酸や塩基の濃度がわかる「中和反応」について元研究員がわかりやすく解説
(A) まず濃度がわからない酸の中の水素イオン(H+)の物質量を式に表しましょう。
酸の水溶液の中にある水素イオンの物質量は、価数a、濃度c(mol/L)、体積v(mL)の時
a × c(mol/L)× v/1000(L)
と表すことができます。
滴定に使用した塩酸は価数1、濃度はわからないのでXとし、体積10mLなので
1 × X × 10/1000
(B) 次に濃度のわかっている塩基の中の水酸化物イオン(OH–)の物質量を求めましょう。
塩基の水溶液の中にある水酸化物イオンの物質量は、価数b、濃度d(mol/L)、体積w(mL)の時
b × d(mol/L)× w/1000(L)
と表すことができます。
中和するのに使った水酸化ナトリウム溶液は、価数1、濃度0.10mol/L、体積8.2mLなので
1 × 0.10 × 8.2/1000
(C) イコールで結んでモル濃度を計算しましょう。
完全に中和した時、水素イオンの物質量と水酸化物イオンの物質量は等しくなるので
1 × X × 10/1000 = 1 × 0.10 × 8.2/1000
X = 0.082 mol/L
(D) 最後に薄める前(希釈前)のモル濃度を求めましょう。
最初に濃度のわからない塩酸を1/10に正確に薄めたので、求めたXを10倍すると
0.082 × 10 = 0.82 mol/L
これが、濃度のわからなかった塩酸の濃度です。
2-4.中和滴定曲線
image by Study-Z編集部
中和滴定の時のpHと加えた酸や塩基の体積の関係を示したグラフのことを中和滴定曲線といいます。
縦軸がpHで、横軸が加えた酸や塩基の体積です。滴定に用いた酸や塩基の強弱の組み合わせによりグラフの形が異なります。いずれも当量点(中和した場所)付近ではpHが急激に変化することにより、グラフが垂直になっていますね。
2-3.指示薬についてでも触れましたが、どんな組み合わせで中和滴定を行うかにより、適切な指示薬を選ぶことが必要です。
1. 強酸と強塩基
中和反応が完了した所(当量点)付近のpHの変化が非常に大きいので、指示薬としてフェノールフタレインもメチルオレンジも使用することができます。
2. 弱酸と強塩基
当量点が弱塩基性であるため、指示薬はフェノールフタレインしか使用できません。
3. 強酸と弱塩基
当量点が弱酸性であるため、指示薬はメチルオレンジのみ使用できます。
3.身近な中和反応
ここまで勉強してきた中和反応ですが、実は人類は古くから中和反応を生活に利用してきました。有名な中和反応を利用して生成した物質に石鹸があります。大昔に人類は、脂肪酸(酸)と木炭(塩基)を混ぜ合わせることで石鹸を作り出しました。
この他にも、様々な中和反応が身近に使われていることをご存じでしょうか?
3-1.汚れやにおいを落とす中和反応
トイレで使われるスプレー型の消臭剤。においの原因であるアンモニアは塩基ですよね。そのアンモニアを酸で中和することで、他の物質に変え匂わなくしています。
他には、酸性の汚れにはアルカリ性の洗剤を、アルカリ性の洗剤には酸性の洗剤を使うと良いという話を聞いたことがあるかもしれません。酸性の汚れ、例えば油汚れや皮脂汚れにはアルカリ性の重曹を使うとよく落ちます。
これは酸性の汚れとアルカリ性の洗剤が中和反応を起こしているからです。
一方アルカリ性の汚れには、水垢や石鹸カス汚れや尿よごれなどがあります。アルカリ性の汚れには、クエン酸など酸性の洗剤で中和反応を起こすとよく落ちますよ。
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