日本史歴史江戸時代

寛政の改革を成し遂げた「松平定信」吉宗の孫でもある彼について歴女が解説

5-3、現代で言うオタクだったかも

定信は、寛政の改革では卑俗な芸文を取り締まりましたが、プライベートではそういう分野を楽しむ一面もあり、「大名かたぎ」(天明4年頃)「心の草紙」(享和2年自序)など、自ら執筆した黄表紙風の未刊の戯作が存在。黄表紙というのは現代の漫画風の大人の読む絵入りの軽い読み物のこと。また、膨大な随筆類に市井の話題を熱心に取り上げていて、こういう面は公私で矛盾しているようだが、為政者の立場から世情を理解しようしていたのかも。

それに浮世絵も好きで、もと浮世絵師の鍬形蕙斎筆「近世職人絵尽絵詞」(3巻、東京国立博物館蔵)は定信の旧蔵品ということですが、この絵巻の詞書を書いているのは、上巻は四方赤良(大田南畝の別名)、中巻は朋誠堂喜三二、下巻は山東京伝といった、寛政の改革で何らかの被害を被った人物なんですね。
定信自身も絵を描いていて腕前は一定の水準だということ。

5-4、今に伝わる白河名物の特産品、名勝も

image by PIXTA / 24971534

もともと白河では江戸時代から年初めに行われる市神祭があり、かんなくずから作った飾り花の勝花などを縁起物にして花市とも言われていましたが、定信が、鶴亀松竹梅入りの白河だるまを、お抱え絵師だった谷文晁にデザインさせたのが白河だるま、現在のだるま市の起源になり毎年2月11日の旧正月に行われているそう。
また、冬の冷害に強いそばを栽培させて名物の白河そばを特産物とし、今に至る立派な白河名物に。

また定信は、1800年(寛政12年)に文献から白河神社の建つ位置が白河の関であると考証。後に近代の発掘調査による再確認によって1966年に「白河関跡」として国の史跡に指定されたということ。

南湖公園(国史跡名勝)は、定信が「士民共楽(武士も庶民も共に楽しむ)」の場として築造、失業者対策や新田開発、藩士の水練や操船訓練などの様々な用途も兼ねていたが、現在は四季折々に表情を変える風景が楽しめる白河市民の憩いの場に。

5-5、柔術や居合、砲術、弓術などの皆伝、流派も編み出す

定信は、大名ながら起倒流柔術の鈴木邦教(鈴木清兵衛)の高弟で、3000人といわれる邦教の弟子のうち最も優れた3人のうちの1人だったという話。定信は家臣に柔術を教え、次男の真田幸貫にも教えたということ。隠居後も柔術の修行を続けて新たな技を編み出したほど。

定信は、廃れていた藩祖松平定綱が家臣の山本助之進と編み出したという甲乙流剣術についても、山本家にあった伝書をもとに復元して起倒流柔術を合わせて自身で工夫を加え、甲乙流を剣術と柔術を融合させた内容に改め、「新甲乙流」を編み出したということ。

また、藩校の立教館で指導する山本流居合術にも、定信は自身の編み出した技を加えて流派を改良。定信が加えた技は「御工夫の剣」と呼ばれたそう。

砲術は、三木流、荻野流、中島流、渡部流の4流すべてを免許皆伝、4流の長所を合わせて三田野部流を寛政年間に開き、その後も多くの砲術流派を研究して文化年間に御家流砲術を開いたということ。

弓術も、幼少から日置流を修行、師の常見文左衛門から書を授けられた腕前で、これまた独自に工夫して流派を開き、さらに日置流を加えて御家流弓術を開いたのでした。

定信は病気がちだったため鍛錬のために柔術を志したということですが、ひとつのことに集中して奥義を究める性格かも、こうなると殿様にしておくのが惜しいですね。

no-img2″>
 <figcaption class=桜木建二

えっ、先にオタク的に漫画描いてるって言わなかったか、そのうえに武道に優れていたなんて、なんて多才なんだ、それに全然イメージが合わないじゃないか。

5-6、老中職は赤字だった

定信が老中を勤めて2ヵ月半ほどで2332両もの臨時出費があったので、不正があるのではと調査するもなにもなし。単に老中としての登城や、将軍の名代として、来客の応接などでの多額の出費だったのですが、普通は進物や賄賂がどっさりくるのでこの程度の臨時出費はまかなえるのに定信は賄賂を一切受け取らなかったので、結果赤字に。

倹約と引き締めが必要だが、やり過ぎだったかも

定信は祖父の将軍吉宗にならって、倹約などを強制し改革を推し進めましたが、飢餓対策は成功したものの、学問にも規制を加えて庶民にも娯楽を制限するなどでは、今と違って娯楽の少ない時代には息苦しくて付いて行けないところもあったはず。
他のことも鷹揚なところがなくて、たった6年で失脚したのはやむを得なかったかも。また他の雄藩は米作以外の産業に目を向けて、それらの産物を用いた密貿易なども行って利益を得、産業革命を成功させて幕末の倒幕運動の資金にしたことを考えると、米中心にこだわっていた幕府はこのあたりから遅れを取っていたのかもしれないですね。

1 2 3 4
Share:
angelica