俺たちはいつも「体重」を抱えて生活しているが、ふとした瞬間に重さを感じなくなるときがある。プールに入った時とか。ふわふわ軽くなったように感じる。

自分の身体の「質量」は変わっていないから、また陸に上がったら元通りの「重量」に戻る。う、うん?「質量」と「重量」どう違う?混同するよな。実は両者は全くの別物。この記事では、「質量」と「重量」のニュアンスの違いをはっきりさせるぞ。

ライター/R175

理科教員を目指す理系ライター。エンジニアの経験を活かし、物理現象を身近なモノに結び付け分かりやすく解説する。

1.無重力空間では皆体重0kg

image by iStockphoto

重量(または重さ)、質量、ほぼ同じ意味で使っていませんか?

・この机の重量は1kg。
・分銅の質量は10g。

単位も同じですし、要はどちらも重さだし、ぶっちゃけどこが違うんだという感じですね。上記はどちらも正しい表現です。しかし、実際には「微妙に」どころか「全く」ニュアンスが異なります。

例えば、体重60kgのAさんが無重力空間に行ったとしましょう。無重力ですから、そこでAさんの体重を測定しても当然「0kg」と出るでしょう。でも、重さが0kgになったからと言ってAさんの体がなくなってしまったわけではないですよね?

このような場合、質量と重量を区別する意味が出てきます。Aさんの体の「質量」は60kgだけれど、「重量」は0kg

当たり前のように重力が働いてる地球では、「質量」も「重量」もほぼ同じ意味で使えますが、重力がゼロになる場所だと両者を区別する必要が出てきます。

2.重力と運動方程式

ここでは、重力について運動方程式を絡めながら解説します。なぜ運動方程式が出てくるのか。それは「質量」の概念をちゃんと理解するため。重力を運動方程式に当てはめて考えれば、「重量」と「質量」が別物なんだと納得できます。

2-1.運動方程式を端的に言うと

2-1.運動方程式を端的に言うと

image by Study-Z編集部

ニュートンの運動方程式。「またややこしいものを..」と思われるかもしれませんが、心配ありません。

端的に言うと「どれくらい力を加えたら、どれくらい動きが変化するか」を式で表しているだけ。

教科書では、「力=質量x加速度です。F=ma。」と難しそうに説明していますが、そんなことはありません。質量や加速度は以下のように言い換えてみてください。

質量:物の動かしにくさ(分かりにくい場合は一旦、地球上での重さと捉えましょう)。
加速度:どれくらいブレーキorアクセルか。どれくらい物体の動きが変わるか。

よわい力で押しても物体の加速は小さいけれど、大きな力で押すすると、物体はすさまじく加速。イラストのようなイメージですね。それを式で示しているのです。

ところで、質量が2倍になったら、同じだけ加速するのに2倍の力が必要ということ。質量はまさに動かしにくさの指標ですね。重力も「力」の1種なので、上記のような関係式が当てはまります。

2-2.重力の運動方程式

2-2.重力の運動方程式

image by Study-Z編集部

さて、重力も運動方程式に当てはめてみましょう。

重力=質量x重力加速度

これくらいの質量(地球上での重量と考えましょう)のものを、これくらいの勢いで地球に引き寄せるべく、これくらいの重力が働いています。といったことを示す式。

さてここで、本題に。結局のところ、重量って何なんだ?

重量とは、実は重力のこと。重「力」です。重力[N]を[kg]に換算して表しています。なぜわざわざ、Nをkgに換算しているのか?それは、Nよりkgの方がイメージしやすいから。

ニュートンと言われてもピンとこないもの。「980Nの力がかかっています」より「10kgの物体が上に乗っているのと同じ力です」といった方が力の大きさを想像しやすいですよね。

重量の正体は、重力そのもの。だから、重力が0だと、本当はどんなに質量が大きい(地球上にあったら重い)物体も重量は0になってしまいます。

昔は「力」を「kg」で表していた

力の単位って何ですか?今はニュートンNって習いますよね。

でも昔はそうではなかったらしいとのこと。20代の筆者が物理を習い始めた頃もすでに「ニュートン」になっていましたが、その昔は力の単位が[kgf]、'kilogram force'と表していたようです。

kgfは力の単位を「何kgの物体の重量に相当するか」で表しています。例えば980Nは10kgf。980Nは10kgの物体に作用する重力に相当する力だから。

Nよりkgの方がイメージしやすいので、力の単位をわざわざ地球上での重量に換算していたのです。

ちなみに、重力加速度は物体の質量に関係なく同じです。軽い「軟式テニスボール」もやや重い「硬式野球ボール」も同じ高さから落下させると同時に地面に到達しますよね。それは地球が「軟式テニスボール」も「硬式野球ボール」も同じ加速度で引き寄せているから。

