「pH」ってよく使われるけど、説明しようとすると難しいよな。

そもそも酸性とかアルカリ性ってどのような性質なんだ?口に入れれば酸性はすっぱくてアルカリ性は苦い!って言っても何でも口に入れるわけにはいかないよな。

今回は定義から身の回りの物質のpHまで、長年酸塩基反応を用いて実験してきたライターwingと一緒に解説していきます。

ライター/wing

元製薬会社研究員。小さい頃から化学が好きで、実験を仕事にしたいと大学で化学を専攻した。卒業後は化学分析・研究開発を生業にしてきた。化学のおもしろさを沢山の人に伝えたい!

1.pHとは何か?

image by PIXTA / 21395904

pH(ピーエッチ、またはペーハー)とは何のことでしょうか?酸性・アルカリ性の程度を示すものさしとして、pH1~14までの数値で表すものです。pH1が強酸性で、pH7が中性、pH14は強アルカリ性という事を覚えておきましょう。

では、酸性・アルカリ性とはどのような性質かから解説します。

2.酸性とアルカリ性

image by iStockphoto

酸性といわれてどのようなものを想像するでしょうか?身の回りにも、酸性のものは沢山ありますよね。

料理に使うお酢や掃除に使うクエン酸は酸性です。酸性の水溶液は酸っぱい味がし、さらに金属を溶かす性質があります。小学校では青色リトマス試験紙を赤くする実験をしたかもしれません。

さらにアルカリと反応してアルカリ性を打ち消します。これらは酸性の水溶液の特徴です。

ではアルカリ性といわれてどんなものを想像しますか?

アンモニア水やせっけん水はアルカリ性ですね。アルカリ性の水溶液は少し苦い味がします。そして赤色リトマス試験紙を青くする実験をしたかもしれません。

さらに酸と反応して酸性を打ち消します。これらはアルカリ性の水溶液の特徴です。

2-1.アレーニウスの定義

2-1.アレーニウスの定義

image by Study-Z編集部

1884年にスウェーデンのアレーニウスという科学者が、酸と塩基について重要な発表をしました。

酸とは水に溶けて水素イオン(H+)を出す物質である、という定義です。例えば塩酸は水に溶かすと次のように水素イオンを出します。

HCl → H+ + Cl

そして、塩基とは水に溶けて水酸化物イオン(OH)を出す物質である、と定義しました。例えば水酸化ナトリウムは水に溶けて次のように水酸化物イオンを出します。

NaOH → Na+ + OH

2-2.ブレンステッド・ローリーの定義

2-2.ブレンステッド・ローリーの定義

image by Study-Z編集部

アレーニウスの定義を拡張した考え方を、1923年にブレンステッドとローリーという2人の科学者が別々に提案しました。

酸とは水素イオンを与える分子やイオンのことである、という定義です。例えば酢酸は

CH3COOH + H2O → CH3COO– + H3O+

となり、CH3COOHがH2Oに対しH+を与えているので酸となります。

そして塩基とは水素イオンを受け取る分子やイオンのことである、と定義しました。

例えばアンモニアは

NH3 + H2O → NH4+ + OH

となり、NH3H+を受け取っているので塩基となります。

このブレンステッド・ローリーの定義により、水溶液以外の溶媒の中での酸塩基反応を幅広く説明できるようになりました。

2-3.強い酸と弱い酸は何が違う?

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塩酸(HCl)と酢酸(CH3COOH)はどちらも酸ですが、同じ濃度でも塩酸の方がよく金属を溶かします。このことから塩酸は酢酸より強い酸だといえるでしょう。

では塩酸と酢酸は、酸としてどのような違いがあるのでしょうか?

塩酸は水溶液中で(H+)と(Cl)がほぼ完全に離れているのに対して、酢酸は(H+)と(CH3COO)がごく一部しか離れていないために水溶液中の水素イオン濃度にかなりの差があるのです。

水溶液中でほぼ完全に離れている(電離している)酸を強酸一部しか離れていない酸を弱酸といいます。

電離とは陽イオンと陰イオンがばらばらに離れることです。

\次のページで「2-4.アルカリ性と塩基性」を解説!/

2-4.アルカリ性と塩基性

ここでアルカリ性と塩基性という、2つの言葉の違いを説明します。

塩基性とは2つの物質を比較して、より酸性が弱いほうを塩基性と呼ぶものです。つまり同じ物質であっても比較対象が違えば酸にも塩基にもなりえます。

これに対してアルカリ性というのは基準が水であり、水より酸性が弱いことをアルカリ性と呼ぶのです。水はpH7なのでこれよりpHが高いものはアルカリ性ということですね。

アルカリ性は水溶液の性質を示す言葉ですが、塩基は水溶液以外でも使います。

アルカリ性よりも塩基性の方が少し概念が広いのです。

3.水素イオン濃度とpHの関係

pHは水溶液中の水素イオン(H+)の濃度で決まります。では水溶液中の水素イオンの濃度はどのように求められるのでしょうか?

3-1.水素イオン濃度の単位

水素イオン濃度は「mol(モル)/L」という単位で表されます。これは、1リットルあたりに何mol含まれているかを示すものです。

では、化学を学ぶ時の重要な単位である mol とは何でしょうか?

原子や分子はとても小さいので、6×1023個集めて1molと呼ぼうと決めました。鉛筆を12本集めて1ダースと呼ぶのと同じと考えてもらって構いません。原子や分子やイオンを6×1023個集めて1mol(モル)と呼ぶのです。

純粋な水の中では水素イオン(H+)と水酸化物イオン(OH)は電離しています。水分子が電離して生じる(H+)と(OH)の濃度は必ず等しく、25℃ではどちらの濃度も1.0×10-7mol/Lです。

3-2.水素イオン濃度とpH

純粋な水のpHは7だという事をお話しました。さらに水の中の水素イオン(H+)濃度は1.0×10-7mol/Lだとわかりましたね。この2つは密接に関係しています。

pHは水溶液中の水素イオン(H+)の濃度で決まると説明しました。

つまり(H+)濃度が 1.0×10-7mol/L = pH7 ということです。

ここから、水素イオン(H+)濃度が1.0×10-xmol/Lの時、pHはXになるということがわかります。

では水素イオン濃度が以下のとき、pHはいくつになるでしょうか?

\次のページで「4.身近な物質のpH」を解説!/

水素イオン(H+)濃度 1.0×10-1mol/L = pH1

水素イオン(H+)濃度 1.0×10-2mol/L = pH2

水素イオン(H+)濃度 1.0×10-13mol/L = pH13

水素イオン(H+)濃度 1.0×10-14mol/L = pH14

これが水素イオン濃度とpHの関係です。

4.身近な物質のpH

わたしたちの体内、食べているものや使っているものにも、様々なpHの物質があります。

pH1.5 胃液

pH2 レモン果汁

pH3 食酢

pH4 ビール

pH5 汗

pH6 牛乳

pH7 水道水、血液

pH8 涙、海水

pH9 せっけん水

pH12 台所用漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム溶液)

pH13 パイプ洗浄剤

また、温泉のpHは場所によって様々です。酸性の温泉はpH1近いものから、アルカリ性の温泉はpH11くらいある所もあります。今度温泉に入ったときに、効能効果と共に酸性かアルカリ性か、pHの値も表示をしている場合もあるので見てみてください。

\次のページで「5.pHを測定しよう」を解説!/

5.pHを測定しよう

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では実際にpHを測定したい場合どうすればいいのでしょうか?

pHの測定で一番正確なのは、pHメーターと呼ばれる機械でしょう。なぜ一番正確かというとpHが数値で表されるからです。

その他に色の変化によってpHがわかる指示薬を使った方法があります。良く知られている指示薬にはフェノールフタレイン(変色域pH8~10)やメチルオレンジ(変色域pH3~4)、BTB溶液(変色域pH6~8)がありますが変色域が異なるので注意が必要です。

