酸性アルカリ性を示すものさし「pH」について元研究員がわかりやすく解説
そもそも酸性とかアルカリ性ってどのような性質なんだ?口に入れれば酸性はすっぱくてアルカリ性は苦い!って言っても何でも口に入れるわけにはいかないよな。
今回は定義から身の回りの物質のpHまで、長年酸塩基反応を用いて実験してきたライターwingと一緒に解説していきます。
ライター/wing
元製薬会社研究員。小さい頃から化学が好きで、実験を仕事にしたいと大学で化学を専攻した。卒業後は化学分析・研究開発を生業にしてきた。化学のおもしろさを沢山の人に伝えたい!
1.pHとは何か?
pH(ピーエッチ、またはペーハー)とは何のことでしょうか?酸性・アルカリ性の程度を示すものさしとして、pH1~14までの数値で表すものです。pH1が強酸性で、pH7が中性、pH14は強アルカリ性という事を覚えておきましょう。
では、酸性・アルカリ性とはどのような性質かから解説します。
2.酸性とアルカリ性
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酸性といわれてどのようなものを想像するでしょうか?身の回りにも、酸性のものは沢山ありますよね。
料理に使うお酢や掃除に使うクエン酸は酸性です。酸性の水溶液は酸っぱい味がし、さらに金属を溶かす性質があります。小学校では青色リトマス試験紙を赤くする実験をしたかもしれません。
さらにアルカリと反応してアルカリ性を打ち消します。これらは酸性の水溶液の特徴です。
ではアルカリ性といわれてどんなものを想像しますか?
アンモニア水やせっけん水はアルカリ性ですね。アルカリ性の水溶液は少し苦い味がします。そして赤色リトマス試験紙を青くする実験をしたかもしれません。
さらに酸と反応して酸性を打ち消します。これらはアルカリ性の水溶液の特徴です。
2-1.アレーニウスの定義
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1884年にスウェーデンのアレーニウスという科学者が、酸と塩基について重要な発表をしました。
酸とは水に溶けて水素イオン(H+)を出す物質である、という定義です。例えば塩酸は水に溶かすと次のように水素イオンを出します。
HCl → H+ + Cl–
そして、塩基とは水に溶けて水酸化物イオン(OH–)を出す物質である、と定義しました。例えば水酸化ナトリウムは水に溶けて次のように水酸化物イオンを出します。
NaOH → Na+ + OH–
2-2.ブレンステッド・ローリーの定義
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アレーニウスの定義を拡張した考え方を、1923年にブレンステッドとローリーという2人の科学者が別々に提案しました。
酸とは水素イオンを与える分子やイオンのことである、という定義です。例えば酢酸は
CH3COOH + H2O → CH3COO– + H3O+
となり、CH3COOHがH2Oに対しH+を与えているので酸となります。
そして塩基とは水素イオンを受け取る分子やイオンのことである、と定義しました。
例えばアンモニアは
NH3 + H2O → NH4+ + OH–
となり、NH3がH+を受け取っているので塩基となります。
このブレンステッド・ローリーの定義により、水溶液以外の溶媒の中での酸塩基反応を幅広く説明できるようになりました。
2-3.強い酸と弱い酸は何が違う?
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塩酸(HCl)と酢酸(CH3COOH)はどちらも酸ですが、同じ濃度でも塩酸の方がよく金属を溶かします。このことから塩酸は酢酸より強い酸だといえるでしょう。
では塩酸と酢酸は、酸としてどのような違いがあるのでしょうか?
塩酸は水溶液中で(H+)と(Cl–)がほぼ完全に離れているのに対して、酢酸は(H+)と(CH3COO–)がごく一部しか離れていないために水溶液中の水素イオン濃度にかなりの差があるのです。
水溶液中でほぼ完全に離れている(電離している)酸を強酸、一部しか離れていない酸を弱酸といいます。
電離とは陽イオンと陰イオンがばらばらに離れることです。
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