重力加速度は場所によって変わります。例えば月面なら重力加速度は1.62m/s/s程度、無重力空間ならほぼ0m/s/sです。

さて、なぜ重力加速度はなぜ一定なのでしょうか?次項では重力の起こる仕組みから見ていきましょう。

3.なぜ重力が発生するか

そもそも重力はどのように発生するのかを見ていきましょう。実は、地球が物体を引っ張る力(重力)の正体は万有引力。万有という名前の通り、どんなものにも働く力です。極端な話、机は椅子を引っ張っていますし、椅子も机を引っ張っています。

3-1.万有引力

3-1.万有引力

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ある物体Aがある物体Bを引っ張る力(万有引力)はイラストに示す式の通り。M,mはそれぞれの物体の質量。万有引力は物体の質量に比例することがわかっているので、分子に2つの物体の質量がきています。

また、Rは2つの物体間の距離。万有引力の大きさは物体間の距離の2乗に反比例することから分母にRがきています。

Gは万有引力定数で、ものすごく小さい値です(イラスト参照)。ものすごく大きな質量を持つ物体、例えば地球くらい大きな質量があって初めて我々が普段受けている重力が発生するというレベルです。

さて、この万有引力の式で、Mを地球の質量、mを地球上にある物体の質量としましょう。

重力の正体はこの、物体と地球の間に働く万有引力=GMm/R^2。一方、重力はおなじみの式mgとも表せます。この二つの式を見比べるとg=GM/R^2。Gに万有引力定数、Mに地球の質量、Rに地球の半径を代入すると、g=約9.8m/s/sと算出されます。こうやって見ると、重力加速度は物体の質量と関係ないことが分かりますね。

同様に、Mに月の質量、Rに月の半径を代入すると、月での重力加速度が出てきます。

重量と質量の違い

重量:重力[N]をkg換算したもの。無重力状態なら重力[N]はゼロなので重量[kg]もゼロになる。
質量:無重力であろうが、どこに行っても同じ。単位はkg。

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物理物理学・力学理科

簡単でわかりやすい「重量」と「質量」の違い!運動方程式も理系ライターが詳しく解説

俺たちはいつも「体重」を抱えて生活しているが、ふとした瞬間に重さを感じなくなるときがある。プールに入った時とか。ふわふわ軽くなったように感じる。

自分の身体の「質量」は変わっていないから、また陸に上がったら元通りの「重量」に戻る。う、うん?「質量」と「重量」どう違う?混同するよな。実は両者は全くの別物。この記事では、「質量」と「重量」のニュアンスの違いをはっきりさせるぞ。

ライター/R175

理科教員を目指す理系ライター。エンジニアの経験を活かし、物理現象を身近なモノに結び付け分かりやすく解説する。

1.無重力空間では皆体重0kg

image by iStockphoto

重量(または重さ)、質量、ほぼ同じ意味で使っていませんか?

・この机の重量は1kg。
・分銅の質量は10g。

単位も同じですし、要はどちらも重さだし、ぶっちゃけどこが違うんだという感じですね。上記はどちらも正しい表現です。しかし、実際には「微妙に」どころか「全く」ニュアンスが異なります。

例えば、体重60kgのAさんが無重力空間に行ったとしましょう。無重力ですから、そこでAさんの体重を測定しても当然「0kg」と出るでしょう。でも、重さが0kgになったからと言ってAさんの体がなくなってしまったわけではないですよね?

このような場合、質量と重量を区別する意味が出てきます。Aさんの体の「質量」は60kgだけれど、「重量」は0kg

当たり前のように重力が働いてる地球では、「質量」も「重量」もほぼ同じ意味で使えますが、重力がゼロになる場所だと両者を区別する必要が出てきます。

2.重力と運動方程式

ここでは、重力について運動方程式を絡めながら解説します。なぜ運動方程式が出てくるのか。それは「質量」の概念をちゃんと理解するため。重力を運動方程式に当てはめて考えれば、「重量」と「質量」が別物なんだと納得できます。

2-1.運動方程式を端的に言うと

2-1.運動方程式を端的に言うと

image by Study-Z編集部

ニュートンの運動方程式。「またややこしいものを..」と思われるかもしれませんが、心配ありません。

端的に言うと「どれくらい力を加えたら、どれくらい動きが変化するか」を式で表しているだけ。

教科書では、「力=質量x加速度です。F=ma。」と難しそうに説明していますが、そんなことはありません。質量や加速度は以下のように言い換えてみてください。

質量:物の動かしにくさ(分かりにくい場合は一旦、地球上での重さと捉えましょう)。
加速度:どれくらいブレーキorアクセルか。どれくらい物体の動きが変わるか。

よわい力で押しても物体の加速は小さいけれど、大きな力で押すすると、物体はすさまじく加速。イラストのようなイメージですね。それを式で示しているのです。

ところで、質量が2倍になったら、同じだけ加速するのに2倍の力が必要ということ。質量はまさに動かしにくさの指標ですね。重力も「力」の1種なので、上記のような関係式が当てはまります。

2-2.重力の運動方程式

2-2.重力の運動方程式

image by Study-Z編集部

さて、重力も運動方程式に当てはめてみましょう。

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