今回は「化学結合」について勉強していこう。

原子の構造やイオン化、分子の定義については既に解説したよな。今回からは分子の成り立ちについて考えていこう。

難しい内容ですがしっかりついてこいよ!さあ、化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.化学結合に必要不可欠な電子の存在

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化学結合の解説をする前に、これを理解するうえで必要な電子式について知っておく必要があります。これは原子がもつ電子の配置を図式化したもので、元素記号の周りにある最外殻電子を点で表したものです。まずはこの考え方について見ていきましょう。

1-1.原子を電子式で表す

実際に例をとって考えてみましょう。考えるヒントとなる順番は以下の通りです。

(1)原子番号から最外殻電子の数を求める

(2)元素記号を中心に、上下左右にある4つの箱に最外殻電子を1つずつ・として書いていく

(3)最外殻電子が1から4の場合はここで終了

(4)最外殻電子が4から8の場合は(2)で書いた・の横に再度順に書いていく

image by Study-Z編集部

これを実際の元素で考えたのが上図です。順に詳しく見ていきましょう。

\次のページで「1-2.電子式の書き方で疑問を感じた人へ」を解説!/

1.水素の場合、電子数1で最外殻電子数も1である

2.ヘリウムの場合、電子数2で最外殻電子数も2である

3.炭素の場合、電子数6で電子はK殻に2、L殻に4と入るので最外殻電子数は4である

4.酸素の場合、電子数8で電子はK殻に2、L殻に6と入るので最外殻電子数は6である

5.ナトリウムの場合、電子数11で電子はK殻に2、L殻に8、M殻に1と入るので最外殻電子数は1である

6.塩素の場合、電子数17で電子はK殻に2、L殻に8、M殻に7と入るので最外殻電子数は7である

このとき、最外殻電子数に存在する電子を価電子といい、これは2つで対になって安定する構造です。この対になった状態のものを電子対、対にならずに存在しているものを不対電子といいます。

希ガスであるヘリウムの場合、最外殻電子はK殻にありますが、K殻の軌道にはいることのできる電子は2つまでです。そのために価電子は上下や左右に分けて書くのも誤りではありませんが、安定している電子対ができるという意味で横に並べて書くのも正解となります。

1-2.電子式の書き方で疑問を感じた人へ

この内容は上記を理解したうえで「あれ?じゃあ最外殻電子が9以上の場合は…?」と疑問を感じた人への解説になります。

原子殻はK殻に2、L殻に8、M殻に18…と電子の入る数は徐々に増えていきますね。イオン化の解説では、塩化物イオンについて扱いました。そのとき、18まで電子が入れるはずのM殻の電子は8でも安定することを不思議に思った人もいるかもしれません。この方法ではM殻の最大電子数は8であり、それ以上のものについては書き表すことができません。そこで「じゃあ最外殻電子が9以上の場合は…?」と疑問が出てくる人がいても無理はありません。

実はこの理由は大学で学ぶ内容です。考え方の難易度はぐっと上がり、混乱を招きかねないので今回の解説はここまでとします。事実、中学理科・高校化学で出てくる元素はM殻の最大電子数が8のアルゴン Ar までなので、まずはここまでをしっかり理解しておければ十分です。

2.原子同士の結びつき

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原子同士の結びつきには電子の存在が大きく関係しています。電子の受け渡しによるイオンや分子をつくらない金属も全て、結びつくのには理由があることを見ていきましょう。

2-1.共有結合

Covalent bond hydrogen.svg
By Jacek FH - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, Link

非金属同士をつなぐ結合で、電子を共有し合うことで強い結合力をもつものです。もともと安定している状態の電子対は、原子間の結合には関与しない非共有電子対ともよばれます。それに対して不対電子は安定した構造になろうと、他の原子と1対1で電子を共有するかたちで共有電子対をつくるのです。

\次のページで「2-2.配位結合」を解説!/

2-2.配位結合

Coordinate Covalent Bonding.gif
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共有結合とは仕組みが似ています。共有結合が他の原子と1対1で電子を共有するのに対し、配位結合は2対0で電子を共有する結合です。つまり、電子をもっているものがもっていないものに分け与えるかたちになります。こちらも電子を共有するために強い結合といえるでしょう。

