今回は、高校で生物学を学んだものならば確実に覚えておきたい内分泌器官・副腎について学びなおそう。

小さくあまり目立たない器官ですが、重要な役割を果たしているなくてはならない存在です。「副腎とは何か?」という問いに即答できないのならば、一読することを強くすすめる。

生物のからだに詳しい現役講師のオノヅカユウを招いたぞ。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

副腎とは?

Illu adrenal gland.jpg
By EEOC - cancer.gov, パブリック・ドメイン, Link

副腎は、腎臓のすぐ上に位置している小さな器官です。腎臓の上にあることから「腎上体」とよばれることもあります。

副腎ひとつあたりの重さはわずか5gほど。どんな形をしているかというと、「小さめのお餅を直径数wp_、やや厚みのある円盤状に延ばし、それを真ん中で折りたたんだような形」といったところでしょうか。右の副腎と左の副腎では微妙に形が違います。

image by Study-Z編集部

副腎の内部はおおきく2つの層に分かれています。外側に位置している「皮質」と、内側に位置している「髄質」です。

その名前から、「腎臓のおまけ」のようにも捉えられがちな副腎ですが、腎臓と副腎は全く異なる役割をもち、発生上もあまり関係がないようです。似た名前に惑わされないよう注意しましょう。ちなみに、英語では副腎は『adrenal gland』、腎臓は『kidney』といいます。

副腎のはたらき

それでは、副腎が体内で果たしている役割について学んでいきたいと思います。

副腎は内分泌器官の一つ。複数のホルモンを分泌する、恒常性維持のためにとても重要な器官です。小さくあまり目立たない器官ですが、副腎から分泌されるホルモンはいずれも重要度が高く、日常生活に欠かすことができません。副腎のはたらきが低下すると普段生活に大きな支障が出るほどの役割をになっているんです。

前述の通り、副腎の構造は「皮質」と「髄質」に分けられており、分泌されるホルモンも異なります。

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副腎皮質から分泌されるホルモン=副腎皮質ホルモン
 ・糖質コルチコイド
 ・鉱質コルチコイド
 ・アンドロゲン

副腎髄質から分泌されるホルモン=副腎髄質ホルモン
 ・アドレナリン
 ・ノルアドレナリン

それぞれのホルモンについて、少し詳しく見ていきましょう。

糖質コルチコイド

糖質コルチコイドは、血糖値が低下したときに分泌量が増える、血糖値調節のためのホルモンです。タンパク質を分解してグルコースをつくる作用を促進します。実際に糖質コルチコイドとして機能するのは、コルチゾールやコルチコステロン、コルチゾンなどの化学物質です。血液中の糖質調節に関わることから、糖尿病などの病気との関係も指摘されています。

image by iStockphoto

ホルモンの名前についている「コルチコイド」とは、ずばり「副腎皮質」の意味。次にご紹介する鉱質コルチコイドも、その名前を見ただけで副腎皮質から分泌されるホルモンだということがわかります。

鉱質コルチコイド

鉱質コルチコイドは、血液中のナトリウムの量を維持するようにはたらくホルモンです。ナトリウムイオンの量が減ると鉱質コルチコイドの分泌が促され、結果的に腎臓でのナトリウムイオンの再吸収が促進されます。ナトリウムイオンは細胞が正常にはたらくためになくてはならない成分。「グルコース(糖)」ではなく「ミネラル(鉱質)」の量をコントロールしているんです。

副腎皮質はさらに3つの層に分けて考えることができ、生産されるホルモンの種類も決まっています。鉱質コルチコイドがつくられるのは、副腎皮質の中でも一番外側に位置する「球状層」です。

アンドロゲン

アンドロゲンは、一般的に『男性ホルモン』の名で知られているホルモンです。男性器の発達や体毛の増加、声変わりの促進、筋肉を強くするなど、分泌によって「男性らしさ」が顕著になります。保険の授業で、生長するうえで体が大きく変化する「第二次性徴」などの話を聞いたことがあるのではないでしょうか?男性の第二次性徴を促進させるのが、まさしくこのアンドロゲンです。

