今回は「原子」と「元素」の違いについて勉強していこう。どちらも物質を構成する最小単位を表すもので、化学の文章問題や解説でも頻繁に使われるワードですね。

ではその違いはなんでしょうか。化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.物質を構成する最小単位

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原子も元素も、物質を構成する最小単位を意味する言葉として使われる場合が多いでしょう。例えば、「どんな物質も原子という最小単位で構成されている」「アルミニウムという金属はAlで表される元素から成り立っている」のように。

それでは「どんな物質も元素という最小単位で構成されている」「アルミニウムという金属はAlで表される原子から成り立っている」としなかったのはなぜでしょうか。こう書いても意味は伝わりますよね。しかしそうしなかったのには理由があるのです。

1-1.原子は物質を構成する粒子

原子とは物質を構成する際に基本となる粒子を意味します。物質の最小単位という言い方をすることもありますね。身のまわりのものをどんどん小さい単位で見ていった場合、最後に残るのがこの原子ということです。溶液を例にして考えてみましょう。溶媒、溶質、溶液のおさらいですよ。

image by Study-Z編集部

ここでは○○溶液と仮定しましょう。この溶液中には上の図のように物質が存在しています。溶媒と溶質、それぞれが混在しているのがわかりますね。この○○溶液がどんな溶質、溶媒を使用しているかわからなくても、全ては原子から成り立っています。この1つ1つ全てが原子というわけです。

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1-2.元素は原子の種類

先ほど○○溶液とした溶液ですが、今度は塩化ナトリウム水溶液で考えてみましょう。この水溶液にはどんな物質が含まれているでしょうか。

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その通りです。この場合、水溶液中には塩化ナトリウム NaCl と水 H2O が溶けていることになりますね。さらに細かく見ていくと、塩化ナトリウムはナトリウム Na塩素 Cl 、水は水素 H酸素 O という粒子からできているのがわかります。

そうすると、先ほどまではただの粒子だったものがそれぞれ特徴ある物質として見えてきますね。これが元素です。つまり、元素とは原子の種類を表すものといえるでしょう。

「どんな物質も原子という最小単位で構成されている」という文章は、全てのものを細かく見ていけば「原子という粒子」でできているというアバウトな表現ともいえます。一方で「アルミニウムという金属はAlで表される元素から成り立っている」という文章は、アルミニウムという金属を構成する「原子という粒子」が「Alという元素である」という種類を特定した言い方になっているという違いがあるのです。

2.原子の構造

続いて原子の構造について見ていきましょう。原子は直径10-10 m程の小さな物質です。数字で言われても想像できないくらいの小ささですね。どんな物質も、この小さな原子の集まりからできています。普段使っているペンやノート、口にするもの、そして当然あなた自身も原子の集まりです。

原子は物質の最小単位とお伝えしましたが、実は原子にも構造というものがあります。

2-1.質量数を決める原子核

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原子は中心に原子核というものが存在し、その周りをマイナスの電気を帯びた電子というものが回っているという構造です。さらに原子核の中にはプラスの電気を帯びた陽子と、電気を帯びていない中性子が存在します。このとき、電子と陽子の数は同じであり、元素ごとに特定の数となることを覚えておきましょう。これは外側のマイナスと内側のプラスが引き合うことでバランスを取っている状態といえます。

また、陽子と中性子の重さを1としたとき、電子はその1/1840という小ささです。そのために原子の質量を考える上では原子核が重要になります。そこで覚えたいのが原子核を構成する陽子と中性子の数の和を示したのが質量数です。

\次のページで「2-2.中性子の数は不規則変化」を解説!/

2-2.中性子の数は不規則変化

2-2.中性子の数は不規則変化

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元素周期表は教科書に必ず掲載されているものですが、いまいち見方がわからないという人もいるかもしれませんね。この機会に理解を深めましょう。

まず、アルファベットで書かれているもの全てが特定の性質を持った元素です。さらに、1から順に示されている数字がそれぞれの元素の原子番号であり、陽子、電子の数を示しています。これは元素記号の左下に書かれている場合もありますよ。そして元素記号の左上に書かれているのが質量数です。

元素番号と同じ数である陽子数や電子数とは異なり不規則な変化をします。例えば、原子番号11のナトリウムの場合は12、原子番号12のマグネシウムも12、原子番号13のアルミニウムは14の状態が「安定」です。