2-3.イオン結合

金属と非金属の結合では陽イオンと陰イオンのプラスとマイナスが引き合うものです。金属はナトリウムイオン Na+ やマグネシウムイオン Mg2、カルシウムイオン Ca2+ のような陽イオンとなり、塩化物イオン Cl や硫酸イオン SO42 のような非金属陰イオンとの結合ができます。プラスとマイナスの間で生じるクーロン力(静電気力)が大きく関わっている結合です。

2-4.金属結合

金属結合とは、その名の通り金属同士が結びつく結合です。金属は陽イオンになることで安定するので、放出された電子は陽イオン化された金属原子の間を自由に移動する自由電子となって原子間の結合につながります。これによって金属は独立した分子としてではなく、ある1つの集合体として存在するというわけです。

3.分子間での結びつき

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一方で、分子間でも原子の結びつきに似た結合反応が起こります。これらについても簡単に見ていきましょう。

\次のページで「3-1.水素結合」を解説!/

3-1.水素結合

3D model hydrogen bonds in water.jpg
By translated by Michal Maňas (User:snek01) - I, Michal Maňas (User:snek01), have translated image Vodikove mustky kalotovy model made by User Qwerter at Czech wikipedia Qwerter to English., CC 表示-継承 3.0, Link

原子には共有電子対を自分の方に引き寄せてしまう電気陰性度の大きい原子とそうでないものが存在しています。例えばフッ素 F,酸素 O,窒素 N 原子は電気陰性度の大きい原子です。 一方で水素 H 原子は電気陰性度が小さく、この差によって生じる電荷の偏りを極性といいます。フッ化水素 HF、水 H2O、アンモニア NH3 のような極性をもつ分子を極性分子といい、水素原子との間には極性引力という結合力がはたらいているのです。

3-2.極性引力

極性分子同士は分子同士でも引力によって引き合います。塩化水素 HCl 分子の場合、電気陰性度の大きい塩素原子と他の分子の一部である水素原子が引き寄せ合うというものが極性引力です。

3-3.ファンデルワールス力

ファンデルワールス力とは全ての分子や原子同士にはたらく引力のことです。これは極性分子だけでなく、電荷に偏りのない無極性分子同士にもはたらくもので、電子の移動による瞬間的に生じた分子の極性によって生まれたクーロン力(静電気力)がもとになっています。そのため、全ての分子にはたらいでいる力であり、結合の強度としては弱いものと考えていいでしょう。

化学結合の強さ:共有結合>イオン結合>金属結合>分子間力による結合

原子同士は様々な結合の方法によって結びつき、分子や金属構造となって存在しています。誰かと手をつなぐよりも腕を組む、ハグをする方がより親しく密に接することになるし、相手が誰であるかによってその関係性は異なりますよね。パズルのピースのように合う合わないもあるでしょう。それと同様に、原子間でも結合の相手がどの原子かによってつながり方は異なり、結びつきの強度も変わってきます。

化学結合の強さは電子を共有する共有結合が最も強くなることを覚えておきましょう。また、分子間でも分子同士の完全な結合とはいかないまでも、引き合う力が働いています。結合の強さとともに、理解しておきましょう。

化学結合の強さ:共有結合>イオン結合>金属結合>分子間力による結合(水素結合 > 極性引力 > ファンデルワールス力)

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化学物質の状態・構成・変化理科

原子と分子をつなぐ「化学結合」について元塾講師がわかりやすく解説

2-2.配位結合

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共有結合とは仕組みが似ています。共有結合が他の原子と1対1で電子を共有するのに対し、配位結合は2対0で電子を共有する結合です。つまり、電子をもっているものがもっていないものに分け与えるかたちになります。こちらも電子を共有するために強い結合といえるでしょう。

2-3.イオン結合

金属と非金属の結合では陽イオンと陰イオンのプラスとマイナスが引き合うものです。金属はナトリウムイオン Na+ やマグネシウムイオン Mg2、カルシウムイオン Ca2+ のような陽イオンとなり、塩化物イオン Cl や硫酸イオン SO42 のような非金属陰イオンとの結合ができます。プラスとマイナスの間で生じるクーロン力(静電気力)が大きく関わっている結合です。

2-4.金属結合

金属結合とは、その名の通り金属同士が結びつく結合です。金属は陽イオンになることで安定するので、放出された電子は陽イオン化された金属原子の間を自由に移動する自由電子となって原子間の結合につながります。これによって金属は独立した分子としてではなく、ある1つの集合体として存在するというわけです。

3.分子間での結びつき

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一方で、分子間でも原子の結びつきに似た結合反応が起こります。これらについても簡単に見ていきましょう。

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