また、ほぼ全域のpHを変色によって示す万能pH試験紙を用いる方法があります。

pHとは酸性アルカリ性を示すものさし

pH7が中性で、値が小さくなるにつれて強い酸性に、大きくなるにつれて強いアルカリ性になる指標です。

pHの数値は水素イオン濃度によるもので、酸性が強い=水素イオン濃度が濃いと数値は1に近づき、アルカリ性が強い=水素イオン濃度が薄いと数値は14に近づきます。

水素イオン濃度とpHの関係は 水素イオン(H+)濃度が1.0×10-xmol/Lの時、pHはX です。

身近な物質にも様々なpHのものがあり、測定にはpHメータ指示薬万能pH試験紙が使われます。

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化学

酸性アルカリ性を示すものさし「pH」について元研究員がわかりやすく解説

「pH」ってよく使われるけど、説明しようとすると難しいよな。

そもそも酸性とかアルカリ性ってどのような性質なんだ?口に入れれば酸性はすっぱくてアルカリ性は苦い!って言っても何でも口に入れるわけにはいかないよな。

今回は定義から身の回りの物質のpHまで、長年酸塩基反応を用いて実験してきたライターwingと一緒に解説していきます。

ライター/wing

元製薬会社研究員。小さい頃から化学が好きで、実験を仕事にしたいと大学で化学を専攻した。卒業後は化学分析・研究開発を生業にしてきた。化学のおもしろさを沢山の人に伝えたい!

1.pHとは何か?

image by PIXTA / 21395904

pH(ピーエッチ、またはペーハー)とは何のことでしょうか?酸性・アルカリ性の程度を示すものさしとして、pH1~14までの数値で表すものです。pH1が強酸性で、pH7が中性、pH14は強アルカリ性という事を覚えておきましょう。

では、酸性・アルカリ性とはどのような性質かから解説します。

2.酸性とアルカリ性

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酸性といわれてどのようなものを想像するでしょうか?身の回りにも、酸性のものは沢山ありますよね。

料理に使うお酢や掃除に使うクエン酸は酸性です。酸性の水溶液は酸っぱい味がし、さらに金属を溶かす性質があります。小学校では青色リトマス試験紙を赤くする実験をしたかもしれません。

さらにアルカリと反応してアルカリ性を打ち消します。これらは酸性の水溶液の特徴です。

ではアルカリ性といわれてどんなものを想像しますか?

アンモニア水やせっけん水はアルカリ性ですね。アルカリ性の水溶液は少し苦い味がします。そして赤色リトマス試験紙を青くする実験をしたかもしれません。

さらに酸と反応して酸性を打ち消します。これらはアルカリ性の水溶液の特徴です。

2-1.アレーニウスの定義

2-1.アレーニウスの定義

image by Study-Z編集部

1884年にスウェーデンのアレーニウスという科学者が、酸と塩基について重要な発表をしました。

酸とは水に溶けて水素イオン(H+)を出す物質である、という定義です。例えば塩酸は水に溶かすと次のように水素イオンを出します。

HCl → H+ + Cl

そして、塩基とは水に溶けて水酸化物イオン(OH)を出す物質である、と定義しました。例えば水酸化ナトリウムは水に溶けて次のように水酸化物イオンを出します。

NaOH → Na+ + OH

2-2.ブレンステッド・ローリーの定義

2-2.ブレンステッド・ローリーの定義

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アレーニウスの定義を拡張した考え方を、1923年にブレンステッドとローリーという2人の科学者が別々に提案しました。

酸とは水素イオンを与える分子やイオンのことである、という定義です。例えば酢酸は

CH3COOH + H2O → CH3COO– + H3O+

となり、CH3COOHがH2Oに対しH+を与えているので酸となります。

そして塩基とは水素イオンを受け取る分子やイオンのことである、と定義しました。

例えばアンモニアは

NH3 + H2O → NH4+ + OH

となり、NH3H+を受け取っているので塩基となります。

このブレンステッド・ローリーの定義により、水溶液以外の溶媒の中での酸塩基反応を幅広く説明できるようになりました。

2-3.強い酸と弱い酸は何が違う?

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塩酸(HCl)と酢酸(CH3COOH)はどちらも酸ですが、同じ濃度でも塩酸の方がよく金属を溶かします。このことから塩酸は酢酸より強い酸だといえるでしょう。

では塩酸と酢酸は、酸としてどのような違いがあるのでしょうか?

塩酸は水溶液中で(H+)と(Cl)がほぼ完全に離れているのに対して、酢酸は(H+)と(CH3COO)がごく一部しか離れていないために水溶液中の水素イオン濃度にかなりの差があるのです。

水溶液中でほぼ完全に離れている(電離している)酸を強酸一部しか離れていない酸を弱酸といいます。

電離とは陽イオンと陰イオンがばらばらに離れることです。

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