当り前ですが、高い場所からボールが落ちたら非常に危険。なぜかと言うと、落下物は勢いよく加速し、瞬く間に凄い「速さ」になってしまうから。

自由落下の加速度は9.8m/s^2。電車or気動車の加速度が0.7m/s^2程度、スポーツカーでも4m/s^2程度なので、これはかなりの「急加速」。

この記事では、入試に出てきそうなユニークな式変形をしながら重力加速度について考察していきます。

ライター/R175

理科教員の教員免許を保有。機械エンジニアの経験を活かし、物理現象を身近な現象に結び付け分かりやすく解説する。

1.重力の発生原理

image by iStockphoto

重力が発生するのは万有引力のせい。

万有引力とは文字通り、

万:あらゆるもの
有:有する
引力:引っ張り合う力。

実はあらゆる物体同士、どこの場所にあっても引っ張り合っているのです。

1-1.万有引力の大きさ

1-1.万有引力の大きさ

image by Study-Z編集部

重力の発生原因となっている万有引力についてみていきましょう。

例えば、A君と石ころも引き付け合っています。

同様に、地球とA君、地球と石ころも同様。なぜ地球が出て来た?それは地球も一つの物体とみなせるから。

イラスト内の公式に示すよう、万有引力は物体の質量に比例、物体間の距離の2乗に反比例します。

地球の半径や、A君や石ころの質量を実際に代入して、万有引力をイラスト内の表にまとめました。

式内に登場する万有引力定数は非常に小さな値で、A君と石ころといったような数十kgオーダーの物体間の万有引力は微小なものとなり、普段の生活では気づかないレベルですね。

地球くらいの大質量を持って初めて、重力並みの万有引力が発生するわけです。

A君と地球、石ころと地球の万有引力の値に注目。体重60kgのA君と地球の間の万有引力は590Nとなっていますね。これはA君に働く重力60x9.8=58.8Nとほぼ一致

重力は万有引力より若干小さな値となっています。

それは、地球の自転によってA君には地球から離れていく方向に「遠心力」が働いているため。

2.地球の自転による遠心力

2.地球の自転による遠心力

image by Study-Z編集部

体重60kgのA君に働く「自転による遠心力」を計算していきましょう。

この項では自転によってどれくらい重力が小さくなるのか見ていきます。

A君は赤道上にいるとしましょう。

地球の半径:r=6378km=6378000m

地球は24時間で1周しますから、

角速度ω:1周/24hr=360°/24hr=2π/24hr(ラジアン単位での表記)。

角速度ω=0.000073(rad/s)。

おっとかなり小さい値。質量60kgのA君に働く遠心力F=60x6378000x(0.000073)^2=2N。

さきほどの表に出て来たA君と地球の間に働く万有引力によって近づき合う力が590N、一方自転による遠心力で離れようとする力が2N。その結果、588Nで引き付け合うことになりますね。

この588NはA君に働く重力(=質量x重力加速度=60[kg]x9.8[m/s^2])に一致。

因みに、A君が北極点上に立っていたら、自転による遠心力は働きませんから「万有引力」分の590Nがそのまま「重力」となります。

北極点での重力加速度は590N/60kg=9.83[m/s^2]と若干増加。

重力加速度は観測地点の緯度によって微妙に変化します。

3.結局重力による「加速度」はどうやって決まる?

3.結局重力による「加速度」はどうやって決まる?

image by Study-Z編集部

重力加速度は何で決まるのでしょうか。

万有引力の式を活用して、重力加速度gを他のパラメータで表現してみます。

天体の質量をM、天体の半径をR、重力加速度をgとし、重力≒万有引力と考えましょう。重力加速度gについて解くと、

g=GM/R^2 -(1)式

重力加速度に関係するのは、天体の質量と天体の半径。万有引力定数Gは、定数なのでどうしようもありません。

天体の質量が大きければ大きいほど、また天体の半径が小さいほど大きくなり、

半径が小さくて、質量が大きい→密度が大きい天体ほど重力加速度が大きくなります。

密度が入った式でも確認してみましょう。

天体の体積はV=4πR^3/3、質量がMなので、

密度ρ=3M/4πR^3。

(4π/3)R・ρ=M/R^2

(1)式に代入すると、

重力加速度g=(4π/3)RGρ -(2)式

と表せます。円周率πも万有引力定数Gも定数なので、重力加速度は天体の密度と半径に比例。キーワードは「密度」と「半径」ですね。

4.重力加速度を計算

image by iStockphoto

前項で天体の重力加速度は、自転による遠心力の影響を無視した場合、天体の「密度」と「半径」で決まると述べました。

実際にこれらのパラメータから重力加速度を、また逆に重力加速度から、天体の密度や半径を推定してみましょう。

せっかく導いた式を使ってみましょう。

\次のページで「4-1.練習問題」を解説!/

4-1.練習問題

以下の値を求めましょう。ただし、天体は球体形状で自転による遠心力は無視できるものとします。

問1 密度が1[g/wp_^3]半径6400km(地球とほぼ同じ)の天体の重力加速度。

問2 重力加速度9.8[m/s^2]、半径6400kmの天体(ほぼ地球)の密度。

問3 天体Aと密度が同じで半径が2倍の天体Bの重力加速度は何倍か。

4-2.解説

ここで使う式は3項で出て来たg=(4π/3)RGρのみ。

問1
密度1[g/wp_^3]=1000[kg/m^3]
上式に当てはめて、g=(4x3.14/3)x6400000[m]x6.67x10^(-11)[m^3/kg/s^2]x1000[kg/m^3]=1.8[m/2^2]

問2
同じくg=(4π/3)RGρに値を代入して、
9.8[m/s^2]=(4x3.14/3)x6400000[m]x6.67x10^(-11)[m^3/kg/s^2]xρkg/[m^3]
ρ=5490[kg/m^3]=5.49[g/m^3]
*実際の地球の密度は5.51〜5.52程度。

地球の半径6370km程度のところを6400kmに丸め込んだこと、
および地球の自転による遠心力を無視しているため密度は小さめに出ています。

問3
特に計算は要りませんね。g=(4π/3)RGρから、半径が2倍になると重力加速度は2倍になります。

重力加速度は密度と半径で決まる

万有引力の式(F=GMm/R^2)

M=(4π/3)ρR^3

重力(mg)

