のページで「3.イオン結合の成り立ち」を解説!/

3.イオン結合の成り立ち

image by iStockphoto

イオン結合の代表格とされるのが塩化ナトリウムです。みなさん、これは化学式もきっとご存知ですよね。ナトリウムイオン Na+ と塩化物イオン Cl からなる食塩の主成分です。

ナトリウム原子は1つの電子を放出することで1価の陽イオンとなり、塩素原子は1つの電子を受け取ることで1価の陰イオンとなります。このとき、ナトリウム原子が電子を塩素原子に受け渡すことで双方がイオン化することができるのです。それと同時にクーロン力によってプラスとマイナスが引き合い、塩化ナトリウムはイオン結晶をつくります。

では、これを図にして見てみましょう。

image by Study-Z編集部

このように、電子の移動によってイオン結合が起こるということがわかりますね。さらに陽イオンと陰イオンがそれぞれを引き寄せて繋がっていくために、塩化ナトリウムはイオン結晶として存在します。詳しい結晶の構造は下記より確認しておきましょう。

4.化学反応式から見るイオン結合

image by iStockphoto

最後に、このイオン結合がどんな実験に関わってくるのかを見てみましょう。

イオン結合による物質と密接な関わりがあるのが塩(えん)です。塩というのは、広義で酸性物質由来の陰イオンとアルカリ性物質由来の陽イオンがイオン結合した化合物を示します。この反応が起こることで知られているのが、酸とアルカリの中和反応です。

例を見ていきましょう。

HCl + NaOH → NaCl + H2O

塩化ナトリウム:塩酸(酸性)由来の塩化物イオン(陰イオン)、水酸化ナトリウム(アルカリ性)由来のナトリウムイオン(陽イオン)

 

H2SO4 + Cu(OH)2 CuSO4 + 2H2O

硫酸銅:硫酸(酸性)由来の硫酸イオン(陰イオン)、水酸化銅(アルカリ性)由来の銅イオン(陽イオン)

その物質がイオン結合がどうかを見分ける決め手は2つです。金属イオンとアンモニウムイオンといった陽イオンと非金属イオンである陽陰イオンから成る物質であること。中和によって生じる塩であること。これに着目して考えるとスムーズです。

塩酸 HCl は水素イオン H+ と塩化物イオン Cl 一見するとイオン結合のように見えます。しかしこれは上記の条件には当てはまっていませんね。つまり、水素結合ではないのです。

では一体どの結合でつながっているのでしょうか。それは次回解説していきます。

イオン結合は陽イオンと陰イオンによる化学結合

イオン結合はその名の通り、イオンによって成り立つ化学結合です。イオンの種類はプラスに荷電している陽イオンと、マイナスに荷電している陰イオンの2種類がありましたね。陽イオンは金属元素に、陰イオンは非金属原子に多いことでも知られています。アンモニウムイオン(陽イオン、非金属)というイオンも例外として存在しますが、基本的に金属と非金属の結合に関わるものだと覚えておきましょう。

イオン化するということは、電子が放出されたり受け取ったりという授受の関係が存在することになります。陰イオンになる原子が陽イオンになる原子に近づき、電子を受け取ることで互いにイオン化、その後引き合うという構図です。具体例としては塩化ナトリウムで覚えるのがいいでしょう。イオン結合は中和反応と深い関わりのあるものです。化学反応式からもこの結合が読み解けるようになりたいですね。

次回は共有結合と配位結合について解説します。

" /> 化学結合を1から理解!「イオン結合」について元塾講師がわかりやすく解説 – Study-Z
化学物質の状態・構成・変化理科

化学結合を1から理解!「イオン結合」について元塾講師がわかりやすく解説

今回は「イオン結合」について勉強していこう。

「化学結合」の中では既に酸とアルカリと始めとした単元である程度理解できているやつもいるでしょう。今回はそんなイオン結合に注目してみよう。

価数の異なるイオンについても理解を深めよう。化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.イオン結合とは

image by iStockphoto

原子はそれぞれ特定の数の電子を保有していて、電子を放出または受け取ることによって安定した構造をとろうとします。これがイオン化です。原子のイオン化については、こちらで確認してみてくださいね。

一般的に、金属原子は電子を放出することで安定する陽イオンです。一方で非金属電子は電子を受け取って陰イオン化します。このイオンの状態ではそれぞれがプラスやマイナスの電荷を帯びているため、引き合おうとするのは想像がつくでしょう。この引力がクーロン力(静電気力)です。

イオン結合の成り立ちを具体的に見ていく前に、どのようなイオンがあるかを見ていきましょう。

2.イオンの頻出一覧

image by iStockphoto

それでは、実際にテストなどでもよく出るイオンについて覚えていきましょう。さらに、それらのイオンをどう組み合わせて化学式をつくるのかも解説していきます。

2-1.金属の陽イオン+アンモニアイオン

金属といえば陽イオン、陽イオンといえば金属とアンモニウムイオンと覚えましょう。原子番号19のカリウム以降は暗記して覚えてしまうのが早いでしょう。1価、2価の陽イオンについては周期表の縦のライン(1族と2族)で覚えるのもいいですね。周期表は暗記のための語呂合わせが多いので、ぜひ調べてみてください。

(1価の陽イオン)

Na+ ナトリウムイオン

K+ カリウムイオン

Ag+ 銀イオン

NH4+ アンモニウムイオン

(2価の陽イオン)

Mg2+ マグネシウムイオン

Ca2+ カルシウムイオン

Fe2+ 鉄(Ⅱ)イオン

Cu2+ 銅イオン

Zn2+ 亜鉛イオン

Ba2+ バリウムイオン

(2価の陽イオン)

Al3+ アルミニウムイオン

Fe3+ 鉄(Ⅲ)イオン

\次のページで「2-2.非金属の陰イオン」を解説!/

次のページを読む
1 2 3
Share: