
地表に一番多い元素「酸素」について元研究員がわかりやすく解説
3-1.医療現場での酸素

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酸素吸入は医療現場では欠かせませんよね。重傷を負った患者さんが、まず酸素マスクをつけてもらう様子をドラマなどで観たことがあるでしょう。
空気中より高い濃度の酸素を患者さんに吸入させることで、低酸素症・低酸素血症の予防や心肺の負荷を軽減しています。
大きな病院では酸素ガスボンベではなく、液体酸素を気化してパイプラインを通じて供給しているところもあるそうです。
3-2.助燃材としての酸素

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酸素は燃焼を促進するという性質を利用して、空気中で燃やすよりも高い熱を出す炎を使いたい時に役立っています。
鉄鋼業では溶接や溶断、精錬などで燃えるのを助ける助燃材として酸素が使われているのです。また、ガラス原料の溶解にも酸素が使われています。
皆さんは宇宙へ行くロケットの発射を見たことがありますか?宇宙へ行くには地球の引力に打ち勝つ強いエネルギーが必要です。そのロケットのエンジン部分で燃料である水素を燃やすために、液体酸素が使われています。
3-3.工業分野で酸化物をつくる
化学工業の分野では、酸化チタンをつくる時に、四塩化チタンから塩素を分離させる際に酸素が使われています。また半導体の分野では、半導体の製造時にシリコンの酸化膜をつくる酸化剤として酸素が必要です。
他には、酸化エチレンや酢酸など化学品の酸化にも酸素が使われています。
身近なところでは、製紙用パルプの漂白にも酸素が使われているそうです。

ロケットを飛ばす時にも酸素が使われているなんて知らなかったな。燃焼を助ける力と他の物質と結びつきやすい力が、色々なところで役に立っているんだな。
4.身近な酸化反応
常にわたしたちの身の回りにある酸素。酸素はとても反応性が高いので、燃焼以外にも頻繁に酸化反応が起きています。
4-1.金属がさびる

金属が長い間放置されるとさびがでてきますよね。これは身近な酸化反応のひとつです。
酸素は他の物質から電子を奪う強い酸化力を持っています。対して金属は金(Au)以外は相手に電子を与えて還元し、イオンになりやすいという性質があるのです。
金属のイオンになりやすさはイオン化傾向というのですが、イオン化傾向が大きい元素ほどさびやすいということになります。
最も身近な例として、鉄がさびる様子を段階的に化学反応式でみてみましょう。
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