ここから重力加速度g=(4π/3)RGρ導出してみましょう。

式からは重力加速度密度半径で決まることが分かります。

受験生の皆様は、式変形に重きを置いてください。この記事で言ったら元も子もありませんが、何ならg=(4π/3)RGρなんて忘れましょう。

皆さんなら、いつでも導出出来ますから忘れても心配ありません。

" /> 天体の密度と半径に比例ー「重力加速度」の不思議を理系ライターがわかりやすく解説 – Study-Z
物理物理学・力学理科

天体の密度と半径に比例ー「重力加速度」の不思議を理系ライターがわかりやすく解説

当り前ですが、高い場所からボールが落ちたら非常に危険。なぜかと言うと、落下物は勢いよく加速し、瞬く間に凄い「速さ」になってしまうから。

自由落下の加速度は9.8m/s^2。電車or気動車の加速度が0.7m/s^2程度、スポーツカーでも4m/s^2程度なので、これはかなりの「急加速」。

この記事では、入試に出てきそうなユニークな式変形をしながら重力加速度について考察していきます。

ライター/R175

理科教員の教員免許を保有。機械エンジニアの経験を活かし、物理現象を身近な現象に結び付け分かりやすく解説する。

1.重力の発生原理

image by iStockphoto

重力が発生するのは万有引力のせい。

万有引力とは文字通り、

万:あらゆるもの
有:有する
引力:引っ張り合う力。

実はあらゆる物体同士、どこの場所にあっても引っ張り合っているのです。

1-1.万有引力の大きさ

1-1.万有引力の大きさ

image by Study-Z編集部

重力の発生原因となっている万有引力についてみていきましょう。

例えば、A君と石ころも引き付け合っています。

同様に、地球とA君、地球と石ころも同様。なぜ地球が出て来た?それは地球も一つの物体とみなせるから。

イラスト内の公式に示すよう、万有引力は物体の質量に比例、物体間の距離の2乗に反比例します。

地球の半径や、A君や石ころの質量を実際に代入して、万有引力をイラスト内の表にまとめました。

式内に登場する万有引力定数は非常に小さな値で、A君と石ころといったような数十kgオーダーの物体間の万有引力は微小なものとなり、普段の生活では気づかないレベルですね。

地球くらいの大質量を持って初めて、重力並みの万有引力が発生するわけです。

A君と地球、石ころと地球の万有引力の値に注目。体重60kgのA君と地球の間の万有引力は590Nとなっていますね。これはA君に働く重力60×9.8=58.8Nとほぼ一致

重力は万有引力より若干小さな値となっています。

それは、地球の自転によってA君には地球から離れていく方向に「遠心力」が働いているため。

2.地球の自転による遠心力

2.地球の自転による遠心力

image by Study-Z編集部

体重60kgのA君に働く「自転による遠心力」を計算していきましょう。

この項では自転によってどれくらい重力が小さくなるのか見ていきます。

A君は赤道上にいるとしましょう。

地球の半径:r=6378km=6378000m

地球は24時間で1周しますから、

角速度ω:1周/24hr=360°/24hr=2π/24hr(ラジアン単位での表記)。

角速度ω=0.000073(rad/s)。

おっとかなり小さい値。質量60kgのA君に働く遠心力F=60x6378000x(0.000073)^2=2N。

さきほどの表に出て来たA君と地球の間に働く万有引力によって近づき合う力が590N、一方自転による遠心力で離れようとする力が2N。その結果、588Nで引き付け合うことになりますね。

この588NはA君に働く重力(=質量x重力加速度=60[kg]x9.8[m/s^2])に一致。

因みに、A君が北極点上に立っていたら、自転による遠心力は働きませんから「万有引力」分の590Nがそのまま「重力」となります。

北極点での重力加速度は590N/60kg=9.83[m/s^2]と若干増加。

重力加速度は観測地点の緯度によって微妙に変化します。

3.結局重力による「加速度」はどうやって決まる?

3.結局重力による「加速度」はどうやって決まる?

image by Study-Z編集部

重力加速度は何で決まるのでしょうか。

万有引力の式を活用して、重力加速度gを他のパラメータで表現してみます。

天体の質量をM、天体の半径をR、重力加速度をgとし、重力≒万有引力と考えましょう。重力加速度gについて解くと、

g=GM/R^2 -(1)式

重力加速度に関係するのは、天体の質量と天体の半径。万有引力定数Gは、定数なのでどうしようもありません。

天体の質量が大きければ大きいほど、また天体の半径が小さいほど大きくなり、

半径が小さくて、質量が大きい→密度が大きい天体ほど重力加速度が大きくなります。

密度が入った式でも確認してみましょう。

天体の体積はV=4πR^3/3、質量がMなので、

密度ρ=3M/4πR^3。

(4π/3)R・ρ=M/R^2

(1)式に代入すると、

重力加速度g=(4π/3)RGρ -(2)式

と表せます。円周率πも万有引力定数Gも定数なので、重力加速度は天体の密度と半径に比例。キーワードは「密度」と「半径」ですね。

4.重力加速度を計算

image by iStockphoto

前項で天体の重力加速度は、自転による遠心力の影響を無視した場合、天体の「密度」と「半径」で決まると述べました。

実際にこれらのパラメータから重力加速度を、また逆に重力加速度から、天体の密度や半径を推定してみましょう。

せっかく導いた式を使ってみましょう。

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