3.同位体の存在

Hydrogen Deuterium Tritium Nuclei Schmatic-en.svg
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中性子の説明で「安定」と言ったのには理由があります。中性子の数は不規則変化であることに加え、同じ元素でも数が異なる場合があるのです。

例えば水素の場合、陽子数及び電子数は1と決まっていますが、質量数は1,2,3と3つの状態が存在します。このとき、中性子数はそれぞれ0,1,2と計算できますね。さらにその存在割合は図の左から約99.99%,約0.01%,ごく微量となっています。つまり、水素は質量数1で中性子数0のときが「安定」というわけです。

このように、同じ元素でも中性子の数が異なるものを同位体またはアイソトープといいます。

3-1.質量数と原子量

Atom(ver.2018.06).jpg
By iseri - http://www.chiba-kc.ac.jp/user/~iseri/siryo/atom.pdf, CC 表示-継承 4.0, Link

質量数は先述したように陽子と中性子の数の和を示したものです。しかし元素周期表の中には上記のように、質量数ではなく原子量と記載されたものが多いでしょう。

原子量は質量数12の炭素 C の質量を12としたときの相対質量です。しかし実際に炭素の項目には12.01とありますね。これは水素のように、炭素も同位体が存在するからです。

質量数12の炭素が約98.9%であるものの、質量数13のものが約1.1%と質量数14のものがごく微量に存在しています。このことから、炭素の質量数の期待値として12.01という数値が出てくるというわけです。

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4.原子と元素のまとめ

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原子と元素の違いを知るとともに、原子の構造を知ることで理解を深めましょう。

・原子:物質を構成する際に基本となる粒子
・元素:原子の種類を表すもの
・原子には電子(-)、陽子(+)、中性子が存在する
・原子番号=陽子数=電子数
・中性子数=質量数-原子番号
・同じ原子でも中性子数が異なるものを同位体という
・原子量は質量数12の炭素 C の質量を12としたときの相対質量

原子の構造を知れば元素への理解が深まる!

原子1つ1つにはそれぞれの特徴や性質があり、それらを区別したものが元素です。原子は物質を構成する最小単位の粒子であり、全ての物質は様々な種類の元素から成り立っています。

そんな最小単位でもある原子ですが、実はその中にも電子や陽子といったさらに小さな構成物質を有していることを覚えておきましょう。それらの情報を詳細に記したものが元素周期表というわけですね。

記号や数字がたくさんありますが、周期表を丸々暗記する必要はありません。テストでも事前情報として書き出してくれる場合もありますからね。しかし覚えておいても決して損はありませんよ。化学反応式などの問題でも、その知識は必ず役に立ってくれます。見ていて楽しい写真付きの元素周期表もあるので、ぜひ探してみてくださいね。

イラスト使用元:いらすとや

" /> 簡単でわかりやすい!「原子」と「元素」の違いとは?気になるワードの使い分けを元塾講師が詳しく解説 – Study-Z
化学

簡単でわかりやすい!「原子」と「元素」の違いとは?気になるワードの使い分けを元塾講師が詳しく解説

今回は「原子」と「元素」の違いについて勉強していこう。どちらも物質を構成する最小単位を表すもので、化学の文章問題や解説でも頻繁に使われるワードですね。

ではその違いはなんでしょうか。化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.物質を構成する最小単位

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原子も元素も、物質を構成する最小単位を意味する言葉として使われる場合が多いでしょう。例えば、「どんな物質も原子という最小単位で構成されている」「アルミニウムという金属はAlで表される元素から成り立っている」のように。

それでは「どんな物質も元素という最小単位で構成されている」「アルミニウムという金属はAlで表される原子から成り立っている」としなかったのはなぜでしょうか。こう書いても意味は伝わりますよね。しかしそうしなかったのには理由があるのです。

1-1.原子は物質を構成する粒子

原子とは物質を構成する際に基本となる粒子を意味します。物質の最小単位という言い方をすることもありますね。身のまわりのものをどんどん小さい単位で見ていった場合、最後に残るのがこの原子ということです。溶液を例にして考えてみましょう。溶媒、溶質、溶液のおさらいですよ。

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ここでは○○溶液と仮定しましょう。この溶液中には上の図のように物質が存在しています。溶媒と溶質、それぞれが混在しているのがわかりますね。この○○溶液がどんな溶質、溶媒を使用しているかわからなくても、全ては原子から成り立っています。この1つ1つ全てが原子というわけです。

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