バソプレシン
脳下垂体後葉から分泌されるホルモンの中でとくに覚えておいてほしいのが、「抗利尿ホルモン(antidiuretic hormone:ADH)」とよばれることもあるバソプレシン(vasopressin:VP)です。
腎臓にはたらきかけ、尿として排出される水分を血液に戻す“再吸収”を高めることで、尿の量を減らす機能があります。さらに、血管を収縮させることで血圧を上昇させる効果も。この効果を利用して、心停止時にバソプレシンを投与し、血液の輸送を補助することがあります。
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オキシトシン
近年注目があつまるようになり、メディアでも取り上げられる機会が増えたオキシトシン(oxytocin:OXT)というホルモンがあります。バソプレシンと非常に似た構造をしていて、わずかアミノ酸2つ分の違いしかありません。
出産時に分泌が増加しますが、これにより子宮の収縮を促進して分娩が促進されます。また、出産後の育児の最中にも分泌が促進されることがわかっており、母性の形成に関与することから「愛情ホルモン」という別名でよばれているんです。
脳下垂体と病気
以上のように、脳下垂体は生きていくうえで必要不可欠な数多くのホルモンを分泌しています。ここに炎症や腫瘍などが原因の異常が生じると、全身のあちこちに大きな影響を及ぼすことは想像に難くありません。脳下垂体の機能が低下することで現れる諸症状をまとめて「脳下垂体機能低下症」といいます。
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たとえば、成長ホルモンの欠乏によって子どもに現れる「低身長症」。甲状腺刺激ホルモンの欠乏によって甲状腺ホルモンの分泌も低下し、体重増加や代謝の低下が起きる「甲状腺刺激ホルモン欠損症」、副腎皮質刺激ホルモンの欠乏で副腎皮質の機能が低下する「副腎皮質刺激ホルモン欠損症」などもあります。
脳下垂体中葉と両生類・魚類
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ヒトではほとんど退化してしまう脳下垂体の中葉。両生類や魚類ではこの中葉がよく発達しています。中葉から分泌されるホルモンは、メラニン細胞刺激ホルモン(melanocyte-stimulating hormone:MSH)とよばれるものです。
メラニン細胞とは色素を含んだ細胞のこと。このホルモンはメラニン細胞を刺激し、増殖を促したり、メラニン細胞を大きくすることで、体色を変化させることができます。体の色を変えるなんて、わたしたち人間にはできませんよね。中葉が退化していない両生類や魚類らしい生態といえるでしょう。
脳下垂体は必ず押さえるべき内分泌器官!
数々のホルモンを産生・分泌している脳下垂体。体内にいくつもある内分泌器官の中でもとくに多くのホルモンに関わることからも、その重要性が感じられるはずです。脳下垂体の位置・構造を把握し、関係するホルモンの種類をおさえることは、内分泌系の学習で必須の項目といえるでしょう。