\次のページで「アドレナリン」を解説!/

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具体的には、テストステロンやジヒドロテストステロンなどの化学物質が、アンドロゲンとしてはたらきます。アンドロゲンは主に精巣から分泌されるホルモンですが、副腎からも分泌されているんです。女性に精巣はありませんが、副腎は男女に共通して存在します。このため、女性であっても多少の男性ホルモンは体内に存在し、身体的特徴に影響が現れることもあるんです、

アドレナリン

アドレナリンは、興奮状態やストレスを感じた時に分泌が増えるホルモン。自然界では、獲物を捕らえようとするときや、敵と戦う時、逆に、天敵に追われているときなど、激しい運動や俊敏な動きを必要とするときに分泌されます。その特徴から『闘争か逃走か(Fight or Flight)のホルモン』などとよばれることもあるんです。

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アドレナリン分泌されると、心臓の収縮が強くなり、同時に骨格筋や肝臓へ血液をたくさん送るようになります。その一方で、消化管のぜん動が低下したり、皮膚の血管が収縮して血液の流量が低下するような変化も。骨格筋へ優先的に血液を送ることで、筋肉を使った激しい動きが可能になるんですね。

ちなみに、アドレナリンは「エピネフリン」という名前で呼ばれることもあります。また、アドレナリンは神経から神経への情報伝達をになう「神経伝達物質」としても利用されていますので、覚えておきましょう。

ノルアドレナリン

ノルアドレナリンは、アドレナリンと同様に、興奮状態やストレスを感じた時に分泌量が増えるホルモンです。心拍数を増価させ、骨格筋を素早く動かせるようはたらきかけます。はたらきも名前もアドレナリンによく似ていますが、そもそもアドレナリンはノルアドレナリンからつくられる物質です。

ノルアドレナリンも神経系では神経伝達物質として使われています。

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多種多様なホルモンを分泌する副腎

副腎と、副腎から分泌される代表的なホルモン5つをご紹介しました。脳や心臓、胃などの臓器は小学生でもその役割を知っていますが、副腎について学ぶのは高校生くらいからのはず。知名度が低いわりに、重要なホルモンをいくつも分泌している器官ですので、忘れないようにしたいものです。

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タンパク質と生物体の機能理科生物

3分で簡単副腎のホルモン!現役講師がわかりやすく解説!

副腎皮質から分泌されるホルモン=副腎皮質ホルモン
 ・糖質コルチコイド
 ・鉱質コルチコイド
 ・アンドロゲン

副腎髄質から分泌されるホルモン=副腎髄質ホルモン
 ・アドレナリン
 ・ノルアドレナリン

それぞれのホルモンについて、少し詳しく見ていきましょう。

糖質コルチコイド

糖質コルチコイドは、血糖値が低下したときに分泌量が増える、血糖値調節のためのホルモンです。タンパク質を分解してグルコースをつくる作用を促進します。実際に糖質コルチコイドとして機能するのは、コルチゾールやコルチコステロン、コルチゾンなどの化学物質です。血液中の糖質調節に関わることから、糖尿病などの病気との関係も指摘されています。

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ホルモンの名前についている「コルチコイド」とは、ずばり「副腎皮質」の意味。次にご紹介する鉱質コルチコイドも、その名前を見ただけで副腎皮質から分泌されるホルモンだということがわかります。

鉱質コルチコイド

鉱質コルチコイドは、血液中のナトリウムの量を維持するようにはたらくホルモンです。ナトリウムイオンの量が減ると鉱質コルチコイドの分泌が促され、結果的に腎臓でのナトリウムイオンの再吸収が促進されます。ナトリウムイオンは細胞が正常にはたらくためになくてはならない成分。「グルコース(糖)」ではなく「ミネラル(鉱質)」の量をコントロールしているんです。

副腎皮質はさらに3つの層に分けて考えることができ、生産されるホルモンの種類も決まっています。鉱質コルチコイドがつくられるのは、副腎皮質の中でも一番外側に位置する「球状層」です。

アンドロゲン

アンドロゲンは、一般的に『男性ホルモン』の名で知られているホルモンです。男性器の発達や体毛の増加、声変わりの促進、筋肉を強くするなど、分泌によって「男性らしさ」が顕著になります。保険の授業で、生長するうえで体が大きく変化する「第二次性徴」などの話を聞いたことがあるのではないでしょうか?男性の第二次性徴を促進させるのが、まさしくこのアンドロゲンです。

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