
電子の過剰や欠損によって「イオン」となった「原子」の構造を元塾講師がわかりやすく解説

原子はプラスマイナスのない粒で、その中にプラスの陽子とマイナスの電子があると解説したよな。このプラスやマイナスというのが、化学反応では重要な考え方につながるんだ。
電子の動きによってイオンとなる過程を見ていこう。化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していくぞ。

解説/桜木建二
「ドラゴン桜」主人公の桜木建二。物語内では落ちこぼれ高校・龍山高校を進学校に立て直した手腕を持つ。学生から社会人まで幅広く、学びのナビゲート役を務める。

ライター/Ayumi
理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。
1.イオンとは

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原子は原子番号と同じ数の電子と陽子をもっているということは解説済みでしたね。電子のマイナスと陽子のプラスが全体で釣り合っているために、原子というものは電気的に中立な物質です。しかし、電子を放出したり受け取ったりすることで、そのバランスがプラスやマイナスに傾く場合があります。イオンとはこの状態にある原子や原子団のことです。また、原子が電子を放出したり受け取ってイオンになることをイオン化といいます。

イオンとは原子が「マイナスの電荷を帯びた電子」を放出したり受け取ることで電荷を帯びた原子ということだな。イオンができる仕組みを詳しく見ていこう。
1-1.イオンの構造と価数
原子がもつ電子はその数に応じて特定の電子配置をもち、その配置は内側からK殻、L殻、M殻、N殻…という電子殻軌道を描きます。各軌道に入ることのできる最大電子数も2、8、18、32…と決まっているので覚えておくといいでしょう。
内側の殻から電子を埋めていった場合、イオン化に関係してくるのは電子が入っている最も外側の電子殻、最外電子殻です。そしてこの最外電子殻を安定させるために関わる電子を価電子といい、その数を価数といいます。ここで例を考えてみましょう。

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原子がイオンとして安定する状態というのは、最外電子殻にある電子が0または最外電子殻にある電子がその軌道に入ることのできる数ぴったりになった場合です。
水素原子は電子と陽子を1つずつもっています。そのため、最外電子殻であるK殻には電子が1つ入っていますね。これを安定させるためには、電子1つを取り除いて0とするか、1つ受け取って2とするかです。
電子を取り除いた場合はプラスの電荷をもつ陽子が1つ、マイナスの電荷をもつ電子が0となるために原子はプラスの電荷を帯びる陽イオンとなります。反対に、電子を受け取るとプラスの電荷をもつ陽子が1つ、マイナスの電荷をもつ電子が2となるためにとなるのでマイナスの電荷を帯びる陰イオンとなるのです。
同様に塩素原子でも考えてみましょう。

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塩素原子は原子番号が17なので電子数は17であり、電子配置はK殻から2、8、7という状態です。最外殻であるM殻は電子が18まで入る大きな軌道ですが、電子数8で安定した構造をとることができます。そのために電子1つを受け取って安定した構造をとろうとし、陰イオンとなるのです。
このように最外電子殻にある電子数が特定の数になった場合にも原子がイオンとして安定する場合があります。その例として塩化物イオン Cl– はしっかり覚えておきましょう。
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